2016年09月06日

乃南アサ「新釈 にっぽん昔話」

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 乃南アサ 著
 「新釈 にっぽん昔話」
 (文春文庫)


大人も子どもも楽しめる、ユニークな昔話の誕生です。「さるかに合戦」「花咲かじじい」「一寸法師」「笠地蔵」など、誰もが知っているお話が、練達の作家によって誰も読んだことのない新解釈を施され、極上のエンタテインメントに大変身! 現代的な装いを加えながらも懐かしさを失わない、6つの物語をどうぞご賞味ください。−裏表紙より−


裏表紙に紹介されている話以外に「三枚のお札」「犬と猫とうろこ玉」が収録されています。

子どものころに読んだ懐かしい昔話の数々が、現代風にアレンジされていると知って、読んでみることにしました。


最後まで読んで思ったのは、予想よりあまり大きな変化がないなということでした。

確かに現代風にアレンジはされていますが、話の流れとかはそのままですし、現代風とはいえ昔話は昔の話であって、時代は現代に置き換えられたりはしていません。

よく考えたら、すべておとぎ話だから、現代風にといっても限界がありますよね。話を大きく変えてしまうと、元は何だっけ?となってしまいますし。

だから、さるやかにがしゃべりますし、おじいさんが灰を撒いたら花が咲きますし、一寸しかない子どももいますし、お地蔵さまがしゃべって動きます。

大筋はそのままに、細かい部分をこの作家さんらしくアレンジして、というか深読みして描いている感じです。

さるとかにが実は良い仲になっていたり、一寸しかない子どもがどんな思いで都に出たのか描かれていたり、お地蔵さまに親切にしたおじいさんはどんな人生を歩んで来たのかが描かれていたり。

昔話の裏にある、登場人物たちの思いがより深く描かれている感じがしました。

懐かしい気持ちと、くすりと笑ってしまう部分とあって、なかなか面白く読めました。もっとアレンジしていても楽しめたのかもしれませんが、昔話が題材ならこれくらいのアレンジでも良いのかもしれません。

あとがきを読むと、あまり大きくアレンジしなかった理由もわかる気はしました。


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2015年09月19日

乃南アサ「鍵」

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 乃南アサ 著
 「鍵」
 (講談社文庫)


両親を相次いで喪った三人きょうだいの末っ子で高校二年生の麻里子は、いつの間にか端が切れた鞄を縫おうとして隙間に挟まれていた鍵に気付く。近所で頻発する通り魔事件とのつながりを疑うものの、最近よそよそしい兄には相談できず、自分で持ち主を探そうとするが・・・。家族の機微を描く傑作ミステリー。−裏表紙より−


新装版ということで、かなり古い作品だそうです。話の中にもポケベルという懐かしい物が登場します。表紙のセーラー服がぴったりくるような時代ですね。

この作家さんの作品はまだまだ読んでいない物がありますが、制覇するのは難しそうだと思っていました。でもこうやって新装版として再版してくれると見つけやすくなって助かります。


いきなりお葬式の様子から話は始まり、どういう内容なのか不安になる感じでした。通り魔事件も起きますが、それがこの家族にどんな影響を与えていくのかがわからず、次々読み進めることになりました。

まさか兄が犯人?とか思っていたのですが、意外なことに高校生の麻里子が関連ありそうな雰囲気になっていき、面白くなっていきました。

麻里子にはあるハンデがあるので、普通よりも犯人探しというか事件の調査は難航してしまいます。本来なら兄に相談する所なのですが、兄の態度が変だったので相談できず。

ホント、この兄にはイライラさせられました。気持ちはわからなくもないのですが、もう成人していますし、社会人として働いていた時期もあるくらいなのですから、そろそろそういう甘えは無しにしたら?と何度も思いました。出てくる人みんな不器用で、どうなっていくのか心配しながら読みました。


両親もすでに他界していたため、1人で調査を続けていきます。そのたどたどしさにハラハラさせられながら読んでいるうちに事件は解決します。まだ犯人を確信していないときに、犯人から正体が明かされるって感じでしたが。

失いかけて初めてわかる家族の大切さ。というまあありがちな展開ではありますが、収まる所におさまって、ハッピーエンドで良かったです。そうでないとこの話は納得できないですから。

事件の内容的には納得できない所がいっぱいありましたけど。事件を起こしたきっかけがどうにも納得できませんでした。他に方法はあっただろうに・・。まあでもこの物語のメインは事件のことではないので、これはこれで良いのかな?


この作家さんの文章は好きなので、また何か見つけて読もうと思います。


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2015年05月09日

乃南アサ「いちばん長い夜に」

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 乃南アサ 著
 「いちばん長い夜に」
 (新潮文庫)


ペットの洋服作りの仕事が軌道に乗ってきた芭子と、パン職人の道を邁進する綾香。暗い場所で出会い、暗い過去を抱えながら、支え合って生きてきた。小さな喜びを大切にし、地に足のついた日々を過ごしていた二人だったが、あの大きな出来事がそれぞれの人生を静かに変えていく。彼女たちはどんな幸せをつかまえるのだろうか―。心を優しく包み込む人気シリーズ、感動の完結編。−裏表紙より−


一作目では、芭子の後ろ向きさというか、笑ってはいけないと思っている真面目さが心配でたまらなかったのですが、だんだん今まで明るかった綾香の本音が知りたくなってきていました。

いつも軽口を言って笑わせている彼女は本当はどういう気持ちで日々を過ごしているんだろう? 服役していた年数は芭子の方が長いわけですが、犯した罪の重さは綾香の方が実は重いわけで、情状酌量される部分はあるとしても、人の命に代わるものは無いのにそれを奪ってしまった罪はきっと簡単には償えないはず・・。

このまま明るく終わってほしい気もしましたが、やはり綾香の心に触れてしまいました。それはあの東日本大震災がきっかけになります。

震災といえば、自分が経験した阪神淡路大震災を思い浮かべてしまい、東日本大震災の映像も直視できない状態になっていました。でも前者とは違って目の前で起きていることではないので、何もできずただただ早い復興を願うしかない自分がいました。

今まで震災についての話題を避けてきた私ですが、この作品を読んだことで目をそらしてはおけなくなりました。綾香がパン屋の職人に対して怒鳴った言葉や、芭子に対して吐き出した心の内、その一つ一つが私の心にも刺さる気がしました。

そして、綾香が震災をきっかけに、命の重さ、尊さ、大切さを改めて思い出し、それを奪ったことに対する罪の重さにやっと気づいたのは読んでいてつらかったですが、やはり必要なことだったのかもしれないと思いました。


震災をきっかけに変わったのは、芭子も同じでした。今まで後ろ向きでいた彼女も少し前を向けたり、周りに目を向けたりできるようになりましたし、今後の人生も変わっていきそうな雰囲気になりました。彼女はきっともう大丈夫だと思えるほど強くなりました。

最後は2人に明るい未来が広がっていきそうな予感がする終わり方をしていたので、読み終わったときは明るい気持ちになれました。でも、終わったのはとても残念ですし、また続編を書いてほしいと思います。

この2人に出会えて本当に良かったです。この作品を最後まで読めて良かったです。そう思える作品でした。


<芭子&綾香シリーズ>
「すれ違う背中を」
「いつか陽のあたる場所で」


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2013年06月10日

乃南アサ「禁猟区」

禁猟区

 乃南アサ 著
 「禁猟区」
 (新潮文庫)



ホストにいれあげている中年女・若山直子の資金源は、ホストクラブで借金がかさみ、身動きのとれなくなった少女たちだった。経営者を脅して得た顧客情報から、未成年者の親に当たり、「解決してやる」とカネを要求する。直子の職業は、警察官だった―。犯罪に手を染めた警察官を捜査する組織、警視庁警務部人事一課調査二係。女性監察官沼尻いくみの活躍を描く傑作警察小説四編。
―裏表紙より―


新シリーズです。あらすじを読むと沼尻いくみという監察官が主人公で、彼女の視点で話が進められていくのだろうと思ってしまったのですが、最後の1話以外は取り締まられる側の警察官の視点で進みます。

なので、監察官の話と言いながら、どうやって捜査してどうやって証拠をつかんでいったのか?という所が細かく描かれておらず、唐突な感じがしました。

正義の味方であり、清廉潔白であるべき警察官が、どうして犯罪を犯してしまうのか・・なるほど、こうやって人は落ちていくのね、というのはよくわかるようになっています。


警察官とはいえ、一人の人間。・・・確かにそうなんですけど、それでは済まされない職業だということを、もっと自覚してもらいたいものです。

そんな言葉を言い訳に出来る職業では無いはずですから。

現実にはこんな警察官たちがいないことを強く願ってしまいました。


毎回、沼尻たち監察が登場するのは終わりの方。でも時々書かれる、沼尻の「監察官」の仕事に対する悲しみとか虚しさのような感情が、何とも切ない感じを作り出します。

最終話では、沼尻自身の私生活も少し明らかにされます。そのお陰で彼女の人柄なんかがちょっと見えた気がしました。この辺は、今後もっと深く描かれていくのでしょう。

監察官の中にも深く描いたら面白そうな人がいますし、そこも楽しみにしながら続きを待つことにします。


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2013年04月15日

乃南アサ「地のはてから 下」

地のはてから 下

 乃南アサ 著
 「地のはてから 下」
 (講談社文庫)


小樽での子守奉公で初めて都会の暮らしに触れたとわは知床に戻り、森のなかでアイヌの青年と偶然再会する。しかし彼への恋心は胸に秘めたまま嫁ぎ、母となる。やがて戦争の足音が・・。まだ遠くない時代に、厳しくも美しい自然とともに生きてきた人の営みを鮮烈に描きだした感動巨編。中央公論文芸賞受賞。−裏表紙より−


大正時代って、昭和生まれの私としてはそこまで昔というイメージが無かったのですが、この話を読んであまりの違いに時の流れの速さを感じました。よく考えたら平成だってすでに25年ですし、昭和も64年あったわけですから、90年以上前になるんですよね。しかし、東京ではエスカレーターもあったみたいですし、それなりに発展はしていたようです。この話の舞台は北海道ですから、都会よりは発展が遅かったのでしょう。

それにしても、“戦争”って、経験のない私にはピンとこない出来事ですし、同じ人間同士でなぜ殺し合うのか理解できないですし、何より「国のため」って??と思うので、この時代に生きた人たちは、たくさんの理不尽なことに耐えていたんだと改めて思いました。


とわも、色々な苦労をします。子守奉公をするため、実家から離れて生活し、そこでも様々な困難に合いながらも耐えて生きます。不況の影響で実家に帰された後も自由になるはずもなく。

森で幼い頃に共にあそんだアイヌの青年と再会して恋心も芽生えたというのに、その頃は恋愛結婚なんてほぼ無い時代ですから、当然恋が実るはずもなく、親の選んだ人物と結婚します。顔も見たことのない相手との結婚。今では考えられない状況です。

とわはアイヌの青年に心を残し、人形になったつもりで嫁ぎますが、相手の男性がまた情けない人で・・。何度「しっかりしろよ!」と思ったことか。でも、とわもキツイことばかり言って、こんなんじゃ夫のやる気も失せるよな・・とも思い、やはりお互いを思いやる気持ちがないと結婚生活なんてうまく行かないんですよね。

とはいえ、子どもにはたくさん恵まれ、この時代らしく次々と出産し、育てていきます。そんな中、時代は戦争一色に。「男子を産んでも戦争に取られるから嫌だ」と思っていても口に出せない世の中。年齢的に、戦争には駆り出されないだろうと思われていた夫にまで“赤紙”が来てしまいます。

とわの人生は本当に大きな幸せもなくかわいそうになっていたのですが、最後にとわがこんなことを思っていたことで少し救われました。

いつの頃からだろう。どんな話をするときにでも、とわは何となく微笑んでいられる自分を感じるようになった。(中略)どう足掻いても、この人生がやり直せるものではない。いくら泣いたり叫んだりしたところで、世の中は自分一人の力では変えられないことだらけだ。(中略)だからせめて深呼吸の一つでもして、あとは時をやり過ごす。そんなときには、笑っているより他、出来ることもないと思う。だから何となく笑うようになったのかも知れない。

穏やかに微笑みながら子どもたちを見ているとわの姿が浮かびました。彼女と共に人生を歩んで来たような気がするくらい入り込んで読んでいたので、読み終わったときにはドッと疲れが出ました。

でも、どこか心地良い疲れだったと思います。


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2013年04月13日

乃南アサ「地のはてから 上」

地のはてから 上

 乃南アサ 著
 「地のはてから 上」
 (講談社文庫)


凍てつくオホーツク海に突き出し、人も寄せ付けぬ原生林に覆われた極寒の地・知床。アイヌ語で「地のはて」と呼ばれたこの地に最後の夢を託し、追われるようにやってきた開拓民の少女。物心ついたときにはここで暮らしていたとわは、たくましく生きる。今日から明日へ、ただ生き抜くことがすべてだった。−裏表紙より−


全く内容を知らないまま読み始めたわけですが、いきなり「北海道移住手引草」という物が載っていて、これからどんな話が始まるのかドキドキしました。

更に、登場人物たちの話す方言の訛が強くて、理解するのに時間がかかり、読みにくく感じたのですが、すぐに慣れて気づけば読むスピードも上がりました。


雪の多い福島辺りに住む、つねという女性が、家業の農業をしながらも放浪癖のある夫の帰りを待っている・・という所から話は始まります。

この夫というのが本当にイライラする人で、結婚して子どもも2人いるのに、いつまでも夢を追って、家に寄り付きません。たまに帰ってきても夢物語を語るだけ。

こういう人って、もし挫折したらどうしようもないくらい落ち込んで、立ち直れないんだよな・・と思っていたら、やっぱりそうでした。彼のせいで、この頃(明治から大正になった頃)まだ未開拓の土地も多かった、北海道へ開拓者として行くことになりました。

鉄道などが整っているわけもなく、北海道にたどり着くまでに長い長い時間と、苦痛の旅を続け、知床まで行き、蔓草や木がたくさん生えている土地を地道に畑へと耕していきました。

・・という苦労の連続が多い人生を歩むつねの話は、序章で終わります。


第一章からは、つねの娘・とわの視点で話は進みます。幼いとわが無邪気な言動で、苦労の多い生活を明るくしてくれるように思えましたが、そのまま明るくなるはずもなく。

第三章では、幼いとわが小樽の町に奉公に出されることになります。


彼女が幼いながらもたくましく生きていく姿には、何度も泣きそうになりながら読み進めました。ただただ笑って暮らせる年齢なのに「大人になってもっと自由に生きたい」と思うなんて。

彼女が少しでも幸せになれるようにと願いつつ、続きも読むことにします。


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2013年02月15日

乃南アサ「自白」

自白

 乃南アサ 著
 「自白」
 (文春文庫)


“アメリカ淵”と呼ばれる渓谷で発見された女性の全裸死体。手がかりは仏が身につけていたネックレスただひとつ・・・。警視庁捜査一課の土門功太朗は、徹底的な地取り捜査で未知の犯人ににじり寄る。やがて浮かんだ容疑者。息詰まる取調室の攻防。懐かしの昭和を舞台に、男たちの渋い仕事っぷりを描いたノスタルジー刑事小説。−裏表紙より−


あらすじにもあるように、昭和の時代が舞台になっています。私が子どもの頃の話なので、色々と懐かしい出来事が描かれていて、その部分でも楽しめました。

一番懐かしかったのは500円玉の登場! 若い人はもう知らないでしょうね〜。私が子どもの頃は500円札でおこづかいをもらっていたので、硬貨になると同じ値段なのに価値が下がる気がして嫌で、母親にお札を残しておいてほしいと頼んだ覚えがあります。


まあそんなことはともかく・・・。



アメリカ淵」「渋うちわ」「また逢う日まで」「どんぶり捜査」の4話が収録されています。連作短編なのですが、時系列は順番通りではありません。

土門という刑事が主人公なのですが、娘二人を持つ中年男性で、好きになれるか不安だったのですが、そんな心配は無く、すぐに好きになり一気読み状態でした。

1話に1つの事件が起きて、それを捜査一課の刑事たちが捜査し解決していくわけですが、土門はその刑事たちを束ねる役柄。とはいえ、トップというわけではなく、中間管理職的な立場で、現場にも出向きますし、取り調べもします。

彼が最後にどんな風に捜査内容をまとめて、どんな風に取り調べで容疑者を落とすのか? 気になって次々ページをめくっていました。

良い味を出しているおじさん・・と言った感じ。


昭和が舞台なので、戦争が終わり、高度経済成長・・と、大きく変化を見せる日本が生み出した事件や犯罪者が、良い雰囲気を作品全体に醸し出しています。


新シリーズということなので、次作が発売されるのも楽しみに待つことにします。



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2012年12月07日

乃南アサ「すれ違う背中を」

すれ違う背中を

 乃南アサ 著
 「すれ違う背中を」
 (新潮文庫)


パン職人を目指して日々精進する綾香に対して、芭子はアルバイトにもなかなか採用されない。そんなある日、ビッグニュースが! 綾香が商店街の福引きで一等「大阪旅行」を当てたのだ。USJ、道頓堀、生の大阪弁、たこ焼き等々初めての土地で解放感に浸っていた彼女たちの前に、なんと綾香の過去を知る男が現れた・・。健気な女二人のサスペンスフルな日常を描く人気シリーズ第二弾。


どうやらテレビドラマ化するらしい・・。帯にキャストの写真が載っていたのでイメージが付きそうでちょっと気になりましたが、読み始めたらすっかり忘れてしまいました。


芭子と綾香、2人とも自分でも言っているように、出所してからの方が生きにくそうにしています。今でもまだ罪をつぐなっている感じ。

確かにそれだけの罪を犯したわけですから、反省することは必要だと思いますけど、もう少し楽しい人生を生きても良いのではないか?と感じるくらい、ひっそりと暮らしています。

そんな2人が珍しく旅行に行きました。旅行代はくじで当てたのでタダ。とはいえ、食事や土産などは自腹なのですから、本当に珍しい贅沢です。

楽しい旅行になるはずが、どうも何か悪い物を引き寄せる力が働くようで、綾香の昔の知り合いと出会ってしまいます。懐かしい思いで食事を始めるのですが、そのまま楽しく終わりませんでした。かなり落ち込んで帰ってきた2人。

2人の様子を見ていると、犯罪は絶対にダメ!だと改めて思います。綾香の場合は仕方ない部分もあったとは思いますが、それでも一度でも犯罪を犯してしまうと、これだけ苦しむことになるのですから。


前作「いつか陽のあたる場所で」は、終始暗い雰囲気に包まれている感じがしましたが、今作は少し明るくなる部分もありました。何とか前を向いて進んでいけそうな様子を見ていると、嬉しくなります。

・・とまあ、話に入り込んでしまっているので、実在の人物かのように心配しながら読んでいるんです。

次で、シリーズは完結するそうです。ちょっと寂しい気がしますけど、いつまでも2人に幸せが来ないのも悲しいので、明るい結末を楽しみに、文庫化を待とうと思います。


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2012年11月13日

乃南アサ「ニサッタ、ニサッタ 下」

ニサッタニサッタ 下

 乃南アサ 著
 「ニサッタ、ニサッタ 下」
 (講談社文庫)


借金を何とか返し終えた耕平は、北海道・斜里の実家に戻る。その雄大な自然に癒されたものの、働き口は見つからない。そこに新聞配達所で一緒だった沖縄出身の竹田杏菜が突然やって来る。ようやくスーパーの正社員の道が見せてきた矢先、酒酔い運転で事故を起こしてしまう。明日への希望を問う感動長編。−裏表紙より−


上巻の終わりで、やっぱり北海道へ帰ろう!と決めた耕平。これでやっと安定した生活に戻れる・・と思いながら下巻を読み始めたのですが。

東京のような大都会でも、仕事が見つからなかったのに、北海道で見つかるはずもなく・・。北海道でも都会ならあるのかもしれませんが、耕平の実家は田舎にあるようです。(北海道の地理に詳しくないのでよくわかりませんが)

帰って数ヶ月は何もせずに過ごしていて、やっとスーパーのアルバイトが決まりそうになりました。そんなとき、東京から耕平の後を追うようにして、新聞配達所で同僚だった杏菜がやってきます。

耕平は自分に好意をもっていて追いかけて来たのだと思ったようですが、杏菜には別の理由がありました。それは後半になって明らかにされます。


杏菜もなかなか壮絶な人生を歩んできたようで、その生い立ちには思わず涙が出てしまいました。もしそばにいたら「よくがんばったね」と頭をナデナデしていたかも。

彼女が背負っている辛い想いを、耕平が半分持ってあげられるように、立派な人になってほしいと強く願いながら読み終えました。

耕平が事故を起こした後のわがままぶりには本当にイライラさせられましたが、彼も最後にはどうやらやりがいのある仕事を見つけたようなので、今度は大丈夫でしょう!


上下巻と長い話ではありますが、あっという間に読めてしまい、入り込んでしまいました。面白かったです。


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2012年11月12日

乃南アサ「ニサッタ、ニサッタ 上」

ニサッタニサッタ 上

 乃南アサ 著
 「ニサッタ、ニサッタ 上」
 (講談社文庫)


転職した会社が倒産してしまった片貝耕平は、人材派遣会社に登録したがどの仕事も長続きせず、担当者と喧嘩して辞めてしまう。アパートの更新もできなくなり、一発逆転を夢見てギャンブルにのめりこんで消費者金融の「回収担当」に追われる身となった耕平は、ようやく住み込みの新聞配達の仕事を見つける。−裏表紙より−


「ニサッタ」は、アイヌの言葉で「明日」という意味だそうです。読んでいくうちにこの題名が沁みてくるような内容になっています。


主人公の片貝公平は、25歳にして人生の挫折を味わっています。

北海道出身の彼は、華やかな生活を送るために上京します。

大学を卒業して就職した会社で、上司と合わずに辞めてしまった所から、彼の人生はうまくいかなくなっていきます。転職先は倒産、人材派遣会社で紹介された職場もなかなか合わずに続かない。

フラッと行ったパチンコで当たって、人生上向きになったか!?と思ったのもつかの間、次の災難が・・。

最後に落ち着いたのは、住み込みで働ける新聞配達の仕事。かなり不規則な生活をしながらも、何とか仕事にくらいついていきました。

その職場に就職してきた杏菜という少女にまつわるある事件に巻き込まれてしまい、彼はある決断をすることになります。


上巻では、耕平の堕落した生活ぶりが書かれていて、確かに運が無い部分もあり、同情できる所もあるのですが、ほとんどは彼自身の問題では?と思えて、イライラさせられることもありました。・・というか、ほとんどイライラしていたかも。

とりあえず、自暴自棄になりすぎ!他人の意見や生活ぶりを見てはうらやましがって、自分の生活を悲観して。

まあ、こういう若者は最近多いのかもしれないとも思いますけど。そう思いながら読むと、何だか暗い気持ちになりましたし、だんだん落ち込んでくる感じ。

今の所、救いようのない状態ですが、下巻では彼自身が納得できるような結末と未来が待っていることを祈りつつ読んでいくことにします。


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2012年05月07日

乃南アサ「ボクの町」

ボクの町

 乃南アサ 著
 「ボクの町」
 (新潮文庫)


警視庁城西署・霞台駅前交番に巡査見習いとして赴任した高木聖大は、研修初日から警察手帳に彼女のプリクラを貼っていたことがバレるような、今風のドジな若者。道案内、盗難届の修理、ケンカの仲裁などに追われるが、失敗の連続でやる気をなくしていた。が、所轄の同期見習いが犯人追跡中に大ケガを負ったことで俄然、職務に目覚める。聖大の成長をさわやかに描くポリス・コメディ!−裏表紙より−

「駆けこみ交番」の主人公・高木巡査の新人時代の話です。私は結局、彼の成長を逆から読んだようなことになったわけですね。

「駆けこみ交番」のときからどうにも頼りない巡査だった聖大の新人見習い時代ですから、大体どんな状態か想像がつく感じではありますが、それにしてもひどい・・・。

警察手帳に元彼女とのプリクラを貼っていて注意されたり、ピアスの穴を開けていたり・・と、まあ、今風といえばそうなんでしょうけど。

聖大の場合、そういう外見だけではなく、やる気にもかなり問題ががく〜(落胆した顔)

先輩から注意されても「だって・・」「俺なんか・・」とばかり思っては睨みつけるような性格で、町の人にも愛情がもてずにすぐケンカを売りそうになる。

先輩の意見は「なるほど」と思うことがほとんどなのですが、それさえも真っすぐに聞けないからイライラしてしまうちっ(怒った顔)

同期の三浦がしっかりした考えの持ち主で、真面目に勤務をこなすから余計に目立つし、聖大は僻む・・と悪循環です。

とまあ、警察官になったらあかんやろ!パンチ というような性格と態度なわけです。


そういう言動が繰り返されるので、だんだん疲れてしまいますし、読むのが辛くなることもありました。自分の新人時代を少し思い出して懐かしい気持ちになる部分もあったのですが、ほとんどは「私はここまでひどくなかった」と思いました。

最後には少し、ほんの少しだけやる気が見えて来て、これからが楽しみになるような展開にはなったので、それだけが救いでした。

「がんばれよ!」と応援したくなる終わり方でした。


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2012年04月28日

乃南アサ「不発弾」

不発弾

 乃南アサ 著
 「不発弾」
 (講談社文庫)


デパート勤務の的場智明は、地味な売り場での仕事に耐える日々を過ごしていた。そんな折、息子や娘の“秘密”を妻までが一緒になって隠していたことに気づく。たまりにたまった憂さをはらすために彼がとった行動とは・・。表題作など、現代人の爆発寸前の心境を的確に捉え、見事な筆致で描く、秀逸短編集。−裏表紙より−


久々の乃南アサ作品ですが、この作家さんにしては、私にあまり合わない作品集でした。・・残念です。面白くないわけではないのですが、長篇か短編でも連作短編集の方が良いのかも知れません。


かくし味」「夜明け前の道」「夕立」「福の神」「不発弾」「幽霊」の6話が収録されています。


1話目の「かくし味」が後味が悪い感じで、何となく予想は出来ていながらも最後にゾクッとしたんですよね・・。何ともやりきれない結末ふらふら

夜明け前の道」では、少し光が差すような終わり方で、多少救われた感じはしますが、全体的に暗い雰囲気が漂っていました。これも微妙な内容でしたね・・。

夕立」は、救いがたい終わり方ですし、出てくる人たちほぼ全員気に入らないという話でした。何が言いたかったのかな?その辺りもよくわかりませんでしたバッド(下向き矢印)

福の神」「幽霊」はこの作品集で唯一スッキリ終わった話でした。多少、ご都合主義的な所もありましたけど、それでも最後には「良かったね」と言える感じでしょうか。ちょっとほろりとさせられる部分もありましたし。

そして、表題作の「不発弾」これが私は一番好きだったかもしれません。まあ、終わり方はスッキリしないのですが。父親の苦悩が描かれた話で、自分の親にすごく当てはまって読みやすかったです。読みやすいけど、怒りが沸く話です。


ページ数も少ないですし、あっさり読み切れるんですが、物足りなさもありました。この作家さんでも合わない作品があるのね・・。


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2011年08月18日

乃南アサ「晩鐘 下」

晩鐘 下

 乃南アサ 著
 「晩鐘 下」
 (双葉文庫)



前作『風紋』を書き終えた後も、私は、登場人物たちの「その後」が気になって仕方がなかった。自分の作った架空の物語でありながら、ずっと案じていた。そうして書き始めたのが七年後の彼らだったが、誰もが救われていて欲しいと願いながら、新たな悲劇をも、描くことになってしまった。事件というものは必ず、悲しみと憎しみの連鎖を生む。そして、いちばん弱いものが最も深く傷つくことに、改めて気づいた。(乃南アサ)−裏表紙より−


今回も、裏表紙の言葉をそのまま載せました。特に最後の文章は本当にそうだな・・と共感しました。


読み終わった瞬間、大きなため息と共に、ず〜ん と重たい何かが心にのしかかって来た感じがしました。

そうか・・こんな終わり方をしたか・・。というのが正直な気持ち。

考えてみれば、カラッと終わるわけがないんですけど、つい期待してしまったんですよね。でも「一つの事件が巻き起こす波紋」がテーマなのですから、全て丸く収まって終わるのは逆に変なのはわかっていたつもりだったんですが。


この話を読んで思ったのは「家族の絆ってもろいものなんだ」ということ。被害者家族も加害者家族も、あっけないほどバラバラ状態になっていましたから・・。遺伝子とか血とか言うなら、絆が深くなる所にも活かされたら良いのに、何で嫌な方向にしか働かないのか。


結局は、何も知らされていなかった大輔が一番の被害者だったのかもしれません。誰でも良いからきちんと父親のことを説明していれば、受け止め方が違ったかもしれないのに・・と思うとかわいそうでなりませんでした。

とりあえず、母親がもっとしっかりしていれば・・。彼女には怒りしか無い。初めは同情する部分もあったのに。自暴自棄になっていたのかもしれませんが、それでは済まされない立場なのに。本当に腹が立ちます。


唯一の救いは、被害者の娘・真裕子のこと。上巻ではどうなるか?と思うくらいボロボロだった彼女がどんどん明るくなっていき、幸せになろうとしているのは嬉しかったです。被害者家族だけでも幸せになってくれて良かった・・。真裕子の父親と姉の気持ちも知りたかった気はしますけど。


自分の感想がうまく文章にできないのがもどかしいくらい、色々と考えさせられた話でした。



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2011年08月13日

乃南アサ「晩鐘 上」

晩鐘 上

 乃南アサ 著
 「晩鐘 上」
 (双葉文庫)



真裕子の母親が殺害された事件から7年。高校二年生だった真裕子は24歳になり親元を離れ自立していたが、心に負った傷が癒えることはなく、不安定な精神状態は続いていた。加害者の息子・大輔は妹・絵里と共に母親とは離れ、祖父母の元で暮らしていた。両親のことは何も知らされないまま・・。


加害者の息子・大輔は小学5年生になりました。彼と妹は、母親とも離れて祖父宅に住んでいます。両親がどこへ行ってしまったのか、何も知らされずに育ちました。母親のことは“叔母”と説明されていたため、たまにあそびに来る彼女のことを二人は「おばちゃん」と呼んでいます。

従兄がいるのですが、あるときその従兄が殺されてしまいました。裏で大輔が画策していたのですが、まさか殺害されるとは思っていませんでした。ただ、亡くなったことに対して思わず笑いがこみ上げてしまう大輔。でも、大人たちの前では哀しんで見せる・・。


大輔は父親が殺人者であることを知りません。なのにこの驚くような行動・・。見た目も大人びて見えるようですが、中身はもっと大人びています。大人というか、ずる賢さが強い少年になっています。“遺伝子”が影響ある・・なんて思いませんけど、やはり真実を知らされていないのが悪いのかな?と。


大輔の母親は、公判の途中からどんどん雰囲気が変わっていきましたが、その派手な状態が続いています。子どもたちのこともほとんど忘れたような対応で“たまにあそびに来るおばちゃん”という存在に甘んじている感じです。この母親も確かに被害者と言えるでしょう。そしてお嬢様として育った彼女にとって殺人者の妻という立場に耐えられなかったのもわかります。でも、それを理由に子どもを放っておけるのは理解できませんでした。彼女に対しては怒りしか湧きません。


そして、真裕子。父親は再婚し、姉も結婚して子どもも生まれ、それぞれ新たな人生を進み始めています。ところが真裕子だけは前に進めない・・。ストーカーみたいな行動をしたり、不倫したり、友人の不幸を喜んだり、そんな彼女の様子を読むのは本当につらかったです。

彼女のことを全て知った上で支えてくれるような人(男性でも女性でも)が現れたらきっと前に進めるんだろう・・と思うのですが、彼女が経験した心の傷の大きさを考えると難しそうです。


ある意味被害者といえる人たちがどうやって乗り越えていくのか?今の所、あまり救いの無い状況ですが、最後は明るく終わって欲しいと思います。


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2011年07月29日

乃南アサ「風紋 下」

風紋 下

 乃南アサ 著
 「風紋 下」
 (双葉文庫)



この小説を書いている間にも、世間では実に様々な事件が起きた。そして、その都度、容疑者については様々な記事が出た。被害者は、遺族は、常に置いてけぼりを食らうのである。運命を狂わされ、心に癒し様のない傷を負った人たちを救う手だては、現在のところ皆無と言って良いと思う。−乃南アサ


作家さんの思いが強く出ている作品だと思いましたので、私の下手なあらすじを書くよりも、裏表紙の乃南さんの言葉を載せた方が良いと思いそのまま書きました。


下巻では上巻で逮捕された容疑者が裁判にかけられることになり、裁判を中心に、でも被告人の心情は語られず、被害者遺族や被告人の家族の生活や心の動きなどが主に書かれています。

裁判に毎回足を運ぶ被害者の次女。彼女は裁判を傍聴しながら違和感を感じていました。「何だかゲームみたい」 この言葉にハッとさせられました。確かに裁判って、被害者や遺族のことは関係なく進む感じがします。今まで考えたこと無かったですが。

そんな彼女に対して、新聞記者の建部は「裁判は、人間ではなくて、その人の犯した罪そのものを裁こうとしているんだから」と答えますが、彼女は納得いかない様子を見せます。

確かに人間が裁くのですから「人間を裁く」と考えると誰もできなくなりそうで、だからこそ「人間のを裁く」という考えが生まれたんでしょう。でも、それだと被害者の気持ちはどうなるんだろう??心の傷を癒すのは誰なんだろう?

そして、本当の意味での真相は殺されてしまった被害者にしか語れない。よくドラマなんかで「真相を明らかにしたいんです!」なんて言ってる弁護士や検事がいますけど、結局(殺人事件の場合は特に)真相は闇の中ですよね。加害者しか語れないんですから。

なんか色々考えてしまいました。


上巻の感想で「どんでん返しがありそう」なんて書いた私。確かにある意味でどんでん返し的なことはあったんですけど、私が思ったのと違う展開だったんですよね。

結局私は心のどこかで、犯人があの人でなければ良いのに・・と思っていたんでしょう。つまり、母親が不倫をしていたなんて信じたくなかったわけです。そうでないと遺族たちが救われない気がして・・。

やっぱり真相は闇の中なんです。小説なんだから無理やり真相を書いてくれても良いのに・・と一瞬思いましたが、それではこの小説のテーマから外れてしまうんですよね。だからこれで良いんだと思い直しました。


長々と感想を書いてきましたが、まだ書ききれていないくらい、本当にたくさんの思いが出てくる作品でした。読んで良かったです。


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2011年07月26日

乃南アサ「風紋 上」

風紋 上

 乃南アサ 著
 「風紋 上」
 (双葉文庫)



夫と娘二人と暮らす普通の主婦が殺害された。恨まれることなんて無いはずの彼女はなぜ殺されなければならなかったのか。被害者遺族となった娘たち、そして夫、その親戚たちにまで与える影響とは?容疑者やその家族たちの心境は?


ちょっとした問題は抱えていましたが、一般的ともいえる生活をしていた主婦。始めは彼女の生活が書かれていて、家族愛がテーマの話かな?と錯覚する感じでした。でも話は思わぬ展開を見せ、気付けば引き込まれていました。


一家の主婦が殺害されたことで、高校生の二女はもちろん、浪人生の長女、そして夫の人生も狂わされます。この一家のことは二女の目線で語られていて、彼女の心の中が手に取るようにわかります。高校生という微妙な年齢。子どもっぽい部分も多いですが、今回の事件で妙に大人っぽい冷めた所も出てきていて、読んでいて苦しくなりました。

自分がもしこの子の立場になったら・・と考えてしまうと泣けてきて進まなくなりそうだったのでなるべく考えないようにしていましたが、それでも泣きそうになる所が何度もありました。


一つの事件が与える影響の大きさ。これがメインになっているわけですが、報道の仕方だけではなく、情報を提供する側、見る側も問題がたくさんあると思います。「本当に被害者なのか?」と思うような報道のされ方はどうなんでしょう?それを興味本位で読んでしまう側にも問題はありますよね。

事件を起こした容疑者の家族もある意味被害者です。一瞬にして人生が変わるわけで・・。でも責任があるか?と言われると・・難しい所です。


きっとこのまま裁判で終了・・とはいかないだろうという雰囲気。下巻ではまだまだどんでん返しがあるんだろうと思うので続きも楽しみです。


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2011年05月25日

乃南アサ「6月19日の花嫁」

6月19日の花嫁

 乃南アサ 著
 「6月19日の花嫁」
 (新潮文庫)



6月12日に起きた事故で気を失った千尋は、目覚めたとき全ての記憶を無くしていた。自分の名前さえわからない中、思い出したのは一週間後の19日に自分の結婚式が行われるということ。結婚式までに全てを思い出さなければ・・と自分探しを始めた千尋の前に次々と問題が巻き起こる・・。


恋人と仲良くドライブしている場面から始まります。そして車がスリップした後、気を失い、気付いた場所は知らない家の中。

そして、見知らぬ男性がそばにいました。彼の名前は一行。道端で倒れていた千尋を家に連れて帰ってきたという一行は、何も思い出せない千尋をあざけるようなさげすむような目で見ながらも側にいてくれました。

6月19日という日にちをキーワードにしながら少しずつ過去を思い出していく千尋。思い出したくない過去もたくさん出てきて・・・。


話は、千尋の目線からだけではなく、一行の日記としても語られていき、読者には少しずつヒントのような物が出されていきます。

何となく「こうなのかな?」と想像している所へ少しずつ後から千尋が追い付いてくる感じで話が進み、なかなか面白い展開だと思いました。

ラストは予想通りの所へ落ち着くのですが、最後の最後でもう一つ山があり、ちょっと気になるような終わり方。これも私は好きな感じでした。

初めの頃、何も思い出せずもどかしい場面が長くあったのに、後半は何だかあっという間に終わったような気がしたので、もう少し引っ張れたかな?とも思いますが・・。

最後まで面白く読めました。


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2010年12月04日

乃南アサ「結婚詐欺師 下巻」

乃南アサ著 「結婚詐欺師 下巻

(新潮文庫)


ゴルフ練習場で橋口が目を付けて声を掛けたのは江本美和子という女性。今までの女性と違って自分の意志をハッキリもっている勝気な彼女は、橋口にとってやりがいがもてる相手。時には強引に、時には引いてうまくデートに応じさせることができた。一方、阿久津たち捜査員は、橋口が松川学だとつきとめた。ところが、被害者の中に阿久津の元恋人、美和子がいることがわかり、苦しむことに・・。


上巻に引き続き、橋口の手口に妙に感心しながら読みました。美和子がターゲットになってからますます手口の巧妙さに感心する度合いが増えました。

勝気な女性には以前使っていたような強引さは逆効果なこともあり、時には引いたり相手を立てたりする必要があるんですね。

詐欺としては全く参考にしてほしくないですけど、人とコミュニケーションをとったり、親密になりたいときに参考にすればうまくいきそう。

下巻になって、阿久津刑事がどんどん壊れていくのが読んでいて辛かったです。・・というか、何でそんなに悩んで苦しんで酒におぼれるのか?全く理解できなかったです。

確かに知り合いが騙されているのを知っていながら教えられないのは辛いでしょう。でもだからといってそこまで落ち込むか?? 結婚まで考えた相手だからとはいえ・・。

仕事や家庭まで捨てそうになるほど・・。う〜んちょっと私にはわからない状態でした。

ただ最後に、美和子と警察で二人で話している場面を読んで、何となくわかった気がしたんですよね。

結局、この結婚詐欺も男女の温度差というか、一つの言葉に対する受け取り方の重さみたいなものが男性と女性では違うから成り立つわけです。

美和子は実際に被害に合った側ですが意外と冷静で、阿久津は傍観者だったのに熱くなっている・・という書き方で、男女の温度差なんかを表現していたのかな?と。

他の被害者たちは自殺したり精神的に病んだり、色々な目に合ったわけですが・・。


何だか色々考えさせられた作品でした。



   誕生日
本日は、私の誕生日ですあせあせ(飛び散る汗) イマイチ実感もわかないですが、一応、特別な日ということでぴかぴか(新しい) 楽しく過ごしたいと思います。



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今読んでいるのは・・
posted by DONA at 11:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書:乃南アサ

2010年12月03日

乃南アサ「結婚詐欺師 上巻」

乃南アサ著 「結婚詐欺師 上巻

(新潮文庫)


「橋口雄一郎」と名乗る男はプロの結婚詐欺師で、髪型や服装など外見も変化させ、職業も偽り、複数の女性を誘惑して金を騙し取っていた。詐欺の被害を警察に届けた女性がいたため、事件が発覚し、小滝橋署の刑事・阿久津たちが捜査を始めた。写真を入手し、前科者リストから「松川学」という1人の男が浮上。橋口と名乗る男と松川学は同一人物なのか?身元の確認を始めた。


結婚詐欺か〜。きっと私は騙されないな・・と思うのですが、意外と「私は大丈夫ぴかぴか(新しい)」と思う人の方が騙されやすいとかあせあせ(飛び散る汗) でも私は基本的にケチだからお金は出さないだろうな・・なんて。

橋口という男はなかなか口が達者。まあ詐欺師というのはそういうものなのでしょうけど、相手の女性に合わせて、その人が喜びそうな言葉を絶妙のタイミングで囁く。そして表情を見て相手がその言葉を聞いてどう思ったのか確認し、更に詐欺師としての自信を深める・・。

プロともなるとやり方も巧妙で、連絡する時期や訪ねる時期、誘う時期、お金を出させる時期など計算されつくしています。

なるほど、このタイミングで言われたら思わずお金を貸す気持ちもわかるな〜・・なんて妙に感心したりして。

狙われるのはやはりお金をある程度貯めている20代後半〜30代の働く女性。でもおとなしい感じで男性にあまり縁が無いタイプ。もしくは未亡人で遺産や保険金が入った女性。「寂しいな」と感じることが多い女性が一番心をとらえやすいようです。


上巻は、橋口が新しい女性に目を付けた所で終わっています。警察はまだ彼の身元が確認できていない状態。詐欺事件の捜査はどんな感じで進むのか?橋口が逮捕されたときどんな供述をするのか?被害女性たちは救われるのか?など、気になることがいっぱい!!


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今読んでいるのは・・
posted by DONA at 11:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:乃南アサ

2010年11月27日

乃南アサ「駆けこみ交番」

乃南アサ著 「駆けこみ交番

(新潮文庫)


等々力にある交番に勤務している新米巡査の高木聖大の役目は、不眠症の老人・神谷文恵の相手をすること。大事件のないのどかな住宅街での勤務は退屈な毎日の繰り返し。彼女もいないし、暇だし・・と不満の多かった聖大があるとき事故現場で見かけた人物が実は指名手配犯で、偶然逮捕することができた。得意満面の聖大に文恵やその友人である老人たちのグループが近づいてきた。「とどろきセブン」「サイコロ」「人生の放課後」「ワンワン詐欺」計4編収録の短編集


警察小説というと刑事たちの話がほとんどですが、これは交番勤務の巡査の話。何だか面白そうだな〜るんるんと手にしたわけです。

主人公である高木聖大は、まだ新米の巡査。刑事を目指す彼には退屈な毎日で、頭の中ではずっと愚痴を言っている感じ。でも意外と正義感が強く、真面目に勤務する姿は頼りないけど好感がもてます。

先輩の主任は聖大にとって天敵ともいえる存在で、機嫌が良かったり悪かったり、からんできたり無視したり、本当に嫌な奴。この二人の対比も面白く書かれています。

そして、文恵を中心とした老人たちのグループ、その名も“とどろきセブン”のメンバーたちも良い味を出しています。

人当たりの良いおじょうさま風の文恵がまず交番巡査たちに近づき、聖大の人柄を見極めた上で、他のメンバーたちも近づいてくる・・。街で起きる様々な事件や疑問、個人ではどうしようもないようなことを聖大に話して「何とかしてくれ!」と頼むわけです。

頼んだだけではなく、情報を仕入れて渡したり、色々と手伝いもしてくれて、聖大は次第にこの老人たちに好感をもっていきます。


サイコロ」では最近よくニュースになっている“ネグレクト”の問題が書かれています。警察は民事不介入と決まっているので、育児放棄ではなかなか手を出せません。でも子どもはどんどん衰弱し、問題も起こすようになっていく・・。何とも悲しい現実ですもうやだ〜(悲しい顔)

この話ではスカッとするような結末が用意されているので読んだ後も良い気分わーい(嬉しい顔)

どうしようもない悲しい話(ゾッとするような話)もありましたが、ほとんどは読んでさわやかな気持ちになれる展開で、聖大の成長も少し見られますし、最後まで楽しく読めました。


この聖大の話は実は続編で、先に「ボクの町」というのがあったらしい・・。乃南さんの作品はどうも順番通りに読めないらしいですふらふら

更に、聖大は「いつか陽のあたる場所で」にも少し登場します。


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今読んでいるのは・・
posted by DONA at 11:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:乃南アサ