2023年01月17日

乃南アサ「チーム・オベリベリ 下」

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 乃南アサ 著
 「チーム・オベリベリ 下」
 (講談社文庫)


依然としてオベリベリでの生活は苦しい。初めての豊作を喜ぶのもつかの間、借金を返済するために上納分を取られる。入植した家は当初の十三軒から六軒に減っていた。「晩成社」幹部チーム三人の間に不協和音が流れる。美しく神々しい北の大地で、それでもカネはたくましく生きる。史実を基に描いた感動長編。−裏表紙より−


「女性が好きそう」とか「男らしい」とかそういう言い方は好きでは無いのですが、この小説を読んでいると、ことあるごとに「これだから男の人は」と言いたくなりました。


男性3人で決意をして未開の地・北海道を目指したはずなのに、数年では何ともならないとわかっているはずなのに、とにかくお酒に逃げて、愚痴って妻に当たって、読んでいてイライラすることが多々ありました。

ものすごく大変なことをしていることはわかるのですが、夢を抱き過ぎて現実に直面すると挫折してしまう感じがイライラします。

しかも、男の人たちは、農作業をして家に帰ればのんびりお酒を飲んで騒げますが、女性は結局、農作業をした上に、子育ても家事もあり、お酒を飲んで騒ぐ男性たちの世話さえしなければなりません。


今の便利な生活をしていてもやることはたくさんありますが、未開の地では電気もガスも無いですし、近くに買い物する所も無いわけで、料理を作るだけでも大変、洗濯はもちろん、着替えも買えませんから自分で着るものを作らないといけません。本当にやることがたくさんで常に忙しそうです。

カネは大人しく夫に従っていますが、それでも時々は愚痴も出てしまいますし、夫に文句を言うことも。そんな時に少しでも優しくしてくれたらいいのに、手を上げる始末。よくついて行っていることです。

夫は時々、北海道でも拓けている所に行くこともありますが、カネはずっと不便なオベリベリから出られない状態。私には絶対に出来ないですし、本当に尊敬します。


開拓したら、男性ばかりの名が残っていくのでしょうが、支えてがんばってきた女性たちのことも思って感謝していきたいものです。

彼らのような冒険者がいたお陰で、今は「北海道に美味しい物を食べに行きた〜い!」なんてのんきな感じで旅行に行けるわけですから、ありがたいことです。

読みながらイライラしつつ、でもお陰なんだよね、と言い聞かせていました。


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2023年01月13日

乃南アサ「チーム・オベリベリ 上」

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 乃南アサ 著
 「チーム・オベリベリ 上」
 (講談社文庫)


文明開化の横浜で、女学校に学び教会で洗礼を受けた鈴木カネ。兄の銃太郎は神学校の同窓である渡辺勝や伊豆の素封家の息子・依田勉三と「晩成社」を興し北海道開拓に挑む。卒業後、勝と結婚したカネは父と共に十勝オベリベリへ向かった。厳しい自然に戸惑いながら、先の見えない日々を希望を捨てず生きる女性の物語。−裏表紙より−


文明開化時代、ということは明治時代ですね。その頃の話です。横浜で育ったカネという女性が、北海道開拓をする夫に付いて行く話なのですが、この上巻はカネが女学校で学んでいる所から始まります。

クリスチャンの彼女は、神様を信じ、祈りを捧げながら生活をしています。彼女の学校は外国人が先生となり授業をしています。周りからは時々白い目で見られつつも信念を持って学んでいます。

外国人教師から授業を受けているだけあって、英語も話せる彼女。このまま女学校に残って教師になるつもりでいました。ところが、同じくクリスチャンの兄が友人らと北海道開拓をしようとしていることを知り、興味を持ちます。更に兄の友人の勝に求婚されて共に北海道に行くことに。彼女の父親も一緒に行くことになりました。

カネには妹と弟がいるとはいえ、母親を残して未開の地である北海道に行くなんてびっくりです。カネや兄はともかく、父親はなぜ?と不思議でした。ただ、この時代も男性社会で、妻はひたすら逆らわずに夫の仕事や生活を支えていくのみでしたから、夫が行くのは止められないのでしょうけど。それにしても冷たい人だと思ってしまいました。


今みたいに飛行機もなかった時代、船で何日もかけてやっとたどり着く北海道。その中でも未開の地で暮らそうとするなんて自分には想像もつきません。しかも、自分が開拓したくて行くのではなく、夫が望んでいるからという理由で。精神的に強くないと出来ないことです。

土地を耕して畑にしては、天候や害虫にやられ、冬の寒さにやられてしまう作物。ろくに収入もないというのに、開拓を後押ししてくれているはずの会社からは「金を返せ」と言われる始末。

確かに会社としては利益が出ない以上、融資は出来ないというのはわかりますが、彼らの苦労を見ていると、ものすごく非情なことに思えます。


カネの兄と夫は力を合わせているのですが、もう一人共に移住してきた会社の人はどうも地に足がついていない感じで、開拓よりも会社の存続を気にしている様子。だんだん3人がかみ合わなくなっていきます。

先に望みが出ない状態が続き、他の移住者も去って行ったり、逃げたり、人数も減っていく状況。


お先真っ暗状態のまま下巻へ。


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2022年09月16日

乃南アサ「六月の雪」

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 乃南アサ 著
 「六月の雪」
 (文春文庫)


三十二歳独身、声優になる夢に破れた未來は、入院した祖母を元気づけるため祖母の故郷、台湾・台南市を訪れる。ひと癖もふた癖もある台湾の人たちに助けられながら祖母の生家を捜す旅の中で、未來は台湾の人々が生きてきた過酷な時代の傷跡を知る。そして旅路の果てに、自らの人生に下した大きな決断とは?−裏表紙より−


台湾好きな作家さんらしい作品でした。台湾に関するエッセイを読んで興味をもったのですが、これはまた一段と重かった・・・。

32歳にして、声優の道を挫折した未來。確かに若い子に比べたら仕事の幅も狭くなるでしょうし、難しいのかもしれませんが、アスリートと違ってまだ頑張れるような気もします。でも本人はもう無理だと諦めてしまい、目標を失って日々何となく過ごしている状態でした。

そんな時、同居していた祖母が実は台湾で生まれ育ったと知り驚きます。その祖母が入院してしまったのをきっかけに、未來は台湾に行って祖母の生まれ育った家を捜して写真に収めることにしました。

台湾の言葉がしゃべれるわけでもない未來は父親の知り合いだという女性に案内を頼み単身台湾へ。祖母の記憶もあいまいで、ほんのわずかしかない地名などを頼りに旅をすることになりました。

台湾では父親の知り合いの女性だけではなく、その知人3名とも知り合い、彼らに助けられながら色々な場所を見て回ります。どうやらこの辺りで祖母が生まれたのではないか?という場所では、ある台湾の女性と出会い、何日かかけて長い長い彼女の人生を聞くことになりました。

戦中戦後の日本でもきっと同じようなことはあったのでしょうが、彼女の語る言葉をしっかり頭に入れてかみ砕こうとしたら自分が辛くなりそうで、出来るだけ斜め読みするようにしました。

戦争は国のトップの人が起こすことではありますが、結局被害を受けるのは国民。どんな大義名分を掲げても、勝っても負けても辛いのは国民です。なぜ戦争なんてするんだろう?そればかり考えてしまいました。


台湾は特に被害が大きく、色んな国に支配されたのでその度に言葉や文化まで変えないといけなくて大変な思いをしています。よく日本が好きでいてくれたと感謝しかありません。

物語という形態をとってはいますが、台湾の旅行記のような内容で、台湾の歴史を知ることが出来る作品でした。

台湾のことをあまり知らない方、ぜひ読んでもらいたいです。


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2022年01月24日

乃南アサ「美麗島紀行」

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 乃南アサ 著
 「美麗島紀行」
 (新潮文庫)


美しき、麗しの宝島、台湾。数奇な運命を辿ったこの島に魅了された作家が、丹念に各地を歩き、人々と語り合い、ともに食べ、その素顔を描き出す。日本人の親友の妹と結婚した考古学者、日本統治下時代を「懐かしくて悔しくて」と語る古老、零戦乗りを祀る人々。そうした彼らの面影には私たちが見失った私たち自身の顔も浮かび上がるのだった――。歴史と人に寄り添った、珠玉の紀行エッセイ。−裏表紙より−


エッセイとか自叙伝とか苦手なんですが、以前、この作家さんのエッセイを読んで面白かったので、今度は旅行記にチャレンジしてみました。

旅行先が台湾ということで、こちらも興味がありました。特に行きたいという想いはないのですが、台湾について知りたくて。

台湾がどこにあるかということは知っていますし、大体の大きさとか雰囲気はわかります。でもそれくらいの知識しかありません。知識と呼べないほどです。

そんなに浅い感情しかないのに、台湾の方は東日本大震災の時には真っ先に救助隊を派遣してくれましたし、多額の義援金も寄付して下さいました。親日家が多いともよく聞きます。

台湾に対して日本はどんなことをしてきたのだろう?と疑問でした。でもこの作家さんのように行って確かめよう!という行動力も強い思いもない私。ちょうど良い本に出会えました。


読み始めると、作家さんも同じ疑問を持って旅行していることがわかり、興味津々になりました。でも出てくるのは日本が台湾を占領して統治していたという話ばかり。

そうだよね、歴史というか現代社会の授業で習ったような気がしていたんだよな・・。なのにどうして親日家が多いんだろう?

色んな所に出かけて行っては台湾の歴史を学ぶ作家さん。その度に「日本に占領されて」と出てきます。なかなか答えが出てきません。


最後まで読んで何となくわかったのは、結局、日本が台湾から去った後、中国など他の国に占領された時の方がよりひどい扱いを受けたから、日本の方が良かったという感じだったのか?ということ。

もっと劇的に何か貢献したのかと思ったらそんな感じか・・とちょっとがっかり。

でもどんな理由であれ、辛い目に合わせてきた、ひどいことをしてきた私たちの国に対して、親しみを覚えてくれたり、助けようと思ってくれたりしてくれるのは本当にありがたいですし、感謝しかありません。


もう少し台湾のことを知る努力をすることは必要ですね。まずは学校の授業で現代社会をもっと詳しく教えていってほしいと思います。私は台湾の話題にもっと耳を傾けようと思います。


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2021年09月10日

乃南アサ「犬棒日記」

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 乃南アサ 著
 「犬棒日記」
 (双葉社文庫)


犬も歩けば棒にあたる――。その故事のごとく、一歩外に出てみれば、そこで出会うのは災難か幸運か!? 巧みな人物造形と心理描写で多くの読者から支持される著者が、自ら街で見た人物や光景を日記形式で描く随筆集。直木賞作家の目に、その人は、あの出来事は、どう映るのか。あなたの身近の風景も、著者の手にかかれば、一瞬にして物語になる!−裏表紙より−


普段は、いくらお気に入りの作家さんであったとしても、エッセイというものはほとんど読みません。一番の理由は、お気に入りの作家さんと言っても、作家さん本人が好きというわけではないから、人となりを知りたいと思わないということです。人となりを知ってしまったら作品に作家さんのことを投影してしまって面白くなくなるんじゃないか?とも思ってしまいます。表紙をめくった所に作家さんの写真が載っていることもありますが、なるべく見ないようにするくらい。今野敏さんのようによくテレビでお見掛けする方は知っていますが、ほとんどの方は町で出会っても、テレビに出ていてもわからない自信があります。


なのに、今回はなぜか手に取ってしまいました。何となく表紙の雰囲気と題名とあらすじに惹かれてしまったんですよね。

苦手なエッセイ、最後まで読めるか心配しながら読み始めました。結果は、面白かった!


エッセイ、日記と言いながら、ちょっとミステリっぽい内容だったので、この先どうなるんだろう?とドキドキワクワクしながら読み進められました。

もちろん、ミステリではないのでオチや答えは無いのがほとんどなのですが、それが心地いいと思える内容でした。


普段、あまり人には興味のない私ですが、意外と人間ウォッチングとかは好きで、例えば何かの待ち時間で暇なときとかに道行く人を眺めて、その人の人生や今から何をしに行くのか?などを考えることで時間が潰せることもあります。

それに近い内容だったので読みやすかったのかもしれません。面白い行動をしている人のことを書いて、作家さんが「こういう考えで行動しているのかな?」と想像していることを書く。もちろんそれが正解なのかはわかりませんが、なるほどこの作家さんはそういう風に考えるのね、と思うのが楽しかったです。


毎朝、同じ電車に乗っている見知らぬ人たちのことを想像したことはありませんか?「あれ?この人今日は疲れているみたい」とか「この人何か楽しそうだな」とか「いつもと違う服装だということは、帰りに寄り道するのかな?」とか。そういう想像をするのが好きな方は、この作品は楽しめると思います。

同じ人を見ていたとしても、小説家だったらこんな風にまとめることが出来るんだなと、変な感心もしてしまいました。今後はエッセイもたまには読んでみようかな?


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2021年04月26日

乃南アサ「いっちみち」

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 乃南アサ 著
 「いっちみち」
 (新潮文庫)


家族が引き起こした不祥事で故郷を離れ、コロナ禍のなか帰郷した女性。母の実家で、家業代々の秘密を知った息子。両親を事故で失い、我が家にやってきた不思議な従妹。わかりあえると思ったら、遠ざかる。温かいのに怖い。恋があって、愛があって家族になったはずなのに――。「人間」という人生最大のミステリーを描き続けてきた作家による、傑作短編を精選した文庫オリジナルアンソロジー。−裏表紙より−


いっちみち」「ルール」「青い手」「4℃の恋」「夕がすみ」「青い夜の底で」「他人の背広」「団欒」の7編収録。


表題作「いっちみち」というのは、方言です。ちょっと行ってみて〜みたいな感じです。両親の都合で、子どもの頃に故郷から逃げて来た女性が、新型コロナウィルスが流行し始めた頃、移動が制限される前にちょっと故郷に帰ってみようかな?と思い立ち、行くことになるという話です。

両親がなぜ故郷を離れないといけなかったのか、今彼女が帰っても問題はないのか、田舎ならではの人間関係や幼い頃の恋など、色んな出来事が描かれています。この話は最後までほっこり出来る内容でした。

でも表題作以外は何とも後味が悪い話ばかり・・。


ルール」は突然、神経質になって除菌など細かいルールを作り始めた家族の話。これもこのご時世にはありそうな話ではありますが、どんどんエスカレートしていく家族の様子にゾッとさせられました。最後も・・・・。


青い手」が一番気持ち悪かったかも。始めのうちはのどかな田舎の雰囲気で進むので安心しかけたのですが、少しずつ秘密が明らかになっていくと怖い!ホラー的な雰囲気で終わりました。私の苦手分野!


4℃の恋」もなかなかの内容。これはゾッとするというか、ここまで「死」に対して冷酷でいられるものなのか不思議な気持ちになりました。身内の死よりも自分の恋を優先させる展開が怖かったです。


団欒」も「死」を軽く扱いすぎ!と思うのですが、ここまで軽く扱っているのを読むとどこか笑えて来るのがまた怖い。自分たちの保身にばかり気を取られる彼らがなかなか怖いです。途中まででも怖いのに、オチがまた・・・。家族が集まって誰もまともな人がいないのが救いようのない状況です。



という感じで、どの話も最後までいや〜な展開で、オチも「これで終わるつもり!?」と後味の悪さ全開。

表題作以外、どれも救われない展開ですが、変に笑える感じもあって、何とも言えない感情がわきました。

まあ、たまにはこういうのも良いのかな?でもすぐに確実に安心できる作品で口直ししたくなります。


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2019年10月30日

乃南アサ「家族趣味」

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 乃南アサ 著
 「家族趣味」
 (廣済堂文庫)


夫と中学生の息子をもちながら家族も仕事も趣味と断言、若い男たちとの恋も奔放に楽しんできた主人公。そんな日常が突然、呆気なく壊れていく・・。
表題作をはじめ、宝石のとりこになった女性の執念を描く「魅惑の輝き」、人望の厚いやり手課長の豹変を描く「忘れ物」など、人間の心の闇を抉った傑作短編5編。
−裏表紙より−


こういう、人間の心の闇みたいなものを描くのが本当に上手な作家さんです。

全ての作品がゾクッとする内容になっていました。


表題作の「家族趣味」は、最終話なのですが、最後に最大級のゾクッとを詰め込んで終わりました。始めはほのぼのとした雰囲気だったのに、徐々に怪しくなっていき、最後は・・。

周りから見ると、お互い名前で呼び合うような家族は仲良さそうですけど、よく考えたら親のことを名前で呼んでいるのはやはり変ですね。仲が良いというか、けじめがない感じにも思えます。

家族って、外から見るのと内の事情は違うもんですね・・。一度壊れたらとことんまでバラバラになっていく感じが怖かったです。この家族は修復不可能だろうな・・。


魅惑の輝き」も怖かったです。買い物依存症、この話に出てくる女性は中でも宝石に依存しています。私は全く買い物が好きではないので、買い物依存症になる心配は無いですけど、女性は多いようですね。

ブランド物の良さや宝石の魅力が全くわからないので共感は出来なかったのですが、「これ」と思ったら押さえられない感情というのは何となくわかります。

それでも大抵の人は抑えきらない感情を抑えて生きているのですが、一度外れたら止まらないのが怖いです。

気に入った宝石を手に入れるために堕ちる所まで堕ちていく状況。怖い世界です。


大好きな作家さんなので、まだ読んでいない本を見つけたら、どんどん読んでいく予定です。


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2019年01月30日

乃南アサ「最後の花束」

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 乃南アサ 著
 「最後の花束 短編傑作選」
 (新潮文庫)


色恋をめぐる狂気は、その女たちを少しずつ蝕み、少しずつ壊していった・・。ある女は大阪に引っ越してまで愛人を追いかけ、またある女は親友の婚約者を欲しがる。職人の夫の浮気を疑った妻は夫の作る提灯に火を仕込み、OLは見る間に垢抜けた同僚への嫉妬に狂う・・。サスペンス・ミステリーの名手による短編を、単行本未収録作品を加えて精選したベスト・オブ・ベスト第一弾!−裏表紙より−


「くらわんか」「祝辞」「留守番電話」「青空」「はなの便り」「薬缶」「髪」「おし津提灯」「枕香」「ハイビスカスの森」「最後の花束」の11編が収録されています。

かなり読み応えのある作品集でした。

どんな内容の短編集なのか知らずに読み始めたので、1話目の「くらわんか」のなんてことない日常のような始まり方に、どんな終わり方をするのか、何が言いたいのかと不思議な気分になりました。そしてラスト・・!

すごいブラックな結末にびっくりしました。女性の恨みは怖い・・。同性ながらゾクッとしました。


2話目の「祝辞」もかなり怖い。同性同士の嫉妬は、男性が絡んでくると余計に怖いですね。


青空」は職業柄、本当に嫌な話だと感じました。ありえないことが多すぎたのでこれはちょっと共感できず。


ずっと暗くてゾクッとする内容が続いた後の「はなの便り」は、ホッとさせられました。途中まではこれも嫌な終わり方をするに違いないと思いながら読んでいたのですが、微笑ましくて良かったです。まあ納得したわけではないですけど。たまにはこういうのも無いとしんどいですから。


薬缶」は短いのに一番怖かったかも。奥さんの気持ちがギュッと詰まっていて重かったです。


そしてやはり一番印象に残ったのは表題にもなっている「最後の花束」 あー、そういうオチか!と驚かされたのと、鮮やかなだまさ方にすっきりしたのと、複雑な気持ちになりました。


11話のうち、2〜3話以外は女性の嫉妬が引き起こす怖い物事が描かれていて、同性が読むとどこかに思い当たる所があって共感できると思います。そして、共感することに嫌気がさす・・。

女性って!!


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2017年12月28日

乃南アサ「死んでも忘れない」

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 乃南アサ 著
 「死んでも忘れない」
 (新潮文庫)


夫婦と、息子ひとりの3人家族。どこにでもある、新興住宅地の平穏で幸福な一家だった。妻が妊娠したことで、新たなる喜びに一家は包まれる・・・・はずだった。しかし、ある朝、夫が巻き込まれた小さな事件が思いもよらぬ展開を見せ、彼らの運命を大きく狂わせていく―。次第に追い詰められ、崩壊に向かう家族に、果たして救いはあるのか? 現代の不安を鋭くえぐった心理サスペンス。−裏表紙より−


題名と表紙の雰囲気から、怖そうだと思いつつ読みました。いきなり妻の妊娠。これは旦那が浮気して、愛人にも赤ちゃんが出来て、奥さん流産して・・とものすごく悪い方悪い方へ考えてしまったのですが、最終的には違ってホッとしました。


夫婦と息子という3人家族ですが、妻と息子は血のつながりがない関係。でも長年一緒に暮らしていて、2人は仲良くやっています。でもある日、夫がある事件に巻き込まれたことで家族の関係に亀裂が・・。

妻も妊娠がわかって、少しずつ本性が見えてきます。義理の息子とはうまくやっているようですが、夫の前ではポロポロと血のつながらないことに対する不満が。

息子の方も学校での人間関係がこじれていくことで、家庭への不満が出てきます。

夫も家庭のことよりも自分の問題と仕事のことに精一杯になり・・。


表面上だけうまく取り繕っていたら、ちょっとのきっかけで家族なんて壊れていくんだと思うと読むのが怖いくらいでした。でもどうなっていくのか気になって次々読み進めました。

最悪な状況も想像しながら読んだのですが、途中で急に全てが収まる結果に。

最後は、4人になる家族が幸せに暮らしていってくれるだろうと思えて、ほっとしました。

不穏な題名に踊らされた作品でした。


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2016年09月06日

乃南アサ「新釈 にっぽん昔話」

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 乃南アサ 著
 「新釈 にっぽん昔話」
 (文春文庫)


大人も子どもも楽しめる、ユニークな昔話の誕生です。「さるかに合戦」「花咲かじじい」「一寸法師」「笠地蔵」など、誰もが知っているお話が、練達の作家によって誰も読んだことのない新解釈を施され、極上のエンタテインメントに大変身! 現代的な装いを加えながらも懐かしさを失わない、6つの物語をどうぞご賞味ください。−裏表紙より−


裏表紙に紹介されている話以外に「三枚のお札」「犬と猫とうろこ玉」が収録されています。

子どものころに読んだ懐かしい昔話の数々が、現代風にアレンジされていると知って、読んでみることにしました。


最後まで読んで思ったのは、予想よりあまり大きな変化がないなということでした。

確かに現代風にアレンジはされていますが、話の流れとかはそのままですし、現代風とはいえ昔話は昔の話であって、時代は現代に置き換えられたりはしていません。

よく考えたら、すべておとぎ話だから、現代風にといっても限界がありますよね。話を大きく変えてしまうと、元は何だっけ?となってしまいますし。

だから、さるやかにがしゃべりますし、おじいさんが灰を撒いたら花が咲きますし、一寸しかない子どももいますし、お地蔵さまがしゃべって動きます。

大筋はそのままに、細かい部分をこの作家さんらしくアレンジして、というか深読みして描いている感じです。

さるとかにが実は良い仲になっていたり、一寸しかない子どもがどんな思いで都に出たのか描かれていたり、お地蔵さまに親切にしたおじいさんはどんな人生を歩んで来たのかが描かれていたり。

昔話の裏にある、登場人物たちの思いがより深く描かれている感じがしました。

懐かしい気持ちと、くすりと笑ってしまう部分とあって、なかなか面白く読めました。もっとアレンジしていても楽しめたのかもしれませんが、昔話が題材ならこれくらいのアレンジでも良いのかもしれません。

あとがきを読むと、あまり大きくアレンジしなかった理由もわかる気はしました。


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2015年09月19日

乃南アサ「鍵」

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 乃南アサ 著
 「鍵」
 (講談社文庫)


両親を相次いで喪った三人きょうだいの末っ子で高校二年生の麻里子は、いつの間にか端が切れた鞄を縫おうとして隙間に挟まれていた鍵に気付く。近所で頻発する通り魔事件とのつながりを疑うものの、最近よそよそしい兄には相談できず、自分で持ち主を探そうとするが・・・。家族の機微を描く傑作ミステリー。−裏表紙より−


新装版ということで、かなり古い作品だそうです。話の中にもポケベルという懐かしい物が登場します。表紙のセーラー服がぴったりくるような時代ですね。

この作家さんの作品はまだまだ読んでいない物がありますが、制覇するのは難しそうだと思っていました。でもこうやって新装版として再版してくれると見つけやすくなって助かります。


いきなりお葬式の様子から話は始まり、どういう内容なのか不安になる感じでした。通り魔事件も起きますが、それがこの家族にどんな影響を与えていくのかがわからず、次々読み進めることになりました。

まさか兄が犯人?とか思っていたのですが、意外なことに高校生の麻里子が関連ありそうな雰囲気になっていき、面白くなっていきました。

麻里子にはあるハンデがあるので、普通よりも犯人探しというか事件の調査は難航してしまいます。本来なら兄に相談する所なのですが、兄の態度が変だったので相談できず。

ホント、この兄にはイライラさせられました。気持ちはわからなくもないのですが、もう成人していますし、社会人として働いていた時期もあるくらいなのですから、そろそろそういう甘えは無しにしたら?と何度も思いました。出てくる人みんな不器用で、どうなっていくのか心配しながら読みました。


両親もすでに他界していたため、1人で調査を続けていきます。そのたどたどしさにハラハラさせられながら読んでいるうちに事件は解決します。まだ犯人を確信していないときに、犯人から正体が明かされるって感じでしたが。

失いかけて初めてわかる家族の大切さ。というまあありがちな展開ではありますが、収まる所におさまって、ハッピーエンドで良かったです。そうでないとこの話は納得できないですから。

事件の内容的には納得できない所がいっぱいありましたけど。事件を起こしたきっかけがどうにも納得できませんでした。他に方法はあっただろうに・・。まあでもこの物語のメインは事件のことではないので、これはこれで良いのかな?


この作家さんの文章は好きなので、また何か見つけて読もうと思います。


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2015年05月09日

乃南アサ「いちばん長い夜に」

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 乃南アサ 著
 「いちばん長い夜に」
 (新潮文庫)


ペットの洋服作りの仕事が軌道に乗ってきた芭子と、パン職人の道を邁進する綾香。暗い場所で出会い、暗い過去を抱えながら、支え合って生きてきた。小さな喜びを大切にし、地に足のついた日々を過ごしていた二人だったが、あの大きな出来事がそれぞれの人生を静かに変えていく。彼女たちはどんな幸せをつかまえるのだろうか―。心を優しく包み込む人気シリーズ、感動の完結編。−裏表紙より−


一作目では、芭子の後ろ向きさというか、笑ってはいけないと思っている真面目さが心配でたまらなかったのですが、だんだん今まで明るかった綾香の本音が知りたくなってきていました。

いつも軽口を言って笑わせている彼女は本当はどういう気持ちで日々を過ごしているんだろう? 服役していた年数は芭子の方が長いわけですが、犯した罪の重さは綾香の方が実は重いわけで、情状酌量される部分はあるとしても、人の命に代わるものは無いのにそれを奪ってしまった罪はきっと簡単には償えないはず・・。

このまま明るく終わってほしい気もしましたが、やはり綾香の心に触れてしまいました。それはあの東日本大震災がきっかけになります。

震災といえば、自分が経験した阪神淡路大震災を思い浮かべてしまい、東日本大震災の映像も直視できない状態になっていました。でも前者とは違って目の前で起きていることではないので、何もできずただただ早い復興を願うしかない自分がいました。

今まで震災についての話題を避けてきた私ですが、この作品を読んだことで目をそらしてはおけなくなりました。綾香がパン屋の職人に対して怒鳴った言葉や、芭子に対して吐き出した心の内、その一つ一つが私の心にも刺さる気がしました。

そして、綾香が震災をきっかけに、命の重さ、尊さ、大切さを改めて思い出し、それを奪ったことに対する罪の重さにやっと気づいたのは読んでいてつらかったですが、やはり必要なことだったのかもしれないと思いました。


震災をきっかけに変わったのは、芭子も同じでした。今まで後ろ向きでいた彼女も少し前を向けたり、周りに目を向けたりできるようになりましたし、今後の人生も変わっていきそうな雰囲気になりました。彼女はきっともう大丈夫だと思えるほど強くなりました。

最後は2人に明るい未来が広がっていきそうな予感がする終わり方をしていたので、読み終わったときは明るい気持ちになれました。でも、終わったのはとても残念ですし、また続編を書いてほしいと思います。

この2人に出会えて本当に良かったです。この作品を最後まで読めて良かったです。そう思える作品でした。


<芭子&綾香シリーズ>
「すれ違う背中を」
「いつか陽のあたる場所で」


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2013年06月10日

乃南アサ「禁猟区」

禁猟区

 乃南アサ 著
 「禁猟区」
 (新潮文庫)



ホストにいれあげている中年女・若山直子の資金源は、ホストクラブで借金がかさみ、身動きのとれなくなった少女たちだった。経営者を脅して得た顧客情報から、未成年者の親に当たり、「解決してやる」とカネを要求する。直子の職業は、警察官だった―。犯罪に手を染めた警察官を捜査する組織、警視庁警務部人事一課調査二係。女性監察官沼尻いくみの活躍を描く傑作警察小説四編。
―裏表紙より―


新シリーズです。あらすじを読むと沼尻いくみという監察官が主人公で、彼女の視点で話が進められていくのだろうと思ってしまったのですが、最後の1話以外は取り締まられる側の警察官の視点で進みます。

なので、監察官の話と言いながら、どうやって捜査してどうやって証拠をつかんでいったのか?という所が細かく描かれておらず、唐突な感じがしました。

正義の味方であり、清廉潔白であるべき警察官が、どうして犯罪を犯してしまうのか・・なるほど、こうやって人は落ちていくのね、というのはよくわかるようになっています。


警察官とはいえ、一人の人間。・・・確かにそうなんですけど、それでは済まされない職業だということを、もっと自覚してもらいたいものです。

そんな言葉を言い訳に出来る職業では無いはずですから。

現実にはこんな警察官たちがいないことを強く願ってしまいました。


毎回、沼尻たち監察が登場するのは終わりの方。でも時々書かれる、沼尻の「監察官」の仕事に対する悲しみとか虚しさのような感情が、何とも切ない感じを作り出します。

最終話では、沼尻自身の私生活も少し明らかにされます。そのお陰で彼女の人柄なんかがちょっと見えた気がしました。この辺は、今後もっと深く描かれていくのでしょう。

監察官の中にも深く描いたら面白そうな人がいますし、そこも楽しみにしながら続きを待つことにします。


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2013年04月15日

乃南アサ「地のはてから 下」

地のはてから 下

 乃南アサ 著
 「地のはてから 下」
 (講談社文庫)


小樽での子守奉公で初めて都会の暮らしに触れたとわは知床に戻り、森のなかでアイヌの青年と偶然再会する。しかし彼への恋心は胸に秘めたまま嫁ぎ、母となる。やがて戦争の足音が・・。まだ遠くない時代に、厳しくも美しい自然とともに生きてきた人の営みを鮮烈に描きだした感動巨編。中央公論文芸賞受賞。−裏表紙より−


大正時代って、昭和生まれの私としてはそこまで昔というイメージが無かったのですが、この話を読んであまりの違いに時の流れの速さを感じました。よく考えたら平成だってすでに25年ですし、昭和も64年あったわけですから、90年以上前になるんですよね。しかし、東京ではエスカレーターもあったみたいですし、それなりに発展はしていたようです。この話の舞台は北海道ですから、都会よりは発展が遅かったのでしょう。

それにしても、“戦争”って、経験のない私にはピンとこない出来事ですし、同じ人間同士でなぜ殺し合うのか理解できないですし、何より「国のため」って??と思うので、この時代に生きた人たちは、たくさんの理不尽なことに耐えていたんだと改めて思いました。


とわも、色々な苦労をします。子守奉公をするため、実家から離れて生活し、そこでも様々な困難に合いながらも耐えて生きます。不況の影響で実家に帰された後も自由になるはずもなく。

森で幼い頃に共にあそんだアイヌの青年と再会して恋心も芽生えたというのに、その頃は恋愛結婚なんてほぼ無い時代ですから、当然恋が実るはずもなく、親の選んだ人物と結婚します。顔も見たことのない相手との結婚。今では考えられない状況です。

とわはアイヌの青年に心を残し、人形になったつもりで嫁ぎますが、相手の男性がまた情けない人で・・。何度「しっかりしろよ!」と思ったことか。でも、とわもキツイことばかり言って、こんなんじゃ夫のやる気も失せるよな・・とも思い、やはりお互いを思いやる気持ちがないと結婚生活なんてうまく行かないんですよね。

とはいえ、子どもにはたくさん恵まれ、この時代らしく次々と出産し、育てていきます。そんな中、時代は戦争一色に。「男子を産んでも戦争に取られるから嫌だ」と思っていても口に出せない世の中。年齢的に、戦争には駆り出されないだろうと思われていた夫にまで“赤紙”が来てしまいます。

とわの人生は本当に大きな幸せもなくかわいそうになっていたのですが、最後にとわがこんなことを思っていたことで少し救われました。

いつの頃からだろう。どんな話をするときにでも、とわは何となく微笑んでいられる自分を感じるようになった。(中略)どう足掻いても、この人生がやり直せるものではない。いくら泣いたり叫んだりしたところで、世の中は自分一人の力では変えられないことだらけだ。(中略)だからせめて深呼吸の一つでもして、あとは時をやり過ごす。そんなときには、笑っているより他、出来ることもないと思う。だから何となく笑うようになったのかも知れない。

穏やかに微笑みながら子どもたちを見ているとわの姿が浮かびました。彼女と共に人生を歩んで来たような気がするくらい入り込んで読んでいたので、読み終わったときにはドッと疲れが出ました。

でも、どこか心地良い疲れだったと思います。


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2013年04月13日

乃南アサ「地のはてから 上」

地のはてから 上

 乃南アサ 著
 「地のはてから 上」
 (講談社文庫)


凍てつくオホーツク海に突き出し、人も寄せ付けぬ原生林に覆われた極寒の地・知床。アイヌ語で「地のはて」と呼ばれたこの地に最後の夢を託し、追われるようにやってきた開拓民の少女。物心ついたときにはここで暮らしていたとわは、たくましく生きる。今日から明日へ、ただ生き抜くことがすべてだった。−裏表紙より−


全く内容を知らないまま読み始めたわけですが、いきなり「北海道移住手引草」という物が載っていて、これからどんな話が始まるのかドキドキしました。

更に、登場人物たちの話す方言の訛が強くて、理解するのに時間がかかり、読みにくく感じたのですが、すぐに慣れて気づけば読むスピードも上がりました。


雪の多い福島辺りに住む、つねという女性が、家業の農業をしながらも放浪癖のある夫の帰りを待っている・・という所から話は始まります。

この夫というのが本当にイライラする人で、結婚して子どもも2人いるのに、いつまでも夢を追って、家に寄り付きません。たまに帰ってきても夢物語を語るだけ。

こういう人って、もし挫折したらどうしようもないくらい落ち込んで、立ち直れないんだよな・・と思っていたら、やっぱりそうでした。彼のせいで、この頃(明治から大正になった頃)まだ未開拓の土地も多かった、北海道へ開拓者として行くことになりました。

鉄道などが整っているわけもなく、北海道にたどり着くまでに長い長い時間と、苦痛の旅を続け、知床まで行き、蔓草や木がたくさん生えている土地を地道に畑へと耕していきました。

・・という苦労の連続が多い人生を歩むつねの話は、序章で終わります。


第一章からは、つねの娘・とわの視点で話は進みます。幼いとわが無邪気な言動で、苦労の多い生活を明るくしてくれるように思えましたが、そのまま明るくなるはずもなく。

第三章では、幼いとわが小樽の町に奉公に出されることになります。


彼女が幼いながらもたくましく生きていく姿には、何度も泣きそうになりながら読み進めました。ただただ笑って暮らせる年齢なのに「大人になってもっと自由に生きたい」と思うなんて。

彼女が少しでも幸せになれるようにと願いつつ、続きも読むことにします。


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2013年02月15日

乃南アサ「自白」

自白

 乃南アサ 著
 「自白」
 (文春文庫)


“アメリカ淵”と呼ばれる渓谷で発見された女性の全裸死体。手がかりは仏が身につけていたネックレスただひとつ・・・。警視庁捜査一課の土門功太朗は、徹底的な地取り捜査で未知の犯人ににじり寄る。やがて浮かんだ容疑者。息詰まる取調室の攻防。懐かしの昭和を舞台に、男たちの渋い仕事っぷりを描いたノスタルジー刑事小説。−裏表紙より−


あらすじにもあるように、昭和の時代が舞台になっています。私が子どもの頃の話なので、色々と懐かしい出来事が描かれていて、その部分でも楽しめました。

一番懐かしかったのは500円玉の登場! 若い人はもう知らないでしょうね〜。私が子どもの頃は500円札でおこづかいをもらっていたので、硬貨になると同じ値段なのに価値が下がる気がして嫌で、母親にお札を残しておいてほしいと頼んだ覚えがあります。


まあそんなことはともかく・・・。



アメリカ淵」「渋うちわ」「また逢う日まで」「どんぶり捜査」の4話が収録されています。連作短編なのですが、時系列は順番通りではありません。

土門という刑事が主人公なのですが、娘二人を持つ中年男性で、好きになれるか不安だったのですが、そんな心配は無く、すぐに好きになり一気読み状態でした。

1話に1つの事件が起きて、それを捜査一課の刑事たちが捜査し解決していくわけですが、土門はその刑事たちを束ねる役柄。とはいえ、トップというわけではなく、中間管理職的な立場で、現場にも出向きますし、取り調べもします。

彼が最後にどんな風に捜査内容をまとめて、どんな風に取り調べで容疑者を落とすのか? 気になって次々ページをめくっていました。

良い味を出しているおじさん・・と言った感じ。


昭和が舞台なので、戦争が終わり、高度経済成長・・と、大きく変化を見せる日本が生み出した事件や犯罪者が、良い雰囲気を作品全体に醸し出しています。


新シリーズということなので、次作が発売されるのも楽しみに待つことにします。



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2012年12月07日

乃南アサ「すれ違う背中を」

すれ違う背中を

 乃南アサ 著
 「すれ違う背中を」
 (新潮文庫)


パン職人を目指して日々精進する綾香に対して、芭子はアルバイトにもなかなか採用されない。そんなある日、ビッグニュースが! 綾香が商店街の福引きで一等「大阪旅行」を当てたのだ。USJ、道頓堀、生の大阪弁、たこ焼き等々初めての土地で解放感に浸っていた彼女たちの前に、なんと綾香の過去を知る男が現れた・・。健気な女二人のサスペンスフルな日常を描く人気シリーズ第二弾。


どうやらテレビドラマ化するらしい・・。帯にキャストの写真が載っていたのでイメージが付きそうでちょっと気になりましたが、読み始めたらすっかり忘れてしまいました。


芭子と綾香、2人とも自分でも言っているように、出所してからの方が生きにくそうにしています。今でもまだ罪をつぐなっている感じ。

確かにそれだけの罪を犯したわけですから、反省することは必要だと思いますけど、もう少し楽しい人生を生きても良いのではないか?と感じるくらい、ひっそりと暮らしています。

そんな2人が珍しく旅行に行きました。旅行代はくじで当てたのでタダ。とはいえ、食事や土産などは自腹なのですから、本当に珍しい贅沢です。

楽しい旅行になるはずが、どうも何か悪い物を引き寄せる力が働くようで、綾香の昔の知り合いと出会ってしまいます。懐かしい思いで食事を始めるのですが、そのまま楽しく終わりませんでした。かなり落ち込んで帰ってきた2人。

2人の様子を見ていると、犯罪は絶対にダメ!だと改めて思います。綾香の場合は仕方ない部分もあったとは思いますが、それでも一度でも犯罪を犯してしまうと、これだけ苦しむことになるのですから。


前作「いつか陽のあたる場所で」は、終始暗い雰囲気に包まれている感じがしましたが、今作は少し明るくなる部分もありました。何とか前を向いて進んでいけそうな様子を見ていると、嬉しくなります。

・・とまあ、話に入り込んでしまっているので、実在の人物かのように心配しながら読んでいるんです。

次で、シリーズは完結するそうです。ちょっと寂しい気がしますけど、いつまでも2人に幸せが来ないのも悲しいので、明るい結末を楽しみに、文庫化を待とうと思います。


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2012年11月13日

乃南アサ「ニサッタ、ニサッタ 下」

ニサッタニサッタ 下

 乃南アサ 著
 「ニサッタ、ニサッタ 下」
 (講談社文庫)


借金を何とか返し終えた耕平は、北海道・斜里の実家に戻る。その雄大な自然に癒されたものの、働き口は見つからない。そこに新聞配達所で一緒だった沖縄出身の竹田杏菜が突然やって来る。ようやくスーパーの正社員の道が見せてきた矢先、酒酔い運転で事故を起こしてしまう。明日への希望を問う感動長編。−裏表紙より−


上巻の終わりで、やっぱり北海道へ帰ろう!と決めた耕平。これでやっと安定した生活に戻れる・・と思いながら下巻を読み始めたのですが。

東京のような大都会でも、仕事が見つからなかったのに、北海道で見つかるはずもなく・・。北海道でも都会ならあるのかもしれませんが、耕平の実家は田舎にあるようです。(北海道の地理に詳しくないのでよくわかりませんが)

帰って数ヶ月は何もせずに過ごしていて、やっとスーパーのアルバイトが決まりそうになりました。そんなとき、東京から耕平の後を追うようにして、新聞配達所で同僚だった杏菜がやってきます。

耕平は自分に好意をもっていて追いかけて来たのだと思ったようですが、杏菜には別の理由がありました。それは後半になって明らかにされます。


杏菜もなかなか壮絶な人生を歩んできたようで、その生い立ちには思わず涙が出てしまいました。もしそばにいたら「よくがんばったね」と頭をナデナデしていたかも。

彼女が背負っている辛い想いを、耕平が半分持ってあげられるように、立派な人になってほしいと強く願いながら読み終えました。

耕平が事故を起こした後のわがままぶりには本当にイライラさせられましたが、彼も最後にはどうやらやりがいのある仕事を見つけたようなので、今度は大丈夫でしょう!


上下巻と長い話ではありますが、あっという間に読めてしまい、入り込んでしまいました。面白かったです。


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2012年11月12日

乃南アサ「ニサッタ、ニサッタ 上」

ニサッタニサッタ 上

 乃南アサ 著
 「ニサッタ、ニサッタ 上」
 (講談社文庫)


転職した会社が倒産してしまった片貝耕平は、人材派遣会社に登録したがどの仕事も長続きせず、担当者と喧嘩して辞めてしまう。アパートの更新もできなくなり、一発逆転を夢見てギャンブルにのめりこんで消費者金融の「回収担当」に追われる身となった耕平は、ようやく住み込みの新聞配達の仕事を見つける。−裏表紙より−


「ニサッタ」は、アイヌの言葉で「明日」という意味だそうです。読んでいくうちにこの題名が沁みてくるような内容になっています。


主人公の片貝公平は、25歳にして人生の挫折を味わっています。

北海道出身の彼は、華やかな生活を送るために上京します。

大学を卒業して就職した会社で、上司と合わずに辞めてしまった所から、彼の人生はうまくいかなくなっていきます。転職先は倒産、人材派遣会社で紹介された職場もなかなか合わずに続かない。

フラッと行ったパチンコで当たって、人生上向きになったか!?と思ったのもつかの間、次の災難が・・。

最後に落ち着いたのは、住み込みで働ける新聞配達の仕事。かなり不規則な生活をしながらも、何とか仕事にくらいついていきました。

その職場に就職してきた杏菜という少女にまつわるある事件に巻き込まれてしまい、彼はある決断をすることになります。


上巻では、耕平の堕落した生活ぶりが書かれていて、確かに運が無い部分もあり、同情できる所もあるのですが、ほとんどは彼自身の問題では?と思えて、イライラさせられることもありました。・・というか、ほとんどイライラしていたかも。

とりあえず、自暴自棄になりすぎ!他人の意見や生活ぶりを見てはうらやましがって、自分の生活を悲観して。

まあ、こういう若者は最近多いのかもしれないとも思いますけど。そう思いながら読むと、何だか暗い気持ちになりましたし、だんだん落ち込んでくる感じ。

今の所、救いようのない状態ですが、下巻では彼自身が納得できるような結末と未来が待っていることを祈りつつ読んでいくことにします。


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2012年05月07日

乃南アサ「ボクの町」

ボクの町

 乃南アサ 著
 「ボクの町」
 (新潮文庫)


警視庁城西署・霞台駅前交番に巡査見習いとして赴任した高木聖大は、研修初日から警察手帳に彼女のプリクラを貼っていたことがバレるような、今風のドジな若者。道案内、盗難届の修理、ケンカの仲裁などに追われるが、失敗の連続でやる気をなくしていた。が、所轄の同期見習いが犯人追跡中に大ケガを負ったことで俄然、職務に目覚める。聖大の成長をさわやかに描くポリス・コメディ!−裏表紙より−

「駆けこみ交番」の主人公・高木巡査の新人時代の話です。私は結局、彼の成長を逆から読んだようなことになったわけですね。

「駆けこみ交番」のときからどうにも頼りない巡査だった聖大の新人見習い時代ですから、大体どんな状態か想像がつく感じではありますが、それにしてもひどい・・・。

警察手帳に元彼女とのプリクラを貼っていて注意されたり、ピアスの穴を開けていたり・・と、まあ、今風といえばそうなんでしょうけど。

聖大の場合、そういう外見だけではなく、やる気にもかなり問題ががく〜(落胆した顔)

先輩から注意されても「だって・・」「俺なんか・・」とばかり思っては睨みつけるような性格で、町の人にも愛情がもてずにすぐケンカを売りそうになる。

先輩の意見は「なるほど」と思うことがほとんどなのですが、それさえも真っすぐに聞けないからイライラしてしまうちっ(怒った顔)

同期の三浦がしっかりした考えの持ち主で、真面目に勤務をこなすから余計に目立つし、聖大は僻む・・と悪循環です。

とまあ、警察官になったらあかんやろ!パンチ というような性格と態度なわけです。


そういう言動が繰り返されるので、だんだん疲れてしまいますし、読むのが辛くなることもありました。自分の新人時代を少し思い出して懐かしい気持ちになる部分もあったのですが、ほとんどは「私はここまでひどくなかった」と思いました。

最後には少し、ほんの少しだけやる気が見えて来て、これからが楽しみになるような展開にはなったので、それだけが救いでした。

「がんばれよ!」と応援したくなる終わり方でした。


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