2012年02月25日

池波正太郎「仇討群像」

仇討群像

 池波正太郎 著
 「仇討群像」
 (文春文庫)


ここに収められた九篇の仇討小説は単なる復讐物語ではない。五百石の旗本が用人の妻に邪な情欲を燃やしたことが発端であったり、衆道が動機となっていたり、つまらぬ女にからむ殺人だったり・・と馬鹿げたことから仇討という突発事件にまきこまれた人間たちの、のっぴきならないありさまを描く異色短篇集。−裏表紙より−

これも、久々に再読しました。


仇討の話は“美談”というイメージが強いと思います。仇討といえば有名な「赤穂浪士」の討ち入りがありますね。侮辱されても我慢を続けて来た殿様がとうとうキレてしまい、松の廊下で吉良に傷つけてしまう・・そして切腹させられたことで、家も断絶となりますが、殿様の恨みを晴らすために家中の者たちが立ちあがる!!ぴかぴか(新しい)・・・う〜ん、日本人が大好きな「自分の身を捨てても恩人のために尽くす」正しく美談ですね。

・・という素敵なイメージを覆すような話ばかりが収録されているのが、この本。池波正太郎にかかると、仇討もただの美談では無くなります。

この短編集にも「大石内蔵助」の話があります。ただ、ここでの話は「赤穂浪士」に憧れを抱いている人にはお勧めできない感じです。より人間臭い大石が描かれていますから・・。まあ、この方がリアルな気もしますけどね。

「自分の家柄」や「上司に対する思い」「生き様、死に様」などにかなり重きを置いていた時代の人たちとはいえ、やはり人間ですからそう簡単に命を捨てることは難しいのは当たり前です。

例えば「興奮」という話では、数人で仇討に出て、準備を進めてやっと討ち入ったのに、たまたまそこで祭りが行われていたせいで「気づかれた!!」と勝手に焦り、味方の心配もせずに逃走してしまう・・という情けない姿が書かれています。最終的には成功したか?と思うとそうでもなく、結局中途半端な仇討で終わります。

坊主雨」という話では、慕っていた兄を殺害された弟が仇討に出たのですが、兄の秘め事を知ったせいで苦悩し、人生を狂わせてしまいます。


また、仇討にも許される物と許されない物があったそうです。
親のかたき以外の、伯父叔父、妻などのかたきを討つことは、事情によってゆるされるし、兄のかたき討ちもよいが、姉や弟妹のかたき討ちには、まず正式の許可がおりないことになっている。
これについては、作者もかなり調べたそうですが、理由がわからないそうです。正式な許可が無い場合、国境も超えにくいですし、仇を討っても殺人事件として取り調べを受ける場合もあるようです。


こんな風に、仇討というのはかっこいいだけでは済まされない出来事だったわけです。でも、仇を討たないと家を再興できなかったり、名誉が回復できずに家に戻ることができないので、追う側にとっても辛く厳しい旅になります。

あまりにも情けなすぎて笑ってしまうような話や、苦しみが伝わってくるような話、泣ける話など、様々な仇討の話があって、読み応えのある本になっています。


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2012年02月21日

池波正太郎「忍者群像」

忍者群像

 池波正太郎 著
 「忍者群像」
 (文春文庫)


戦国時代の末期、忍者同士の義理も消え、味方の忍者達でさえ手柄を争うためには殺し合うことも平気、裏切りも寝返りも常識になっていた。その乱世のなかで、“生きていた”明智光秀の首を狙う忍者小五郎のすさまじい執念を描いた「首」をはじめ、「鬼火」「やぶれ弥五兵衛」「寝返り寅松」「闇の中の声」「戦陣眼鏡」「槍の忠弥」の7篇。−裏表紙より−


短編集なので、一話ごとに登場人物や話の内容は変わるのですが、1話目から時代を追う様に流れています。1話目から読んだ方が時代背景はわかりやすいかもしれません。

小田信長が天下を取ろうとしていた時代から始まり、徳川幕府が築かれて30数年経った時代までに活躍した忍者たちの話が描かれています。

戦乱の時代には、戦のための忍者が活躍し、安定した世には陰謀を働く者がいないかを探るための忍者が活躍しました。

忍者といえば、驚くほどの身体能力を持ち、影のように動き、非情な暗殺者という勝手なイメージがあったのですが、この本を読んでその考えが少し変わりました。

忍者と言ってもやはり人間です。敵方に潜り込んで隠密活動をしているうちに、その敵の大将に惹かれてしまい、寝返ってしまうこともあるわけです。そんな自分の感情に振り回され、深く悩み・・でも、やはり裏切ることにした忍者は、仲間から裏切り者として命を狙われることもあります。

まさしく命がけの任務についているわけです。そんな彼らの生き方を読むと感動せずにはいられませんでした。


闇の中の声」は忍者が主役にはなっていません。自分の力を過信している傲慢な若武者が主役で、彼が真田幸村を討とうとするのを忍者が邪魔したことで、人生が狂っていく・・という話です。この話では主役も忍者もどうでもよくなって、真田幸村が気になって仕方ありませんでした。彼の戦術や潔さは素晴らしいと改めて思う作品でした。

戦陣眼鏡」ではそれまでと違い、ちょっと笑ってしまうような話になっています。忍者と主の関係がとても微笑ましくてずっとニヤケながら読んでいました。後半は悲しい雰囲気になるのですが・・。


久々に再読したわけですが、内容を忘れていた話もあって、最後まで楽しく読むことができました。



↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2012年02月10日

池波正太郎「剣客群像」

剣客群像

 池波正太郎 著
 「剣客群像」
 (文春文庫)


女武芸者の佐々木留伊が、夜の町に出没して[辻投げ]を行うのもつまるところは、男を漁り男を得、子を生み妻となり母となりたいがためのことなのである―という書き出しで始まる「妙音記」は、美しく強い女の人生の転機をユーモラスに描いている。他に、さまざまな剣客の姿を機智をもってとらえた7篇を収める。−裏表紙より−


久々に再読してみました。この作家さんの作品はスラスラと読めて、何度読んでも面白いです。

様々な剣客が出てきて、それぞれの人生や考え方、信念、生き方をその人物の一生の物語として描いています。

秘伝」では、ある道場に入門していた3人の剣客を描いています。3人はそれぞれ性格も全く違うのですが、腕を競い合って精進してきました。あるとき師匠が亡くなった際に遺した“秘伝書”が3人の人生を変えて行くのです。3人のどの生き方が良いとか悪いとかは読む人によって変わるでしょうが、それぞれに共感できる部分があり、静かに読み終えることができました。

妙音記」で描かれているのは女剣客です。あらすじにも書かれているように、女性とは思えないほどの使い手のため、自分より強い男性以外には目もくれない女性です。ただ、母親になりたい気持ちは人一倍あり・・。

弓の源八」は、ある出来事が原因で不器用な生き方しかできなくなった源八の話です。彼の不器用すぎる人生は痛ましいくらいでした。その人生も一人の女性によって変化するのですが、最後まで静かな静かな人生を送った彼の姿は感動的でした。


私が特に好きなのは「寛政女武道」という話です。元武士の娘だった女性が、自分との関係を相手の男性にばらされたことを怒り、男性に復讐を果たし自分も自害します。現代ならたかが男女の話・・と流せますが、この時代には軽々しく話してはいけないことでした。特に女性にとっては恥となり、不名誉なことでした。

それなのに軽々しく人に話し、更には他の人を引き連れて女性を襲いに来るなんて、どういう人なんだ!と怒りがわきます。そんな彼らを堂々と立ち合って討ち果たし、更には潔く自害するとは・・。彼女の強さに惹かれる話でした。


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年11月17日

池波正太郎「ないしょ ないしょ」

ないしょないしょ

 池波正太郎 著
 「ないしょ ないしょ 剣客商売番外編」
 (新潮文庫)



剣客・神谷弥十郎の道場で下女として働いていたお福は、主人が暗殺されてしまったため、共に働いていた下男・五平と連れ立って江戸へ出ることにした。江戸で新たに三浦平四郎という御家人に仕えることになったが、その三浦も殺害され、更には五平も殺されてしまった。同じ無頼浪人の手によって殺害された3人の仇を討つため、三浦の碁敵だった秋山小兵衛の助けを借りた。


剣客商売シリーズの中でも番外編ということで、秋山小兵衛始め弥七や小川宗哲など、見知った顔ぶれも出て来ますが、主人公はお福という少女になっています。


お福の両親は相次いで病死し、身寄りが無かったため、お福は16歳で神谷弥十郎の道場へ奉公に出ました。その主人から凌辱されるようになり、お福は心身共に傷ついてしまいます。主人のことを憎むようになるのに時間はかかりませんでした。

ところがある日、主人が暗殺されてしまい、働く場所も行く場所も無くなってしまったお福に、下男の五平が江戸へ一緒に行くよう勧めます。そして江戸で新たな主人・三浦平四郎の世話になることに。

三浦老人は隠居の身でしたが、手裏剣の名手で、早朝に練習しているのを見たお福にも「やってみるか?」と声を掛けて来ました。お福は早速、手裏剣の手ほどきを受け、意外な才能を開花させるのでした。でも三浦からは稽古をしていることが知られたら嫁のもらい手が無くなるから「ないしょ、ないしょ」と言われていました。

神谷の所ではひどい目に合ったお福でしたが、三浦には優しくしてもらい、本当に幸せに暮らしていたのですが、また主人を亡くすことに・・。更には五平まで同じ浪人から殺害され、お福は復讐を誓います。

秋山小兵衛は、お福が手裏剣を練習していたことを知る唯一の人物で、彼女の仇を討ちたいという強い想いに賛同し、助太刀をすることにします。


お福は16歳から奉公を始め、続けて主人が死んでしまったせいで、職場を転々とすることになりました。三浦平四郎の次にもまた別の所で奉公をします。そこでは新たな出会いもあって、女としての幸せも感じることができたのですが・・。

彼女の人生は荒波にもまれるような壮絶な物でした。最後は「色々あったけど幸せだった」と思えるような終わり方でしたが、あまりにも切ない気持ちになりました。

きっとこの時代の女性はみんな男性の陰で様々な困難に立ち向かいながら翻弄されながら生きていたのだろうな・・と思うと辛くなります。今の時代に生まれたのは幸せなことだとも思いますね。普段は忘れがちですけど。


剣客商売にはもう1作品、番外編があります。それはまた今度紹介します。



↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年10月29日

池波正太郎「鬼平犯科帳24」

鬼平犯科帳24

 池波正太郎 著
 「鬼平犯科帳24 特別長篇 誘拐」
 (文春文庫)



同心・松永が見回り中に見かけたのは、相川の虎次郎という盗賊だった。油断のならないこの男を捕え、江戸にいた目的を吐かせようとしたが全く口をきこうとはしなかった。平蔵は彼を解き放ち、跡をつけることでその目的を探ることにした。すると虎次郎はおまさの行方を追っていたことがわかった。−「誘拐」他「女密偵女賊」「ふたり五朗蔵」計3編収録


「特別長編」となっている割には薄い本なので疑問に思いつつ読むと、最後にショックを受けてしまいます。この「誘拐」という話の最後には(作者逝去のため未完)という文字が・・がく〜(落胆した顔) 「これから面白くなるぞ!」と思う所で終わってしまうのです。初めて読んだときは知らずに読み始めたため、あまりのことに呆然としました。

作者が亡くなっていたことは知っていたのですが、まさか未完の話があるとは・・。これで鬼平シリーズも終わりです。とても寂しい気持ちになりましたもうやだ〜(悲しい顔)

あまりにもショックだったため、この24巻だけは一度しか読んでいませんでした。昨日、久々に再読しましたが、覚悟していたのにやはり悲しかったです。

とても薄い本なので、1時間もかからずに読み終えることができます。


相川の虎次郎がおまさを探している・・その理由を、おまさ自身は前作「炎の色」で裏切ることになった女盗賊お夏が復讐しようとしているからだと確信します。そして、おまさがわざと敵に捕えられることで解決させようとするのですが・・・と気になる所で終了。


他の2作品もとても面白いですから、それだけでも読む価値はあります。解説の「池波正太郎の文学」も読み応えがあるので、ぜひ読んでみて下さい。


<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
「鬼平犯科帳16」
「鬼平犯科帳17」
「鬼平犯科帳18」
「鬼平犯科帳19」
「鬼平犯科帳20」
「鬼平犯科帳21」
「鬼平犯科帳22」
「鬼平犯科帳23」


10巻が抜けているのが気になるな・・。やっぱり新しく買おうかな??


↓ ランキングに参加中です。ポチポチっとしていって下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年09月10日

池波正太郎「鬼平犯科帳23」

鬼平犯科帳23

 池波正太郎 著
 「鬼平犯科帳23 特別長篇 炎の色」
 (文春文庫)



おまさは、五郎蔵と晩酌をしていたときに夜鴉が鳴くのを聞き、嫌な気持ちになった。翌日目覚めたときも嫌な気持ちは続いていて、見回りをするつもりが気づけば担当の区域ではない所にまで来ていた。そこでおまさは“峰山の初蔵”という昔盗みを辰だったこともある盗賊から声をかけられ「荒神一味の二代目に手を貸してほしい」と頼まれたのだった。



特別長編「炎の色」ということですが、その前に「隠し子」という短い話があります。

その話では、平蔵の亡き父親に隠し子がいたことが平蔵の家で中間をしていた久助から知らされます。亡き父から口止めされていた久助でしたが、その隠し子に危険が迫っていることを知り、平蔵に告白することを決めたのでした。

隠し子はお園と言い、平蔵の妹になります。平蔵は彼女を危険から救い、役宅で女中として使うことを決めました。彼女が平蔵の妹であることは、妻しか知りませんが、彼女は身を惜しまずよく働くため、他の女中たちからも好かれて充実した毎日を送っています。


そして「炎の色」へ。

この話ではおまさが中心となって進んでいきます。彼女が夜鴉の声を聞いたことで不安定となり、いつもと違う場所へ行ったために昔の盗賊仲間から声を掛けられることとなりました。もし彼女がここに来なければ、もっと捜査は難航したことでしょう。

荒神の二代目というのは、初代の隠し子だという女性です。不思議な雰囲気をもつこの女性になぜか惹かれてしまうおまさ。でもお役目は忘れず、盗賊改方の同心たちと協力して捜査にあたります。

今回も平蔵は命を狙われることに。でも自分だけが狙われたので、どっしりと構えて捜査にあたることができました。平蔵の妹・お園も活躍し、最後には嬉しい出来事も。


<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
「鬼平犯科帳16」
「鬼平犯科帳17」
「鬼平犯科帳18」
「鬼平犯科帳19」
「鬼平犯科帳20」
「鬼平犯科帳21」
「鬼平犯科帳22」


↓ ランキングに参加中です。ポチポチっとしていって下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年08月05日

池波正太郎「鬼平犯科帳22」

鬼平犯科帳22

 池波正太郎 著
 「鬼平犯科帳22 特別長篇 迷路」
 (文春文庫)



“池尻の辰五郎”一味の件が片づき、一息ついた平蔵たちは通常の任務へ戻っていた。そんなあるとき、平蔵が何者かに襲われたのだった。曲者を捕らえ損ねた平蔵は自ら囮となって市中を単独で歩いていた。そんな平蔵をあざ笑うかのように、与力・秋本が殺害されてしまった。


池尻一味を捕縛しようとした所、お頭・池尻の辰五郎は網の中で潔く自害してしまいました。後味の悪さは残ったものの、とりあえず事件は解決したということで、一息ついたのですが・・。

細川同心の様子がおかしいことに気付いた平蔵は、筆頭与力・佐嶋を連れて密かに彼の行動を見張ります。そして、今後も二人で細川のことを探ろうと決めたとき、平蔵は何者かに付けられていたことを佐嶋に話します。

佐嶋を先に帰した平蔵は一人で歩き、曲者をおびき出します。そして襲いかかって来たので捕らえようとしましたが、意外と腕の立つ浪人だったため、逃げられてしまいました。

その後、襲われた与力・秋本。それ以外にも、次々と平蔵と縁のある者たちが襲われていくのを見て、平蔵は今までにないほど苦悩してしまいます。


過去にも平蔵自身が命を狙われたことは何度もありますし、与力や同心などが命を落とすこともありました。でも今回は家臣ではない者まで狙われることとなったので、どうすればいいのかさえわからなくなっていました。

最後には、今までのように冴えた平蔵が戻って来ますし、鮮やかな手並みで曲者たちを捕らえてくれることはわかっているのですが、途中、何度も胸が痛いような思いがする話でした。



<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
「鬼平犯科帳16」
「鬼平犯科帳17」
「鬼平犯科帳18」
「鬼平犯科帳19」
「鬼平犯科帳20」
「鬼平犯科帳21」


↓ ランキングに参加中です。ポチポチっとしていって下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年06月02日

池波正太郎「鬼平犯科帳21」

鬼平犯科帳21 

 池波正太郎 著
 「鬼平犯科帳21」
 (文春文庫)



前回の事件で長官に叱られ、勘定方へ戻された細川同心が、非番の日に、怪しい浪人を見つけた所から盗賊を捕らえることとなった。−「泣き男」他「瓶割り小僧」「麻布一本松」「討ち入り市兵衛」「春の淡雪」「男の隠れ家」計6編収録


勘定方から探索方へやっと異動できたというのに、前回の事件で女にうつつをぬかしてしまい、長官・長谷川平蔵の怒りをかうことに・・。

そして、また勘定方へ戻されたのですが、実際には前回、手柄を立てたのだから・・と納得できずにいた細川同心は、連日飲み歩いていました。

そんなとき、道でぶつかった浪人に思いっきり投げ飛ばされ、更に落ち込みます。ふらふらと歩いているうちに、偶然先ほどの浪人を見かけました。その浪人は、目の見えない座頭・辰の市と話していました。この座頭は役宅にも出入りする者で、目が見えないはずがそのときは目を開けて話していたことで不審感を募らせます。

長官に報告した細川同心が、再び手柄をたてるまでの話です。平蔵の優しさや部下を想う気持ちの深さに感動します。


よく泣く同心ではありますが、少しずつしっかりしてくる様子が微笑ましくて、つい応援してしまう感じです。私は木村忠吾の方が好きですけど。


「春の淡雪」では、また平蔵が部下である同心の不祥事と向き合うことになります。そして最後に平蔵が信頼する佐嶋与力と思いがけない会話をかわします。

平蔵のこの仕事にかける誇りや情熱が伝わって来る話でした。


<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
「鬼平犯科帳16」
「鬼平犯科帳17」
「鬼平犯科帳18」
「鬼平犯科帳19」
「鬼平犯科帳20」


↓ ランキングに参加中です。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年04月07日

池波正太郎「鬼平犯科帳20」

鬼平犯科帳20

 池波正太郎 著
 「鬼平犯科帳20」
 (文春文庫)



友人の病床を訪ねた帰り道、平蔵は知り合いを見かけた。昔、平蔵と同じ高杉道場に通っていた甚助というその男は、女につかみかかられていた。女は「敵討ちの約束が守れないなら金を返せ」と甚助に叫んでおり、その尋常ではない様子に平蔵は後をつけたのだった−「助太刀」他「おしま金三郎」「二度ある事は」「顔」「怨恨」「高萩の捨五郎」「寺尾の治兵衛」計7編収録


平蔵が知っていた頃の甚助は、平蔵ほどではないしても、同心・木村忠吾よりは確かな剣術の腕をもっていました。

そんな甚助が「敵討ちの約束を守らない」と女につかみかかられている・・後をつけた平蔵は、甚助に事情を聞きます。実際は“聞く”という生易しいものではなく、脅した感じでしたけど。

その女・お峰は、以前、甚助が無頼の者たちを蹴散らしたのを偶然見かけたことで、自分の敵討ちをしてもらおうと頼んだのでした。

目指す相手も見つけたのに、やる気の出ない甚助がずっと先延ばしにしていたため、お峰に怒鳴られていたのです。

事情を聞いた平蔵は、甚助を叱り「平蔵が助太刀をする」という条件で何とか敵討ちをしに行きます。相手に名乗って向かって行ったのですが・・・。

そこからお峰の敵討ちは思うわぬ方向へ向かってしまいます。


「女というのは恐ろしい」と語る平蔵の姿が印象的な話でした。



<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
「鬼平犯科帳16」
「鬼平犯科帳17」
「鬼平犯科帳18」
「鬼平犯科帳19」

↓ ランキングに参加中です。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 12:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年03月18日

池波正太郎「鬼平犯科帳19」

鬼平犯科帳19

 池波正太郎 著
 「鬼平犯科帳19」
 (文春文庫)




平蔵が“桶富”で桶を購入していたとき、店の女房・おろくが近所の人の話を聞いたとたんに駆け出そうとした。あわてて止めて事情を聞くと「うちの子がかどわかされた」と言い、振り切って走って行った。日ごろから桶屋の主人・富蔵に世話になっている平蔵は捨ててもおけず、女房と共に息子を探すことにした。−「霧の朝」他「妙義の團右衛門」「おかね新五郎」「逃げた妻」「雪の果て」「引き込み女」計6編収録


御用聞きの政七をいつも手伝っている富蔵。忙しいので、桶屋はほとんど女房のおろくに任せてしまっています。

政七や富蔵は町奉行所の下で働く人なのですが、平蔵の手伝いをしてから人柄に敬服してしまい、盗賊改方の捜査も頻繁に手伝うようになりました。

そのことを有難く思っている平蔵は、今回の富蔵の受難を見過ごすわけにはいかず、配下たちを使って息子を探し始めました。

富蔵夫婦の息子・幸太郎は実は養子でした。産みの親から何度か「返してほしい」と言われるようになっていたのですが、それを断っていたこともあり、連れ去ったのは産みの親ではないか?と疑われました。

ところが・・・・まあ、これは読んでもらった方が良いですね。どんでん返しもあって最後まで目が離せない展開になっていますよ。


最近は、細川という勘定係だった同心をよく連れ出す平蔵に、木村忠吾がちょっとやきもちをやいています。暗くなりがちな話の中で、ちょっと笑えるエピソードです。


妙義の團右衛門」は、密偵・馬蕗の利平治が活躍する話。昔共に盗みを働いたこともある妙義の團右衛門という盗賊の頭と偶然であった利平治は、協力する振りをして情報を平蔵に渡していました。

ところが團右衛門にバレてしまい、殺害されてしまいます。怒りと悲しみに震える平蔵は、團右衛門を捕らえ「一味を全て捕らえてやる!」と宣言するのでした。



<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
「鬼平犯科帳16」
「鬼平犯科帳17」
「鬼平犯科帳18」

↓ ランキングに参加中です。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

続きを読む
posted by DONA at 11:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年03月07日

池波正太郎「鬼平犯科帳18」

鬼平犯科帳18

 池波正太郎 著
 「鬼平犯科帳18」
 (文春文庫)



昔、盗賊としての手ほどきを受け、恩義を感じている盗賊の頭の娘が狙われていることを知って、密偵・仁三郎は誰にもそのことを告げずに何とか始末をつけようとする。仁三郎の胸の内はどのようなものだったのか。−「一寸の虫」他「俄か雨」「馴馬の三蔵」
「蛇苺」「おれの弟」「草雲雀」計6編収録「



仁三郎は密偵として大活躍を続けていました。ところが偶然“鹿谷の伴助”という昔馴染みの盗賊に出会ってから仁三郎の苦悩が始まります。

尊敬する盗賊の頭“船影の忠兵衛”の娘が嫁に入った菓子屋に伴助が押し込もうとしていたのだった。しかも昔の恨みをはらすつもりもあって、皆殺しにする予定になっていたのです。

仁三郎は伴助に協力するふりをしながら密かに伴助を殺害しようと思うのですが、二人でいるところを同心・山崎に見られてしまい、計画が続けられなくなりました。

山崎は評判の良くない同心で、仁三郎に「長官に言わずに二人で探ろう」などともちかけ、手柄を独り占めしようとしたのでした。

思い悩んだ仁三郎はある決心をし、思いきった行動に出ます。


悲しい結末でした。平蔵もなぜ仁三郎がこんな行動をとったのか理解できず相談してくれなかったことを深く悲しむのでした・・。


馴馬の三蔵」では、ベテランの密偵・小房の粂八が昔の仲間に義理だてし、平蔵にも知らせず何とか自力で助けようとします。


密偵は「自分の身は死んだもの」として平蔵のため(というか、世の中のため、自分のため)に働いていますが、昔の義理はなかなか断ち切れるものではなく、仁三郎や粂八のように平蔵にも黙って行動をすることがあります。

昔の恩義と今の仕事の間で揺れ動く密偵たちの様子。それを思うと申し訳ない気持ちになる平蔵。そんな平蔵だからこそ密偵たちも命がけで助けようとするのでしょうが・・。


<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
「鬼平犯科帳16」
「鬼平犯科帳17」


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年02月17日

池波正太郎「鬼平犯科帳17」

鬼平犯科帳17

 池波正太郎 著
 「鬼平犯科帳17 特別長編 鬼火」
 (文春文庫)



名前もない小さな居酒屋があった。地元の人たちが「権兵衛酒屋」と呼ぶこの居酒屋に平蔵が立ち寄った夜、事件が起きた。権兵衛酒屋の女房が斬られ、主人が失踪したのだ。女房・お浜は取り調べで自分の名前は告げても、亭主の名前は「権兵衛」だとしか言わず、他のことは一切口をつぐんだままだった。そして、事件を調べる平蔵に刺客が襲いかかる・・。


出だしの文章から、一気に引き込まれる作品です。

その日。
その夜。
その、小さな居酒屋へ、火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵が立ち寄らなかったら、事件は別のかたちで進行し、おそらく平蔵の目にも耳にも触れることなく、すべてが闇の幕に閉ざされた向こう側で起り、人知れず終りを告げていたやも知れぬ。


さすがにうまいですね〜。

何気ない行動にも意味があるというか、人の選択や行動には必ず意味があるんだ・・と思わされますし、今回、平蔵が関わった事件はどんな人間の闇を背負っているんだろう?と一気に興味がわきます。


従兄の仙右衛門から「権兵衛酒屋」のことを聞いた平蔵は、その夜、寄ってみることにしたのでした。

うまい酒を飲ませるが、亭主も女房もほとんど口をきかないし、愛想もない。でも雰囲気が良い。亭主は多分、昔武士だったと思う。・・そんな話を聞いたら平蔵が行ってみようと思うのは当然のことです。

ところが、店のそばで見張っているらしき人の姿を発見し、帰ったふりをして戻った平蔵の前で、女房が斬られてしまいます。思わず身分と名前を名乗った平蔵。それを聞いた曲者たちはあわてて逃げだします。

曲者だけではなく、亭主まで逃げてしまったので、事件は大きな疑問をはらむことに・・。

事件を捜査し始めるのですが、二人の身元を探っていたときに聞き込んだ人が殺害され、更には平蔵も襲われてしまいます。

平蔵の身分を聞いて逃げ出したということは、曲者は盗賊?という推理ができるわけですが、亭主が元武士と思われるため、謎がどんどん深まります。


さすが長編。読み応え十分な作品です。


<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
「鬼平犯科帳16」


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年02月05日

池波正太郎「剣客商売 暗殺者」

剣客商売 暗殺者

 池波正太郎 著
 「剣客商売 暗殺者」
 (新潮文庫)



小兵衛は友人を訪ねた帰り道、凄腕の浪人二人を一瞬にして蹴散らした剣客を見かけた。波川周蔵という名のその剣客は、小兵衛が見ていて「大治郎も負けてしまうかも」と思うほどの腕前だった。その後、大治郎の暗殺計画を聞いた小兵衛は、息子を助けるため、十手持ちの弥七、徳次郎と共に探り始めた。


前作で、昔の兄弟弟子で親しくしていた内山が亡くなってしまったことをまだ引きずってしまっている小兵衛は、年が明けても気分が落ち込んで仕方ありませんでした。

やっと落ち着いた頃、友人を訪ねることにしたのですが、その帰りに剣客を見かけるのでした。

腕の立つ浪人二人を殺すことなく、少しずつ傷つけて蹴散らした、波川の腕前に感動した小兵衛は、彼の様子を見て、何だか不吉な物を感じたのでした。

その後、偶然耳にした大治郎の暗殺計画。この計画に波川が助っ人として参加しそうな気配だと知り、あわてる小兵衛。

暗殺計画を企む者たちを調べるうちに、裏に世の中をひっくり返すような動きがあることを探りあてます。


小兵衛がどんどん気弱になり、大治郎がどんどん大きくどっしりしていくのが嬉しいような寂しいような複雑な気持ちになりました。

このシリーズは、後、番外編を残すのみになってしまいました・・。本当はもっと続けてほしかったのですが残念です。


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年01月27日

池波正太郎「鬼平犯科帳16」

鬼平犯科帳16

 池波正太郎 著
 「鬼平犯科帳16」
 (文春文庫)



小柳同心は、同僚の黒沢同心が女賊“網虫のお吉”と歩いているのを見かけ、何となく後をつけた。すると二人は出会茶屋へ入ったのだった。黒澤同心の行動に不信感を抱いた小柳は、長官に報告し、二人で密かに捜査を始める。−「網虫のお吉」他「影法師」「白根の万左衛門」「火つけ船頭」「見張りの糸」「霜夜」計6編収録


網虫というのは字で何となくわかるでしょうが、蜘蛛のことです。蜘蛛のように相手をからめとるようなタイプの女賊だったお吉を、黒沢同心が連れて歩いていた・・。

他の同心だったら「捜査の一環だろう」と見過ごす所が、黒沢には以前からよくない噂が絶えずあったため、小柳は後をつけたのでした。

同心の中でも思慮が深く優しい性格の小柳が、同僚のことを長官である平蔵に報告してきた・・ということで平蔵は事を重く見て、二人で密かに捜査を始めるのでした。

途中、黒沢同心かお吉かどちらかの後をつけることになったとき、小柳は素早く賊の方を取ります。それを聞いて平蔵は「同じ仲間の黒沢勝之助にこれ以上、関わりたくはないと申すか・・」(中略)「辛いのは、わしのほうじゃ」と、珍しく弱音を吐くのでした。

それだけ部下の不祥事には心を痛めていたわけです。


影法師」は、非番の木村忠吾が結婚前にあそんでおこう!と出かけた所から始まります。

相変わらずあそび好きな忠吾。途中で“さむらい松五郎”という以前、火盗改が捕らえた盗賊と間違えられ、命を狙われることに・・。


火つけ船頭」は、無口で付き合いの悪い、何を考えているかわからない・・と評判の悪い船頭の話。

題名の通り、この船頭はストレス発散のために火つけを繰り返していました。あるときいつものように火をつけようとしていると盗賊集団が店に押し込もうとしているのを見てしまいます。そこで急いで火を付けて押し込みを妨害したのでした。

火盗改にも無名で投書し、盗賊の存在を知らせます。そして、当然この船頭も捕まるわけですが・・。この頃の放火は大罪です。本人はもちろん、家族まで死刑になるほど・・。最後に少し明るくなっていただけに残念な結果でした。


<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年01月11日

池波正太郎「剣客商売 波紋」

剣客商売 波紋

 池波正太郎 著
 「剣客商売 波紋」
 (新潮文庫)




小兵衛の剣友を見舞った帰り道、大治郎の頭上を矢がかすめていった。更に腕の立つ見知らぬ剣客に剣で襲われ、身に覚えのない大治郎だったが剣を抜き合わせ、曲者たちを追い払った。小兵衛に話すと「家を出るときから見張られていたのでは?」と言われ、大治郎は曲者をおびき出すために裸身となり、井戸端で水浴びを始めた−「波紋」他「消えた女」「剣士変貌」「敵」「夕紅大川橋」計5編収録


病床にある父の剣友を見舞った帰り、おはると三冬が好きな黒飴を買おうと裏道を通った大治郎。人気のない場所でいきなり襲われます。

でも冷静に対処するのはさすがです。

「人に恨まれる覚えはない!」と言いきれないのが剣客の辛さで、いつどこで恨みを買っているかわかりません。

どこの誰かわからない状態では、妻(女剣士ですから心配は無いですが)や子どもの身も心配です。ということで、無防備な姿で水浴びを始めました。

三冬が家の中から剣を持ってこっそり見張っているとはいえ、大胆な行動です。小兵衛もちょうど見回ってくれたときに刺客が襲ってきました。

大治郎が狙われたこの事件、意外なところにまで話は膨らみ、色んな人を巻き込んでいきました。


夕紅大川橋」は、小兵衛の弟弟子・内山文太が巻き込まれた事件の話。義理の息子から「義父が行方不明になった」と知らせを受けた小兵衛は、内山を探すため十手持ちの弥七たちに協力を頼みます。

若い女性と一緒にいる所を目撃されていた内山。その女性との関係を疑われますが・・・。

元気だった内山が少しずつボケていくのを目の当たりにして落ち込む小兵衛が何だか小さく見える・・そんな話です。



↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

今読んでいるのは・・
posted by DONA at 11:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2011年01月04日

池波正太郎「鬼平犯科帳15」

池波正太郎著 「鬼平犯科帳15 特別長篇雲竜剣

(文春文庫)


久しぶりに休みを取るため、私邸に戻っていた平蔵の元へ同心・沢田が顔色を変えてやって来た。腕利きの同心・片山が斬り殺されたと言うのだ・・。急ぎ役宅へ戻った平蔵は、すぐさま与力、同心たちに指示し捜査を開始させた。ところが次の夜、またしても腕利きの同心が斬り殺されてしまいう。火盗改方に対する挑戦ともいえるこの事件を平蔵たちは必死で解決する。


同心・沢田がきっと一番の腕利きなのですが、それよりは少し劣るけど充分な腕をもった同心たちが続けて殺害され、平蔵たちは怒りと共に犯人に対する恐れを抱きます。

半年前に平蔵は、大鴉のような剣客に襲われていました。同じ男が犯人なのか・・?と悩む平蔵。

昔、平蔵の剣の師匠から聞いていた堀本伯道という剣の達人のことを思い出したのですが、伯道はもし生きていたとしたら70歳にはなっているはず・・。

なかなか正体がつかめず焦りと疲労がたまっていきます。


鬼平シリーズでは珍しい長編。読み応え充分で、しかもあっという間に読めてしまう面白い作品になっています。



<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

今読んでいるのは・・
posted by DONA at 17:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2010年12月25日

池波正太郎「剣客商売 十番斬り」

池波正太郎著 「剣客商売 十番斬り

(新潮文庫)


余命わずかと診断された中年の剣客・村松太九蔵は、死ぬことを恐れてはいないが「やり残したことがあるからもうしばらくは生きていたい」と名医・小川宗哲に診察を頼んだ。ちょうどそのとき宗哲を訪ねていた小兵衛はこの浪人のことが気になってしまう。彼は何をやり残したのか?死病に冒された身でありながら何をしようというのか?−「十番斬り」他「白い猫「密通浪人」「浮寝鳥」「同門の酒」「逃げる人」「罪ほろぼし」計7編収録


村松太九蔵の名前だけは知っていた小兵衛。それだけ有名な剣客で、昔、彼の道場を訪ねてどんな人物か会って話してみたいと思っていた矢先、4人の剣客と果たし合いの末、殺害し、江戸を離れてしまったのでした。

それ以来久しぶりに聞く名前に懐かしくなり、今度こそ会って話したい思いもあり、彼を見舞がてら訪ねてみることにした小兵衛ですが・・。

村松がやり残したこととは、世話になった村に巣くう無頼浪人たちを一掃することでした。この浪人たちは数十人の集団で、女性を犯したり、盗みをはたらいたり、無銭飲食をしたり、村人が怖がって何もしないのを良い事にやりたい放題でした。

それを病身でありながら斬り倒すことに決めた村松。一度には相手できませんから、数人ずつ出かけて行くのを見かけては斬っていました。

最後は小兵衛も助太刀するのですが・・・。悲しい結末を迎えてしまいます。


白い猫」では、小兵衛が果たし合いをすることになり、出かけて行きます。ところが途中で白い猫に出会ったことから事件に巻き込まれてしまうのでした。この猫は亡き妻が昔かわいがっていた猫によく似ていて、小兵衛は妻のことも思い出してちょっとしんみりしてしまいます。

同門の酒」は、小兵衛が昔通っていた辻平右衛門の道場で同門だった弟子・孫次郎の話。毎年一度行われる同門会に姿を見せなかった孫次郎のことが心配になり、様子を見に行った小兵衛と十手持ちの弥七は、孫次郎が事件に巻き込まれてかどわかされたことをつきとめます。

ちょっと抜けた所もある孫次郎と、他の高齢の弟子たちの関係が何だか微笑ましい感じでした。


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

今読んでいるのは・・
posted by DONA at 15:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2010年12月18日

池波正太郎「鬼平犯科帳14」

池波正太郎著 「鬼平犯科帳14

(文春文庫)


火付盗賊改方の密偵・伊三次は、岡場所で馴染みの女郎・およねから、胸に傷のある「伊三さん」という名前の男のことを聞いた。その男は伊三次と因縁のある盗賊だった。平蔵に報告し、伊三次が中心となって捜査を始めたが・・−「五月闇」他「あごひげ三十両」「尻毛の長右衛門」「殿さま栄五郎」「浮世の顔」「さむらい松五郎」計6編収録


何人もいる密偵(元盗賊で今はお上のために働く人のこと)の中でも伊三次はかなり古株で、平蔵の信頼も厚い人です。

そして、明るく前向きな性格で、同心の木村忠吾とも仲良く、長い捜査で疲れ果てた仲間を二人で盛り立てたり、支えたりしている無くてはならない存在です。

そんな伊三次が今回は捜査が始まっても見が入らないというか、心ここにあらず・・という状態に。周りは心配してしまいます。

でも、長官である平蔵は、全ての捜査を伊三次に任せて指揮をとらせます。だからといって突き放すわけではなく、全てを把握していて良いタイミングで助言したり、ねぎらったりするのです。

この話での平蔵の様子は、今の社会でも役立ちそう。どうやって部下に気持ち良く仕事をさせるか?良いヒントがたくさんありそうです。


「伊三さん」と呼ばれる男は伊三蔵という盗賊。伊三次とは昔因縁があり、伊三次の命を狙っています。

そして、悲しい結末が・・・。


殿さま栄五郎」は、鷹田(たかんだ)の平十という口合人の話。口合人とは、盗みを働くときにちょっと人手が足りない・・というお頭から頼まれて、手の空いている盗賊を世話する人のことです。

久々に平十と会った密偵・馬蕗の利平治は、平十から頼まれて盗賊を世話してあげることにします。とはいっても密偵なので、盗賊になりすました盗賊改方の同心たちを紹介するわけですが・・。そして平蔵が自ら“殿さま栄五郎”という盗賊になりすまして仲間に入るのです。

ところが、本物の殿さま栄五郎を見たことのある盗賊がいて、偽物を知らずに紹介した平十は盗賊たちから拷問されてしまうのでした。


さむらい松五郎」では、同心・木村忠吾が活躍します。“さむらい松五郎”という盗賊にそっくりだという忠吾を勝手に勘違いして仲間に引き入れた盗賊がいました。

そのまま松五郎のふりをして捜査することになったのですが・・。


何だか似た題名の話が入っていて混乱しそうですが、今回も面白い話がいっぱい詰まっています。



<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


今読んでいるのは・・
posted by DONA at 11:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2010年12月08日

池波正太郎「剣客商売 勝負」

池波正太郎著 「剣客商売 勝負

(新潮文庫)


秋山大治郎は義父・田沼意次から一刀流の道場を構える谷鎌之助との試合を命じられた。鎌之助はその試合に仕官がかかっていたのである。そのことを父・小兵衛に報告すると「負けてやれ」とあっさり言われた。どうすれば良いのか悩む大治郎・・−「勝負」他「剣の師弟」「初孫命名」「その日の三冬」「時雨蕎麦」「助太刀」「小判二十両」計7編収録


以前、牧野越中守から「秋山大治郎を召抱えたい」と熱望されたのを断ったため、大治郎の代わりに召抱えることになった谷が大治郎に勝つことが条件になったわけです。

そんな事情を聞いて小兵衛も妻・三冬も共に「負けてやれ」と言います。大治郎にしてみれば、見たこともない相手に対して「負けてやる」も何もないわけで、もしかしたら真剣に立ち合っても自分が負けるかもしれない・・と言うと「今のお前に敵う剣客はいない」と小兵衛は言い切ります。

それでも勝負はわからないものですから、大治郎は悩んでしまいました。

この話の最後に、三冬が男の子を出産します。大治郎は晴れて父親に、小兵衛はおじいちゃんになりました。


剣の師弟」は、昔かわいがっていた(目をかけていた)弟子・黒田を小兵衛が偶然見かけたことから始まります。黒田は昔、盗みに入り、その家の夫婦や使用人などを斬って逃げました。それ以来、音信不通だったわけですが、久々に見た弟子の様子は、悪事に手を染めていそうな雰囲気をしており、小兵衛は密かに探り始めます。最後は悲しい結末が・・。それ以後、しばらくは元気が出ず、落ち込んだ日々を過ごすほど心に傷を負いました。


初孫命名」では、孫の名前を付けることになった小兵衛が巻き込まれた事件の話。大事な孫の名前、悩みに悩む小兵衛は、いつも悩みを相談する友人を訪ねて行ったのですが、そこで事件が起きるわけです。

孫の名前は「小太郎」になるのですが、結局、小兵衛は悩みすぎて決められず、大治郎の案で決定しました。小太郎は、両親に似て男前の顔をしていますが、小兵衛は「体が小さい。わしに似たのでは??」と悩むのです。

家族が1人増え、更に賑やかになる秋山家。そして「孫ってかわいいもんなのね〜」と改めて感心するくらいの可愛がり方をする小兵衛。ますます楽しみになるシリーズです。


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 11:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎

2010年11月29日

池波正太郎「鬼平犯科帳13」

池波正太郎著 「鬼平犯科帳13

(文春文庫)


居酒屋“次郎八”の常連客は眉毛と眉毛の間も毛が生えて繋がっているという珍しい顔をしていた。その客とよく一緒に飲む、木村忠吾は「一本眉」と密かに呼んでいた。この一本眉には実は裏の顔があったのだった・・−「一本眉」他「熱海みやげの宝物」「殺しの波紋」「夜針の音松」「墨つぼの孫八」「春雪」計6編収録


一本眉の男、木村忠吾と仲良くなって楽しく酒を飲める飲み友だちとして好感のもてる男なのですが、実は裏の顔は盗賊でした。このシリーズに出てくるわけですから当然そうですよね・・。

一本眉は、盗賊の三ヶ条・・盗まれて困る所から盗らない、人を殺傷しない、女に手を出さない・・をきちんと守る正統派の盗賊でした。

目当ての大店に下女として手下を潜り込ませていたのですが、その店が別の盗賊に襲われてしまいました。 しかも“畜生盗め(ちくしょうつとめ)”として盗賊たちからも忌み嫌われる店の者を皆殺しにするという手口での盗み。

下女は必死で逃げたわけですが、盗賊改方は「下女の遺体が無い=下女が盗賊の仲間」と思い、捜査を進めて行きます。

怒った一本眉一味は、畜生盗めをした盗賊一味を探し出して、盗賊改方の前に差し出したのでした。

まあどんな盗み方でも、悪い事は悪いわけですが、それでも結末にスカッとする思いがしました。


熱海みやげの宝物」は、平蔵夫婦が熱海へ湯治に行った所から始まります。そろそろ湯治にも飽きた頃、一緒に来ていた彦十が昔の盗賊仲間・馬蕗の利平治を見かけます。ある宝物を持っているという利平治はその宝物を狙っている者たちから命を狙われていました。それを平蔵が助けます。

墨つぼの孫八」は、おまさの昔なじみの盗賊の話。おまさが一人でいるときに声をかけてきた孫八。盗みの手伝いを頼まれたおまさでしたが、以前と違う様子の孫八に違和感を覚えます。病気で苦しみながら死ぬことを極端に恐れていた孫八の結末は・・。


今回も部下や密偵たちをうまく使って捜査を進める平蔵の姿が楽しめる作品になっています。


<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいでするんるん

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

今読んでいるのは・・
posted by DONA at 11:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:池波正太郎