
高田郁 著
「幾世の鈴 あきない世傳 金と銀 特別巻(下)」
(ハルキ文庫)
明和九年(一七七二年)、「行人坂の大火」の後の五鈴屋ゆかりのひとびとの物語。八代目店主周助の暖簾を巡る迷いと決断を描く「暖簾」。江戸に留まり、小間物商「菊栄」店主として新たな流行りを生みだすべく精進を重ねる菊栄の「菊日和」。姉への嫉妬や憎しみに囚われ続ける結が、苦悩の果てに漸く辿り着く「行合の空」。還暦を迎えた幸が、九代目店主で夫の賢輔とともに、五鈴屋の暖簾をどう守り、その商道を後世にどう残すのかを熟考し、決意する「幾世の鈴」。初代徳兵衛の創業から百年を越え、いざ、次の百年へ──。−裏表紙より−
いよいよシリーズ最終巻。読み終わるのが寂しすぎて、ゆっくり丁寧に読もうとしたのに、1話毎の結末が気になって次々と読んでしまいました。
ずっと気になっていた、妹・結のこともしっかり描いてくれて嬉しかったです。読み始めると、彼女はそこまで姉・幸のことを恨んでいたのか・・と胸が痛くなるほどでした。そして、そうやって恨みを抱いて生きていてもしんどいだけだということに気づいていないことも辛かったです。
夫はすっかり別人のようになってのんびりと暮らしているのに、結だけがカリカリイライラ。そういう世界から出たはずなのになかなか気持ちを変えられない彼女の様子は目を背けたくなりました。
でも最後にはちゃんとハッピーエンドが用意されていて、本当にうれしかったですし、良かったと思えました。幸と再会する日もいつか訪れるのかもしれません。その場面が描かれることは無いでしょうが、そういう想像が出来るようになったことが嬉しいです。
そして、菊栄の店も実家の商売も、更には元夫との関係も、全てが先を見据えて良い感じに展開したのも良かったです。彼女の商売の工夫は最後まで感心させられました。
最後に幸。彼女の人生は結婚と別れのくり返しではありましたが、大好きな店のために役に立てたことは素晴らしいことだと思います。ただ、これが現代ならここまで結婚しないで済んだだろうとは思いますが。
とにかく、最後の結婚は自ら望んで出来たのが本当に良かった。子どもには恵まれませんでしたが、それでも次に託すことが出来る物が遺せたのは素敵です。幸たちが育てた店は、これからもきっと繁盛していくことでしょう。着物という物が着られなくなったとしても、みんなで知恵を出し合って繁盛できそうです。
あ〜、読み終わってしまった・・・。でも良かった・・・・。
この作家さんはまだまだ書きたい題材があるそうで、また新たなシリーズが始まってくれるだろうと思うので、それを気長に楽しみに待ちたいです。そしていつかまた「五鈴屋」の物語も読んでみたいです。もちろん「みをつくし料理帖」も。
<あきない世傳金と銀>
「源流篇」
「早瀬篇」
「奔流篇」
「貫流篇」
「転流篇」
「本流篇」
「碧流篇」
「瀑布篇」
「淵泉篇」
「合流篇」
「風待ち篇」
「出帆篇」
「大海篇」
「契り橋」
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