2025年01月10日

白蔵盈太「あの日、松の廊下で」

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 白蔵盈太著
 「あの日、松の廊下で」
 (文芸社文庫)※電子書籍


「殿中でござるってばァ・・」そう発することになってしまった旗本・梶川与惣兵衛は、「あの日」もいつもどおり仕事をしていた。赤穂浪士が討ち入りを果たした、世にいう「忠臣蔵」の発端となった松の廊下刃傷事件が起きたひである。江戸中を揺るがす大事件の目撃者、そして浅野内匠頭と吉良上野介の間に割って入った人物として一躍注目されるようになった彼は、どんな想いを抱えていたのか。江戸城という大組織に勤める一人の侍の悲哀を、軽妙な筆致で描いた、第3回歴史文芸賞最優秀賞受賞作。−出版社HPより−


初めましての作家さんです。

日本人なら知らない人はいないであろう有名な「忠臣蔵」の元となった「松の廊下刃傷事件」のことが描かれています。


忠臣蔵のドラマは色んな物を見てきましたが、「忠臣蔵」としては前段階の部分になるので大抵はサラッと流されてしまう部分です。浅野内匠頭が吉良上野介に小言を言われている・・我慢を重ねたけど限界!・・松の廊下で切りつける!・・「殿中でござる」と止められて・・一方的に切腹させられお家断絶。

この一連の流れが10〜20分くらいでサラッと流されてしまいます。

忠臣蔵としてはその後の浅野家の家臣たちの様子がメインになりますから仕方ないのかもしれませんが、そういえば何で浅野内匠頭は吉良上野介に切りつけたんだろう? いじめられたっぽいけどどうしていじめられたんだろう?と聞かれたらよく知りませんでした。

まあ興味もなかったんですけどね。

この作品では、なぜこの事件が起きることになったのか?をメインに、そこまでの2人の様子が描かれています。この話を進めていくのは「殿中でござる」と叫んで浅野内匠頭を止めた、梶川という旗本です。

彼の目から見た2人の様子が描かれます。


ここに描かれていることが全て本当のことなのかはわかりませんが、もしこれが事実なのだとすれば、吉良のことも浅野のこともイメージが変わりました。

吉良はもっと我儘で、自分を中心に世界が回っているかのような自己中的な人物だと思っていました。下の人間を見下して、常に俺は偉いんだから言うことを聞け!というタイプかと。

浅野のことは田舎の出だから、江戸という場所に圧倒されているせいで大人しくなってしまっている人物だと思っていました。言いたいことを言えないからこそうっぷんがたまって爆発したのかと。


ところが意外と吉良は周りのことも考える人物だったとわかりましたし、浅野はおとなしいばかりではなく意外と言いたいことを言っていることがわかりました。

ではどうして事件は起こったのか?

簡単に言うとお互いの気持ちのすれ違いだったということです。言いたいことを言っているようで、結局は今でいう会社の上司と部下みたいな関係なので、上司は上司で気を使ってやんわりと注意しますし、部下は部下で言いたいことの半分は飲み込んでしまう。

そんな2人の間に立って関係を取り持とうとしたのが梶川です。彼の苦労は読んでいてもしんどくなるほどでした。ただもう少し何とかならなかったんだろうか?とイライラする部分もあります。

でもまあ彼は彼で中間管理職的な立場というか、浅野が部下ではないので更に大変な状況。


もっと早めに誰かに相談出来ていればこんな事件は起きなかったのかもしれません。そうなると「忠臣蔵」もなくなるわけですが。


個人的にあまり興味が無かった事件ですが、意外と楽しく読めたので良かったです。とりあえず当事者2人の印象は大きく変わりました。


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タグ:白蔵盈太

2024年11月13日

砂原浩太朗「いのちがけ 加賀百万石の礎」

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 砂原浩太朗 著
 「いのちがけ 加賀百万石の礎」
 (講談社文庫)※電子書籍


加賀藩の祖・前田利家が流浪した若きころから大名になった後まで付き従った、股肱の臣・村井長瀬。桶狭間、長篠、賎ケ岳・・名だたる戦場を駆け抜け、利家の危難を幾度も救う。主君の肩越しに見た、信長、秀吉、家康ら天下人の姿。命懸けで忠義を貫き通し、百万石の礎を築いた男を、端正な文体で魅せる傑作。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

読みやすい文章だったのですが、長すぎてなかなか読み終わらず。壮大な話だったな〜と思ったのですが、実は短い期間の、狭い場所の話なんですよね。


前田利家って名前はよく知っていますし、戦国時代の小説やドラマなどでも必ずと言っても良いほど登場する人物ではありますが、はっきり言って誰の家臣だったのかも、どんな人物だったのかも知りませんでした。

戦国時代は結構好きなんですけど・・


そんな、名前は知ってるけど何をやってるかは知らない、前田利家の家臣・村井長瀬の人生が描かれています。人生と言っても、すでに利家の家臣になっているので幼少時代は出てきませんが。

彼の目を通して、前田利家がどんな人物なのか?が描かれていきます。

始めは織田信長の家臣でしたが、どうやら破門されたようです。それには理由があって、確約があるわけではないですが、いずれ家臣に戻れる状態でした。でも村井からすれば、本当に戻れるのか?と不安になる程度の約束で、彼は心配でたまりません。

この時代はいかに戦で功績をあげるか?で出世が決まるので、利家は家臣と共に大将首をとったり、信長の元へいち早く駆けつけたりすることでアピールをしていました。

普通であれば、功績をあげなければ!と野心むき出しにして必死で戦うものでしょうが、利家は静かな闘志というか、闘志すら見せないような穏やかな人物に思えました。でも実際には戦の腕も高く、志も高く、家臣に対しては優しくも厳しいというなかなか魅力的な人物で、村井が惚れるのもよくわかる人でした。

この時代の武士らしく、多くを語らないので、実際の思いはどうなのかわかりませんが、ただ主君のために、家臣の為に、と必死で生きていたようです。


信長亡き後は、秀吉に、家康に・・と多くの武士と同じ道を辿っていきます。武士としての人物像はもちろん、時代の流れもしっかり見て、どちらに付くのかを冷静に考えることも出来るようです。


なかなか魅力的な人物なのだと思えた利家。今後はもう少し注目していきたいです。


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タグ:砂原浩太朗

2024年02月06日

千早茜「しろがねの葉」

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 千早茜 著
 「しろがねの葉」
 (新潮文庫)※電子書籍


戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と秘められた鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は意気阻喪し、庇護者を失ったウメは、欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出された―。繰り返し訪れる愛する者との別れ、それでも彼女は運命に抗い続ける。第168回直木賞受賞作。−出版社HPより−


初めましての作家さんです。読書メーターで献本に当たったので読んでみました。電子書籍が当たったのは良いのですが、いつも使っているアプリと違ったのであわててダウンロードすることになり、焦りました。でもお陰でアプリが2つになったので、いつもの方に無い作品をこっちで探してみることが出来るか?とちょっとワクワク。



読書メーターで年間ランキングで上位入賞しただけあって、読み応え十分な作品でした。大河ドラマを見終えたかのような重量感。

舞台となる場所は石見銀山。ほぼそこから動かないので舞台は変わらないのですが、人物の入れ替わりがあるせいか飽きずに読めます。ただ、舞台が舞台だけに終始暗い場面が続きます。坑道以外の場面が多いのに、ずっとどんより暗い感じ。常に曇り空の薄暗い山の中というイメージがしていました。


主人公はウメという女性。子ども時代から始まる彼女の人生が描かれます。物心ついたころから夜目が効いていて、暗闇の中でもよく見えていました。そういう始まり方をしたので、銀山に辿り着いて拾われた時にはきっと女性でありながら、銀山で頭角を現して・・的な展開になるのだろうと思ってしまいました。

が、素人が考え付くような展開にはなりませんね。

そういうことよりも、ウメが女性として生きていく大変さを噛み締める所が大きなテーマとなっていて、同じ女性としては苦しい場面がありすぎました。

普通の社会で生きていくのも大変なのに、銀山という男性の社会で女性が生きていくのは想像を絶する大変さです。坑道に入るのも許されない存在の女性。子どものころはまだ良いのですが、大人になると全てが変わります。

銀山での女性の役割は、ただひとつ。坑道に入って銀を発掘出来る男子を産むこと。

失礼な話です! それに対してウメは憤りますし、反抗しようとするのですが、どうしても大人の女性になってしまうと抗えなくなるんですよね。

坑道に入れないのだから、せめて夫や息子のことだけでも守りたい、健康で生きて欲しいというただそれだけに生きることになります。それだけでも十分立派な仕事ではあるのですが、何だか報われない感じがあります。

特にウメはせっかく良い才能があるのに勿体ない気もします。


ウメに関わる男性たちの生き様と、ウメの人生。読みながら目を背けたくなる場面もあり、読み終わるとかなり疲れてしまいました。読み応えあったと思うのですが、もう一度読みたいかというと辛過ぎて嫌です。

でもきっとウメは幸せだったのだろうとは思えました。


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タグ:千早茜

2024年01月25日

知野みさき「深川二幸堂 菓子こよみ<二>」

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 知野みさき 著
 「深川二幸堂 菓子こよみ<二>」
 (大和書房)※電子書籍


光太郎と孝次郎の兄弟が営む菓子屋「二幸堂」。如才なく得意先を開拓する美男の兄と、不器用だが才のある弟の作る菓子は、江戸深川にしっかりと根を下ろしはじめた―。王子のせせらぎのような水羊羹「壬」、生姜の風味爽やかな「夕凪」、香ばしさと舌触りが絶妙な栗饅頭「日向」、瑞兆を映す祝い菓子「冬虹」・・。孝次郎の作るとびきりの菓子が、縁を言祝ぎ、幸いを呼ぶ―。江戸の菓子屋を舞台に描かれる極上の甘味と人情と、ままならぬ恋。兄弟の絆と人々の温かさに涙溢れる珠玉の時代小説、待望の第二弾!−出版社HPより−

一作目からかなり深川に根付いてきた感があった二幸堂。

目立ってくると邪魔が入ってくるものです。

弟・孝次郎が元々奉公していた菓子店からの嫌がらせがいくつか。あちらも店主が変わったりして色々問題があるようです。

自分の店をたて直すことより、他人を蹴落とすことを考えている時点で、大したことない店なんですけどね。


元の奉公先から自分の弟弟子のような存在の人たちが追い出されてしまい、孝次郎を頼ってきます。二幸堂で雇えたら良いのですが、小さな店ですし、すでに女性を一人雇っているのでなかなか難しい状態でした。

店を大きくすることも考え、今の場所から近い所で良い出物はないか?と、兄・光太郎も探しているのですがなかなか見つかりません。

でも追い出された理由も納得できませんし、彼らの人柄はとても良さそうなので応援したくなります。

彼らがどうやって助けられたのか?は読んでもらったら良いのですが、本当に良い解決が出来て良かったと思えました。


そして、私があまり読みたくない恋の部分は、相変わらずもどかしい! 兄は何とかなりそうではありますが、弟の方がじれったい!

ウジウジ悩むくせに、やることやって、結局どうしたいのか!と頭を叩きたい気分になります。

この部分はきっとしばらく続くのでしょう。そこはなるべく真剣には読まないようにしたいです。


今回も問題が多発し、店どころではないような事態もありますが、相変わらず美味しそうなお菓子を生み出していく孝次郎の腕は惚れ惚れします。大店の主人などにも気に入られているので、これからもっと繁盛していくことでしょう。

今後の展開も楽しみです。


<深川二幸堂>
「一」


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タグ:知野みさき

2023年06月29日

池波正太郎 他「池波正太郎と七人の作家 蘇える鬼平犯科帳」

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 池波正太郎 他著
 「池波正太郎と七人の作家 蘇える鬼平犯科帳」
 (文春文庫)※電子書籍


「鬼平」復活!逢坂剛は「平蔵シリーズ」の特別版、上田秀人は武家という官僚社会で生きる若き平蔵の苦悩を、諸田玲子は妖盗・葵小僧と鬼平の再対決、風野真知雄は「耳袋秘帖」鬼平版。門井慶喜が木村忠吾の食欲の夏を描けば、土橋章宏は平蔵と料理人の味対決、梶よう子は史実の長谷川平蔵に迫る。本家も自選短編で特別参加。−出版社HPより−


大好きな「鬼平犯科帳」の鬼平こと長谷川平蔵が蘇える!? これは読まずにいられないでしょう! ということで読みました。


参加されているのは、逢坂剛、諸田玲子、土橋章宏、上田秀人、門井慶喜、風野真知雄、梶よう子の7名。見覚えのある名前ばかりですよね。

それぞれの作風にあった鬼平が描かれていたのでしょう。読んだことがない方もおられるので不明ですが。

これを「鬼平」だと思わずに読むと、面白かったと思います。池波正太郎の鬼平のファンだとちょっと辛い気持ちにはなりました。


特に面白かったのは土橋章宏「隠し味」 これはちょっと鬼平に近い雰囲気ではありました。盗賊ではありますが、きちんと反省した者は助けるという鬼平らしい温情の所が良かったです。

門井慶喜「浅草今戸橋」 私が大好きな鬼平シリーズの同心・木村忠吾が主役となっていて、こういう話も面白かったです。久しぶりに忠吾に会えた気がして嬉しかったです。

風野真知雄「石灯籠」 本家でもこういう話あったな、と思いながら読んでいたら、昔話として出てきました。懐かしい気持ちになれました。


初めて読んだ作家さんもおられましたが、全て読みやすくて面白く読み切りました。ただ、これが「鬼平」か?と言われるとそれは違うな〜と。

最後に本家の鬼平が収録されていたので、余計にその思いは強くなりました。でも、最後に池波正太郎さんの短編が読めたのが本当にうれしかったです。また改めて読みたくなるくらいでした。


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2023年04月20日

知野みさき「深川二幸堂菓子こよみ」

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 知野みさき 著
 「深川二幸堂菓子こよみ」
 (大和文庫)※電子書籍


「餡子だけじゃつまらねぇ。菓子を作れよ、孝次郎ー」深川で菓子屋「二幸堂」を始めた兄・光太郎と弟・孝次郎。ほんのり甘酒香る薄皮饅頭「斑雪」、桜の花弁を模した上生菓子「恋桜」、黄身餡が贅沢な「天道」と十四夜の月の如く控えめな甘さの「幾望」、柳の青葉が風情涼やかな錦玉羹「春の川」、薄紅色の白餡大福「紅福」。ー不器用な職人・孝次郎の作るとびきりの菓子が、人と人とを繋げ、出会いをもたらし、ささやかな幸福を照らし出すー。江戸の菓子屋を舞台に描かれる、極上の甘味と人情と、つたない恋。兄弟の絆と店を支える人々の温かさに心震える珠玉の時代小説!−出版社HPより−


物語の始まりは火事の様子から。逃げ出したはずの兄が大事な道具を取りに火の中に飛び込みます。それを助けるために弟も戻り、火事に巻き込まれてしまいます。そこへやって来た父親。彼は2人が火に飲まれているのを見て、弟に「すまない」と言って兄を助けようとします。何とも切ない始まり方です。

結局、兄弟も父親も助かったことが次の話でわかるのですが、危機的状況の中で、2人の息子のうち兄だけを助けようとした、弟を見殺しにしようとした父親の心境を思うといたたまれません。もちろん、謝られて置き去りにされそうになった弟の気持ちも辛い。でも弟は父親に対して何の恨みも抱いていませんし、兄を助けようとした父の気持ちがわかっていました。兄のことも恨んではいません。

2人とも不器用だったせいで話し合うことが出来ず、何となく気まずい雰囲気のまま父親が他界してしまいます。そこまでが何とも切なかった・・。かなり短縮して圧縮して語られるのでページ数は少ないですが。


物語のメインは、弟が奉公に出ている店から兄が引き抜いて来て一緒に店を始める所から始まります。いつの間にか奉公に出ていた弟。ここは突然の展開にちょっとびっくりしました。しかも、奉公先でかなり年月が経ち、和菓子職人として良い腕を持っているのに、新しい店主に嫌がらせをされて餡子しか作らせてもらえなくなった所から始まります。なぜ嫌がらせをされているのか?などの事情も足早に描かれています。読者としてはそこは同情するよりも「へえ〜そうだったんだ」という程度の感想しか出ないです。

そして、兄が迎えに来て和菓子店を兄弟で開くことに。兄・光太郎と弟・孝次郎で「二幸堂」良い名前です。数年間餡子しか作らせてもらえなかった孝次郎が張り切って和菓子を作って、光太郎が持ち前の人なっつこさと明るさで売っていきます。

お互いに気を使いながら、でも言いたいことを言い合うようにしてうまく店を切り盛りしていく2人。余裕が出来てからは見習いを兼ねて従業員も雇えるようになりました。その女性が良い味を出していて、一気に好きになりました。

彼女も入れてますます順調な二幸堂。色々と問題は巻き起こりますが、美味しそうな和菓子と、兄弟の人柄、お客さんの話など面白い部分がたくさん。

恋愛模様が鼻に付きますが、まあこれくらいなら何とか我慢できそうです。

まだシリーズは続いているようです。早めに続きを読んでいきます。


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タグ:知野みさき

2022年06月06日

神楽坂淳「うちの旦那が甘ちゃんで 3」

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 神楽坂淳 著
 「うちの旦那が甘ちゃんで 3」
 (講談社文庫)


江戸で「九両泥棒」というものが流行っていた。情報は入るが、盗難届は出ない。「十両以上の盗み」は打ち首、九両なら遠島。ぎりぎりの線を狙った盗賊だ。しかも、盗みに入るのは繁盛している料理屋ばかりらしい。風烈廻り同心の月也は、沙耶と料理屋を開いて囮捜査をすることに・・。大好評書下ろし時代小説。−裏表紙より−


2作目も読んだはずですが感想を載せていなかったようです。すでに内容は覚えていませんが。

相変わらずほのぼのとした雰囲気の話です。事件は起こるわけですが、そこまでひどい物ではないということと、同心であるはずの月也がのんびりしているのも原因でしょう。

お役目はしっかりこなしてはいるのですが、元々ほんわかとした雰囲気のする人なので、どうしてもふんわりとした話になってしまいます。


今回も小者の役目をはたしている妻の沙耶が目覚ましい活躍を見せます。本来であれば同心である月也が考えるべきことも、彼のいないところで考えて行動に移します。

沙耶は気配りの出来る人なので周りが手を差し伸べてくれて、彼女も実はあまり行動していない感じです。ある程度の考えを誰かに言うと、周りが具体化して実行してくれる。

羨ましい人物です。それだけ人間が良いということなのでしょうけど。


今回の事件は、かなり大掛かりな仕掛けで解決しましたけど、そこまでやらないとダメだったか?と後になると思いました。それくらいやった方がエンタメ性はありますけど。


巻の終わりには次作のプロローグ的な物が描かれているようです。次がいつ読むかわからないので、それまで読まずにおいておくことにしました。次の巻を読む前に読むつもりです。


<うちの旦那が甘ちゃんでシリーズ>
「うちの旦那が甘ちゃんで」


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タグ:神楽坂淳

2022年03月10日

中島久枝「湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 三日月の巻」

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 中島久枝 著
 「湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 三日月の巻」
 (ポプラ社文庫)※電子書籍


如月庵は上野広小路から湯島天神に至る坂の途中にある、知る人ぞ知る小さな宿だが、もてなしは最高。気働きのある部屋係がいて、板前の料理に舌鼓を打って風呂に入れば、旅の疲れも浮世の憂さもきれいに消えてしまうと噂だ……。
そんな如月庵の離れに、謎の人物が逗留しているらしい。離れは女中頭の桔梗がつきっきりで世話をしているが、どうやら桔梗の過去にも関わりがあるようで……。
大好評お江戸人情シリーズ第2弾!
−出版社HPより−


久しぶりに読んだので、1作目のことはほとんど忘れていました。それでも特に困ることなく読めて良かったです。

ちょっと「お勝手のあん」シリーズと混同しそうではありますが。


如月庵は小さな宿。そこで繰り広げられるお客と部屋係との物語が描かれています。部屋係としてはまだまだ新米の梅乃は、1作目と同じようにお客さまに対してやりすぎなくらい世話を焼きます。

普通そこまでやるか?というか、もし自分が客として泊っていたらそこまでやられたら逆に嫌になりそうと思うくらい。


お客さまの家族の問題にまで首を突っ込んだり、お客さまの代わりに料理屋に行ったり、お客さまの代わりに友人を説得しに行ったり。
さすがにそこまでやるか?と言われてしまうこともあるのですが、最終的にはみんな感謝するということはこれで良いのかもしれませんが、本当に心配になります。

宿に泊まっただけの人にそこまでするのが「お・も・て・な・し」だとすれば、働けないなとつくづく思います。


今回は女中頭の過去にも少し触れていますし、謎めいたお客さまもいて少し盛り上がる所もあり、1作目よりもサクサク読めました。

まだ続くようなので、また機会があれば読むつもりです。

<如月庵シリーズ>
「お宿如月庵へようこそ」


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タグ:中島久枝

2021年11月02日

佐々木裕一「姫のため息 公家武者信平ことはじめ(二)」

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 佐々木裕一 著
 「姫のため息 公家武者信平ことはじめ(二)」
 (講談社)※電子書籍


京都の公家から江戸の武家へ。前代未聞の転身を遂げた信平。婚儀を結んだ妻・松姫は紀州徳川家の姫君だった。藩主は信平が千石取りの旗本になるまでは輿入れをさせない心づもりだが、松姫はひと目見た信平を忘れられず……!(「姫のため息」)実在の公家武者が秘剣で成り上がる時代小説、始まりの物語第二弾!−出版社HPより−


前作で本人があまり意識しないうちに結婚することになった相手・松姫が再び登場します。周りは2人がお互い会ったこともなく顔も知らないと思っていますが、実はお互い名乗らないまま会っていましたし、松姫の方は信平のことを認識していて、更には好ましく思っていました。

信平の方は綺麗な女性に会ったとは思っていますし、ちょっと好きかも?という感じになっていますが、その人が松姫だとは知りません。こういう展開ってもどかしいです・・。

でも松姫はかなり積極的なご様子。なのでうまく父親を説得して結婚までもっていきそうではあります。


この2人の恋はともかく、松姫の父親はある騒動に巻き込まれて行くため、だんだんときな臭い雰囲気に。父親に直接手を出すのは難しいから娘を何とかしようと考えている悪者が。

そういう安易な発想をするのがものすごく腹が立ちます。だからあんたたちは出世できないんだよ!と言ってやりたい気分になります。

そのおかげで松姫と信平が良い感じな雰囲気になっていくわけですから、良かったのかもしれませんけど。


表題作以外の話でも、信平は優男に見せつつ強いという場面がたくさんあり、爽快な終わり方をしてくれます。家臣というか、お目付け役の2人も信平に文句を言いながらも好きになってきているようですし、2人とも強くもあるのでカッコいい場面もあり彼らのことも好きになってきました。

松姫も可愛い性格をしていますし、今後はどうなっていくのか気になります。

まだまだ話は続くのですが、こんな感じでのんびりと過ごしながら悪者を倒していくのでしょうね。まるで暴れん坊将軍のようです。いや、暴れん坊将軍をかっこよく若くして、公家の格好をしないといけないですね。


先は長そうですが少しずつ追いかけていきます。


<公家武者信平ことはじめ>

「狐のちょうちん」


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2021年07月12日

佐々木裕一「狐のちょうちん 公家武者信平ことはじめ(一)」

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 佐々木裕一 著
 「狐のちょうちん 公家武者信平ことはじめ(一)」
 (講談社文庫)※電子書籍


十五歳の公家・信平は仏門に入ることを嫌い、将軍・家光の正室である姉の孝子を頼って江戸に出た。五十石の貧乏旗本暮らしを始めた信平は、清き心と秘剣の腕で、江戸を大きく揺り動かしていく。 公家から名門・鷹司松平家を立ち上げた実在の傑人を描く大人気シリーズ、その始まりの物語が大幅に加筆し登場!−出版社HPより−


ずっと気になっていたシリーズでしたが、既刊冊数が多くて手を出すのをためらっていました。この度、新装版として再版されたのでとりあえず電子書籍で購入してみました。


結果、面白かった!

読んで良かったです。今後も追いかけていきたいシリーズになりました。


時代小説ですが、軽くサラッと読める内容です。


主人公は公家の出身である松平信平。松平という姓でわかる通り、身分は高いですが、家を継げることはないので、仏門に入るしかない状態でした。でもそんな生活を嫌がった信平は将軍の正室である姉を頼って江戸に出ました。

一応、正室の弟ということで受け入れてはもらえますが、姉の立場も微妙な感じで、結局は五十石というお安い給料で武士になることに。

使用人も2人つけてもらえましたが、1人は老武士の葉山、もう1人はお初という女性で家事全般を引き受けるはずが何やら怪しい雰囲気です。結局、2人とも幕府から遣わされたお目付け役ということなので、かなり窮屈な生活を強いられるはずでした。

でも信平の性格がとてものびのびしていてあまり些末なことにこだわらないので、お目付け役に見守られながらもマイペースに生活していきます。

特にお役があるわけでもないですし、出世欲も無い信平は毎日町をぶらぶらして暮らしていきます。そんな日常に起こる様々な問題に立ち向かっていくのがこの物語の主軸になるわけです。


1冊の間に数年が経つのですが、数年経つとは思えないくらい姿も言葉使いも変えない信平は、いつまでも自分のことを「まろ」といいますし、公家の衣装を着たままうろつくので、ちょっとした有名人になりました。

見た目もカッコいいということなので、女性は放っておかないようですが、信平自身は興味がなさそうです。

かっこよくて剣の腕もたつ信平。彼の活躍が今後も楽しみです。

少しずつ追いかけていこうと思います。


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タグ:佐々木裕一

2021年04月22日

尾崎章「替え玉屋 慎三」

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 尾崎章 著
 「替え玉屋 慎三」
 (祥伝社文庫)



表向きは評判の髪結い。その裏稼業は、巧みな化粧で人を他人そっくりに仕立て上げ、機知と騙りで悪を退治する「替え玉屋」―お武家嫌いの町人慎三は、ある小藩の窮状を聞き、渋々腰を上げる。筆頭家老一派による米横流しの絡繰りを暴いて糾弾すべく、死んだはずの男の替え玉を国許に向かわせ…。慎三の仕掛ける二重三重の罠が悪を追いつめる、痛快時代小説!書下ろし。−裏表紙より−


先に2作目から読んで面白かったので、1作目に戻ってみました。主人公・慎三がなぜこんな稼業を始めたか?がわかるかと思ったのですが・・。

結局そういう謎の部分は謎のままで、もちろん慎三の過去も秘密のままでした。その辺りは少しずつ明らかにしていくんでしょうね。


今回の依頼は、武家からでした。武士が嫌いな慎三ですが、依頼内容を聞いて引き受けることに。

その内容は、時代小説や時代劇のファンなら、「はいはい、ありがちなやつね」って感じです。藩の中の一派が悪事を働いて、でもその中心人物が藩の中でも重要な役についているので誰も反抗できない・・というパターン。

そしてヒーロー登場! このままではいけない!と勇気をもって、命を懸けて立ち上がる人がいるんですよね。そして、そのヒーローは悪者たちによって殺害されてしまう。

でもそれで終わってしまったら、悪が勝ってしまうので、必ずその遺志を継ぐ人が現れます。

今回は遺志を継いで立ち上がった人たちを助けるのが依頼。うんうん、よくあるやつね・・と思うはず。普通の時代小説なら、ものすごく腕の立つ剣客を用心棒にして、その剣客がバッサバッサと敵を倒して行くのですが、この小説では違います。

ここで「替え玉屋」という意味が出てくるわけです。どうやって依頼を成し遂げたのか、更に痛快なこともたくさんあるので、そこは読んでのお楽しみということで。


主人公・慎三はまだキャラクターがわかりにくいですが、他の人たちは魅力的です。代筆屋・文七、元盗人・辰吉、剣客・新之丞。彼らの協力なしでは依頼を成し遂げられません。慎三の理解者でもあり、熱くなってしまうのを抑えたり、役目がたくさんあって、大活躍です。


シリーズはまだ続いているので、早めに続きも読むことにします。


<替え玉屋慎三>
「伊勢の風」


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2021年02月10日

辻堂魁「帰り船 風の市兵衛」

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 辻堂魁 著
 「帰り船 風の市兵衛」
 (祥伝社文庫)


日本橋小網町の醤油酢問屋「広国屋」に風のように一人の男が現われた。“算盤侍”の唐木市兵衛である。使用人の不正を明らかにしてほしいということだったが、折しも広国屋で使う艀に直買い(密輸)の嫌疑がかかっていた。市兵衛は店を牛耳る番頭の背後にいる、古河藩の存在を知る。その側用人と番頭の企みとは?風の剣を揮う市兵衛の活躍やいかに。−裏表紙より−


シリーズ3作目です。2作目の感想は書いていませんが・・。いつか再読して書く予定。


あらすじを読んで、そういえば「算盤侍」だった、と思い出すくらい、算盤が出てこない巻でした。しかも事件自体、特に調査するまでもなくちょっと突ついてみたらどんどん敵の方からボロを出す状態で、苦労なく解決します。

でもその分、市兵衛の剣の強さが際立った感じはしたのでそれはそれで良いのかもしれません。


武士の時代、武家にとっては見栄を張るというか、身分相応の見せ方をしないといけないのに財政は苦しくて、でも大っぴらに副業をするわけにもいかず、商人に頭を下げてお金をもらうのはプライドが許さないし、でもお金は必要で。

そうなると、藩の中でもお金を持っている者は重宝されますし、上の人にお金を撒いて出世出来たりします。戦国時代なら敵の大将の首をとったら出世できることもあるのですが、平安な時代にはそうもいきません。だから、出世したい人はお金がもっとたくさん欲しい。

どうやってお金を手に入れるか?知恵を絞ると、やはり違法な所に手を出すんですよね。これはいつの時代も同じです。こういう違法なことをしてお金を得る人の話を読む度に、こういう悪いことに頭を使えるなら他の方法も考えられそうなのにと思います。

そして巻き込まれるのは、商人の中でも出世が見込めないような二番手三番手の人たち。違法なことをすればお金が手に入る立場にあり、働いている店に対して不満があると付け込まれます。

「広国屋」の番頭たちもある意味被害者ではあるんですが、徹底的に悪者として描かれているので、彼らが負けた瞬間、スカッと出来るのは良かったです。


今回も出て来た気味の悪い敵。変な技を使う女性なのですが、市兵衛の好敵手となりそうです。

読みやすくて面白い時代小説なので、続きも読んでいく予定です。

<風の市兵衛>
「風の市兵衛」

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2021年01月19日

中島久枝「お宿如月庵へようこそ」

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 中島久枝 著
 「お宿如月庵へようこそ」
 (ポプラ文庫)※電子書籍


時は江戸。
火事で姉と離れ離れになった少女・梅乃が身を寄せることになったのは、お宿・如月庵。
如月庵は上野広小路から湯島天神に至る坂の途中にあり、知る人ぞ知る小さな宿だが、もてなしは最高。かゆいところに手の届くような気働きのある部屋係がいて、板前の料理に舌鼓を打って風呂に入れば、旅の疲れも浮世の憂さもきれいに消えてしまうと噂だ……。
梅乃は部屋係として働き始めるが、訪れるお客は、何かを抱えたワケアリの人ばかり。
おまけに奉公人達もワケアリばかり。美人で男好きな部屋係に、いつもパリッとしているがやたらと強い中居頭。強面で無口だが心は優しい板前、宿に来るお客を全て覚えている下足番。そしてそれらを束ねる女将。
個性豊かな面々に囲まれながら、梅乃のもてなしはお客の心に届くのか? 
そして、行方不明の姉と再会は叶うのか?
心温かくなるお江戸人情シリーズ第一弾!
−出版社HPより−


初めましての作家さんです。読書メーターでの感想を読んで面白そうだったので、とりあえず電子書籍で手に入れました。

文章は軽くて読みやすい感じでしたが、いきなり重い展開になったのでちょっとペースダウン。主人公に魅力を感じる前にいきなりだったので、大変なことになった・・とは思いましたが、これからどうなるんだろう?大丈夫かな?といった感情があまり湧かず。

しかも、読んでいる途中でお気に入りの作品が発売されたのでそちらを読んでしまい、ますます読み進められず。似たような雰囲気の本を挟んだらダメですね・・・。


火事のせいで唯一の肉親だった姉とはぐれてしまい、天涯孤独となった主人公・梅乃。如月庵という宿に拾われる形で、部屋係として働くことになりました。小さいながらも評判のお宿ですが、やって来るお客さんたちは色々訳ありの人が多く、問題を起こしてくれます。

梅乃は新人なのですが、担当したお客さんの役に立ちたい!という思いが強すぎて、そこまで口を出すか!?ということも言ってしまいます。言った後で「どうしよう?」と悩んでしまいます。


その度に、他の奉公人たちに助けてもらったり、突き放されたりしながら何とか解決していきます。


この物語の大きな軸としてあった、火事で行方不明になった姉の捜索というのがあるのですが、それがあっさりと解決してしまってびっくり。更に、しきりに「この宿には秘密がありそう」と書かれている割には、特に変わったことがあるように感じられないのも気になります。何かの布石なのか??

シリーズ何冊か出ているので、追いかけていけば色々解明されるのでしょう。

次も電子書籍で手に入れて読むことにします。


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タグ:中島久枝

2020年02月19日

尾崎章「伊勢の風 替え玉屋慎三」

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 尾崎章 著
「伊勢の風 替え玉屋慎三」
(祥伝社文庫)


廻船問屋尾張屋は、商売敵である遠州屋の差し金で、専売許可札を盗まれ燃やされてしまった。札がなければ船荷が番所を通関できず、店は潰れる。尾張屋に泣きつかれた稀代の策士慎三は、荒事に不向きな筆屋の文七を尾張屋の船に乗せ、見切り発進させる。手本もない札の花押、署名、割り印をどう復元するというのか。江戸から伊勢へ、遠州屋と瀬戸際の攻防が始まる。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。新しい作家さんに出会いたくて、、「本が好き」で献本申し込みしました。


替え玉屋慎三というシリーズの2作目ということで、話についていけるか不安でしたが、全然大丈夫でした。

もちろん1作目から読んだ方が、登場人物たちの人となりや状況などがより深くわかるので、もっと面白いと思いますが、話自体は2作目から読んでも楽しめました。



替え玉屋という裏の稼業を持つ慎三。彼の元にやって来た廻船問屋尾張屋は、炭の専売許可札を盗まれてしまったことを打ち明け、取り返してほしいと泣きつきます。

主人が殺され、跡取り息子も放蕩三昧で家に寄り付かないありさまの尾張屋は、商売がうまくいかなければ店をたたむしかない状況にまで追い詰められています。

盗み出したのは、慎三の仲間である辰吉と因縁のある男とわかり、彼の復讐のためにも手を貸すことに。


この慎三という人物がどうしてこんな稼業を始めたのか?や、何よりも彼がどんな人生を歩んできてどんな人物なのかということは、2作目だけあってほとんど語られず。

訳アリの人たちを使って仕事をする、しかも裏の仕事なのですから、しっかりした人物かと思えば、ちょっと抜けたようなところもあって、でもかなりの切れ者でもありそうで、彼の人柄がわからないのがちょっと残念ではありました。


専売許可札の盗難にはライバル店が絡んでいる上に、役人も一枚噛んでいる状況・・。まあこれは予測できる展開ですが、この大ピンチをどうやって逆転するのか、本当にハラハラさせられました。

そんな難題に挑むのが、頭である慎三ではなく、仲間内でも二番手とされる文七という筆屋。本当に大丈夫か?と本人も不安になりますが、色んな人の助けも借りながら何とか成し遂げます。


ハラハラさせられる分、最後は痛快! 読み終わったらスッキリ!でした。

でも、慎三に何か起こりそうな雰囲気を最後に残してあったので、続きがものすごく気になります。


そして何より、1作目を読んでみたい!と強く思ったので、早く手に入れたいと思います。


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タグ:尾崎章

2019年12月23日

今井絵美子「行合橋 立場茶屋おりき」

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 今井絵美子 著
 「行合橋 立場茶屋おりき」
 (ハルキ文庫)


行合橋は男と女が出逢い、そして別れる場所―品川宿にある立場茶屋おりきの茶立女・おまきは、近頃度々やって来ては誰かを探している様子の男が気になっていた。かつて自分を騙し捨てた男の顔が重ったのだ。一方、おりきが面倒をみている武家の記憶は戻らないまま。そんな中、事件が起きる・・(「行合橋」)。亀蔵親分、芸者の幾千代らに助けられ、美人女将・おりきが様々な事件に立ち向かう、気品溢れる連作時代小説シリーズ、待望の第二弾、書き下ろしで登場。−裏表紙より−


「はまゆう」「行合橋」「秋の果て」「名草の芽」「別れ霜」の5編収録。


早めに読むと言いつつ、前作を読んでから2年以上経ってしまいました。お陰で細かい部分はすっかり忘れてしまっていました。


読みながら、そういえば立場茶屋ってどんな店なのかよくわからないんだったな・・とか、おりきの人柄とかを少しずつ思い出す感じでした。

結局、立場茶屋の意味がよくわからないですけど、とにかくランチもやっているカフェのような感じだろうとは思います。ウェイトレスと料理人がいて、それぞれの役割も現代と同じ感じです。


常連さんは顔を覚えられて、少しすいている時間に来ているお客さんは、店員さんとも話す機会が増えて、色々と細かい事情も知っています。そうなると、その事情によっては店員さんが巻き込まれ、巻き込まれた店員さんを気遣って女将のおりきも巻き込まれていく・・という展開が多くなっています。


現代と違って、電話やメールなんかが無いせいで、もどかしい状態になることもしばしば。

例えば、おりきの所で預かっている、記憶を無くした武士なんかのことも、ネットで情報を求めたらすぐに素性がわかりそうですが、この時代なのでどこの誰だかわからないまま話が進んでいきます。

そんな武士とおりきとの間にちょっと素敵な雰囲気が流れ始めたと思ったら・・・。


おりきの過去も少しずつ明かされていっていますが、まだ細かい事情が残っていそうです。

そして、武士の素性はどういうものなのか? おりきとの関係はどうなるのか? 

色々と気になることが満載状態で終わってしまったので、今度こそ早めに読もうと思います。


<立場茶屋おりき>
「さくら舞う」


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タグ:今井絵美子

2019年06月24日

神楽坂淳「うちの旦那が甘ちゃんで」

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 神楽坂淳 著
 「うちの旦那が甘ちゃんで」
 (講談社文庫)


はっきり言って月也は「ぼんくら」である。月也とは沙耶の旦那で、風烈廻方同心を拝命している。のほほんとした性格から盗人を取り逃がすことが多く、小者(付き人)たちは愛想を尽かして次々と辞めていった。次の小者を誰にするか。考えあぐねていた沙耶が思いついたのは、なんと「自分」だった。―新感覚時代小説。−裏表紙より−



初めましての作家さんです。

ポップな雰囲気の表紙絵そのままに、軽いタッチで描かれた時代小説です。時代小説を読み慣れない人でも読みやすそうで、お勧めです。


「風烈廻方」というあまり聞きなれない役に就いている月也。風烈廻方とは、町奉行所の中の部署で、火事が起きないように風の強い日でも昼夜問わず見回る役のことだそうです。その同心として働いています。

同心というのは、1人で見廻るわけではなく、小者を連れていきます。小者に、犯人や容疑者を確保する際に必要な道具を箱に入れて担がせてついて来させるわけです。

同心は、さっと身軽に動けるように何も持たずに歩いているわけですね。何だか便利なのか不便なのかわからないですが・・。


ここに出てくる月也は、「ぼんくら」と陰で言われてしまうような人。それでよく同心なんかやってると感心しますが、読み進めるとなるほどと納得できる所もたくさんありました。頭の方はあまりよくないようですが、剣術の腕は確かで、大抵の人には負けませんし、義理人情に厚いので、良い采配を振るうこともあって「いいことしたね〜」と思うときもあります。

でもその分、その優しさに付け込まれてしまうことも多々あり、問題も多い人物です。

そんな同心のそばにいても、出世は見込めないから、小者も付いていたくないんですよね・・。まあわからなくもないです。働くのは楽そうですけど。


月也の奥さん・沙耶は、かなり頭の切れる女性です。良い人を妻にしたな〜とそこだけは評価したいくらいです。

沙耶は、自分の旦那が頼りないことをよく知っています。小者が居つかない理由もわかっているので、何とかしたいとは思うのですがなかなか。そこで思いついたのが、自分が小者になるということ。

これには月也が「格好悪い」と拒否します。そんなこと言っている場合か!と叱りたくなりますが、まあ妻に荷物を担がせてついて来させるのはかなり格好悪そうですからね・・。

とはいえ、自分で担いで歩くのもかなりみっともないので、沙耶にお願いすることに。

沙耶がついてきてくれるお陰で、事件もどんどん解決していきます。

沙耶は普通に捜査するのではなく、色んな知恵を働かせて解決に導いていきます。その方法は感心してしまいました。

ほんと、出来た奥さんです。


沙耶のお陰で出世もしていきそうな月也。まだシリーズは始まったばかりなので、今後の展開が楽しみです。


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タグ:神楽坂淳

2019年06月20日

風野真知雄「妻は、くノ一 星影の女」

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 風野真知雄 著
 「妻は、くノ一 星影の女」
 (角川文庫)


平戸藩御船方書物天文係の雙星彦馬は、天体好きの変わり者。そんな彦馬の下に、織江という嫁がやってきた。彦馬は、美しく気が合う織江を生涯大切にすると誓うも、わずか一月で新妻は失踪してしまう―織江は平戸藩の前藩主・松浦静山の密貿易疑惑を探るため、幕府が送り込んだくノ一だった。そうとは知らない彦馬は、織江の行方を追って江戸へ。様々な謎を解きながら愛する妻を捜す、彦馬の新たな暮らしが始まった!−裏表紙より−


初めましての作家さんです。 ネットで絶賛されていたので読んでみました。

初めての作家さんのときは、文章が慣れなくて始めが読みにくいことが多いです。この作品も例外ではなく、話に入りにくい部分がありました。


彦馬という天体が好きで、天体の話ばかり夢中になってしまう変わり者がいました。そんな彼になぜかきれいなお嫁さんがやってきます。美人なだけではなく、彦馬と話も合う織江のことをかなり気に入り、末永く幸せに暮らしていけると信じていたのですが、突然失踪してしまいます。

失踪直前に、織江が誰かと戦っているのを見た彦馬。でもそれは夜の闇の中で見たことなので、本当にそうだったかは確信がもてませんでした。

失踪してしまった織江のことが忘れられず悩む彦馬に、織江が江戸にいたという情報が入ります。

この時代、簡単に外に出ていくことが難しく、日数もかかることから、まだ若いのに隠居を願い出て、甥っ子に家督を譲って江戸へ旅立つことにしました。

たった一月一緒に暮らしただけの女性のことをここまで想い続けることが出来るのは、ある意味変わり者でもありますし、ちょっとうらやましくもあります。ここまで愛される織江は幸せ者です・・。


織江がなぜ失踪したのか?は、読者にはわかるようになっています。彦馬のいた藩を探っていたくノ一で、とりあえず任務を終えて戻っていたのです。とはいえ、まだ完璧に任務が終わったわけではなく、またこの藩のことは探ろうとはしているようですが、織江は面が割れているので違う人を使いそうです。


1作目は彦馬の江戸までの道中の様子と、織江のその後、そして江戸で彦馬がどんな暮らしをしていくのか?が描かれています。

純粋な彦馬が一方的に騙されているなら居たたまれないですが、どうやら織江も憎からず思っているようで、そこは救いです。

今後二人が再会する日がくるのか、出会うまでどんな生活を送っていくのか、シリーズはかなり続いているようなので、展開が楽しみです。


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タグ:風野真知雄

2019年05月29日

知野みさき「落ちぬ椿 上絵師 律の似面絵帖」

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 知野みさき 著
 「落ちぬ椿 上絵師 律の似面絵帖」
 (光文社文庫)


辻斬りで母を亡くし、上絵師の父も失意のうちに死んだ。律は、幼い弟のためにも、父の跡を継ぎ、布に家紋や絵を描く上絵師としての独り立ちを目指していた。そんな折、馴染みの同心が持ち込んだ似面絵に「私が描く方がまし」と口走り・・。副業として請け始めた似面絵が、様々な事件を解決へと導いてゆく! 恋に仕事に一途な女職人の活躍を描く新シリーズ。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。 読みやすい時代小説でした。コロコロと視点が変わるのが気にはなりましたが。


両親を相次いで亡くした律は、父の跡を継いで上絵師として生きていこうとします。才能もありそうですし、それなりに腕はありそうですが、やはり偉大な父を超えることは難しいようです。この時代“女”というだけでハードルも上がりますから、余計に食べていくのは大変です。


何度もくじけそうになる律を。幼馴染のお香やその兄・涼太、隣人で指南所の師匠でもある今井たちが支えてくれます。特に涼太のことは、昔からあこがれを抱いていて、彼の言動に一喜一憂する律がけなげでかわいかったです。ただ、涼太は大店の跡取り息子なため、身分の違いから想いを告げることが出来ない状態です。涼太も律のことを妹のようにかわいがりつつ、やはり想っているようで、2人は両想いなのですが・・。そんな2人をお香は心配して何かと仲を取り持とうとしています。


律がなかなか上絵師として生計が立てられない中、たまたま同心が持ち込んだ似面絵に口を出し、自ら描いてみせたら次からも頼まれるようになります。それがちょっとした生活のたしになっていくことになりました。

代金をもらうように周りから言ってもらい、少しずつ生活の兆しが見えてきました。似面絵を描くことも本業の練習になっていますし、律の今後が楽しみになりました。もちろん恋の行方も。

シリーズを追いかけることにします。


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タグ:知野みさき

2019年04月23日

「なさけ <人情>時代小説傑作選」

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 細谷正充 編
 「なさけ <人情>時代小説傑作選」
 (PHP文芸文庫)


差配から住人まで全員が悪党の長屋に引っ越してきた新住人をめぐる騒動(「善人長屋」)、人の縁を取り持つ“結び屋”が出合った、見合い相手に不可解な態度を取る娘の哀しき真実(「まぶたの笑顔」)、つらいお店奉公に耐えかねた幼い丁稚に、大旦那さまが聞かせた不思議な話(「首吊りご本尊」)など、書籍未収録作品や書き下ろし作品を加えた時代小説アンソロジー。ほろ苦くも心を揺さぶる珠玉の六作を収録。−裏表紙より−


女性時代小説作家さんたちによるアンソロジーです。新たな出会いに便利ですが、今回は初めての作家さんが志川節子、村木嵐だけでした。「なさけ」という題名にも惹かれたので、仕方ないですね。


西條奈加「善人長屋」坂井希久子「抜け殻」志川節子「まぶたの笑顔」田牧大和「海の紺青、空の碧天」村木嵐「地獄染」宮部みゆき「首吊りご本尊」の6編です。



子どもがいなくなるという話が2話もありました。昔はそれだけ“神隠し”的なことも多かったということなのでしょうね。
子どもの手を離したせいで行方不明になる・・これは想像しただけで胸が苦しくなる状況ですよね。子どもがいつか帰って来ると信じたい気持ちと、自分のせいで・・と責める気持ちで、今までの生活が出来なくなるのはわかる気がします。読むのが辛い話たちでした。


気に入ったのは田牧大和「海の紺青、空の碧天」です。姉想いの弟と、どっしりと動じず大人な姉、そしてその婚約者。3人の様子、人柄が素敵で、話もどうなるのか?とワクワクする展開でした。スッキリ爽快な結末でした。


そして、初読みの2人ですが。志川節子の話は読みやすく、面白かったので他も探してみようと思いますが、村木嵐の話はちょっと・・。ずっと暗い気持ちになる展開だったのでどうかな?と思いました。大人すぎ??



色々な作家さんの話が読めて、新たな出会いもあって、素敵なアンソロジーでした。また他のも読んでみたいです。


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2019年01月15日

坂井希久子「ふんわり穴子天 居酒屋ぜんや」

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 坂井希久子 著
 「ふんわり穴子天 居酒屋ぜんや」
 (ハルキ文庫)


寛政三年弥生。預かった鶯を美声に育てて生計を立てる、小禄旗本の次男坊・林只次郎は、その鶯たちの師匠役となる鶯・ルリオの後継のことで頭を悩ませていた。そんなある日、只次郎は、満開の桜の下で得意客である大店の主人たちと、一方的に憧れている居酒屋「ぜんや」の別嬪女将・お妙が作った花見弁当を囲み、至福のときを堪能する。しかし、あちこちからお妙に忍びよる男の影が心配で・・。桜色の鯛茶漬け、鴨と葱の椀物、精進料理と、彩り豊かな料理が数々登場する傑作人情小説第二巻。−裏表紙より−


1話毎に只次郎とお妙の視点で交互に描かれるのは、1作目と同じです。

1話目では、「ぜんや」の常連客たちで花見をすることになりました。そこにやって来たのは、只次郎の義姉の父。娘とはなかなか深い溝がありそうです。見た目がイマイチな義姉ですが、子どもたちはかわいく素直に育っているようなので、人柄は良いのかな?と。癖の強い父親と義姉の関係が今後どうなっていくのか? たぶん、これからも出てくることでしょう。


只次郎は、師匠役の鶯・ルリオの後継鳥を探しています。これが今作の大きなテーマとなっています。

ルリオが優秀過ぎてなかなか見つかりません。やっと見つかっても、その鳥が鳴かない・・。これが林家の家計を支えているので、大変な問題です。


お妙は相変わらず謎も多いですが、少しずつ過去が明らかになっています。お勝との関係も近すぎず遠すぎず素敵です。更にお勝の御主人も登場し、彼も良い人そうで今後も楽しみになりました。


今回も美味しそうな料理と客たちの人間模様が面白くて、最後まで楽しめました。次も楽しみにしています。


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タグ:坂井希久子