
東野圭吾 著
「毒笑小説」
(集英社文庫)
習い事や塾、家庭教師との勉強・・と忙しい孫に、なかなか会えなくて寂しい祖父。そんな彼の願いを聞いた麻雀仲間の老人たちは、ある計画を実行することにした−「誘拐天国」他に「エンジェル」「手作りマダム」「マニュアル警察」「殺意取扱説明書」「つぐない」「誘拐電話網」など計12編のブラックな笑いを収録した短編集。
仲間が孫に会いたがっているのを知って、知恵を絞った仲間たち。孫を“誘拐”することを思いつきます。
老人たちが何を考えてるんだか・・って、呆れてしまうような話なのですが、最後のオチがまた笑える・・というかちょっと悲しいんですよね。
どの話もぷっと噴出すような、ちょっとぞくっとするようなブラックな笑いが起きるのですが、私が特に好きなのは「マニュアル警察」です。
殺人事件を起こしてしまった男性が、近くの警察へ自首しに行きます。ところが警察はマニュアルに凝り固まっていて、自首してきた彼をどう扱って良いのかわからず、たらい回しにするのです。
まだ死体も見つかっていないのに、自首だなんて・・と迷惑そうにする警官たち。まずは事件を通報するところからさせられるのでした。
自首した男性と、警官たちのやりとりが妙に笑える話です。もしこんな警察になったら、ややこしいだろうな〜と思うとぞっとします。
「つぐない」は、ちょっと優しい気持ちになれるようなしんみりした話です。子どもの頃に脳の手術を受けた男性がピアノを習うのですが、その必死な様子に周りは不安を感じるほど。
でも彼の気持ちを知ると納得というか、何となく優しい気持ちになれました。
「誘拐連絡網」は、1人暮らしの男性の所にかかってきた電話から始まります。子どももいない彼に電話相手は「子どもを誘拐した」と言うのです。笑いとばす彼に、相手は「お前の子どもじゃないけど誘拐した」と言います。見知らぬ子どもを助けるために金を出せというわけです。
電話を受けた彼は、他の人に電話して同じ要求をすることを思いつき、連絡網のように身代金要求は繋がっていくのでした・・。
「エンジェル」は、天使のような見た目の新しい生物が見つかった話なのですが、それを見た人たちの反応が想像できて、ぞっとしながらも笑えます。
なかなか面白い短編集でした。
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