2018年01月18日

柚木麻子「3時のアッコちゃん」

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 柚木麻子 著
 「3時のアッコちゃん」
 (双葉文庫) 


澤田三智子は高潮物産の契約社員。現在はシャンパンのキャンペーン企画チームに所属しているが、会議が停滞してうまくいかない。そこに現れたのが黒川敦子女史、懐かしのアッコさんだった。会議に出すアフタヌーンティーを用意して三智子の会社に五日間通うと言い出した。不安に思う三智子だったが・・!?表題作はじめ、全4編を収録。読めば元気になるビタミン小説、シリーズ第二弾!−裏表紙より−


表題作ほか、「メトロのアッコちゃん」「シュシュと猪」「梅田駅アンダーワールド」全4編を収録。


2作目ということですが、1作目をすっかり忘れていた私でも楽しめました。

ただ、短編4話のうち、2話しかアッコちゃんが出てこないのが残念! 題名にもなっているのになぜ出てこないのか・・。


1作目で会社の後輩だった三智子が、1話目で登場。会社での会議がなかなかうまく進まないことをアッコちゃんに相談します。そこでアッコちゃんは、会議にお茶を取り入れるように勧め、自らお茶を提供しに来てくれました。

最初はお茶なんかが会議の助けになるのか?と疑っていた社員たちも、少しずつお茶を楽しみに待つようになり、またアッコちゃんのアドバイスによって進められることで、話がスムーズになっていくことに気づいていきます。

ダラダラと長いだけの会議をやめて、短くても中身の濃い会議が出来るようになりました。

この話はうらやましいというか、参考に出来るならしたいくらいでした。頭の固い人たちが多いから難しいでしょうけど、アッコちゃんのアドバイスの中には参考になりそうな言葉もありそうです。


2話目にもアッコちゃんは出てきますが、三智子は出てきません。いや、出てきますが話の内容には直接関係がありません。それでも、ある会社員の女性を見事に救って、元気づけるところはさすがアッコちゃん! この話もアッコちゃんの言葉が刺さります。


3、4話目は、アッコちゃんは出てきません。かなり寂しいのですが、どちらも仕事や人生に悩む人たちを周りの何気ない言葉や行動によって救っていく話になっています。

どちらも最後は良かった〜と思える展開を見せるので、読んでいて明るく前向きな気持ちにさせてもらえます。

3話目は、イノシシが登場したのも面白かったです。結構身近な存在のイノシシですが、まだ遭遇したことはないので、ちょっと見てみたい気もします。実際に見たら固まってしまうのかもしれませんが。


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2017年12月26日

柏井壽「鴨川食堂」

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 柏井壽 著
 「鴨川食堂」
 (小学館文庫)


鴨川流と娘のこいし、トラ猫のひるねが京都・東本願寺近くで営む食堂には看板がない。店に辿り着く手掛かりはただひとつ、料理雑誌『料理春秋』に掲載される<鴨川食堂・鴨川探偵事務所―“食”捜します>の一行広告のみ。 縁あって辿り着いた客は、もう一度食べてみたいものに出会えるという。夫の揚げていたとんかつを再現したいという女性、実母のつくってくれた肉じゃがをもう一度食べたいという青年など、人生の岐路に立つ人々が今日も鴨川食堂の扉を叩く。寂しさも辛さも吹き飛ばす、美味しい六皿をご用意しました。京都のカリスマ案内人、初の小説!−裏表紙より−


初めましての作家さんです。ドラマ化もされたという作品で、ネットで感想を読んで面白そうだったので読みました。

でもまあ、う〜〜ん。読んでいる間は面白いと思っていたのですが、同じようなパターンで進んでいくのを読んでいるうちに飽きてきたというか、どうでもよくなった?感じです。

短編なのに、途中で失速しました。


「食」を探すというのは面白くて、なるほど誰にでも思い出の味ってあるもので、それを探して再現してくれるのは嬉しいだろうと思います。私にも食べたいケーキがあります。もう亡くなられた方が作ってくれたので、食べられないんですけど・・。再現してもらえたら嬉しいだろうな。

でも、他に魅力がなかったんですよね・・。

娘のこいしのことも、父親の流のことも、どんな人物なのかよくわからないまま終わりましたし、「食探し」があまりにもあっさりしていてドキドキ感もなかったのが残念です。

食を探している場面は確かに重要ではないのでしょうが、ちらっと見せてほしかったです。どうやって探し出したんだろう?と思うものが多かったので。


シリーズになっていて、何冊か発売されているようですから、人気はあるようですね。2作目以降は面白いのかもしれません。また機会があれば読んでみようかな?


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タグ:柏井壽
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2017年12月13日

荒木源「ヘビメタ中年」

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 荒木源 著
 「ヘビメタ中年」
 (小学館文庫)


梅が岡高校時代にヘヴィメタルバンド・ブラッククローを組んでいたメンバー四人は、三十余年の時を経てバンドを再結成する。当時と比べて、みな外見に変化はあるものの、ヘビメタを愛する気持ちにまったく変わりはないのだ。今は市民病院の医者であるボーカルの江並は、ある日、手術予定の患者・山口から手術を拒まれる。聞けば、ライブハウスで完全ヘビメタ仕様で絶叫する彼のライブ映像を目にしたようだ。代わりに近隣の病院で手術を受けるという山口だったが、その担当医を調べていくうちに、江並はあることに気づく。話は思わぬところまで波及していく――。−裏表紙より−


題名の通り、ヘビメタバンドをやっている中年男性の話です。

高校時代に組んでいたバンドメンバーで再結成。「いい年してそんなことして」という家族がいないというのは素敵な環境です。

とはいえ、医者がヘビメタバンドをやっているとなると、手術を拒む患者もいるようで。私だったら気にしないけどな・・。派手な衣装で怒鳴るように歌っている担当医を見たら引くのかな?でも手術の腕は別な気がしますけど。

1話目では、そんな感じで患者から手術を拒否されてしまった、医者でボーカルの江並がどうやって患者を納得させるか?が描かれています。ヘビメタバンドに対する愛情と、医者としての立場に少し悩みつつ、でもやっぱりヘビメタをやっている自分に誇りをもって対処する姿はちょっとかっこよかったです。


2話目以降も江並の視点で描かれるのかと思ったら、次は別のメンバーになって、4人のメンバーそれぞれの現在の生活と、ヘビメタに対する思いなどが描かれていきます。


最後の話は意外な展開もあって、最後まで面白かったです。

中年になっても、人生をかけられる趣味があるって素敵だとあこがれるような気持ちで読みました。

今のうちにそんな趣味を見つけておきたいと強く思わされました。何かに夢中になっている人ってやっぱり輝いていますよね。


ミステリーが続いてしまったときなどに読むと良い感じです。サクッと読めますしね。


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タグ:荒木源
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2017年11月27日

青木祐子「これは経費では落ちません!〜経理部の森若さん〜」

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 青木祐子 著
 「これは経費では落ちません!〜経理部の森若さん〜」
 (集英社オレンジ文庫) 


森若沙名子、27歳、彼氏なし。入社以来、経理一筋。きっちりとした労働と、適正な給料。過剰なものも足りないものもない、完璧な生活をおくっている、はずだった。最近、そんな気配のなかった同期に恋人ができて、少し迷いが生じている。ある日、営業のエース・山田太陽が持ち込んだ領収書には「4800円、たこ焼き代」。経理からは社内の人間模様が見えてくる?−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

題名を読んでも面白そうですし、あらすじも面白そうだったのですが・・。

題名を見て勝手に強い女性がビシッと「これは経費では落ちません!」と断って、どうすれば経費に出来るかをアドバイスしていくような、痛快な話かな?と思っていたのですが、全く違いました。

主人公の森若さんは、ビシッと強気な女性ではなく、できるだけ波風を立てず、とにかくお給料分だけ働いて、地味にでも真面目に仕事をこなしていきたいタイプ。公私混同はあり得ない、プライベートはしっかり守ります!というタイプ。

波風立てずに過ごしたいと思うのはかなり共感出来ます。でもそんな小説だったら面白さ半減な気がします。


27歳という年齢らしく、恋人がいないことを気にしていない振りをしつつ、実は気にしていたり、同期に恋人が出来たら妙に焦ったりしていて、そこも共感出来たんですけどね。

もっと題名に合うようなビシッと指導するような感じが良かったな・・と。

どうやらややこしい領収書を持ち込んでくる営業の男性と良い雰囲気になりそうではありますが、そこには全く興味がわかず。


もうすぐ3巻も発売されるということで人気はあるようなので、私に合わないだけみたいです。私は続きはもう良いかな??


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タグ:青木祐子
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2017年10月25日

森沢明夫「津軽百年食堂」

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 森沢明夫 著
 「津軽百年食堂」
 (小学館文庫) 


弘前で百年続く「大森食堂」を離れ、孤独な東京でアルバイト生活をする陽一。同じ弘前出身で、写真家になるために上京したものの、夢やぶれそうな七海。ふたりは運命に導かれるように出逢い、惹かれ合うが、やがてふるさとの空へ、それぞれの切なる憶いをつのらせていく。 一方、明治時代の津軽でひっそりと育まれた「大森食堂」初代の賢治とトヨの清らかな恋は、いつしか遠い未来に向けた無垢なる「憶い」へと昇華されていき・・。 桜舞う津軽の地で、百年の刻を超え、永々と受け継がれていく《心》が咲かせた、美しい奇跡と感動の人間物語。−裏表紙より−


弘前で3代続く食堂の話です。

この作家さんらしい、ほっこりと温かい雰囲気の漂う物語でした。

主に描かれるのは、4代目となる陽一のこと。彼は食堂を継がずに、東京へ出て働いています。そこで偶然出会ったのが、筒井七海という女性。彼女も同じ弘前出身ということで、意気投合します。

彼女の視点でも物語が描かれ、東京での2人がどうやって親密になっていき、どんな悩みを抱え、どうやって乗り越えていくのか?という青春物語にもなっています。


そしてもう一人、賢治の話もたくさん出てきます。初代として「大森食堂」を開店させる彼。彼にも素敵な出会いと開店までの道のりがあって、こちらもほのぼのと読み進められます。

2代目はどうやらダメな人だったようですが、3代目もしっかりと暖簾を守り、4代目へと引き継ぐことになりそうです。


「津軽百年食堂」という題名から、食堂での日常が描かれていそうな気がしますが、それよりも食堂を続けてきている大森家の人生について描かれている作品でした。

号泣するほどの感動はありませんでしたが、それなりにほろりとさせられる部分もあります。読み終わってすぐは、じわっと感動がわいてきますが、時間が経つと細かい内容を忘れるくらいの淡々とした印象でもありました。


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タグ:森沢明夫
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2017年10月23日

奥田英朗「マドンナ」

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 奥田英朗 著
 「マドンナ」
 (講談社文庫)


人事異動で新しい部下がやってきた。入社四年目の彼女は、素直で有能、その上、まずいことに好みのタイプ。苦しい片思いが始まってしまった(表題作)ほか四十代・課長達の毎日をユーモアとペーソス溢れる筆致で描く短編5編を収録。上司の事、お父さんの事、夫の事を知りたいあなたにもぴったりの一冊です。−裏表紙より−


「マドンナ」「ダンス」「総務は女房」「ボス」「パティオ」が収録されています。

「ガール」が面白かったので読んでみました。

「ガール」は、30代を中心とした女性の話だったのですが、この「マドンナ」は、40代男性、しかも課長たちの話になっています。男性目線で語られるので、女性としては共感は全くできません。

ただ、男性っていつまでも子どもというか、幼い考えを持っているんだな〜と妙に感心。というか軽く呆れてしまいました。


表題作「マドンナ」は特に情けなくて、笑ってしまいました。良い年齢したおじさんが部下の女性に惚れてしまうなんて・・。しかも一線は超えない物の、公私混同甚だしい態度を見せますから呆れてしまいます。女性の部下全員にこういう態度ならともかく、美人だからといって態度が違うのは腹が立ちます。

まあ、女性もイケメンが周りにいたらテンションが上がるんですから、男性だって美人な部下にクラクラしても仕方ないんですけど。


どの話も面白かったですが、特に気に入ったのは「ボス」です。女性の上司ってやりにくいんだろうなと改めて思わされました。女性である上に、今までと違うやり方をされたら余計に大変です。

これも男性目線で書かれてはいるのですが、私的には女性ボスの気持ちになって読んでしまいました。現実にもこんな風に働き方を改革できるような女性が活躍できる社会になれば良いと思いました。

今の男性社会の中では女性は働きにくいです。独身でも大変ですが、家庭を持つと余計に大変。保育園を増やすとかそういうことだけではない改革が必要ですね。


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タグ:奥田英朗
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2017年09月26日

つるみ犬丸「日本酒BAR「四季」春夏冬(あきない)中 さくら薫る折々の酒」

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 つるみ犬丸 著
 「日本酒BAR「四季」春夏冬(あきない)中 さくら薫る折々の酒」
 (メディアワークス文庫)


恵比寿の繁華街の片隅にたたずむ「四季-Shiki-」。 日本酒専門のこの店で供されるのは、客の好みに合わせたお酒と自慢の料理。 仕事でへとへとの体には爽やかな爽酒でほっと一息、くたくたの心には薫り高い薫酒で心ゆくまでゆったりと。 あなたの疲れた心と体に、ぴったりのお酒がここにあります。酒と肴と思い出と、人生に寄り添うこの店に、どうぞ癒されにいらっしゃい。 実在する日本酒が多数登場。読んだら飲みたくなる、日本酒レビューも収録。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

読み始めは面白い展開だったので一気に引き込まれたのですが、途中から失速・・。

何だろう? 読んでいる時は面白くて、どんどん読み進めていけたんですけど、本を閉じたらあまり心に残る物が無い・・。

話毎に美味しそうな料理と、それに合う日本酒が出てきて、お酒好きな人にはたまらない内容です。

だからといって、日本酒片手に読む本とは違うような。

日本酒のガイドブックに近いかもしれません。


「おれ」こと冴蔵の生い立ちが珍しくて、そこを掘り下げていくのかと期待したのですが意外とあっさりスルーされ、店主の楓さんの引きずっている問題を深く掘り下げるのかと思ったら、これまた意外とあっさり解決し、その辺りには重きを置いていないのかもしれません。

日本酒のことは色々書いてあって参考になりそうだったので、とりあえず名前をメモしておこうかな? そして日本酒がたくさんある店で飲んでみたいと思います。

あまり得意ではない日本酒が好きになれたら良いな。って感じでしょうか。


何も考えたくないとき、疲れているときに読むと良いかもしれません。


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タグ:つるみ犬丸
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2017年08月29日

小川糸「ツバキ文具店」

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 小川糸 著
 「ツバキ文具店」
 (幻冬舎)


ラブレター、絶縁状、天国からの手紙…。鎌倉で代書屋を営む鳩子の元には、今日も風変わりな依頼が舞い込む。伝えられなかった大切な人への想い。あなたに代わって、お届けします。−「BOOK」内容紹介より−


初めましての作家さんです。少し前に、テレビドラマ化されたそうで、ドラマが面白かったと聞いたので、本を読んでみました。


祖母から文具店を受け継いだ鳩子。文具店を営みながら、代書屋もやっています。代書屋って本当にある仕事なのかな?よく知りませんが、自筆で手紙を書くことが減ったこの時代だからこそ、必要な職業なのかもしれません。

本の中には、鳩子が書いた手紙も載っています。きちんと彼女が書いた文字のままに。

一人の人が書いたとは思えないくらい色んな文字が書けて、しかもどの字も綺麗で読みやすいので、羨ましくなりました。

ここまできれいじゃなくても良いから、読みやすい字が書ける人になりたかったな・・としみじみ。


前半は、あまりにも何も起こらず、淡々と話が進み過ぎて、気分も乗らない感じでしたが、徐々に面白くなっていきました。

代書を頼むような手紙ですから、普通に季節のあいさつ的な物は少なくて、ラブレターだったり絶縁状だったり変わった物が多いわけです。その内容や文字の美しさ、手紙へのこだわりなんかを読んでいるうちに、どんどん面白くなってきました。

手紙を代書するって、何となく文章は考えてあってそれを本人に代わって書くのだと思っていたのに、実際には文章から考えるんです。そこにまず驚かされました。手紙を出す人と相手の人柄や、どんなことを伝えたいかなど詳しく聞いた上で、文章も考えて書くなんて!

しかも、便せんや封筒、字を書くペン(筆記具)、更には貼る切手にまでこだわって選んで完成させます。

一度書いた手紙は、翌朝まで封をせずに置いておき、冷静な目で読み返してから投函します。

その細かいこだわりに感動しました。

ここまでのこだわりや文章、文字の美しさは、やはり小さい頃の訓練があったからこそのことで、鳩子は本当は子どもらしくしていたかったようですが、努力は報われている気がしました。


感動する手紙や出来事もいくつかあって、泣いてしまう所もありました。

ただ、登場人物たちのあだ名が・・。変なあだ名が多くて、物語の邪魔をしているように感じられたのが残念。良いアクセントだと思えれば良いのでしょうが、私は引っかかってしまいました。

これはまだまだ続編が書けそうですがどうかな? 続きが出たら読んでみたいです。


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タグ:小川糸
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2017年08月03日

森沢明夫「ミーコの宝箱」

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 森沢明夫 著
 「ミーコの宝箱」
 (光文社文庫)


ミーコは風俗と福祉の仕事を両立しながら娘のチーコを育てるシングルマザーだ。幼い頃に両親に見捨てられ、躾の厳しい祖母との関係に苦しんだ過去を持つ。苦労の絶えないミーコだが、彼女の特技は、毎日一つ、小さく光る宝物を見つけること。ミーコの宝箱に入っている、一番大切な宝物とは・・。一人の女性の半生を通して、母と子、人と人の絆を温かく描き出す。−裏表紙より−


読み終わってすぐは色々と感想が出てきていたはずなのに、何日も経ってしまった今となってはあまり感想が出てこないくらい、私の中では印象の薄い内容でした。


一話目で、読むのをやめようか?と思うような描写があって、かなり引いてしまいましたが、それを超えると大丈夫でした。

ミーコという女性が大人になるまでどんな人生を歩んで来たか?が主に描かれているわけですが、本人が言うほど虐待されていたようには思えませんでしたし、祖母が厳しくても祖父は助けてくれたわけで、ある意味愛情たっぷりに育ててもらったんじゃないかな?と思うと、それほど重い内容でもなく、どうして彼女の半生を描こうと思ったのかな?と読みながら疑問を感じてしまいました。

確かに両親に捨てられるという体験は、子どもにとってかなり大きなことで、心に消えない傷を負うことでしょう。でもそれに代わる愛情をもらったのだから良いのでは?と思います。

実際、ミーコは毎日一つ宝物を見つけて集める、という素敵なことを実行するような良い人に育っているわけで、娘も真っすぐ育っているようですし、問題無さそう。

ただまあ、男性運は無いのかも? それも彼女のやさしさが生んだ結果なので、何とも言えませんが。


ミーコの祖母がミーコに対する気持ちを祖父に話す場面では泣きそうになりましたが、それ以外は泣きそうにもならず。

そんな感じで、最後まで何となくふわっとした雰囲気の中進んで行って終わった・・というのが私の感想かな?


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タグ:森沢明夫
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2017年05月15日

穂高明「これからの誕生日」

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 穂高明 著
 「これからの誕生日」
 (双葉文庫)


千春はバス事故で友人たちや教師を失った。一人生き残った罪悪感に苛まれ、引きこもりがちになる。そんな千春を取り巻く人々―弟、伯母、担任教師、亡くなった友人の母親、新聞記者、ケーキ店の店主―の視点で、ひとが新たな一歩を踏み出してゆくまでの道のりを丹念に辿ってゆく。明日を生きるための強さを優しく描きだした連作短編集。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。ネットの評判が良くて読むことにしました。

内容が重くて、どんな風に感想をまとめたら良いのか、はっきり言って今でもよくわからないです。

バス事故にあって、同じ部活の友人たちや顧問の先生が全員亡くなって、1人だけ奇跡的に助かった少女の話なのですが、もし自分が彼女の立場だったらどう思うだろう?とずっと考えながら読んでいて、どんどん苦しくなっていきました。

あらすじにあるように、短編の一つ一つに違う人から見た少女の姿が描かれていて、一話毎に「じゃあ、この人の立場で少女を見たら自分はどう思うんだろう?」という考えもわいてきて、頭の中がごちゃごちゃになりました。

もし自分一人が生き残ったら、絶対に「どうして自分だけが?」という気持ちにはなるでしょうし、どうしても「生き残ってごめんなさい」という気持ちにもなると思います。同じ学校に通い続けるなんてこと、出来ないと思います。

この少女の場合は、母親もちょっと問題ありな人なので転校という選択肢も無く、引きこもってしまう気持ちもよくわかります。・・が、何だかこの少女、どこか可愛げが無いというか最後まで好きになれなかったんですよね。自分でもどこが気になったのかわかりませんが。

そして、周りの人たちの対応も嫌悪感しかわかず。ただまあ、遺族が「どうしてうちの子ではなく、あの子が生き残ったんだ!」と怒りを募らせる気持ちはわかるんですよ。でも、その思いを彼女にぶつけるのはどうなんだろう?と思ってしまいます。愛想よく接する必要もないですけど、辛く当たらなくても・・と思いました。

家族の対応もイマイチ納得できませんでした。弟はともかく、伯母さんも母親もどうしてそんな接し方?と疑問がわきました。

色々な人間模様が読めたのは良かったですし、実際にこういう体験をしたことがあるわけではないので、自分がどんな対応するかもわかりません。だからこういう反応もあることなのかもしれません。・・が、読んでいて不快なことがたくさんありました。

最後にはどうやら立ち直ってくれそうな雰囲気になって良かったです。あまりにもあっさりとはしていましたが。

ただ純粋に涙を流して終わるような話ではありませんでした。


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タグ:穂高明
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2017年01月28日

奥田英朗「我が家の問題」

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 奥田英朗 著
 「我が家の問題」
 (集英社文庫)


夫は仕事ができないらしい。それを察知してしまっためぐみは、おいしい弁当を持たせて夫を励まそうと決意し―「ハズバンド」。新婚なのに、家に帰りたくなくなった。甲斐甲斐しく世話をしてくれる妻に感動していたはずが―「甘い生活?」。それぞれの家族に起こる、ささやかだけれど悩ましい「我が家の問題」。人間ドラマの名手が贈る、くすりと笑えて、ホロリと泣ける平成の家族小説。−裏表紙より−


甘い生活?」「ハズバンド」「絵里のエイプリル」「夫とUFO」「里帰り」「妻とマラソン」の6編収録されています。



「家日和」に続く第2弾。家庭内のちょっとした問題を取り上げた短編集です。

どれも面白かったのですが、特に気に入ったのは「ハズバンド」と「夫とUFO」「里帰り」です。

甘い生活?」の夫の悩みは何だか妙に刺さってしまって、周りに「贅沢な悩みだ」と言われている彼のことがかわいそうになってしまって読みにくかったです。女性目線では本当は逆なのでしょうが・・。


ハズバンド」は、夫が会社で辛い思いをしているらしいと知った妻が、せめてお昼休みくらい安らぎをあげたいと考え、お弁当を作ることにした話です。そのお弁当は肩に力を入れず、さり気なく工夫を凝らして、見た目は普通でも味は美味しいように、毎日作るために頑張りすぎないように作られていて、こういうお弁当って最高に妻の愛情が入っている素敵な物だなと感動しました。この妻の心使いに気づいているかどうか怪しいですが、彼女もそれを望んでいるわけではないから良いのでしょうね。


夫とUFO」は、夫が急に「UFOを見た。宇宙人と会話した」と言い出す話です。しばらくはこの話はどこへ向かうんだろう?と心配になるのですが、最後には感動させられました。妻が子どもたちに言った「これからおとうさんを救出してきます」宣言がかっこよすぎでした。


里帰り」は、新婚の2人が初めてのお盆にお互いの実家に顔を出す話です。初めはどちらか行かなくても良いのでは?など悩む2人ですが、結局お互いの実家に強行スケジュールで帰ります。お互いの実家のことが気に入って、最後は丸く収まる感じが心地よかったです。


絵里のエイプリル」だけは 結局どうなるんだろう?と気になる所で終わっていますが、他はすべてすっきりと収まり、爽快な気分にさせられる読後感でした。

シリーズはまだあるようなので、文庫化を待って読もうと思います。


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タグ:奥田英朗
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2016年11月07日

安藤祐介「被取締役新入社員」

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 安藤祐介 著
 「被取締役新入社員」
 (講談社文庫)


小中高といじめられ続け、入社した会社もすぐ解雇。究極のダメ男・鈴木信男は、なぜか一流広告会社に採用される。そこで命じられたのは、エリート社員たちのストレスの捌け口となる「被取締役(とりしまられやく)」の極秘任務だった。かつてない下から目線”で仕事の本質を衝いて反響と感動を呼んだ、ドラマ原作大賞受賞作。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

ネットでの感想を読んで面白そうだったので読んでみたのですが、表紙の絵や題名からも軽い話だと思ったら意外と重い感じがしました。

一流会社で働いていると確かにストレスは多いでしょう。それを解消させるためにダメダメ男の鈴木信男が採用されます。社長に改名され、会社では「羽ケ口(はけぐち)信男」。つまり、ストレスの捌け口になるべく配属されたわけです。

彼には、様々な秘密の決まりがあります。週に3回は遅刻すること、必ず定時に帰ることなど。とにかく失敗をして上司から怒られまくるのが彼の役目。

ストレスがたまりそうな任務ですが、その分報酬が役員並み。普通の人ならいくら給料が高くてもやっていられませんが、彼なら大丈夫。始めから失敗だらけのやる気のない男ですから。

特に努力することなく、数々の失敗を繰り返し、思惑通りに毎日怒鳴られまくっています。お陰で今まで怒られていた社員が怒られなくなり、彼を小馬鹿にすることでチームの団結力も上がるという、社長の思惑がばっちりはまっていきます。

まあ、そのままうまく機能して終わったら、物語として成り立たないわけで、それからは徐々におかしな方向へ。

彼のドジぶりがある取引先の社長に気に入られてしまい、そこからどんどん「被取締役」の役目が果たせなくなっていきます。

社長は不機嫌になっていくわけですが、会社の業績としては上がるし、何とも微妙な事態に。

最終的にはたぶんこうなるだろうと予想していた感じで収まっていくのですが、私にはちょっとその辺りが納得できず。


ダメ男の鈴木が成長してがんばって正社員(他の社員と同じような社員)として再雇用される、というようになってほしかったのですが、どうも棚ぼた感が抜けない感じで終了。

結局、彼は何の努力もしてないまま、でも何となくハッピーエンドな終わり方。

う〜〜ん、なんか読み終わってもモヤモヤしてしまいました。

これからはきっと努力をしてがんばっていくだろうとは思えたので、それを信じて良しとするか!って感じです。


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タグ:安藤祐介
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2016年09月28日

森淳一「ランドリー」

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 森淳一 著
 「ランドリー」
 (双葉文庫)


僕の名前はテル。コインランドリーで洗濯物を見張る仕事をしてる。小さい頃の頭のケガのせいで、周りの人とうまく付き合えないみたいだ。ある日、忘れ物を届けたことがきっかけで水絵さんと知り合った。水絵さんは綺麗だけど、笑った顔を見たことがない。数日後、水絵さんは「私は変わる」と言って故郷に帰った。乾燥機にワンピースを忘れて。忘れ物は届けなくちゃ。僕は水絵さんの故郷に向かった―痛々しいほどピュアな男女の、切なすぎる物語。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

読み始めから、何が言いたいのかな?と思っていました。だんだん、テルと水絵の関係性がどうなっていくのかが気になって、気づけば読み終わっていました。

1時間もかからず読み終えてしまえる、軽い文章の作品です。

読み終わって、帯に「泣ける」と何度も書いてあるのを見てびっくり。どこで泣けるんだろう?・・と感じる私って、無感動な人なんだろうか?と不安になってしまいました。

どうやら、テルの無垢な優しさに感動するらしいのですが、う〜〜ん。まあ確かに優しいといえば優しいのですが、やさしさよりも純粋さが魅力な人で、それを周りの人がうまくカバーしてこその魅力だと思います。

そこがうまくカバーできていない感じがして、残念でした。特に、水絵には共感もできなければ、魅力も申し訳ないですが感じられず。テルの純粋さに惹かれて、彼女も心を入れ替えるのかと思えばそうでもなく・・。

最後は何とか反省してまっすぐに生きて行きそうにはなりましたけど、また何かきっかけがあったら戻ってしまいそうで心配な人です。


この作品は映画化されたそうです。ラストシーンは映像だと綺麗で感動しそうだと思いました。もしかしたら、映像でのどかな風景なんかを織り交ぜながら話が進む方が楽しめるのかもしれません。


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タグ:森淳一
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2016年09月12日

大鐘稔彦「孤高のメス 死の淵よりの声」

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 大鐘稔彦 著
 「孤高のメス 死の淵よりの声」
 (幻冬舎文庫)


練達の外科医・当麻鉄彦のもとに末期癌の患者が訪れる。苦慮の末、選択した抗癌剤が劇的に効き、患者はめざましい回復を見せるが、折しもその頃、日本癌治療学会では、癌と戦うなと唱えて一躍時の人となった菅元樹の発言をめぐり、シンポジウムが紛糾するのだった―。患者の為の真の医療とは何かを問う、シリーズ最新刊。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。シリーズ物とはいえ、12巻も出ているとは知らずに、面白そうだったので「本が好き」で献本申し込みしました。

私にとって初といっても良いほど珍しい医療物です。ドラマとかで見るのは好きなんですけど、小説は読まないです。理由は自分でも謎ですが。たぶん、難しいだろうと思うからでしょうけど。


話はいきなり誰か知らない人の遺骨を散骨する場面から始まります。シリーズを読んでいる人にとっては馴染みの人たちなのでしょうが、初めての私には知らない人ばかり。当麻というのが主人公だということはわかっていますけど。

そこから病院へ場面が移ります。当麻ドクターが勤務している琵琶湖湖畔の病院。やって来たのはおなかが張ってどうしようもなくなった女性。様々な検査を緊急に行った結果、癌であることが判明しました。珍しい癌だとわかり、しかもすでに末期の状態で、あまり長くはもたないだろうと推測されました。

今のままでは手術も難しいということで、効果のありそうな抗癌剤を投与。少しでも癌細胞が小さくなってくれれば手術もできるかもしれない、と少しの望みをかけることに。

その抗癌剤が彼女には劇的に効き目があり、あっという間に数値が安定していき、予想よりも早く回復して退院できることになりました。「奇跡だ」と病院のスタッフたちでさえも驚くような回復をみせたのでした。


彼女の治療をしている合間にも、病院なので次々と患者が訪れます。当麻ドクターはどうやら外科医の中で名医として有名な人なので、遠方からも患者がやってきます。しかも他の病院では断られたような難しいケースが次々と。

当麻ドクターは部下の医者たちをうまく教育しながら、次々と手術を成功させていきます。その手並は素人の私から見てもなかなかのもの。

手術のシーンも臨場感たっぷりで、ハラハラドキドキしながら読みました。


ただ、登場人物が多すぎて誰が誰だかわからなくなっていくのには困りました・・。シリーズを読まずにこの巻から読み始めた私が悪いのでしょうが、新たに登場したであろう人物のことも細かく説明されるため、いちいち過去に戻ったり回想したりして、ちょっと混乱する所がありました。本筋を見失いそうになる部分も。

でも当麻ドクターの人柄や手術シーンのかっこよさに感動している間に一気に読み進めることができましたし、気づけば終わっていたという感じがありました。

医療関係者ではないので、細かい医療用語はほとんど理解できませんが、それでも楽しむことができたのは良かったです。

シリーズを始めから読もうかな?と思う反面、12巻もあるのか・・と気後れしてしまっています。みなさんの感想を読んで考えようかな?


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2016年09月09日

北川恵海「ちょっと今から仕事やめてくる」

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 北川恵海 著
 「ちょっと今から仕事やめてくる」
 (メディアワークス文庫)


ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうとしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。なぜ赤の他人をここまで?気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出てきたのは、三年前に激務で自殺した男のニュースだった―。スカっとできて最後は泣ける、第21回電撃小説大賞<メディアワークス文庫賞>受賞作。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。題名に惹かれて買いました。


隆は、ある企業の営業マンとして働いていますが、上司や会社の方針と合わず、なかなか実力を発揮できずに悩んでいます。その日も上司からことごとくダメ出しをされ、頭ごなしに叱られ、落ち込んでいたため、何となくフラフラとホームから線路へと跳び下りそうになりました。

そのとき彼の腕をグッとつかんで引き戻した人物が、ヤマモト。ヤマモトは、隆の同級生だと言っていますが、隆は記憶にありません。他の同級生に連絡したところ確かに「ヤマモト」はいたらしい。

ということで、とりあえず信用して仲良くなっていく2人。仕事の後に呼び出して飲んだり、買い物に行ったりどんどん親密になりました。

仕事の愚痴を言うと、ヤマモトは「辞めたらいい」とあっさりアドバイスしてきます。「仕事を辞める」ということを考えもしなかった隆は衝撃を受けますが、ヤマモトに少しずつ説得され、とうとう辞める決心をします。

でもどうやら、ヤマモトというのは同級生ではないらしい・・ということがわかり、謎が深まっていきます。


とはいえ、ヤマモトの正体はあまり重要ではないというか、どんな人物だったとしても問題はなくて、それよりも隆が会社をどうやって辞めてすっきりと良い人生を送れるのか?の方が重要なので、ヤマモトのことは「救世主」的な存在として受け入れられました。

隆が仕事を辞めるシーンはかっこよかったですが、そんなにきちんと言えるならもっと早く言いたいことを言っていれば、もう少しラクに仕事ができたのでは?とも思ってしまいました。


仕事に悩んでいたり、上司や同僚との関係に疲れていたりする人にはぜひ読んでもらいたい作品です。人生において仕事って重要な物ですけど、人生を終わらせないといけないくらい悩むほどの価値はあるのかな?と、冷静に考えてもらいたいです。

肩の力を抜いて、ラクに仕事ができると良いですね。現実は難しいですけど・・。たまには辞める覚悟でズバッと言ってみるのも良いかもしれません。


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2016年08月25日

ブレイディみかこ「THIS IS JAPAN 英国保育士から見た日本」

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 ブレイディみかこ 著
 「THIS IS JAPAN 英国保育士から見た日本」
 (太田出版)


混迷する欧州の政治状況をYahoo!ニュースで伝えているブレイディみかこの日本取材記。−出版社HPより−


献本になっていたので、申し込みました。申し込み時に見たときは「英国保育士から見た日本の保育」みたいな副題が付いていたと思ったのですが、来て見たら違いました。

第3章に保育についても書かれていますが、それ以外は経済のことがほとんどでした。

私が興味があったのは、保育についてだけでした。ほかの所は理解力の無さもあって、よくわからない部分もたくさんありました。なので、感想を書けるほど読み込むことができず。

ということで、保育について。

一時、「保育園落ちた日本死ね!」とブログに書かれたことが話題となり、国会でも取り上げられるくらいの騒ぎとなりました。それくらい、日本では保育園に入ることが難しい状況です。


著者は、認可保育園をいくつか見学したわけですが、英国と日本で大人に対する子どもの人数の割合が多いことに驚いていました。日本では(自治体によって多少違いますが)大人1人に対して、0歳児は3人まで、1〜2歳児は6人まで、3歳児は20人まで・・と年齢ごとに割合が変わっていきます。

以前から思っていたのですが、この割合って誰が考えたんでしょう??現場の人間としては、明らかに多い割合だと思います。それでも決められている人数ですから、これを守って保育していくしかないわけです。そりゃ、重労働になりますよね。

英国では0〜1歳が3人、2歳で4人、3〜4歳で8人だそうです。1歳児も3人というのはうらやましいです。2歳でも4人だったらかなりゆっくり関われると思います。



更に、日本に「認可」と「認可外」の保育園があることに驚いていました。英国には「認可外」という施設はないそうです。これを読んだときは、全部国が運営しているんだと思ったら、そうではなくて、ただ誰が作るにしても役所に届け出をして許可をもらわないと罰則がある、ということだそうです。

取材相手に「誰も保育園を監視していないということですか?」と聞いたら「そうです」と答えたとか。

そこで私は「??」となりました。日本も「認可外」とはいえ英国と同じように、保育園を開いたら届け出が要りますし、毎年立ち入り検査が来て、問題があったら通知が来て改善しないと、場合によっては閉鎖させられることになっています。

英国のように前日に知らせて、次の日のやって来るということはないですが、それでも毎年現状の報告書を提出して、立ち入り検査を受けて、HPに結果が載せられています。

日本でいう「認可外」とは、ただ国や自治体から「補助金をもらっていない」保育園のことなんです。英国は4年に1度の検査だそうですが、日本は毎年検査があります。

日本の親御さんたちも知らない方がいるのかもしれません。結局、「認可外」とか「無認可」という名前がダメなんですよね。「園庭がない」とか「給食室がない」とかの理由で「認可」が受けられないわけで、大人に対する子どもの割合なども認可と同じです。ただ、補助金がもらえないせいで、保育料が高くなってしまうために敬遠されがちなんですよね。

認可外保育園を経営する側としては、良いことなし!って感じです。


英国のやり方が全て良いとは思えませんでしたが、とにかく日本は早急に保育事情を改善しないといけません。ただ保育園を増やすのではなく、育児休暇や子育て中の親が休みやすい状況を会社内で作ることなど、難しいことではありますがそれも急ぐべきだと思います。

「女性も活躍する社会」を目指すというなら、絶対に必要な保育事業。もっと現場の声や親になる人の声に耳を傾けて、本当に必要なことをやってもらいたいと思います。


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2016年07月12日

森沢明夫「夏美のホタル」

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 森沢明夫 著
 「夏美のホタル」
 (角川文庫)


写真家志望の大学生・相羽慎吾。卒業制作間近、彼女の夏美と出かけた山里で、古びたよろず屋「たけ屋」を見付ける。そこでひっそりと暮らす母子・ヤスばあちゃんと地蔵さんに、温かく迎え入れられた慎吾たちは、夏休みを「たけ屋」の離れで暮らすことに。夏空の下で過ごす毎日は、飽きることなくシャッターを切らせる。やがて、地蔵さんの哀しい過去を知った慎吾は、自らできることを探し始めるが・・・。心の故郷の物語。−裏表紙より−


この作家さんの作品は2作目。初めて読んだ作品と同じようにとても優しい文章で、優しい物語でした。さらっと読みやすく、短時間で読んでしまいました。


写真家志望の大学生・慎吾は、なかなか実力が認められずに軽いスランプに陥っていました。気分転換も兼ねて、彼女の夏美とバイクで出かけることに。トイレを借りるために立ち寄った山里の小さな店で暮らす母子に出会い、そこから彼らの人柄に惹かれ、夏休みの間を店の離れで暮らすことになりました。

山里での暮らしは、都会では味わえないことばかりで、2人ははまっていきます。何より、店のヤスばあちゃんと息子の恵三に心を癒され、たくさんのことを教えてもらい、逆に支えたりしながらの暮らしは新鮮でした。

恵三は、足が不自由であまり歩けないのですが、彼から教えてもらった川あそびの様子を写真に撮ることで、慎吾の方向性が見えたのです。

恵三は、店の前にあるバス停からバスに乗っていく子どもたちを地蔵のように優しく見送っていることから「地蔵さん」と呼ばれてみんなから愛される人ですが、彼には過去に悲しい出来事がありました。

それを告白されてからは、一層彼に惹かれていった慎吾と夏美でしたが、そんな幸せは長く続かないもので・・・。


前半の明るい雰囲気から一転、涙なしでは読めない展開が待っていました。私はそれを電車の中で読んでいたので、思いっきり泣けずにもやもやしてしまいました・・残念。泣かないようにするために流し読みするなんて!勿体ないです・・。

地蔵さんもヤスばあちゃんも本当に良い人で、何の欲もなく毎日心静かに暮らしている姿にほのぼのしましたし、憧れました。こういう心境になるまでには様々な苦労があったわけです。私もこういう風に穏やかに生きてみたいです。

最後まで静かな時が流れる優しい展開で、明るい希望がもてる終わり方でした。読み終わって幸せなため息が出る物語でした。

うまく感想が書けないのが悔しいです・・。


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タグ:森沢明夫
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2016年06月16日

遠藤彩見「給食のおにいさん 受験」

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 遠藤彩見 著
 「給食のおにいさん 受験」
 (幻冬舎文庫)


夢を叶えるためホテルで働き始めた宗だったが、一流の味を学校に提供する「ホテル給食」課に配属される。渋々向かった女子高で彼を待っていたのは、舌の肥えた我がままなお嬢様ばかり。豪華な給食にも「太る!」と全く手をつけない。元給食のお兄さんのプライドに懸けて、宗は彼女達のお腹と心を満たすことができるのか。大人気シリーズ、第四弾!−裏表紙より−


前作の感想の最後で「給食作りをしている様子が読めないのがさみしい」と書きましたが、今回も給食作っていました!でも、その学校というのがお嬢様学校で、しかも中学生。かわいくない生徒が多かった・・。

結局また給食作りするなら、前のままで良かったのに、と思えるくらい変化がない感じがしました。毛利も出てきて活躍しますしね〜。

前作までいた小学校では教師たちも協力的でしたが、今回の学校ではなかなか厳しい状況。「ホテル給食」を売りにしているはずなのに、残食が多くてこのままだったら打ち切り!という展開になっていました。「ホテル給食」をやめるのではなく、作っているホテルを変更するぞ!という状況。

その割には、教師は手伝ってくれないどころか、1人のシスターが校長よりも幅を利かせていて、何をやってもダメ出しされてしまいます。

閉鎖的な女子校、しかもお嬢様学校となると、生徒たちの感じる世界が狭くなるのも当然で、みんな人間関係に悩み苦しんでいます。中学生なのにかわいげのない感じなのはそのせいかもしれませんが、お金持ちに対する僻みなのか、同情できませんでした。

高級食材を使って、ホテルのシェフに作ってもらって「太るから」と食べないなんて、我がままが過ぎるでしょ!と腹の立つ場面が多かったですし、ささめや毛利がどうすれば食べてもらえるか?と心を砕くのが空しくて見ていられない感じでした。

で?結局ささめは今後どうするの?? 店を持つつもりはあるの? 彼の今後は気になりますが、次回もこんな感じで同じ学校の給食作りをするなら読むのはどうしようかな?と思ってしまいます。


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タグ:遠藤彩見
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2016年06月13日

大沼紀子「真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者」

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 大沼紀子 著
 「真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者」
 (ポプラ文庫)


真夜中に開店する不思議なパン屋「ブランジェリークレバヤシ」に、手から白いハトを出す怪しげな中年男が現れる。それが店を揺るがす大騒動の幕開けだった。一方、母親と久しぶりの対面を果たした希実だったが、その隣にいたのは実に意外な人物で・・。人気シリーズ第5弾!!−裏表紙より−


このシリーズ、今までもそこまでページ数は少なくなかったのですが、今回はかなりぶ厚くて持ち歩くのが嫌で、地道に家で読み進めました。そのせいもあるのか、なかなか話に入り込めず。読み始めてから時間がかかりました・・。

前作も重かったと思うのですが、今回もかなり重い内容。当事者である希実は意外とクールな部分もあるのですが、周りがバタバタしすぎ。ある意味不器用な人たちで微笑ましいともいえるのですが、話の流れが悪くなっているのは彼らのせいでは?と思うと、イライラすることもありました。

過去に色々あった人が多いせいか、ずっと暗い記述が続き、こんな不幸がありました”私はこんなことで悩んで落ち込んでこうなりました”が多くて読みにくかったです。

もっと省けるところがあったのではないか?と思います。


今回は希実の出生の秘密が明らかにされる回で、父親が誰なのか、二転三転する展開でした。相変わらず軽いノリの母親にはついていけず。希実が何度も「母親はこういう人だから」と諦めるのがかわいそうでたまりませんでした。

しっかりしろよ!と揺さぶりたくなるような情けない母親。「意外と愛情があったようで良かった」という感想を書かれている方がおられましたが、私はそうは思えませんでした。希実のために、というよりあくまでも自分自身のために行動しているようにしか思えません。


たぶん、シリーズは後1作あるのでしょうが、今回で終わりでも良いのでは?と思えるような内容でした。これ以上何も起こらないことを願います・・。


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タグ:大沼紀子
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2016年06月06日

奥田英朗「家日和」

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 奥田英朗 著
 「家日和」
 (集英社文庫)


会社が突然倒産し、いきなり主夫になってしまったサラリーマン。内職先の若い担当を意識し始めた途端、変な夢を見るようになった主婦。急にロハスに凝り始めた妻と隣人たちに困惑する作家などなど。日々の暮らしの中、ちょっとした瞬間に、少しだけ心を揺るがす「明るい隙間」を感じた人たちは・・。今そこに、あなたのそばにある、現代の家族の肖像をやさしくあったかい筆致で描く傑作短編集。−裏表紙より−


サニーデイ」「ここが青山(せいざん)」「家においでよ」「グレープフルーツ・モンスター」「夫とカーテン」「妻と玄米御飯」の6編収録されています。

題名の通り、家の中で起こる様々な日常を描いた作品で、特別大きな事件が起きるわけではないのですが、「あるある」「わかるわ〜」というような誰にでも起こりそうなちょっとした出来事が面白おかしく書かれていてサクサク読み切ることができました。

どれも結構面白かったのですが、特に気に入ったのは「サニーデイ」「ここが青山」「家においでよ」です。

サニーデイ」は子どもも少し大きくなって手が離れるようになり、毎日時間ができた主婦の話です。彼女は家族から感謝もされない日々に怒りというか虚しさを感じるようになっています。ふと家を片付けようと思ったときに勧められたネットオークションにどんどんはまっていきます。迅速な対応をしたことで、相手から高評価をもらえることに快感を覚え、家を片付ける目的から褒められたい、評価されたいという欲求を満たす目的へと変化していきます。

売りたい物なんて意外と早くなくなるもので、そのうち夫の大事にしている物にまで手を出すのは納得できます。満たされない日々を埋めるためのオークション。何だか妙に共感してしまいました。


ここが青山」は突然会社が倒産して失業した男性の話です。うろたえてしまうはずの出来事ですが、意外とあっさり受け止めた彼。そして何より冷静だったのはその妻。あっさりと結婚前まで働いていた会社に復帰することを決め、当然のように働き始めます。夫はあっさり主夫に。この話では何より奥さんが素敵でした。こんな風に冷静に対処できたらどんなに良いか。

ちなみに「ここが青山」というのは「人間至る処青山有り」という言葉から来ています。失業した夫が周りの人から何度も聞かされる言葉です。「世の中は広く、死んで骨を埋める場所ぐらいどこにでもあるのだから、大望を成し遂げるためにならどこにでも行って、大いに活躍するべきであるということ」だそうですよ。


家においでよ」は離婚を考えた男性が、妻の出て行ったガランとした我が家を見てインテリアや趣味などの道具を自分の好きなようにそろえていく話です。この話を読んでも妻がどれほどの力を持っていたのかはっきり書かれていないのですが、夫のはじけぶりを読むとよほど我慢させられていたんだな〜と感心するほどでした。

既婚男性にとっては憧れの話なんじゃないかな? 独身の私でもちょっとうらやましくなりました。


家シリーズとしていくつか出ているようなので他も読んでみたいです。


最後に自分が気になって調べた言葉を書いておきます。
ロハスとは? 「LOHAS」と書く、Lifestyles of Health and Sustainability の頭文字をとった略語。健康と環境、持続可能な社会生活を心がける生活スタイルのこと。


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タグ:奥田英朗
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