2017年04月12日

畠山健二「本所おけら長屋」

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 畠山健二 著
 「本所おけら長屋」
 (PHP文芸文庫)


本所亀沢町にある「おけら長屋」は騒動の宝庫だ。大家の徳兵衛、米屋奉公人の万造、左官の八五郎、後家女のお染―ひと癖ある住人が入り乱れて、毎日がお祭り騒ぎ。そんなおけら長屋に、わけあり浪人の島田鉄斎がやってきて・・。貧しいくせにお節介、そそっかしいけど情に厚い。そんな庶民が織りなす、江戸落語さながらの笑いと情緒にあふれる連作時代小説。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

だいくま」「かんおけ」「もののふ」「くものす」「おかぼれ」「はこいり」「ふんどし」の7編収録されています。


最初の話「だいくま」を読み始めたときは、なかなか面白いと思ったのですが、結末がどうにも気に入らず、次の話を読むかどうするか悩んでしまいました。

そんな気持ちのまま2話目「かんおけ」を読むと、最後まで面白くて、長屋の人たちのことも好きになっていって、気づけば続きを読み進めていました。

長屋の人は、みんな貧乏ですが、人情深くてお節介で、でも勘違いをしてしまうちょっとおバカな所もあるので、いつも大事件に発展させては大騒ぎしています。

そこが面白くて、読んでいる間ずっとにやけていたと思います。

時々、ほろり・・ともさせられて、なかなか忙しい内容でした。

特に「おかぼれ」は良かったな〜。「はこいり」も良い話でした。

すっかり長屋の人たちのファンになってしまったので、続きも探して読もうと思います。


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タグ:畠山健二

2016年08月16日

浅田次郎「一路 下」

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 浅田次郎 著
 「一路 下」
 (中公文庫)


中山道を江戸へ向かう蒔坂左京太夫一行は、次々と難題に見舞われる。中山道の難所、自然との闘い、行列の道中行き合い、御本陣差し合い、御殿様の発熱・・。さらに行列の中では御家乗っ取りの企てもめぐらされ―。到着が一日でも遅れることは御法度の参勤交代。果たして、一路は無事に江戸までの道中を導くことができるのか!−裏表紙より−


旅の後半には、前半以上に様々な困難が待ち受けていました。

今みたいに新幹線や飛行機、車などでピュッと行けないわけですから、普通に旅をするだけでも大変なことなのに、しきたりが多すぎて人数も多すぎて、本当に大変そうです。

他の大名と違って、なぜか蒔坂家の参勤は冬に行われることになっているので、雪山を超えるという命がけの道行。しかも大きな荷物も抱えていますし、何よりも腰に差している物がすでに重い・・。

「荷物より命が大事だ」と言われても、この時代には物によっては「命より大事」なわけで、現代の人よりかなり頑丈だとは思いますが大変さがわかります。

難所を超えたと思ったら、今度は殿様の体調が悪くなって、無理はできない状況。行列の人数が多すぎて簡単には宿も変えられないですし、何よりも江戸入りが遅れたら罰せられるとなれば、意地でも前に進まなければ! でも殿様の命も大事ですし、一路は苦悩することに。

こんなにたくさん事件が起きて、更に殿様の命を狙っている人たちまで中にいるとなれば、まだ若い一路にすべてを託して良いのか?と読んでいても不安になりました。

でも彼は周りにうまく助けられながら何とか一つ一つ乗り越えて前に進んでいきます。頼りなさも目立つ彼ですが、要所要所で締めるのはかっこよく見えました。

そして、何より素敵だったのは殿様。何だか最後は殿様にすべて美味しい所を持っていかれてしまった感じですが、それも良いのかも?と思えるくらい素敵な殿様でした。

他にも色々と意外な展開も待っていますが、そこは読んで確認して下さい。

最後まで笑ったり泣いたり忙しく、面白い物語でした。


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タグ:浅田次郎

2016年08月05日

浅田次郎「一路 上」

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 浅田次郎 著
 「一路 上」
 (中公文庫)


失火により父が不慮の死を遂げたため、江戸から西美濃・田名部郡に帰参した小野寺一路。齢十九にして初めて訪れた故郷では、小野寺家代々の御役目・参勤道中御供頭を仰せつかる。失火は大罪にして、家督相続は仮の沙汰。差配に不手際があれば、ただちに家名断絶と追いつめられる一路だったが、家伝の「行軍禄」を唯一の頼りに、いざ江戸見参の道中へ!−裏表紙より−


この作家さんは文章が堅苦しいイメージがあって、ちょっと敬遠していたのですが、家族から勧められたので読んでみました。


西美濃にある国から、参勤で江戸へ向かう道中の様子が描かれています。普通の参勤の行列でも大変なことなのに、この話では、小野寺一路という父親を亡くして跡目を継いだばかりの若干19歳の若者が仕切ることになるので更に大騒ぎ。

そのドタバタの様子が描かれています。一路の慌てぶりや、殿様のボケっぷりなどにニヤニヤさせられながら読んでいると、途中で意外と重い展開が待っていました。


一路の父親は、自宅で火事を出してしまい、焼死しました。この時代の失火は大罪で、本来ならお家取り潰しとなる所を、参勤交代の御供頭としてきちんと仕事をこなすことができたら御咎めなしにするということになります。

一路は剣も学問もできる期待の持てる男として登場するわけですが、まだ19歳で父親も若かったため、まだ跡目を継ぐとは思っていなかったため、父親から御供頭としての心得など一切聞かされていませんでした。

なのに父親の葬儀もままならない状態の中で、いきなり御供頭を命じられてしまいます。偶然見つけた家伝の「行軍禄」というのを見付けたため、それを頼りに古いしきたりに則ったやり方での参勤の行列を組むことにしました。


そして出てくる実は陰で別の画策がある・・という事実。誰が味方で誰が敵なのか、も一路にのしかかってきます。とにかく無事に、指定の日までに殿様を江戸へ! 苦難を乗り越えて前へ前へ進んでいく行列の様子には感動すらさせられました。


上巻ではまだまだ旅の途中。

一路の成長も楽しみですし、殿様が本当は名君なのか、やっぱりおバカ”なのか、陰謀は果たされるのか、などなど気になることがたくさんあるので、下巻も素早く読み進めたいと思います。


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タグ:浅田次郎

2016年05月27日

今井絵美子「さくら舞う 立場茶屋おりき」

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 今井絵美子 著
 「さくら舞う 立場茶屋おりき」
 (ハルキ文庫)


品川宿門前町にある立場茶屋おりきは、庶民的な茶屋と評判の料理を供する洒脱で乙粋な旅籠を兼ねている。二代目おりきは情に厚く鉄火肌の美人女将だ。理由ありの女性客が事件に巻き込まれる「さくら舞う」、武家を捨てて二代目女将になったおりきの過去が語られる「侘助」など、品川宿の四季の移ろいの中で一途に生きる男と女の切なく熱い想いを、気品あるリリシズムで描く時代小説の傑作、遂に登場。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

今まで、時代小説といえば関西弁の物ばかり読んでいたのか、この作品の江戸言葉が妙に引っかかって、読みにくい部分もありました。前後の文章で何となく意味がわかるようになって気にならなくなってからは、どんどん話に引き込まれていきました。


立場茶屋というのが最後までどんな店なのか想像できなかったのですが・・。始めは喫茶店的なところかな?と思っていたのに、食事も出しているので、定食屋っぽい店を思い浮かべながら読みました。

おりき”という茶屋の女将・おりきが主人公の物語で、彼女は2代目の女将。とはいえ、先代の娘というわけではなく、どうやら拾われた様子。でも今では立派な女将として茶屋を経営しています。彼女の過去も少しずつ明らかにされていきました。

過去に色々な経験をしているだけあって、お客さんのちょっとした変化や異常にも気づいて、持ち前の情の厚さで親身になって解決していきます。

お客さんだけではなく、従業員の生活にも気を配っていて、ある病に倒れた女中がいると、家の世話までしてしまうくらい。

これだけ親身になってくれたら、みんなおりきを慕うようになり、店の人はもちろん、町の人たちにも慕われ、頼りにされています。


まだ時々過去を思い出して暗くなるところもあるおりきですが、今後はもっとキリッと凛々しい女将になっていくのでしょう。

シリーズはかなり続いているようです。続きも早めに読むことにします。


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タグ:今井絵美子

2016年05月09日

田中啓文「鍋奉行犯科帳」

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 田中啓文 著
 「鍋奉行犯科帳」
 (集英社文庫)


大坂西町奉行所に型破りな奉行が赴任してきた。名は大邉久右衛門。大食漢で美食家で、酒は一斗を軽く干す。ついたあだ名が「大鍋食う衛門」。三度の御膳が最優先で、やる気なしの奉行に、与力や同心たちはてんてこ舞い。ところが事件が起こるや、意外なヒラメキを見せたりする。ズボラなのか有能なのか、果たしてその裁きは!? 食欲をかきたてる、食いだおれ時代小説。−裏表紙より−


「笑酔亭梅寿謎解噺」シリーズで気に入った作家さんです。謎解噺シリーズも途中までしか読んでいないのですが、こちらも気になってしまい手を出してしまいました。

「犯科帳」という題名にふさわしく、いきなり不穏な空気の漂う場面から始まります。この作家さんでこの題名にしては意外としっかり事件が始まるんだ!と思ったら、次の場面では何とものんびりした武家の朝の様子が描かれます。

ここに出てくるのが同心・村越勇太郎。頼りないタイプの人物みたいで、まじめだけが取り柄という感じ。彼の成長物語が始まるわけだ、と思ったら今度はいよいよ鍋奉行さんの登場!

表紙の絵の通りの雰囲気を簡単に思い浮かべられる描写が次々と。本当に奉行なのか!?と呆れる言動の数々。役宅内で寝転んだまま与力や同心の報告を聞くだなんてありえません。

でも妙に憎めない人なんです。美味しそうな料理を語るときの熱い感じとか、事件に対して意外と鋭い観察眼を持っていて部下にきちんと(きちんとではないか?)指図して解決していく手腕に惚れてしまいました。

まあ、身近にいてほしくはないですし、上司だったら絶対に嫌ですけど、読み物の登場人物として惚れました。


振り回される同心・勇太郎も、頼りないばかりではない面が色々と描かれてきて、“頼りない奴”というイメージから“優しくて良い人”というイメージに変わって、彼にも惚れました。

与力や使用人にも魅力的な人がたくさんいて、更には美味しそうな料理もたくさん出てきて、最後まで楽しく読めました。続きも楽しみです。


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タグ:田中啓文

2016年02月23日

岡本さとる「居酒屋お夏」

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 岡本さとる 著
 「居酒屋お夏」
 (幻冬舎時代小説文庫)


目黒不動で居酒屋を営むお夏。化粧っ気はなく毒舌で、くそ婆ァと煙たがられているが、懐かしい味のする料理は評判だ。ある日、客の一人だった遊女が殺され、お夏は静かな怒りに駆られる。実は彼女には、妖艶な美女に変貌し、夜の街に情けの花を咲かすもう一つの顔があった―。孤独を抱えた人々とお夏との交流が胸に響く人情小説シリーズ第一弾。−裏表紙より−


けちな飯」「おちゃけ」「朝粥」「二人で二合」の4話の連作短編集です。

初めましての作家さんです。時代小説を久々に読みたくなっていたので読んでみました。時代小説ではありますが、武士の話ではなく、題名の通り居酒屋を営むお夏というおばあさん(とはいっても、きっと今の私より若いのでしょう・・)が主人公の話です。

居酒屋にやってくるお客が巻き込まれた事件をお夏がさらっと解決する、痛快な物語。人情も絡んでほろりともさせられる、なかなか面白い話でした。

主人公のお夏が良い味を出しています。「くそ婆ァ」なんてひどい呼ばれ方をするような、毒舌で客を客とも思わないような女性ですが、実は人情に厚く、人知れず助け出してくれます。口では「知ったことか」とか「巻き込まないでくれ」とか言っているのですが、放ってはおけない性格で、料理人の清次と共にさり気なく正体を明かさずに助けるのです。

お夏という人もかなり謎な女性ですが、料理人の清次も謎な人で、癖の強いお夏と共に働けるというだけでもすごい人ですが、言葉や態度からきっと今まで色んな修羅場を潜り抜けて来たんだろうと思えます。底知れない深い懐を持った男性です。

彼の過去は今後少しは明かされるのかな??お夏共々気になる存在です。


居酒屋にやってくる客も個性的。お夏と対等に言い合えるのを自慢にしている親分もいれば、良い育ちをした女性がお夏を慕って来たり、次はどんな客がどんな事件を巻き起こすのか?というのも楽しみになりました。

4編、どれも面白かったですが、特に「二人で二合」が気に入りました。遊女と大道芸の男性との関係がほのぼのとしていて優しい気持ちにもなれました。事件は陰湿で最低な物なのですが。


このシリーズはたくさん出ているようなので、次々読み進めるつもりです。


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タグ:岡本さとる

2016年01月12日

辻堂魁「風の市兵衛」

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 辻堂魁 著
 「風の市兵衛」
 (祥伝社文庫)


柳原堤下で、武家の心中死体が発見された。旗本にあるまじき不祥事に、遺された妻と幼い息子は窮地に陥る。そこにさすらいの渡り用人唐木市兵衛が雇われた。算盤を片手に家財を調べる飄々とした武士に彼らは不振を抱くが、次第に魅了される。やがて新たな借財が判明するや、市兵衛に不穏な影が迫る。心中に隠されていた奸計とは? "風の剣”を揮う市兵衛に瞠目!−裏表紙より−

初めましての作家さんです。

ネットで面白いと評判だったので、気になっていました。久しぶりに、時代小説らしい話を読んだ気がします。良い作家さんに出会えました。


主人公の唐木市兵衛は“そろばん侍”という珍しい武士で、そろばんを武器に勤め先の家計をやりくりします。こんな紹介の仕方をすると、腰にさした剣も重そうに思えるようなナヨナヨした武士を思い浮かべそうですが、表紙の絵を見ればわかるように、剣の腕も確かな武士です。

「風の市兵衛」という題名でもわかると思いますが、風の剣と呼ばれる剣術をふるいます。しかもかなりの腕前で、彼が雇われた旗本を助けるために剣をふるう様子はとてもかっこよかったです。風が吹くような自然ででも鋭い剣だそうで、想像しただけでゾクッとします。


物語の冒頭で、まず旗本であり妻子もある武士と、夫のいる武家の妻との心中死体が発見されます。本来なら旗本は取り潰しになる所が、それまでの勤め方など評判の良い人だったこともあって、密かに息子に家督が譲られました。とはいえ、まだ8歳という幼い息子で、まだまだお城にあがるわけにはいかないため、収入はほぼありません。

そこで市兵衛が雇われたわけですが、彼の調べで、借金があること、これまでにあまりにも蓄えがされてきていないことがわかり、それを詳しく探っていくうちに、亡き主人の心中事件の謎が浮かび上がってきました。

ほぼ面識がないと思われる2人がなぜ心中などしたのか、そして何に使って借金ができたのか。調査する中で次々と浮かび上がる怪しい影・・。


彼の調査が進む度に、謎が深まって行って、早く真相が知りたくて次々と読み進めてしまいました。

痛ましい事件ではありますが、遺された息子の姿に救われた気がしました。


市兵衛のシリーズはたくさん出版されています。次も早く買って読もうと思います。


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タグ:辻堂魁

2015年11月17日

葉室麟「風かおる」

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 葉室麟 著
 「風かおる」
 (幻冬舎出版)


父・佐十郎の元に届いた果たし状。鍼灸医の菜摘は、重病の身で果し合いに出かけようとする佐十郎を止めようと、弟・誠之助と男装の美少女・千沙と共に差出人の正体を探りはじめる。調べを進めるうち、かつて佐十郎と出世を競い、今や藩の重鎮となった三人の男たちに辿りつくが・・・・・・。なぜ養父は、妻敵討ちにでなければならなかったのか。明かされる、養父の知られざる過去とは? 人が生きることの哀歓を描く、胸を衝く傑作時代小説。−出版社HPより−

初めましての作家さんです。時代小説を久しぶりに読んでみたくて、新しい作家さんにも出会いたくて、、「本が好き」で献本申し込みしました。

帯の文章を読むと、恋愛物っぽかったので心配でしたが、読み進めるとミステリー色が強くて安心しました。


鍼灸医をしている菜摘が治療に呼ばれて行った先に、十年会っていなかった養父の姿がありました。養父は「妻敵討ち」の旅をして帰ってきた所でした。「妻敵討ち」とは、妻と駆け落ちした相手を討つことです。親や子の敵討ちはよく聞きますが、妻でもあるんですね。この時代ならではです。

不治の病で、手の施しようもない状態になっている養父が「妻敵討ちは謀られたことだった」と言い、敵討ちをさせた相手と果し合いをすることになっていると聞き、菜摘は何とかして止めようと調査を始めます。

部屋住みで暇な弟と彼に想いを寄せている千沙に頼んで、何とか事情を知ろうと聞き込みをしてもらうのですが、なかなか真実が見えてきません。

この2人の調査は読んでいてももどかしくて、チラッと話を聞いて、改めて菜摘が同じ人に話を聞く、という何とも手間のかかる状態。そこまでしても、結局3人にはほとんど何もわからず。残りページが少なくなった頃、やっと家に戻ってきた菜摘の夫・亮がほぼすべてを解き明かします。サッサと帰ってきたらいいのに!と思ってしまいました。確かに出張先での調査は必要だったんですけどね・・。


菜摘の弟と千沙のことなど、事件と関係ない内容も多く、もっとすっきり短く濃い内容にもできたのではないかな?と思ってしまいました。

また、1人犬死としか思えない死に方をした人物もいて、彼の存在は哀れでした・・。何も殺さなくても・・。まあこの物語はほぼすべてがそういう気持ちにさせられうのですが。

この時代の恋愛はどうしても、当人同士の望みどおりにはならないので、悲恋が多いですね。ある意味一途だった、キレイな恋だったと言えなくもないですが、やり方が納得できませんでした。誰か1人が真実を話していれば、何か一つきっかけさえあれば、違う結末があっただろうと思うと辛かったです。


初めて読んだ作家さんでしたが、文章は読みやすかったです。時代小説らしくない気もしましたが。軽く読めるので、時代小説に慣れない人にも読みやすいかもしれません。


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タグ:葉室麟

2015年06月22日

田牧大和「緋色からくり 女錠前師謎とき帖1」

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  田牧大和 著
 「緋色からくり 女錠前師謎とき帖<一>」
 (新潮文庫)


姉と慕ったお志麻が何者かに惨殺されてから四年。「どんな錠前も開ける」と評判高い美貌の天才錠前師・お緋名は、愛猫の大福と暮らしていた。「用心棒になりたい」とある日突然、榎康三郎という侍が現れる。その直後、緋名は賊に襲撃されるが、康三郎は取り逃がしてしまう。奴らが血眼で探すものは? 康三郎は敵か味方か? そしてお志麻殺しの真相は―。謎とき帖シリーズ第一弾。−裏表紙より−

初めましての作家さんです。

いきなり不穏な空気で始まり、最後まで読めるのか心配になりましたが、それは回想シーンですぐに平穏な雰囲気に変わりました。

登場人物たちのキャラクターがわかるまでは、何だか妙に暗い雰囲気に感じられたのですが、殺されたお志麻の忘れ形見である孝助や夫の甚八の優しさ、人情深さ、かわいさにすっかり魅了されました。

何よりも気に入ったのは、緋名の愛猫・大福。孝助に拾われ、彼にかなりなついているのに、緋名の家で住むことを選んだという不思議な猫。とても賢くて、大福が気に入らない人間は嫌な奴とわかるくらいです。


連作短編形式になっていて、1話目は緋名がからくりの錠前を開けに行くという錠前師らしい仕事の話だったのですが、2話目以降は何だか妙な展開に。亡き志麻がなぜ殺害されたのか?が大きなテーマになっているので、それを解決していくことをメインにして、話が進んでいきます。そして、なぜか錠前師としての仕事がほとんど無い・・。

一応、仕事としてやってはいるのですが、緋名が錠前を開けに行った先で事件に巻き込まれる的な話を想像していたので、かなり違う展開になりました。まあ、最後は錠前師としての腕が必要になってくるのですが。

とりあえず、志麻の事件は最後に解決してしまうので、これで終了。・・かと思ったのですが、シリーズ化しているようで。

どういう話になるのか、私のお気に入りたちは登場するのか、気になるのでぜひ続きも読みたいと思います。


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タグ:田牧大和

2014年05月27日

山本一力「ほかげ橋夕景」

ほかげ橋夕景

 山本一力 著
 「ほかげ橋夕景」
 (文春文庫)


娘の祝言が決まった日から急に態度が冷たくなった父親の心情が胸に迫る表題作ほか、他人の物を盗った息子に右往左往する両親を描く「泣き笑い」、晩年の清水の次郎長が小気味よい「言えねえずら」、土佐の長宗我部家に伝わる文書に秘められた一族の尊い使命「銀子三枚」など、とびっきりの人情話8編。−裏表紙より−


「泣き笑い」「湯呑み千両」「言えねえずら」「不意蛾朗」「藍染めの」「お燈まつり」「銀子三枚」「ほかげ橋夕景」の8編が収録されています。

この作家さんの作品を読むのは2作目ですが、前作の長編の方が合う気がしました。私自身は短編も好きなんですけど、この作品集は突然話が終わってしまう物が多いように感じたんです。

何が言いたかったのかわからない作品もありました。私の読解力が低いせいなのでしょうが・・。

でも、面白い作品ももちろんありました。

表題作が一番好きでしたが、他にも「不意蛾朗」「藍染めの」は結構気に入りました。

表題作は父親の娘を想う心が痛々しくて、不器用で、読み終わったときほわっと温かい気持ちになれました。


不意蛾朗」は、妙に長く感じて、飽きそうになった部分もあったのですが、自分の仕事に誇りを持って働く姿がかっこよく、最後の行動にも感動しました。ちょっと突然すぎる感じはありましたが。


藍染めの」は、職人の不器用さと危うさが細かく描かれていて、読みながらハラハラする部分が多く感情移入してしまいました。これは将来の目標が出来て、明るい終わり方をしているのが良かったです。


今度はまた長編を読んでみようと思います。


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タグ:山本一力

2014年02月12日

山本一力「たまゆらに」

たまゆらに

 山本一力 著
 「たまゆらに」
 (文春文庫)


若い娘ながら青菜の目利きに長けた棒手振りの朋乃。ある朝仕入れに向かう橋の上で、大金の入った財布を拾う。商いに障ると知りながらも、落とし主を救うため自身番に届け出たのだが―欲深さ、狡猾な保身に満ちた浮世を、正直に誇り高く生きることの価値を描いて爽やかな感動を呼ぶ、極上の人情時代小説。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

久しぶりの時代小説でした。やっぱり良いですね。

主人公・朋乃の細かい説明もないままに話が進んで行くので、始めは戸惑ってしまったのですが、なぜ説明が無かったのかがわかってからはどんどん引き込まれていきました。


朋乃は、青菜売りをしている娘で、女性では珍しく棒手振りをしています。でも、目利きの良さは評判になっていて、なじみ客も多いようです。

そんな彼女が仕入れに向かう途中で財布を拾ってしまいます。愛犬・ごんが見つけました。“仕方なく”番屋へ届けることにした朋乃。・・・なぜ“仕方なく”なのか?というと、この時代、財布を拾って届けると、番屋で色々と細かい事情を聞かれることになり、商売に響くので、普通は届けずに放っておくか、そのまま懐に入れてしまうようです。

善意のつもりでも、色々とややこしいんですね。

でも、朋乃は愛犬が気づいたせいもあり、正直に届けることに。思った通り、自身番では根掘り葉掘り聞かれてしまいます。更に、中身が50両という大金だったせいで、盗人扱いされるほど。

中に屋号の書いた紙が入れてあったため、その店に届けることになりました。その店は実は朋乃と因縁のある店でした。その事情も説明しなければならず、取り調べは長時間に及びました。この部分で、朋乃の生い立ちが明かされていきます。この時代ならではの悩みというか苦労を重ねて育ってきた女性だったことがわかります。


大金を届けられた店では、喜んでもらえるか?と思いきや、店の手代がごまかしたお金だったので、あえて知らないと言わずにいられません。

十手持ちから責められても、店の主人は「知らない」と言い張り、その攻防は何度も繰り返されました。この部分がやたらと長々書かれていて、そろそろ退屈しそうになったとき、朋乃が動きます。

その鮮やかな口調と解決法に、読んでいてスッキリさせられました。ここまで読んできて良かったと思えました。


話の中で、何度もお茶を淹れる場面が出てきます。このタイミングではどんなお茶を出すのか、どのくらいの温度で出すのか、など色々な心得が書かれていました。勉強になるのと同時に、とても喉が渇く気がしました。美味しい緑茶が飲みたくなります。


時代小説ならではの面白さがたくさん詰まっている、読み応えのある作品でした。とても読みやすかったので、他の作品も読んでみようと思います。


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タグ:山本一力

2013年06月17日

木内昇「茗荷谷の猫」

茗荷谷の猫

 木内昇 著
 「茗荷谷の猫」
 (文春文庫)


茗荷谷の一軒家で絵を描きあぐねる文枝。庭の物置には猫の親子が棲みついた。摩訶不思議な表題作はじめ、染井吉野を造った植木職人の悲話「染井の桜」、世にも稀なる効能を持つ黒焼を生み出さんとする若者の呻吟「黒焼道話」など、幕末から昭和にかけ、各々の生を燃焼させた名もなき人々の痕跡を掬う名篇9作。−裏表紙より−


9つの短編で、それぞれが独立した話になっているのですが、少しずつ細かい所で繋がっています。その繋がりがとても細かくて、じっくり読まないと見逃しそうな感じです。

その分、気づくと嬉しいです。「お〜、ここに出てきた!」って感動します。

時間も1話目から少しずつ流れています。時代小説から現代小説へ移行するのが面白いです。

ただ、1話ずつがあまりハッピーエンドではないので、妙に暗い雰囲気がずっと漂います。はっきりした結末が描かれていない物も多いです。きちんと最後まで書いてほしいと思う人には向かない作品かもしれません。

私もあまり得意ではないのですが、この本はそれ以外の不思議な魅力がありました。

ただ単調に一般人の生活が描かれていて、特に大きな事件が起きるわけでもなく、本当に淡々と流れていく話なのですが、人生の奥深さというか、難しさが感じられました。

不器用な人の生き方が痛々しかったですし、もっと楽な生き方を選べたら違った人生だっただろう・・と思うと、悲しくなる話も。

全体的に重かったので、しばらくは軽めの話が読みたいと思いました。



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2013年05月07日

木内昇「浮世女房洒落日記」

浮世女房洒落日記

 木内昇 著
 「浮世女房洒落日記」
 (中公文庫)


お江戸は神田の小間物屋、女房・お葛は二十七。お気楽亭主に愛想つかし、家計はいつも火の車。それでも風物たのしんで、美顔の探求余念なし。ひとの恋路にゃやきもきし、今日も泣いたり笑ったり。あっけらかんと可笑しくて、しみじみ愛しい、市井の女房が本音でつづる日々の記録。−裏表紙より−


時代小説のはずが、いきなり始まったのはファンタジー風の話。ちょっと混乱しながら読み進めると、その部分は「この日記を公開することにした経緯」が書かれているのだということがわかりました。・・が、最後まで読んでも必要かな?と疑問に感じました。

日記の部分が始まると、読みやすくなりました。


お葛という27歳の女性が江戸時代に書いている日記で、特別大きな問題が起きるわけでも、劇的な人生があるわけでもありません。それでも、彼女の文章が面白く、普通の日常が書かれているので共感できる部分も多くて、最後まで楽しめました。

小間物屋を営んでいるお葛には、頼りがいが無く働きも悪い亭主と、落ち着きのない息子とおとなしい娘がいます。日記の内容はほとんど、亭主に対する愚痴です。働かない亭主のせいで家計が火の車だとか、亭主の考え方や行動をバカにしたり・・。

時代が変わっても夫婦の悩みは変わらないんだな・・と妙に感心しました。共感できること多いと思います。


もう一人、清さんという小間物屋を手伝う人が同居していて、彼の恋路にもお葛は悩みます。

彼女の良い所は、悩みが長く続かなくて、いつも明るい所。甘いものを食べたり、初物を食べたり、花見なんかをしているうちにあっさりと忘れてしまえます。

火の車と言いながらもサラッと買い物をしたり、寄席や芝居を見に行ったりするのも笑えます。

「痩せなきゃ」と言いながら甘い物を食べてしまう所も、今の人と同じで、笑ってしまいました。

何だかんだ言いつつ、旦那さんや子どもたちのことが大好きで、今の生活に満足し、実は幸せなんだろうということが伝わってきて、読んでいる私も幸せな気持ちになりました。


ちょっと重い話を読んだ後などにお勧めです。



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タグ:木内昇

2013年04月04日

岡篠名桜「浪花ふらふら謎草紙」

浪花ふらふら 謎草紙

 岡篠名桜 著
 「浪花ふらふら謎草紙」
 (集英社文庫)


商人の町として賑わう大坂の旅籠「さと屋」の看板娘・花歩は十七歳。実は幼い頃、さと屋に置き去りにされた娘だ。父親らしき男が残した数枚の風景画に描かれた景色を探して町のあちこちを歩くうち、すっかり町に詳しくなり、町の人たちにも何かと親切にしてもらえるようになった。それを生かして、花歩は大坂の名所案内を始めることにするのだが・・・。浪花の人情溢れる書き下ろし時代小説。
−裏表紙より−


初めましての作家さんです。読書メーターで紹介されていて面白そうだったので読むことにしました。

始めはどうも文章が読みにくくて、自分には合わないかも・・と心配になりました。何とか読み進めるうちに、登場人物たちのキャラクターが気に入って、気づけば入り込んでいました。


舞台は大坂の町。「さと屋」という旅籠で暮らす花歩という娘が主人公です。17歳というと、そろそろお年頃なのですが、彼女はまだまだ幼い雰囲気を残しています。

実は幼い頃、さと屋の泊り客だった父親に置き去りにされていました。そのままさと屋の主人夫婦に育てられた彼女は、父親が残していった風景画を持ち、どこの風景が描かれたのかを探すため、町中をふらふらしています。そこで付けられたあだ名は「ふらふら花歩」。

自分の両親について何も知らないことに対し、不安というか落ち着かない気持ちを持っている花歩は、せめて父親の見たであろう景色を同じように見てみたいと考えていました。

ふらふらしている彼女を、町の人たちは温かい目で見守っています。気軽に声を掛けて面倒を見る人たち。自分が見守られている、この町に育てられている、ということに気付いた花歩は、町に恩返しをしたいと考えるようになりました。

そこで始めたのが「名所案内」。自分で作った地図を片手に、宿泊客たちに名所を案内して回り、美味しい料理やお土産物なども紹介するようになりました。今で言う「ツアーガイド」みたいなものですね。


そんな彼女を中心に、大坂の町で起こる様々な事件や騒動などが描かれています。事件が起きると登場するのが千代太郎という、元は商人の息子だった奉行所の同心です。

花歩は幼馴染だった彼のことを「千代ちゃん」と呼び、その度に険しい表情で睨まれるのですが、彼女のお節介のお陰で解決することも多いため、うまく利用することもあるようです。

花歩はどうやら千代太郎に片思いしている様子。二人の関係もどうなるのか気になりますし、まだまだ話は書けそうな雰囲気。続きも出てほしいです。


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タグ:岡篠名桜

2013年03月21日

朝井まかて「ちゃんちゃら」

ちゃんちゃら

 朝井まかて 著
 「ちゃんちゃら」
 (講談社文庫)


江戸・千駄木町の庭師一家「植辰」で修行中の元浮浪児「ちゃら」。酒好きだが腕も気風もいい親方の辰蔵に仕込まれて、山猫のようだったちゃらも、一人前の職人に育ちつつあった。しかし、一心に作庭に励んでいた一家に、とんでもない厄介事が降りかかる。青空の下、緑の風に吹かれるような、爽快時代小説!−裏表紙より−


この作家さんの作品は2作目。以前読んだ作品は面白かったのですが、突然、話を終わらせてしまったのが残念で、今回も終わり方に不安を感じながら読み進めました。

・・で、不安的中。ある意味ハッピーエンド的ではあるのですが、もっとさわやかに、すべてを丸く収めて良い人みんなハッピー!で終わってほしかったです。


主人公は“ちゃら”という名前の庭師見習いです。元々、身寄りもなくたくさんの悪事を重ねながら生きていた彼が、「植辰」という庭師の辰蔵に拾われて育てられました。そして、庭師の仕事を手伝いながら、少しずつ彼自身も庭師として成長しています。

彼には、元来備わっている高い身体能力があり、そのお陰で高い木にもスイスイ身軽に登っていくことができます。

短気な所があり、少々問題はありますが、みんなからかわいがられているようです。特に、共に育ったともいえる辰蔵の娘・お百合とは何でも言い合える気の置けない関係です。


ある日、いつものように庭を手入れしていたところ、嵯峨流という謎の流派の白楊という人物がちゃらの前に現れました。そして、ちゃらを挑発するようなことを言い始め、カッとしたちゃらが取った行動で話が大きく進展します。

それ以来、何かにつけて妨害を繰り返す白楊に、植辰はどんどん追い込まれていきます。


庭師の仕事について色々知ることができましたし、庭やそこに植えられる植物や置かれる石、引かれる水の流れなど、文章で書かれているのに写真のように思い浮かべられるのはすごいと思いました。

出てくる人物たちもそれぞれ魅力的というか、キャラが濃くて面白く、悪役は悪役らしく、善人は善人らしいのも心地よかったのですが、そんな空気をひっくり返すような展開が待っていたのがショックでした。

前半をこんな平和な感じで進めるのであれば、最後も「正義は勝ち、悪は滅びる」という定番な展開が良いと思うのですが・・。

やっぱり残念な結末でした。


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タグ:朝井まかて

2012年12月27日

諸田玲子「楠の実が熟すまで」

楠の実が熟すまで

 諸田玲子 著
 「楠の実が熟すまで」
 (角川文庫)


期限は初冬、楠の実が熟すまで。21歳の利津は、御徒目付を務める伯父に命じられ、潜入捜査のため京の下級公家・高屋家に嫁いだ。安永年間、禁裏での出費増大に頭を悩ませた幕府は、公家たちの不正を疑うが、探索のため送り込んだ者たちは次々に謎の死を遂げていた。最後の切り札として単身乗り込んだ女隠密・利津は、高屋家に夫の弟・右近が幽閉されているのを知る。証拠はどこに・・? 著者の新境地を拓く、長編時代ミステリー。−裏表紙より−


「時代ミステリー」なるほど・・という始まり方でした。ミステリー好きな人はきっと早い段階で、気持ちをギュッとつかまれると思います。

いきなり出てきた人物が突然、殺害されます。意味がわからず頭に「?」マークが一杯になりながらも、一気に話に引き込まれます。

しかも、連続殺人っぽい展開に。

誰が犯人なのか、なぜ彼らは殺されたのか、気になることが多くて、謎を解明したくて読み進めていると、主人公の利津が出てきて、彼女に伯父が説明することで、殺人の動機は明らかになります。

彼女に課せられたのは「公家の不正を暴くこと。懐に飛び込んで確かな証拠をつかむこと」でした。その難題を半年余りで成し遂げなければなりません。

すでに数名が証拠をつかみかけては殺害されています。そんな危険な任務を、女性一人、しかも何の訓練も受けていない女性に託した幕府。


彼女が選ばれたのは、勝気で真っ直ぐで当時の女性にしてはきちんと勉強しているからという理由なのですが、その良さがあまり発揮されることはありませんでした。

何だか普通の女性って感じで、情に流されますし、やたらとビクビクしています。まあその方が普通の人間らしくて良いのかもしれませんが、何で彼女を選んだんだろう?と疑問に思うこともありました。

「かなり危険な任務」とか「味方はいない」とか怖がらせていた割には、意外とあっさりと証拠を見つけてしまいますし、彼女の身に危険が迫る場面もほとんどありませんでした。

前半で盛り上げすぎたのかもしれません。私が勝手に盛り上がってしまったのか??


最後はキレイな終わり方をしていたので、読み終わったときにはスッキリできたのですが、少し盛り上がりに欠けたので残念でした。


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タグ:諸田玲子

2012年12月10日

沖田正午「姫様お忍び事件帳 なんでこうなるの」

なんでこうなるの

 沖田正午 著
 「姫様お忍び事件帳 なんでこうなるの」
 (徳間文庫)


恋に破れて傷心のブスッ娘・菊姫を慰めるには旅に出るしかない。そう思った鶴姫は、馬鹿殿をああだこうだと説得し、屋敷を抜け出すことに成功。が、道中で助平浪人に襲われるわ、助平代官に狙われるわ、てんやわんやの大騒ぎ! ついに、本当の身分を明かさねばならぬときが来てしまったのか・・?こんな窮地は不細工な芋侍、いや、剣の腕が確かな亀治郎が頼りだ。えい、やっ、とう!−裏表紙より−


1冊目「つかまえてたもれ」を読んで、続きも読むつもりだったのですが、なぜか続きを買おうとしないので、間違えて買っていた6冊目を先に読むことにしました。

間がかなり空いているので、わからない部分も当然あるのですが、それでも話にはついていけました。

とりあえず、あらすじの冒頭に出てくる“ブスッ娘・菊姫”が誰なのか?がわからなかったんですけどねあせあせ(飛び散る汗) でもまあ、どうやら失恋したらしいこと、よくわからないが“姫”であること、鶴姫と仲が良いことなどがわかったので、何とか大丈夫でした。


菊姫が失恋して泣いてばかりいるので、見かねた鶴姫が、菊姫の故郷へあそびに行くことを提案します。もちろん、自分もついていくつもりですし、亀治郎も巻き込むつもりにしています。うまく言いくるめて許可を取り、早速出掛けた一行。3人だけではなく、菊姫の化粧係・お松とその婚約者、更には用心棒として知り合いの渡世人2人も連れて行きます。

総勢7人と、なぜか鶴姫の愛犬まで参加したため、7人と1匹での旅。

飛脚ならばその日のうちにつける距離だそうですが、歩きなれない女性が含まれているので、途中で一泊して行く行程に。それでもすぐに着くから、故郷で何か起きるわけか・・と思いながら読み進めました。

ところが、行く途中で次々と問題が発生し、いつになっても前に進まない・・。逆に戻ることもある始末。


旅慣れない人と旅をするとこんな感じになるのか?読んでいてイライラすることもあるくらい。とはいえ、憎めない雰囲気の鶴姫や菊姫がいるため、何だか「仕方ないね〜」と思えてくるんですよね。

亀治郎たち男性陣が気の毒になりつつ、でも時々笑いつつ、読みました。

剣の腕はほとんど見せ場が無かったですが、がんばったなと思います。最後まで読んでも故郷に着かないという長旅・・。次こそは到着するのでしょうか?


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タグ:沖田正午

2012年09月10日

冲方丁「天地明察 下」

天地明察 下

 冲方丁 著
 「天地明察 下」
 (角川文庫)


「この国の老いた暦を斬ってくれぬか」会津藩藩主にして将軍家綱の後見人、保科正之から春海に告げられた重き言葉。武家と公家、士と農、そして天と地を強靭な絆で結ぶこの改暦事業は、文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。改暦の「総大将」に任じられた春海だが、ここから想像を絶する苦悶の道が始まることになる−。碁打ちにして暦法家・渋川春海の20年に亘る奮闘・挫折・喜び、そして恋!!−裏表紙より−


上巻は、春海の人柄やどんな仕事をしていて、どんな家柄に生まれ、どんな境遇で育ったのか・・など、人物紹介の部分が多くて静かな印象でしたが、さすがに下巻になると話の展開が早かったですし、喜びと悲しみが交互に出てくる感じで、なかなか波乱の展開でした。

歴史小説なのに、刀で斬り合ったり、戦に出かけたり・・という部分が皆無なので、そういう意味では静かな話ではあるのですが。


上巻で行った北極星の観測のときに、今使われている暦の欠点を見つけていた春海。保科からの後押しもあり、暦を変換する仕事を開始しました。

今使っている暦は天皇が推薦している物なので、簡単に改善するわけにはいきません。これを覆すためには、今の暦が間違っているということを天皇たちや庶民たちにもわかるように明確に知らしめる必要がありました。

そこで月蝕の予想をすることで、今の暦と正確さを競うことにしたのです。ところが、2回はあてたのですが、3回目に外してしまったため、春海は非難されます。

落ち込む春海が向かったのは、ずっと会いたかった関の家。算術家として尊敬する彼に初めて会った春海は、関からいきなり罵られてしまいます。算術を使っておきながら失敗した春海のことが許せないと言うのです。

怒鳴られたことで逆にやる気を出した春海。関が以前から調べていた物も参考書として見せてもらえることになり、大いに前向きになりました。


色々な人に助けられ、励まされながら大きな仕事を成し遂げようとする春海の姿にはとても勇気づけられました。春海は本当に良い人たちに巡り合っているとも思います。でも良い人が周りに来るということは、春海自身がそれだけの魅力があるということなわけで・・。

この時代だから大変だったこと、この時代だから出来たことというのもあったとは思いますが、今の私たちにも当てはめられるような人の力のすごさを感じることができました。


下巻も始めの方から何度も泣かされましたし、その度に落ち込む春海が見ていられない感じでしたが、またすぐ立ち直ってがんばる姿を読むと、同じように気分が盛り上がりました。

春海と共に人生を歩んだ感じです。

最後までとても面白く読むことができました。

歴史小説が苦手だという方には読みにくいかもしれませんが、そうでなければぜひ読んで下さい。きっと感動できますよ。


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タグ:冲方丁

2012年09月07日

冲方丁「天地明察 上」

初めましての作家さんです。

天地明察 上

 冲方丁 著
 「天地明察 上」
 (角川文庫)


徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く―。日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。第7回本屋大賞受賞作。−裏表紙より−


普段、歴史小説をあまり読まないですし、あらすじを読むと“算術”と書いてあって不安になったのですが、読み始めると一気に話に引き込まれました。

確かに算術について色々と書かれているので、私には理解できていない部分も多かったのですが、理解できていなくても十分楽しめました。


主人公・春海が出会った難問を「関」と名乗る人物が瞬時に解いたことを知り、軽い嫉妬に似た感情を抱きます。関に興味をもった春海は、自ら問題を作って挑戦しようとします。

数日かけて考えた問題は、春海にとって最高傑作と思える出来の物でした。ところがその問題に欠点があったことがわかり、苦悩することになります。

自分が考えた誤問について後悔していたとき、春海が仕える人物からある重大な任務を任されることに・・。それは暦を考える上でとても重要な意味を持つプロジェクトで、日本各地へ行って、北極星の位置を測って記録するという物でした。

建部、伊藤という2人の専門家と共に旅に出た春海は、2人の人柄や考え方にどんどん惹かれていきます。彼らの壮大な夢を聞かされた春海は、彼らにその夢の実現を誓います。


春海が苦戦した難問はもちろん、誤問となった問題の意味もはっきり言って全くわかりませんでした。星の観測の場面でも詳しい部分までは理解できていないと思います。

それでも、春海が惹かれた2人の人物に私も惹かれてしまいましたし、最後には春海と共に涙してしまいました。

上巻ではまだ暦作りは本格化していません。下巻で仕上げると思うので、どんな困難や幸福が待っているのか、楽しみに読むことにします。


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タグ:冲方丁

2012年06月09日

アンソロジー「きずな 時代小説親子情話」

きずな

 細谷正充 編
 「きずな 時代小説親子情話」
 (ハルキ文庫)


<親子というのは人間社会における、最小単位のコミュニティであろう。血の繋がりで、あるいは一緒に暮らしてきた歳月で作り上げてきた親子の間には、切っても切れぬ絆が生まれるものである。>(編者解説より) 宮部みゆき「鬼子母火」、池波正太郎「この父その子」、山本周五郎「糸車」、平岩弓枝「親なし子なし」の傑作短篇に、文庫初収録となる高田郁「漆喰くい」を収録した時代小説アンソロジー。五人の作家が紡ぐ、親子の絆と情愛をご堪能ください。−裏表紙より−


大好きな3人の作家さんの作品が収録されているということなので、読まずにはいられないでしょう!


池波正太郎さんの作品は、確かに「親子もの」ではあるのですが、ちょっと他とは違う感じでした。でもこの作家さんらしいといえる作品だと思います。「家」や「家臣」だけではなく、心を通い合わせた人を大事にし、相手を想いやる気持ちが、読者の気持ちも温かくしてくれるような、何とも深い話でした。


高田郁さんの作品は、母親を思いやる娘の話で、相変わらず涙なしでは読めない作品でした。豆腐が贅沢品とされていて、農民は口にできない食べ物だった時代、病気の母が何も食べられなくなって弱っていくのを見かねた娘のふみが、豆腐を買いに行きます。親切な豆腐屋さんに出会ったふみは、豆腐の作り方を教えてもらい、自分で母親の為に作ることに。その豆腐を食べた母親は元気になります。でも豆腐は食べてはいけない食べ物・・。豆腐というには不格好だったその食べ物に「漆喰くい」という名前を付けて何とか役所の目をごまかそうとするのですが・・・。

主人公・ふみの母親を思いやる気持ち、豆腐屋の女主人の心意気など、「人って良いな〜」と思えるような温かい話でした。


山本周五郎さんの作品は、題名ではわからなかったのですが、読み始めるとすぐに読んだことのある作品だと気づきました。再読どころか、たぶん何度も読んでいるはずの作品で、結末を知っていたにも関わらずやはり泣いてしまいました。ぜひ読んでもらいたいです。


他の2作品は、新たな出会いが出来ればいいなと思いながら読みました。

宮部みゆきさんの作品は合わない場合もあるので心配でしたが、なかなかおもしろく読めました。感動よりも少し不思議な雰囲気の作品。この作家さんの時代小説も読んでみようかな?と思いました。

平岩弓枝さんの作品は初読みでした。どうやって締めくくるのか?と期待しながら読み進めていったのですが、私の思う結末にならず、ちょっと不満の残る内容でした。ある意味ではハッピーエンドなのでしょうが、私的には違ったんですよね・・。残念です。


大好きな3人の作家さんの作品を堪能出来て、大満足の一冊でした。誰か一人でもお好きな作家さんがおられるなら、一度読んでみては?新しい作家さんに出会えるかもしれませんよ。


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