



上橋菜穂子 著
「香君 西から来た少女 1〜4」
(文春文庫)
人並外れた嗅覚を持ち、植物や昆虫の声で香りを聞く少女アイシャ。旧藩主の末裔ゆえ、命を狙われ、ウマール帝国へ行くことになる。遥か昔、神郷よりもたらされたというオアレ稲によって繁栄を極めるこの国には、香りで万象を知る“香君”という活神がいた。アイシャは、匿われた先で香君と出会い・・。壮大な物語が今、開幕!
アイシャは“香君”が抱える苦悩を知り、藩王国視察官のマシュウとともにオアレ稲の謎と向き合うことに。だがそれはウマール帝国への謀叛行為だった。そんな中、オアレ稲に虫害が発生してしまう。民を飢えの危機から救うべく、アイシャたちは動きだすのだが・・。植物と昆虫が人々の運命を大きく変えていく、長編傑作第2幕!
虫害によって国の威信が揺らぐ事態に陥ったウマール帝国。その危機を打開する方法が見つかるが、アイシャは、なぜか、その方法に不安をおぼえる。そんな中、天炉山脈の聖地で、ひとりの男が発見される。男に会うために天炉山脈に向かったアイシャとマシュウは、驚愕の事態に遭遇するのだったーー。 胸に迫る圧倒的な世界観の第3幕!
「飢えの雲、天を覆い、地は枯れ果て、人の口に入るものなし」 恐れていた災いが凄まじい速さで広がる中、アイシャたちは必死に事態の収束を図るが、巨大な国家は、容易に方向転換が出来ない。民に危機が迫る中、孤独を抱えながら生きて来た<香君>が選んだ道とは。比類なき圧巻の物語が、いよいよ完結。 解説・長田育恵−裏表紙より−
表紙絵は春夏秋冬になっています・・が、このブログではうまく順番に並ばず(左から冬→春→夏→秋)。
2017年に読んだ「鹿の王」以来の新シリーズ。
待ちわびていました!
このシリーズは、1〜2巻が一気に発売され、3巻、4巻は1か月毎に発売されました。お陰でサクサクと読めて助かりました。
狭い範囲の出来事で、国をまたぐわけでもなく、大きな盛り上がりが各巻にあるわけでもないので、感想は一気に書きます。
ウマール帝国という国の話です。もちろん架空の国ですし、架空の世界。便利な電子機器や車や飛行機などの移動手段もありません。
この国は主に農業で暮らしています。主な収穫物は“オアレ稲”という穀物。この稲は丈夫でどんな気候でも土地でも育つ便利な稲で、これさえあれば飢える心配がないという便利な穀物です。
ただ、この稲を植えると周りには何も植えられないし育たないという謎な現象が起きてしまいます。なので、この稲のみに頼って生きていくしかない状況。そしてこの稲をうまく育ているために必要な肥料は、昔から伝えられている方法でしか作られず、いたずらに量を増やすことが出来ませんし、増やしてしまうとうまく育ちません。
その肥料の内容や与えるべき量を決めたのは“香君”という神のような存在の女性。香りによって万象を知るという存在で、代々選ばれし1人がその地位を与えられます。
初代香君はオアレ稲を人々に与え、肥料の作り方を教え、与えるべき量なども決めていましたが、それ以降の香君は稲に祝福を与えるのが仕事でした。
主人公・アイシャは旧藩主の末裔だということで命を狙われていますが、実は嗅覚が優れていて、本来なら匂いのしない毒物の匂いを嗅ぎ分けてしまうほど。そんな能力に目をつけた視察官・マシュウに助けられ、彼と共にオアレ稲の謎について研究するようになります。
今の香君と会ったアイシャは、彼女の苦悩を目の当たりにすることになります。大きな力があるわけではないのに、神のように崇められている苦しさ。そしてオアレ稲が虫害に合っても何もできないもどかしさ。
一つの穀物によって成り立っている国の危うさと、一つの穀物によって人々を制御することの恐ろしさ、たった一種の虫によって全てが壊されてしまう恐怖。そして、1人の人間を神のように崇めて信仰することの異常さ、などなど色々な問題点が詰まった物語でした。
嗅覚に優れた一人の女性だけの力でどうやってこの国を救っていくのか、彼女の人生はどうなっていくのか、気になることがたくさんあって一気読みでした。
最後は素敵な終わり方はしましたが、アイシャの人生の今後はまだまだ気になりますし、彼女の弟はどうなったんだろう?とか、この国の未来も気になりました。もしかしたらまた続きを描いてくれないかな?と期待しています。ぜひぜひ。
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