2025年02月05日

中村ふみ「月の都 海の果て」

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 中村ふみ 著
 「月の都 海の果て」
 (講談社文庫)


天下三百三年九の月。元徐国王の風来坊・飛牙は、天に戻れなくなった天令の那兪を連れて東の越国へ。王都では瀕死の王のもと、二人の王子が後継争いの真っ最中。巻き込まれた飛牙は二宮の陣営に軟禁されるが、折悪しく「屍蛾」と呼ばれる暗魅が大発生する。放浪の英雄は越国を滅亡の危機から救えるか?−裏表紙より−


シリーズ3作目です。

毎回、もう良いかな?と思いつつ、なんとなく読み進めています。


今回の舞台は越国。この国の王は瀕死の状態で、まともに話すことも出来ない状態です。でもまだ生きているので、誰かが跡を継ぐわけにもいかず、使えない国王を配したまま国は動いています。

実際に動かしているのは国王の妻。彼女は飛牙の大叔母に当たる人で、彼が国に来たことを知ると会いたがります。

せっかくの対面も何だかお互いに含みを持った何とも微妙な感じ。表面上は楽しそうではありますが。


いつまでも国王の妻が国を治めるわけにはいかないので、国王が亡くなった場合は王子が継ぐことになるわけです。ただ、国王には王子が2人いてお互いに権力争いをして部下が真っ二つに分かれる事態になっています。

更に実はもう1人王子がいるということで、城から出て暮らしている彼も跡目争いに巻き込まれてしまいます。


探している弟もこの跡目争いに一枚嚙んでいたり、国を遅く「屍蛾」という暗魅まで飛んできたり、とにかくドタバタ状態です。

とはいえ、すべての事態はサラッと流れていく感じで、あっさりと読み終わるのですが。


次は最後の国なので、終わりかな?と思っていたらどうやらまだ数冊あるようです。外伝もあるとか!?

どこまで読むかは微妙ですが、とりあえず本編が終わる5巻までは読もうかな。


<天下四国シリーズ>
「天空の翼 地上の星」
「砂の白 風の姫」


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タグ:中村ふみ

2025年02月03日

1月のまとめ

よろずを引くもの: お蔦さんの神楽坂日記 (創元推理文庫)よろずを引くもの: お蔦さんの神楽坂日記 (創元推理文庫)
シリーズ4作目。表題作はいつの時代も問題になっていることが描かれていて、やる方は軽い気持ちだろうけど、被害者はたまらない。時々追いかけて事故に合ってしまって「やりすぎ」と世間から叩かれて・・という話を時々聞きますが、被害者の気持ちになると追いかけたくもなるだろうと思います。面白半分なのがまたたち悪い。他の話も面白く読めました。
読了日:01月06日 著者:西條 奈加


淑女の休日 (文春文庫 し 34-6)淑女の休日 (文春文庫)
ホテルに泊まりたい、ちやほや世話を焼いてもらいたいとは決して思えないので、理解できない部分もありましたが、謎解きは面白かったです。ただ、登場人物のイメージがわきにくいせいか、だれがだれだかわからなくなるのが困りました。相関図も欲しかったです。事件自体は悲しかったですし、理不尽すぎるとも思います。
読了日:01月16日 著者:柴田 よしき


江戸寺子屋薫風庵 (小学館文庫 Jし 01-4)江戸寺子屋薫風庵 (小学館文庫 )
かわいい表紙とは裏腹にちょっと重めな内容でした。子どもたちはかわいらしいというより繊細でしっかりしている感じ。先生である尼さんは自信が無さ過ぎて頼りなく感じます。かわいらしい日常が描かれるのかと思えば、事件が発生して予想と違ったのが残念でした。続きがありそうな雰囲気で終わりました。
読了日:01月22日 著者:篠 綾子


キャラメル・ピーカンロールは浮気する (mirabooks)キャラメル・ピーカンロールは浮気する (mirabooks)
せっかくハンナは3姉妹なんだから妹たちのキャラを以前のように分けておいたらいいのに、アンドリアのこともお菓子作りの名人かのような設定にしてしまったら代り映えしないよね。今まではミシェルを名助手にしていたのになぜ変えたのかも意味不明。ハンナは一人で生きていく!と決めたかのようなのに2人の男性を翻弄して何なの!?・・と文句が次々出てしまいます。でも最後が気になるので続きも読むでしょう。
読了日:01月26日 著者:ジョアン フルーク


コープス・ハント (角川文庫)コープス・ハント (角川文庫)
始めから嫌な展開から始まり、顔をしかめながら読んでいたら急に裁判シーン。犯人がすでに捕まって裁かれているのかと思ったら真犯人は別にいるというパターン。ワクワクしながら読みましたが、違う人たちの場面があって混乱しているうちにあっさりと解決。もっとページ数を増やしてもっと時間をかけて解決してほしかった気がします。暴力以外の妨害がもっとあっても良さそうです。
読了日:01月30日 著者:下村 敦史



全部で5冊。

重めの本が多かったかな。

特に印象に残ったのは「よろずを引くもの」です。

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2025年01月28日

柚月裕子「ミカエルの鼓動」

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 柚月裕子 著
 「ミカエルの鼓動」
 (文春文庫)


北中大病院の西條泰己は、手術支援ロボット「ミカエル」での心臓手術を成功させ、院内での地位を不動のものにした。しかし病院長は、心臓手術の名手・真木一義をドイツから招聘。難病の少年の治療方針を巡り、最先端医療か従来の術式かで二人は激しく対立する。そんな中「ミカエル」にある問題が発覚して―。−裏表紙より−


「ミカエル」と名付けられた手術支援ロボットを巡る問題がテーマになっています。

医師の西條は「ミカエル」を使っての心臓手術を成功させ、ミカエルの第一人者になっていました。もちろん所属する大学病院での地位も確固たるものにしていました。

病院長もミカエルを使う最先端技術を推進しているようでしたが、突然、ドイツから心臓手術の名医・真木を呼び寄せて病院で雇うと宣言しました。

納得がいかない西條。そんな中、西條を慕ってミカエルを使用した手術を行っていた若手医師が自殺したことを知ります。更に記者からミカエルのある問題について言及されます。

そして難病の少年が入院し、その治療方針を巡って、西條と真木は対立することに。



大きな流れとしてはこんな感じです。ページ数も多く、ずっしり読み応えのある作品ではありましたが、読んでいると不快なところが多かったです。

とにかく西條が「ミカエルに何が起きたんだ!?」と悩み始め、自分で使ってもわからず、誰に聞いても教えてもらえず、病院での地位も危うくなるし、病院長は冷たくなるし、夫婦仲もあやしくなるし・・・と不幸を一気に背負い込んだかのようなウジウジぶりで、何とも言えないプライドや権力に固執する感じとか、読んでも気持ちは理解できませんでした。

そんな医師1人のプライドよりも人の命の方が何倍も重要で、命を助けるためならあらゆる手を使ってほしいのに、どちらかというと後回しのようになっているのがイライラしました。

病院長ももっとはっきり言えばいいのに、絶対的権力をもっているかのように描かれている割には、西條に気を使っているのかきちんと説明しない。結局彼は病院の利益しか考えていないということなのでしょうけど。


最終的な手術についてはまあこれで良かったようには思えましたが、それまでの部分が長すぎて途中ダレてしまいました。

もっと削れる部分があったような気がします。


それとも、そういう削れそうな部分が無かったら、西條の苦しみが理解できないのか? 読んでも理解できなかったですけど。


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タグ:柚月裕子

2025年01月23日

買った本

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 近藤史恵 著
 「おはようおかえり」
 (PHP文庫)


お気に入りの作家さんです。題名の読み方を勘違いしていましたが、内容は面白かったです。


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 柚月裕子 著
 「ミカエルの鼓動」
 (文春文庫)


なかなかずっしり重い内容でした。とにかく長かった・・

2025年01月17日

椹野道流「時をかける眼鏡  宰相殿下と学びの家」

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 椹野道流 著
 「時をかける眼鏡  宰相殿下と学びの家」
 (集英社文庫)


マーキス島を脅かした疫病の流行は、遊馬たちの活躍でどうにか食い止められた。しかし人智を超えた災難に対し、自国があまりに小さく無防備であると痛感した国王ロデリックは国の行く末を案じ、「民の教育」についての夢を遊馬に語る。疫病で封鎖された集落で、遊馬たちが行った授業の評判が良かったことに触れ、「再度彼の地に赴き学び舎を造れ」と命ずるのだが!?−裏表紙より−


シリーズ9作目です。

前作でいよいよ観光のスタートか?と思っていたのですが、そう簡単にはいかず。というかその話は置いておいて・・という状態。

復興のための資金を集めることも大事ですが、国として人々が学ぶことはもっと大事ではないかと考えた国王。国の将来のことを考えたら、少しでも勉強ができた方が良いアイディアが浮かびますし、確かに大事なことです。


そこで、子どもたちに学ぶ機会を与えるため、学校を造ることにしたわけですが、まずは前作で疫病を食い止めた集落でやってみるようにとアスマに命じます。

アスマが教えるわけにはいかないので、教師を選んで連れて行きます。ただこの教師が問題でした。


教師が問題というか、この世界の認識が問題なわけですが。

彼女は子どもの頃に起きた事件で、その集落の中で唯一生き残った子どもでした。私からすれば「運が良い子ども」とか「親が命がけで守った大事な子ども」だとかいう認識にしかなりませんが、この世界ではなぜか「ノロワレ」と呼ばれ、忌み嫌われます。

悪の手によって生き残されたに違いないというわけです。つまり、悪の世界に好かれた子ども。

そういう考えになるのか・・と唖然としました。


その点について、彼女を見ただけでわかるようなことではないので黙っておけばいいのに「教師として正直でいたい」という彼女の希望により、集落の人たちに告白してしまいます。

そうなると関わりたくなくなるわけで、大事な子どもたちを学校に通わせるわけにはいかない、となり、いきなり授業がままならない状態になりました。


これはなかなか根深くて大変だ・・と思っていたら、このシリーズらしく意外とあっさりと解決するので良かったですけど、そんなに簡単に考えが変わるかな?とちょっと納得はいかない感じでした。

でもそこにひっかかっていたら最後にもっと大きな出来事が!

それについては書かずにおきますが、え〜!?まさか! 状態でした。

どうなっていくんだろう・・・かなり気になります。

早く続きが読みたいです。


<時をかける眼鏡>
「医学生と、王の死の謎」
「新王と謎の暗殺者」
「眼鏡の帰還と姫王子の結婚」
「王の覚悟と女神の狗」
「華燭の典と妖精の涙」
「王の決意と家臣の初恋」
「兄弟と運命の杯」
「魔術師の金言と眼鏡の決意」

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2025年01月10日

白蔵盈太「あの日、松の廊下で」

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 白蔵盈太著
 「あの日、松の廊下で」
 (文芸社文庫)※電子書籍


「殿中でござるってばァ・・」そう発することになってしまった旗本・梶川与惣兵衛は、「あの日」もいつもどおり仕事をしていた。赤穂浪士が討ち入りを果たした、世にいう「忠臣蔵」の発端となった松の廊下刃傷事件が起きたひである。江戸中を揺るがす大事件の目撃者、そして浅野内匠頭と吉良上野介の間に割って入った人物として一躍注目されるようになった彼は、どんな想いを抱えていたのか。江戸城という大組織に勤める一人の侍の悲哀を、軽妙な筆致で描いた、第3回歴史文芸賞最優秀賞受賞作。−出版社HPより−


初めましての作家さんです。

日本人なら知らない人はいないであろう有名な「忠臣蔵」の元となった「松の廊下刃傷事件」のことが描かれています。


忠臣蔵のドラマは色んな物を見てきましたが、「忠臣蔵」としては前段階の部分になるので大抵はサラッと流されてしまう部分です。浅野内匠頭が吉良上野介に小言を言われている・・我慢を重ねたけど限界!・・松の廊下で切りつける!・・「殿中でござる」と止められて・・一方的に切腹させられお家断絶。

この一連の流れが10〜20分くらいでサラッと流されてしまいます。

忠臣蔵としてはその後の浅野家の家臣たちの様子がメインになりますから仕方ないのかもしれませんが、そういえば何で浅野内匠頭は吉良上野介に切りつけたんだろう? いじめられたっぽいけどどうしていじめられたんだろう?と聞かれたらよく知りませんでした。

まあ興味もなかったんですけどね。

この作品では、なぜこの事件が起きることになったのか?をメインに、そこまでの2人の様子が描かれています。この話を進めていくのは「殿中でござる」と叫んで浅野内匠頭を止めた、梶川という旗本です。

彼の目から見た2人の様子が描かれます。


ここに描かれていることが全て本当のことなのかはわかりませんが、もしこれが事実なのだとすれば、吉良のことも浅野のこともイメージが変わりました。

吉良はもっと我儘で、自分を中心に世界が回っているかのような自己中的な人物だと思っていました。下の人間を見下して、常に俺は偉いんだから言うことを聞け!というタイプかと。

浅野のことは田舎の出だから、江戸という場所に圧倒されているせいで大人しくなってしまっている人物だと思っていました。言いたいことを言えないからこそうっぷんがたまって爆発したのかと。


ところが意外と吉良は周りのことも考える人物だったとわかりましたし、浅野はおとなしいばかりではなく意外と言いたいことを言っていることがわかりました。

ではどうして事件は起こったのか?

簡単に言うとお互いの気持ちのすれ違いだったということです。言いたいことを言っているようで、結局は今でいう会社の上司と部下みたいな関係なので、上司は上司で気を使ってやんわりと注意しますし、部下は部下で言いたいことの半分は飲み込んでしまう。

そんな2人の間に立って関係を取り持とうとしたのが梶川です。彼の苦労は読んでいてもしんどくなるほどでした。ただもう少し何とかならなかったんだろうか?とイライラする部分もあります。

でもまあ彼は彼で中間管理職的な立場というか、浅野が部下ではないので更に大変な状況。


もっと早めに誰かに相談出来ていればこんな事件は起きなかったのかもしれません。そうなると「忠臣蔵」もなくなるわけですが。


個人的にあまり興味が無かった事件ですが、意外と楽しく読めたので良かったです。とりあえず当事者2人の印象は大きく変わりました。


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タグ:白蔵盈太

2025年01月06日

12月のまとめ

キッチンつれづれ (光文社文庫)キッチンつれづれ (光文社文庫)
2話ほどよくわからないというか好みではない物がありましたが、全体的に面白かったです。キッチンを舞台にした物語たち。キッチンと言ってもいろんな景色があります。
読了日:12月04日 著者:矢崎 存美,福澤 徹三,永嶋 恵美,大崎 梢,新津 きよみ,福田 和代,近藤 史恵,松村 比呂美


香君4 遥かな道 (文春文庫 う 38-5)香君4 遥かな道 (文春文庫)
一つの穀物に頼り切ってそれを武器に国を治めることの頼りなさと恐ろしさ。いや〜よくここまで考えて話が膨らみました!神ではないのに神のように崇められる香君という存在も面白かったです。オリエは良かったけど、アイーシャも幸せになってもらいたいと強く思いました。
読了日:12月10日 著者:上橋 菜穂子


六人の嘘つきな大学生 (角川文庫)六人の嘘つきな大学生 (角川文庫)
1人の視点で描かれているのに急に放っておかれる感じがして読みにくい部分がありました。就活ってしたことないですが、なかなか過酷なんですね。過ぎてみればみんなあっさりしているようですけど。選ぶ側も同じような服装と髪型の人たちの中から選ぶのって大変そうです。途中から誰が犯人でも良いと思ってしまいましたし、読むのも疲れました。
読了日:12月13日 著者:浅倉 秋成


ショートケーキ。 (文春文庫 さ 49-5)ショートケーキ。 (文春文庫)
ショートケーキという題名なのに何でホールケーキ?と思ったらなるほど・・読んで納得です。ケーキってそこまで好きではないですが、見た目の可愛さにはテンションが上がります。連絡短編でいろんな人がちょこっと関係してきて最後まで面白く読めました。
読了日:12月17日 著者:坂木 司


バタフライは笑わない (文芸社文庫 NEO き 1-1)バタフライは笑わない (文芸社文庫 NEO)
青春だね〜というには重い内容でした。いじめとかいやがらせの域を超えて、犯罪だと思うな。自分で解決してしまおうとするのは大人から見れば馬鹿らしいですけど、子どもだったら思い詰めてしまうのは仕方ない気がします。ちゃんと助けてくれる大人がいて良かった。読み終えてホッとしました。
読了日:12月20日 著者:北川 ミチル


石礫 機捜235 (光文社文庫 こ 45-2)石礫 機捜235 (光文社文庫)
ワクワクする内容でほぼ一気読みでした。・・がだんだんと機動捜査隊らしくなくなっているのは残念です。活躍してくれるのはうれしいですけど、他のシリーズとの差がなくなっていく気はします。
読了日:12月26日 著者:今野敏



全部で6冊でした。最後までのんびり読書な一年でした。まあいいですけどね。

特に印象に残ったのは「香君4」「ショートケーキ」です。

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2024年12月27日

西條奈加「首取物語」

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 西條奈加 著
 「首取物語」
 (徳間文庫)


少年は空腹に耐えかね、目の前にいた男の握り飯を奪い、追いかけられていた。その行為が何度も繰り返されていることに気づくが、抗えない。ある時、首だけで生きている男と出会う。彼は少年と同じく過去の記憶を無くしていた。侍だったということ以外は。記憶を取り戻すべく、旅をする二人だが、不思議な事態に見舞われて・・。二人の過去に何があったのか?旅の果てに待つのは?過去の罪が引き起こす愛おしくも哀しい物語。−裏表紙より−


よく見たら表紙の絵がなかなかグロいですね・・

でも話の内容としてはこれが正解です。こういう状態を想像しないで読んだら、内容はそこまでグロくなくて読みやすいです。

どちらかというとほっこりと優しい雰囲気といえるかもしれません。少年の口調が強いし汚いので、殺伐とした雰囲気も流れますが、全体的に優しさは常にあります。


始まりから、お腹がすいている少年が、知らない男が持っている握り飯を奪って食べてしまうという不穏な展開。当然追いかけられるので逃げるのですが、気づけばまた同じような場所で同じ男が握り飯を持っていて、その時には少年はお腹が空いています。

結局何度も同じことを繰り返していることに気づくのですが、どうやってもそのループから逃れられません。しかも、少年はそれ以前の記憶がありません。

彼はどういう人生を歩んで、こんな場所に迷い込んでいるのか?と思っていたら、次に登場するのが首だけの男。

生首状態で道に転がっている男、というだけでホラーでしかないですが、普通にしゃべりますし色々と考えて少年にも語り掛けます。口調などから元は侍なのだろうとは思えますが、こちらも記憶を無くしています。


そんな記憶喪失な2人が旅をすることになるのですが、その様子が表紙絵の状態なわけです。

生首を風呂敷で包んで持ち歩く!なかなか怖い状態ですが、少年は気にせず持ち歩いています。重いしうるさいし、と文句は言いますが、孤独だった旅に道連れが出来たことを喜んでいるようです。


2人が旅で出会う人たちの話が描かれ、その度に、生きるとはどういうことなのか、正義を貫くとはどういうことなのか、を考えさせられました。

最後の話では2人の過去が明かされていくわけですが、読むのが辛い場面もたくさんありました。こんな状態になっているのですから、まともに生きて来たとは思っていませんでしたがそれにしても・・。


最後はハッピーエンドといえるのか?微妙ではありますが、私的にはとりあえず「良かったね」と思えました。
今後の彼らがどうなっていくのか? 未来はどうなのか?はかなり心配ではありますけどね。


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2024年12月24日

伊坂幸太郎「モダンタイムス 上下合体版」

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 伊坂幸太郎 著
 「モダンタイムス 上下合体版」
 (講談社文庫)※電子書籍


恐妻家のSE(システムエンジニア)渡辺拓海はあるサイトの仕様変更を引き継ぐ。プログラムの一部は暗号化されていて、前任者は失踪中。解析を進めていた後輩や上司を次々と不幸が襲う。彼らは皆、ある特定のキーワードを同時に検索していたのだった。
『魔王』から五十年後の世界。検索から始まる監視の行き着く先は──。
−出版社HPより−


お気に入りで結構読む作家さんなのですが、時々よくわからない話があるんですよね。これも正によくわからない・・結局何が描きたかったんだろう??


物語の冒頭、主人公と思われる人が自宅の椅子に縛られて暴行されている場面から始まります。その時点で、この話は多分好きではないタイプのやつだな、と嫌な予感はしました。


暴行されつつも、加害者と被害者がなぜか禅問答のような会話を繰り広げるところがこの作家さんらしいと言えます。暴力シーンでもどこかクスッと笑える部分がある感じ。

暴行されている理由は、どうやら彼が奥さんに隠れて浮気をしていると疑われていて、奥さんに頼まれた犯人が「浮気を認めろ!」と言っているらしいです。なんて暴力的な奥さんなんだと呆れてしまいますが、実は今回が初めてではなさそう。

暴行されながらも終始「浮気なんてしていない」と言うので、浮気していないのに疑われて可哀そうにと思っていたら、実は本当に浮気しているという展開。なんなんだよ!


そんな場面の後は、いつも通りに仕事に行くのですが、会社でも不穏な展開に。SEの仕事をしている彼は色々なプログラミングをしているのですが、とあるサイトの仕様変更の仕事を引き継ぐことになり、会社ではない指定の場所へ行きます。

そこにいた人物と共に仕事を始めるのですが、何やら不思議なサイトだと気づいていきます。そして前任者が失踪していること、そのプログラムに関わった人たちに何かしらの事故や事件が起きてしまうことがあり、このサイトを運営する会社を疑い始めます。


起きる事故や事件が、何だかいたたまれないというか、大きすぎてぞっとする物が多くて、だんだんと読むのが辛くなりました。被害に合っている人たちが意外と重く受け止めていない風に、どこかコミカルに描かれているのもまた辛かった。

なぜそんなことが起きていたのか?の理由が判明しても納得できず。まあ納得いくような理由なんてあるわけがないんですけど。

本当にこんなことが起きたとしたら怖すぎです。大きな組織が絡むとろくなことがないです。


最後まで救いが無いような、後味も決して良くない読了感でした。軽いタッチで描かれるのでそこまで落ち込まないですけど、やっぱり救われないなと思いました。


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2024年12月19日

今野敏「探花 隠蔽捜査9」

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 今野敏 著
 「探花 隠蔽捜査9」
 (新潮文庫)


横須賀基地付近で殺人事件が発生。竜崎は米海軍犯罪捜査局からリチャード・キジマ特別捜査官の参加を認め、異例の日米合同捜査が始まった。その一方、同期キャリアで腹の内を見せぬ男、八島圭介が警務部長として県警本部に着任。八島には前任地福岡での黒い噂がつきまとっていた。合同捜査が生む軋轢、殺人事件の波紋。神奈川県警刑事部長・竜崎伸也は、頭脳と決断力で難局を打開してゆく。−裏表紙より−


大好きなシリーズ。やっと文庫になって読める喜びをかみしめていたのにあっという間に読んでしまいました。

神奈川県警に異動して2作目かな? 前回はそこまで思わなかったですが、今回は土地勘があった方が楽しめたと思います。特に、米軍基地があるという土地にいないとわからないこともたくさんありました。


基地の近くで殺人事件が発生したということで、米軍犯罪捜査局の捜査官を合同捜査に入れてしまうという、竜崎ならではの計らいがありました。日米関係の問題も絡んできて、普通だったらこんなにあっさりと捜査に入れることもないでしょうし、許可をとるのも大変そうです。

しかもかなり早い段階での決断。もっと米軍関係者が犯人だという証拠が出てからでも良かったのかもしれないと思うのに、まだ何もわからない段階で捜査協力を仰ぐというのがさすが合理主義な竜崎という感じです。


今回は新たな同期が登場し、なぜかライバル的な見方をされてしまう竜崎。竜崎は何なら覚えていないくらいの存在だというのに、伊丹はしっかり覚えているのが面白い。

それにしても成績優秀なだけあって同期TOP3は出世しています。竜崎も本当ならもっと上にいたでしょうから。

今回出てきた同期は問題ありな感じで、竜崎がビシッと成敗するだろうと思うと期待が大きくなってちょっとにやけてしまうほどでした。結局、私が思うようなズバッと切り捨てるようなことはなく、それはそれで良い解決方法だったと思えました。


そしてまたしても問題を起こす息子。まあ問題を起こすというかなんというか・・心配をかけまくった感じですが、娘も巻き込んで、こちらもドタバタ状態。彼はまた竜崎の足を引っ張るのか?と心配になりました。

奥さんはあまり登場せず、竜崎にかっこいい一言をかけることもなかったのは残念でした。次回はもっと出てほしいです。


文庫化までまだまだ日がありそうです・・・首を長くして待つことにします。


<隠蔽捜査>
「隠蔽捜査」
「果断」
「疑心」
「初陣」
「転迷」
「宰領」
「自覚」
「去就」
「棲月」
「清明」


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