2024年12月24日

伊坂幸太郎「モダンタイムス 上下合体版」

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 伊坂幸太郎 著
 「モダンタイムス 上下合体版」
 (講談社文庫)※電子書籍


恐妻家のSE(システムエンジニア)渡辺拓海はあるサイトの仕様変更を引き継ぐ。プログラムの一部は暗号化されていて、前任者は失踪中。解析を進めていた後輩や上司を次々と不幸が襲う。彼らは皆、ある特定のキーワードを同時に検索していたのだった。
『魔王』から五十年後の世界。検索から始まる監視の行き着く先は──。
−出版社HPより−


お気に入りで結構読む作家さんなのですが、時々よくわからない話があるんですよね。これも正によくわからない・・結局何が描きたかったんだろう??


物語の冒頭、主人公と思われる人が自宅の椅子に縛られて暴行されている場面から始まります。その時点で、この話は多分好きではないタイプのやつだな、と嫌な予感はしました。


暴行されつつも、加害者と被害者がなぜか禅問答のような会話を繰り広げるところがこの作家さんらしいと言えます。暴力シーンでもどこかクスッと笑える部分がある感じ。

暴行されている理由は、どうやら彼が奥さんに隠れて浮気をしていると疑われていて、奥さんに頼まれた犯人が「浮気を認めろ!」と言っているらしいです。なんて暴力的な奥さんなんだと呆れてしまいますが、実は今回が初めてではなさそう。

暴行されながらも終始「浮気なんてしていない」と言うので、浮気していないのに疑われて可哀そうにと思っていたら、実は本当に浮気しているという展開。なんなんだよ!


そんな場面の後は、いつも通りに仕事に行くのですが、会社でも不穏な展開に。SEの仕事をしている彼は色々なプログラミングをしているのですが、とあるサイトの仕様変更の仕事を引き継ぐことになり、会社ではない指定の場所へ行きます。

そこにいた人物と共に仕事を始めるのですが、何やら不思議なサイトだと気づいていきます。そして前任者が失踪していること、そのプログラムに関わった人たちに何かしらの事故や事件が起きてしまうことがあり、このサイトを運営する会社を疑い始めます。


起きる事故や事件が、何だかいたたまれないというか、大きすぎてぞっとする物が多くて、だんだんと読むのが辛くなりました。被害に合っている人たちが意外と重く受け止めていない風に、どこかコミカルに描かれているのもまた辛かった。

なぜそんなことが起きていたのか?の理由が判明しても納得できず。まあ納得いくような理由なんてあるわけがないんですけど。

本当にこんなことが起きたとしたら怖すぎです。大きな組織が絡むとろくなことがないです。


最後まで救いが無いような、後味も決して良くない読了感でした。軽いタッチで描かれるのでそこまで落ち込まないですけど、やっぱり救われないなと思いました。


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2024年07月12日

伊坂幸太郎「砂漠」

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 伊坂幸太郎 著
 「砂漠」
 (実業之日本社文庫)※電子書籍


仙台市の大学に進学した春、なにごとにもさめた青年の北村は四人の学生と知り合った。少し軽薄な鳥井、不思議な力が使える南、とびきり美人の東堂、極端に熱くまっすぐな西嶋。麻雀に勤しみ合コンに励み、犯罪者だって追いかける。一瞬で過ぎる日常は、光と痛みと、小さな奇跡でできていた―。実業之日本社文庫限定の書下ろしあとがき収録!明日の自分が愛おしくなる、一生モノの物語。−出版社HPより−


伊坂さんらしい作品です。

とはいえ、一見関係ない所で起きている出来事が、最終的には一気に繋がって・・という物ではなく、登場人物たちや彼らの日常や考え方などが伊坂さんらしいと思いました。

まだ未成年(選挙権はありますが)とは思えないような大人びたというか達観した雰囲気のある5人の大学生の物語です。

なにごとにも冷めている北村は特に老人のような言動が多いです。読み進めるとだんだん、彼も学生なんだと思える部分が出てくるんですけどね。それでもやはり達観しているなと思います。


北村だけではなく、他の4人もどこか冷めている感じで、熱い部分があまりないです。一応、恋愛などするのですがそういう雰囲気もなく進んでいく感じ。

「彼が好きだけど、でも嫌われたらどうしよう」・・なんてモジモジする系の話は苦手なので、私にはこのくらいが良い感じです。


始めのうちは、彼ら5人の学生生活が淡々と進められるので、読み進める意味あるかな?と不安になりました。ただこの作家さんなので人物が面白くて読んでしまう状態。

そしていきなり犯罪に巻き込まれてしまいます。急に起きた事件にびっくりして、この先どうなるのか!?とハラハラしたらまた日常に戻る。

何だか淡々としていると思っていたらまた進展があって、あっという間に解決。

そしてハッピーエンド・・というよりはちょっと寂しいけど現実的な結末。


なんだか淡々とした物語だな、と油断していると、感情の波に飲み込まれてしまうので要注意。


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2023年09月06日

伊坂幸太郎「逆ソクラテス」

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 伊坂幸太郎 著
 「逆ソクラテス」
 (集英社文庫)


「敵は、先入観だよ」学力も運動もそこそこの小学6年生の僕は、転校生の安斎から、突然ある作戦を持ちかけられる。カンニングから始まったその計画は、クラスメイトや担任の先生を巻き込んで、予想外の結末を迎える。はたして逆転劇なるか!?表題作ほか、「スロウではない」「非オプティマス」など、世界をひっくり返す無上の全5編を収録。最高の読後感を約束する、第33回柴田錬三郎賞受賞作。−裏表紙より−


「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプマティス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」の5編収録。短編ですが、ちょこっと関連のある人物がいるので連作短編ともいえるかも?

ソクラテス・・・名前はもちろん知っていますし、哲学者だというのもわかりますが、どんな哲学なのか?はよくわかりません。調べてみると、彼の弟子がプラトンだそうですね。これも有名なことなんでしょうか。哲学なんてものは避けるように歩んできましたから、全く知らない状態でこの作品も読みました。

ということで、私がきちんと理解出来ているか?は疑問ですが、内容自体は難しいことではありませんでした。

表題作を始め、ほとんどの物語が小学生中心なので、それもわかりやすい原因だと思いますけど、文章も読みやすいのも良かったです。


表題作では、かなり賢い小学6年生が登場します。あらすじにもありますが「敵は、先入観だよ」という言葉は深くうなずいてしまいました。なんか、小学生に教えられた感じです。

担任にもクラスメイトにもちょっとバカにされている生徒を救うため立ち上がる安斎。安斎は別にその生徒を救おうとしたわけではなく、多分、自分がスッキリしたかったのだろうとは思いますが。

確かに小学生のころだけではなく学生時代はこういうちょっとバカにされるような生徒がいた気がします。もしかして自分もそうだったのかもしれませんし。
存在感がなく、ぼんやりしたタイプの生徒って「多分、勉強は出来ないだろう」「多分、運動は苦手だろう」という先入観を持ってしまうことが多いので、始めからバカにされてしまう。だから実はちょっとテストの点が良かったり、野球のセンスがあったりしたら大きく見直してもらえる、というのです。

その状況を意図的に作り出すために安斎はカンニングさせたり、裏から手を回したりして盛り立てます。

どんな結末になったのか?は読んでもらった方が良いので書きませんが、物悲しいような不思議な気持ちになりました。


「アンスポーツマンライク」から「非ワシントン」は関連が無さそうで、実は関わりがあって、続けて読んだ方が面白いと思います。

この作家さんらしい、一見無関係に見せかけて、最終的にギュッとまとまってくる爽快な物語になっていました。


いつも読み終わった時は色々思う所もありますし、「あ〜、今回も面白かった〜!」としみじみ思うのですが、時間が経つと細かい部分を忘れるという状態に。頭に浮かんだはずの色々な感情がうまく言葉で文章で表現できないというか。

どうしても表面的な感想で終わってしまうのがもどかしい作家さんです。今度は読んだらメモっておこうか?・・・・やらないだろうな。


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2022年08月04日

伊坂幸太郎「クジラアタマの王様」

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 伊坂幸太郎 著
 「クジラアタマの王様」
 (新潮文庫)


記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。自分は何かと戦っている?製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。悪意、非難、罵倒。感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり・・。伊坂マジック、鮮やかなる新境地。−裏表紙より−


お気に入りの作家さん。しかも気になる題名で読んでみたくて「本が好き!夏に読みたい文庫プレゼントキャンペーン」に応募したところ当選しました! こういうくじ的な物って大体外れるんですけど、当選して嬉しかったです。


本を捲ったらいきなり漫画が描いてあってびっくりしました。2〜3ページでセリフはない漫画。中世ヨーロッパの戦士っぽい格好の人たちがいて、なぜか「ハシビロコウ」も描かれています。どういう意味だろう?と思うままに本編が始まります。

主人公・岸は製菓会社の広報部で働いています。広報部でもクレーム対応が主な仕事というストレスが溜まりそうな日常を過ごしています。社内ではきっと流行らないだろうと予想されていたあるお菓子が、あるアイドルが「美味しい」とテレビで言ったことで爆発的な人気を出し、品薄状態になっていました。

そのお菓子に「異物が入っていた」とクレームが来ます。初めの対応が悪かったせいで大ごとになっていき、対応がうまいとされている岸が対応することに。そこから会社上層部の古い体質や時代に合わない発言などのせいで発生するトラブルにどんどん巻き込まれていきます。


連絡短編のように1話ずつ完結はするのですが、その度に漫画が挟まります。その漫画の意味は、ある議員の登場によってわかってきます。その議員と、お菓子の宣伝をしてくれたアイドル、そして岸の3人が夢の中で出会っているというのです。そこにハシビロコウが出てきます。

所々で出てくるハシビロコウ。実は個人的に最近ハシビロコウに興味があって、とある花鳥園にいる1羽のハシビロコウの動画を見るようになっています。普段、鳥類は苦手で映像を見るのも嫌なのですが、なぜか彼女のことはかわいいと思えたんです。

動かない鳥と言われるハシビロコウですが、彼女はまだ幼いそうでよく動いています。好きな飼育員さんに対してお辞儀をする様子がかわいくて見ています。

そんなタイミングで出て来たハシビロコウ、運命の出会いをした気分でした。

この話の中でのハシビロコウは謎の存在で、その役割は他の鳥ではしっくりしない気がします。

何より驚いたのは題名。この題名が気になって読みたくなったわけですが、これもハシビロコウのことでした。動画を何度も見ているにも関わらず知らなかったのでびっくりしました。ラテン語での学名が「クジラアタマの王様」というそうです。何でこんな名前が付いたんだろう?謎です。嘴が広いからハシビロコウというのはなるほど、と思えますけど「クジラアタマ」って何?


作品の感想というよりハシビロコウの話になってしまいましたが、作品自体はこの作家さんらしく、不思議な世界観でどうやって収めていくのか不安に思いながら読んでいて気づいたらきれいに回収されている感じで、「あ〜面白かった」と本を閉じる状態になります。

いつもよりもハラハラ感が増していて最後は爽快でした。不思議な世界観に浸りたい方、ぜひどうぞ。


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2022年02月07日

伊坂幸太郎「フーガはユーガ」

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 伊坂幸太郎 著
 「フーガはユーガ」
 (実業之日本社文庫)


常盤優我は仙台市内のファミレスで一人の男に語り出す。双子の弟・風我のこと、幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの、誕生日にだけ起きる不思議な現象、「アレ」のこと――。ふたりは大切な人々と出会い、特別な能力を武器に、邪悪な存在に立ち向かおうとするが……。−裏表紙より−


この作家さんの描く人物は淡々と飄々としていることが多く、今回の主人公・ユーガもそんな感じでした。淡々と自分の人生を語っていきます。

どんな展開になっていくのか、読み進める毎に変化していくので結末が気になりました。

SFっぽい展開になるのか?と思えば、意外と重々しくて、ミステリっぽい要素も出てきて、これはジャンル分けが難しい作品です。


この話の内容を語る上で必要な現象があるのですが、あらすじには「アレ」としか書かれていません。

そうなると、ネタバレせずに感想を書いていくのは本当に難しくなります。


双子に起こる不思議な現象といえば、何となく想像するのは片方が怪我をしたら、もう一人も同じ所が痛くなるとか、打ち合わせしなかったのに同じ色の服を着ていたとか、片方の悲しみが伝わって急に涙が出るとか・・。

でも私の平凡な頭で思いつくようなことならわざわざ「アレ」なんて言わなくても良いのでもちろん違います。もっとSFっぽい現象です。実際にはないでしょうね。・・・わかりませんが。


彼らの壮絶な人生を語っていくわけですが、顔をしかめるような記述も多くて読むのが辛い所もたくさんありました。でも双子で良かったのかもしれないと思います。お互い支え合えますから。

結末は悲しかったですが、ある意味明るい未来も見えるような、何とも複雑な感情のまま読み終わりました。もっと幸せな終わり方をしても良かったとは思います。


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2020年01月24日

伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」

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 伊坂幸太郎 著
 「アイネクライネナハトムジーク」
 (幻冬舎文庫)


妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL……。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。−裏表紙より−


この作家さんらしい作品で、どんどん繋がっていく爽快な話だったのですが、読んだのが昔過ぎて覚えていません・・。

世界って狭いんだな〜という感想は何となく覚えているのですが。

また時間があるときに再読して感想を載せます。


とりあえず、読んだ記録です。

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2019年08月29日

伊坂幸太郎「サブマリン」

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 伊坂幸太郎 著
 「サブマリン」
 (講談社文庫)


家裁調査官の武藤は貧乏くじを引くタイプ。無免許事故を起こした19歳は、近親者が昔、死亡事故に遭っていたと判明。また15歳のパソコン少年は「ネットの犯行予告の真偽を見破れる」と言い出す。だが一番の問題は傍迷惑は上司・陣内の存在だった! 読み終えた瞬間、今よりも世界が輝いてみえる大切な物語。−裏表紙より−


この作家さんとの出会いになった「チルドレン」の続編です。約10年前に読んだようです。最近のことも怪しいのに、10年も前に読んだ本の内容を覚えているはずもなく・・。


家裁調査官という職業の話です。武藤という調査官の視点で話が進められますが、彼には陣内という上司がいて、この人がなかなかの曲者。

個性的なので、さすがに陣内のことは何となく覚えていました。それだけ印象深い人だということなのですが。


武藤調査官は、問題を起こした少年・少女たちの日常を見に行って、きちんと真面目に生活を送っているかを確認します。その対象もなかなか個性的。

「ネットに書き込まれた犯行予告のうち、どれが実行されるかわかる」と言い出す少年もいて、気付けば巻き込まれ、振り回されます。基本的に武藤調査官はお人好しなんだと思われます。


そして、かなりマイペースで我が道を突き進む陣内。妙に自信満々な態度で部下たちを仕切っています。調査対象の少年少女たちにも上から目線な態度でグイグイ接しています。

彼の言動は戸惑うことがほとんどなのですが、たま〜にドキッとするような的を射たことを言い、それが妙に魅力的に感じるんですよね。


2作目になっても謎の多い陣内。また彼の活躍は見てみたいです。

彼のことは何年経っても忘れないでしょうから安心です。


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2019年03月07日

伊坂幸太郎「PK」

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 伊坂幸太郎 著
 「PK」
 (講談社文庫)


人は時折、勇気を試される。落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。三つの物語を繋ぐものは何か。読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。−裏表紙より−


「PK」「超人」「密使」という3つの話からなるのですが、短編でもないし連作短編ともいいにくい内容です。最初から話は繋がっているのですが、それぞれ独立もしています。

この作家さんらしく、読み始めはよくわからない記述も最後にはきれいにつながっていく・・ということでもなかったのが残念でした。

そのせいで、最後まで読んでも理解できず。

解説を読んでちょっとわかった気がしましたが、感想文が書けるほどには理解できませんでした。

結局はあの嫌な虫が活躍する!?的な??


とりあえず、読んだ記録ということで。

 
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2019年02月20日

伊坂幸太郎「陽気なギャングは三つ数えろ」

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 伊坂幸太郎 著
 「陽気なギャングは三つ数えろ」
 (祥伝社文庫)


陽気なギャング一味の天才スリ久遠は、ひょんなことからハイエナ記者火尻を暴漢から救うが、その正体に気づかれてしまう。直後から、ギャングたちの身辺で、当たり屋、痴漢冤罪などのトラブルが頻発。蛇蝎のごとき強敵の不気味な連続攻撃で、人間嘘発見器成瀬ら面々は追いつめられた! 必死に火尻の急所を探る四人組だが、やがて絶体絶命のカウントダウンが!−裏表紙より−


お気に入りの作家さんのお気に入りのシリーズです。第3弾ですが、間が空きすぎて(約9年ぶり!?)中身をすっかり忘れていたので、読みながら思い出す状態でした。


4人のギャングの物語で、この4人についてはぼんやりとはいえ覚えていました。冒頭で銀行強盗をするのですが、その場面が好きなんですよね。悪いことをしているので“好き”というのも微妙なのですが・・・。

ぺらぺらと演説しながら人質を集めておとなしくさせる響野、スリの天才・久遠、人間嘘発見器であり堅物な成瀬、正確な体内時計を持つ雪子、という個性的なメンバーで、この4人が集まって問題に立ち向かう様子がとても面白いです。

何か問題が起こったときに、それぞれがどんな反応をするか予想して「やっぱり!」と当てたり、外れて「あれ?意外と・・」と驚かされたりするのも読む楽しみの一つです。


今回の彼らは、人助けからトラブルに巻き込まれるという何ともかわいそうな展開。ひたすら冷静に物事を把握して解決させようとする成瀬に、雪子も冷静に、でも時に熱くなりつつ立ち向かい、久遠は発端を作った本人であるにも関わらず妙に他人事のように第三者的な目線で立ち向かい、響野は1人バタバタしては物事をよりややこしくする役回り。

彼らのバタバタさに何度もニヤッとさせられながら読みました。最後まで飽きずに一気読みできました。


彼らの話はいくらでも書けそう。もっと読みたいです。次はもう少し早めに・・。


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2016年10月05日

伊坂幸太郎「残り全部バケーション」

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 伊坂幸太郎 著
 「残り全部バケーション」
 (集英社文庫)


当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブすることに―。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏家業コンビの物語。−裏表紙より−


物語は、ある一家が最後の日を迎えている場面から始まります。父親の浮気が原因で離婚することになった夫婦と、寮に入るため家を出る娘の3人家族。この家族、特にお母さんが面白い人で、何かにつけてどっしり構えている感じが浮世離れしていてなかなか笑えました。

一家が最後に3人で出かけようとしているとき、場面が変わって今度は何やら怪しげな商売をしているらしい2人組の話に。当たり屋をやった2人ですが、後輩の岡田が先輩の溝口に対して、突然「足を洗いたい」と言い出します。

こんな商売をしていると、抜け出すのは大変だという印象ですが、意外とあっさりと「わかった」と了承される岡田。でも条件として「適当な携帯番号にメールしてその相手と友達になること」と言われます。よくわからない理由ですが、溝口にしてみれば、こういう条件を出せば失敗して離れられないだろうと思ったようです。

そこまで読むと、もしかして・・と思える展開です。この作家さんお得意の、一見関係なさそうな人物が実はつながっていくというあれですね!?と、ワクワクし始めます。

そう、予想通り始めに出てきた一家と、岡田は連絡を取り合うことに。怪しい商売をしている割にはスムーズに足を洗えたね〜と安心していると、まあそうもいかず一波乱。

2話目以降になると、また全然違う話に。でも違う話に思えてもつながっていくので、注意深く読み進めました。

そして最後の話で一気につながる爽快感!

登場人物たちのキャラクターが面白くて、悪いことをしているはずなのに憎めなくて、どこか抜けている所もあって、最後まで飽きずに読み切ることができました。

やっぱりこの作家さんの話は良いな〜。改めて感じる作品でした。


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2014年02月18日

伊坂幸太郎「マリアビートル」

マリアビートル

 伊坂幸太郎 著
 「マリアビートル」
 (角川文庫)


幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から蜜命を受けた、腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の社内で、狙う者と狙われる者が交錯する―。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテインメントを追い抜く、娯楽小説の到達点!−裏表紙より−


「グラスホッパー」の続編です。とはいえ、それぞれ独立した話になっているので、どちらを先に読んでも大丈夫・・とはいえ、やはり順番に読んだ方がより楽しめると思います。

「グラスホッパー」と同じように殺し屋が活躍する話です。鈴木や槿(あさがお)が再登場します。2人とも良い味出してます。特に鈴木はこんなキャラだったっけ?と思うくらい。まあ、色んな経験をしたわけですから、性格に変化があってもおかしくないかも。


今回の舞台は、東北新幹線の中。東京駅から出発し、盛岡までの道のりで様々な困難や事件が発生します。登場人物のほとんどが“殺し屋”や闇の社会の人間なのですから、当然ではあるのですが。狭い空間で、人が驚くほど死にます(殺されます)し、ナイフや拳銃が多く登場します。

実際の新幹線でこんなことが起きていたら・・・ありえませんけど、ゾッとします。ネットでどなたかが書かれていましたけど、こんなに人が死んでいる新幹線の掃除大変そうです。しばらくこの車両は使えないですね。


登場する殺し屋は前回と同じようにとても個性的な面々です。

文学通の「蜜柑」と相棒の「檸檬」。檸檬は機関車トーマスの大ファンで、誰に対してもトーマスに出てくるキャラクターに例えます。彼がトーマスのことを語るときは必ず「トーマス君」と言うのが笑えました。

かなり運の悪い「七尾」は、「てんとう虫」と呼ばれています。彼の運の悪さには本当に呆れます。このタイミングでなぜこんな目に!?と驚くような事が必ず起きます。あまりのひどさにこれも笑ってしまいました。彼は見た感じが好青年で頼りない雰囲気をかもし出していて、言葉遣いも丁寧で優しいので、普通にしていたら良い人っぽいのですが、実は相手の首を折るという残虐性の高い殺し方をするんです。

そして誰よりも存在感を出し、不快にさせたのが中学生の「王子」。彼の外面と内面の違いは本当にゾッとしましたし、読み進める度に腹が立って仕方ありませんでした。中学生にしてこの考えと冷静な判断力は末恐ろしい・・。

この王子がした「なぜ人を殺してはいけないのか」という質問に、鈴木が答えるのですが、この答えが納得できるような、妙に冷めた気持ちになるような、何と表現すれば良いのかわからないのですが、モヤモヤしてしまいました。

どんな答えをしたのかはぜひ読んでみて下さい。


ページ数の多い作品ですが、読み進めると止まらないスピード感があり、思ったよりも早く読めました。続きが気になって寝不足になるくらいでした。

最後の方でちょこっと出てきた人たちが全て美味しい所を持っていった感じですが、結末はある意味、ハッピーエンド?というか、一応、スッキリできました。私のお気に入りまで死んでしまったのは残念でしたけど。


読み終わってから題名の意味がわかりました。なるほどね〜。


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2013年11月11日

伊坂幸太郎「グラスホッパー」

グラスホッパー

 伊坂幸太郎 著
 「グラスホッパー」
 (角川文庫)


「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに−「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。失踪感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!−裏表紙より−


“殺し屋小説”ですよ! どんな話なのか不安になりました・・が、読み始めると面白くて一気に惹きこまれました。

さすがに“殺し屋小説”だけあって、人はたくさん死にますし、殺されます。しかも描写がいちいち細かくて、書かれていることを想像しながらは読めない感じでした。

この作家さんの得意な構成になっていて、3人の視点で描かれた物語が交代で出てきます。視点が変わるときにはそれぞれの名前がハンコのように押されています。


視点となる人物は、元教師・鈴木、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの殺し屋・蟬の3人です。

鈴木は唯一、殺し屋ではなく、亡き妻の復讐を誓う純粋な人間で、彼がいることで物語が重くなり過ぎず、読者の感情に近い所で語られるので読みやすかったような気がします。

鯨は、かなりの大男なのでこんなコードネームで呼ばれています。彼を見て、彼の声を聞くと、人はなぜか無性に死にたくなります。首を吊ったり、飛び降りたり・・。彼に説得されると、きちんと遺書まで書いて死んでいく。とても不思議な人物です。

蟬は、ナイフを使って刺し殺します。人数が多ければ多いほど興奮するタイプで、一家惨殺最高!と思っています。蟬のようにうるさいからこんなコードネームが付けられています。


鈴木が狙う人物が目の前で車に轢かれて死亡するのを目撃してしまう所から話は始まります。しかもその事故が“押し屋”と呼ばれる殺し屋の仕業だとわかり、あわてて犯人らしき人物を追います。

鈴木と押し屋と思われる男性や家族と過ごす場面が、何とも言えない不思議な雰囲気を出していて、でも妙に気になって目が離せない感じがして、どんどん読み進めてしまいました。

更に、鯨や蟬と鈴木が出会う所からは読むのを止められませんでした。

とても軽い感じの話なのに、それぞれに悩みや苦悩があって、意外と心に刺さる言葉もあったりして、読み応えもありました。


最後はキレイにまとまって、収まる所に収まって、ハッピーエンドでした。・・・・いや、たくさん人が死んだのに「ハッピー」ではないですがふらふら

続編も読んでみようと思います。しかし、続編ってどういうこと!?


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2013年09月27日

伊坂幸太郎「オー!ファーザー」

オー!ファーザー

伊坂幸太郎 著
 「オー!ファーザー」
 (新潮文庫)


父親が四人いる!? 高校生の由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに、女好き、博学卓識、スポーツ万能。個性溢れる父×4に囲まれ、息子が遭遇するは、事件、事件、事件−。知事選挙、不登校の野球部員、盗まれた鞄と心中の遺体。多声的な会話、思想、行動が一つの像を結ぶとき、思いもよらぬ物語が、あなたの眼前に姿を現す。伊坂ワールド第一期を締め括る、面白さ400%の長篇小説。−裏表紙より−


あらすじを読んでも面白そうな作品。父親が4人もいるってどういうこと!?・・気になりますよね?

その理由はたぶん、ほとんどの人が想像するであろうことなんですけど、本当の父親が誰なのかを知るために、DNA鑑定をすれば良いじゃないか!と息子である由紀夫も提案します。でも、4人は「そんな鑑定なんかして、もし、俺が父親じゃなかったらどうすんだよ」と言って、高校生になった今でも4人それぞれが「自分が父親だ」と言い張っています。

大学教授の“悟”は最年長らしく他の3人よりはまともな発言が多く、一般的な父親像に一番近い存在かもしれません。とはいえ、普通ではない部分も多いですけど。由紀夫の頭の良さは彼から譲り受けたものかも?

ギャンブラーな“鷹”は、何でもすぐに賭けにしようとします。あまり良い影響があるとは思えない人ですね。由紀夫の勘の鋭さは彼から?

中学教師をしている“勲”は、いつも鍛えていて、体力自慢の男です。由紀夫に喧嘩の仕方も教えてくれました。身体能力の高さは彼から?

元ホストで今はバーを経営している“葵”は、女好きで、息子の前でもナンパして歩くような人。女性からも好かれます。心の中では文句言いながらも女性に優しい所は彼から?

とまあ、誰の息子であってもおかしくない育ち方をしています。

変な家庭環境で育ったせいか、どこか達観した感じのある由紀夫。ハチャメチャな行動をとる父親や、同級生たちに振り回されつつ、どこか冷静に判断しようとして発する言葉はなかなかトゲと冷たさが加わって笑えます。

母親もいるのですが、彼女はこの話の間、長期出張に出ていてほぼ出てきません。最後に美味しい所を全て持って行った感じはありましたが、出てこないのにすごく個性的なキャラクターを出していました。


家族以外の人たちも本当に個性的で、自己中でマイペースで、そんな彼らの巻き起こす事件や、巻き込まれる事件には笑わされました。人が亡くなったりしてなかなかのピンチに立たされても、何だかこの人たちがいれば大丈夫と思わされる、妙な安心感がありました。

とても面白かったので、また彼らの話が読みたいと思いました。読める日が来れば良いな・・。


この話は映画化されるようです。帯に俳優さんが載っていますが、私的にはイメージが違いますけど、父親たちを誰が演じるのか?の方が気になります。


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2013年04月23日

伊坂幸太郎「バイバイ、ブラックバード」

バイバイ、ブラックバード

 伊坂孝太郎 著
 「バイバイ、ブラックバード」
 (双葉文庫)


星野一彦の最後の願いは何者かに<あのバス>で連れていかれる前に、五人の恋人たちに別れを告げること。そんな彼の見張り役は「常識」「愛想」「悩み」「色気」「上品」―これらの単語を黒く塗り潰したマイ辞書を持つ粗暴な大女、繭美。なんとも不思議な数週間を描く、おかしみに彩られた「グッド・バイ」ストーリー。<特別収録>伊坂孝太郎ロングインタビュー。−裏表紙より−


この作家さんらしい不思議な雰囲気の物語でした。しかも普通の日常が描かれているような雰囲気もあり、でもそれだけではない・・という特異な話です。


星野一彦は、何かの理由で<あのバス>に乗せられ、命にかかわるような過酷な所へ連れて行かれようとしています。理由もバスの正体も、誰がどこへ連れて行くのかも明らかにされないまま話は進みますが、彼のそばにいる見張り役の女性のお陰で、とにかく怖い所へ連れて行かれるのだということは想像がつくようになっています。

見張り役の女性・繭美は、背も高く太っていて金髪で、言動はガサツで声も大きくて、一度暴れると誰にも止められない・・という一度見たら絶対に忘れないであろう女性です。

彼女を連れて、星野は付き合っている5人の恋人に別れを告げてまわります。恋人1人に1話。まず恋人と星野の出会いが書かれ、星のマークを挟んで「あれも嘘だったのね」という恋人の言葉から次のシーンが始まります。そして、星野は告げる別れの言葉と繭美の暴言・・。


始めは繭美の暴言にイライラさせられ、2話目の頭を読んでまた同じパターンが続くのか・・とちょっと嫌気がさしたのですが、わかれ話をしたときの反応が違ったり、恋人の性格が変わっていたり、様々なタイプの話が用意されていて、結局は最後まで楽しく読み切ることができました。

更に、あんなに嫌な奴だった繭美のこともどんどん好きになっていく!自分でも驚きでした。


話の後に、作者のインタビューが載っているのですが、それを読んで、自分が作者の思惑通りにはまっていたことがわかりました。1話目に普通の女性を出して、2話目以降で少しずつ変化をもたせている・・とか。私が思ったままやん!すごい単純なのか!?

まあそれはともかく。

最後まですべてのことがはっきりさせられるわけではないので、もやもやした感じは残るかもしれません。でも、この作品ではこういう終わり方も良いのかな?と思いました。


さあ、次は何を読もうかな?


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2012年12月17日

伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」

アヒルと鴨のコインロッカー

 伊坂幸太郎 著
 「アヒルと鴨のコインロッカー」
 (創元推理文庫)


引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は−たった一冊の広辞苑!? そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ! 注目の気鋭が放つ清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。


話は“僕”がモデルガンを持って書店の裏口に立ち、ボブ・ディランを口ずさんでいる所から始まります。その始まり方に驚かされ、一気に話に引き込まれました。

なぜ書店を襲っているのか疑問に思っているうちに、話はいきなり二年前の出来事に。一瞬頭に「?」が浮かびますが、すぐにこの作家さんの得意技だと気づき、あまり深く考えずに読み進めることにしました。

二年前の出来事には“僕”こと椎名は出てきません。そこに出てくるのは琴美というペットショップ店員と、その恋人らしきブータン人のドルジ、そして元恋人の河崎。

3人がどんな関係で、どんなことを考えながら過ごしていて、どんな事件に巻き込まれたのかが細かく書かれています。そちらに深入りしかけたら、また現在に戻ります。

現在に出てくるのは、二年前の登場人物の中では河崎のみ。そして、ドルジらしき外国人も影はあります。あと1人、琴美だけは一切出てこないので、その理由が知りたくてどんどん読み進めていきました。

そして少しずつ絡み合ってくる現在と過去。すべての謎が解けるとき、驚きと悲しみがありました。


一見関係ない2つの出来事をうまく一つにまとめて解決させていく・・やっぱりすごいと感心させられました。

題名も読む前は意味がわからなかったのですが、読み終えるとよくできた題名だということがわかりますし、これ以外にはなかったかもしれないと思いました。


さて、伊坂作品、次は何を読もうかな??


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2012年10月05日

伊坂幸太郎「ラッシュライフ」

ラッシュライフ

 伊坂幸太郎 著
 「ラッシュライフ」
 (新潮文庫)


泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場−。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。―裏表紙より―


読み終わったときに「堪能した〜!」と満足のいく作品でした。この作家さんらしい、不思議な、でも全てが収まるべき所に収まる感じが心地よかったです。

初めにエッシャーのだまし絵の一つが載せられています。お城のような建物の外階段が上がっているような下がっているような・・というあの有名な絵です。

どういう意味があるのかわからないまま読み始めました。・・・で、読み終わると「なるほど」と納得できます。

物語全てがだまし絵のような、不思議な展開になっているんです。話の中にも「エッシャー」の話は時々出てきます。


話は主に、4人の視点で進められます。泥棒の黒澤、新興宗教的な物にはまっている河原崎、旦那と別れて不倫相手と再婚しようとしている京子、リストラされて求職中の豊田。

4人の話は、挿絵によって区切られていて、全く違う話のように描かれます(挿絵にはそれぞれの人物に関係のある物が使われています。黒澤は泥棒、河原崎は神様、京子は車、豊田は犬を連れた人)。ただ、場所や関わった人物など、少しだけ何か接点があるようになっています。

しばらくそのまま並行した状態で話が進んでいくので、何が書きたいんだろう??と不安になってきました。でも、4人の言動や人生の描かれ方が面白くて、気づけばページをめくってしまっているような状態が続きました。

そして最後にはそれぞれの人生が交差し始めて・・。


なるほど、こういう風にこの人たちは関わっていたわけね・・と納得して読み終えることができました。

この作家さんは他の作品に出てきた人物を少し登場させてファンを楽しませてくれます。私は間が空きすぎたので気付かずスルーしてしまったのですが、後で知って戻って読み直しうれしくなりました。

久々に読んで面白かったですし、泥棒の黒澤のことが妙に好きになってしまったので、黒澤が出てくるという作品も読んでみようと思います。


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2010年12月21日

伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」

伊坂幸太郎著 「ゴールデンスランバー

(新潮文庫)


数年前に映画化されて、見に行くかどうか迷った作品です。やっと文庫化されたので読んでみました。


仙台で行われた首相のパレード。たくさんの人が見ている前で、首相が何者かに爆殺された。犯人として名前が挙がったのは“青柳雅春”という青年。ところが彼は無実だった。数年前、アイドルを強姦から救ったことで一躍有名になった彼がなぜ犯人として追われることになったのか?遠慮なく銃も撃ってくる警察関係者たちに怯えながら逃げる青柳雅春。彼は逃げ切ることができるのか?


首相のパレードが行われ、テレビでその中継を見ている女性二人の様子から話は始まります。あまり興味が無い二人は、テレビ中継自体も真剣に見ていたわけではなく、ランチを食べながら何となく見ていた・・という感じでした。

突然、画面が騒がしくなったと思ったら爆発が起きていて、首相が殺害されたことを知るのです。

その後は、捜査の様子が書かれるのか?と思ったら、今度は病院で入院中の患者たちがテレビの報道にかじりつく様子が書かれます。・・・私はこの流れについていけなくなったんですが。

この一見関係なさそうな人たちも後で深く関わってくるんですよね〜。

犯人は青柳雅春という青年。逃げ回る彼を追いかける警察関係者の様子はかなり恐ろしく、というかついていけないくらいの異常さ。街中でも銃を撃つ!しかもそれさえも青柳のせいにするという、本当にあり得ない事態に。

青柳雅春は実は何もしていません。ところが犯人として追われることになるのです。身に覚えのない罪で追われ、しかも証拠も次々と出てくる様子は本当にハラハラドキドキしました。自分が追われているようなそんな気分にさえなるくらい。

真犯人は絶対に単独じゃないことがわかりますし、しかも国のトップの方の強い権力をもった集団が関わっているとしか思えない。

マスコミにも犯人扱いされ、これだけ証拠も出てくると、みんな「青柳が犯人だ」と思うでしょう。でも孤独な彼を助けてくれる人もいて、少し温かい気持ちにもなれました。

「人を信頼するのが僕の強み」なんて言うくらい彼は人を信じて、何度裏切られても信じていきます。そんな人柄も周りを動かす力になるんでしょうね。


必死で逃げる青柳雅春と彼の周りで助けようとする動き、そして執拗に追い回す人たち。誰が味方で敵なのか?後半は驚くほど一気に読んでしまうスピード感ある話でした。この作家さんにしては珍しい感じ?でも面白かったです。


題名の「ゴールデンスランバー」というのは、ビートルズの曲名です(「Golden Slumbers」といいます)。私は知りませんでした。優しい子守唄だそうですよ。解散間近の頃に書かれた曲だそうです。主人公が何度か口ずさんでいて気になったのでネットで調べて聴いてみました。なかなかキレイな曲。



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どうでもいいことですけど、登場人物の名前がほぼみんなフルネームで連呼されていたのが気になりました。主人公も“青柳雅春は〜”とずっと書かれていましたし、友だちは森田森吾、元彼女は樋口晴子・・・。何ででしょうね?
しかも私、主人公のことをどうしても「あおやぎがしゅん」と読んでしまって治らなかった・・もうやだ〜(悲しい顔)

今読んでいるのは・・
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2010年06月19日

伊坂幸太郎「死神の精度」

伊坂幸太郎著 「死神の精度

(文春文庫)


苦情処理係で働く一恵は、どこにでもいるような平凡な地味な女性。自分でもそう思っている彼女は自分に自信もなく、ある日声をかけてきた千葉という男性のことも疑い騙そうとしていると思い、警戒する。この千葉という男性は実は死神だった。一恵に近づき調査して、「死」を与えるかどうか判断するために来たのだ−「死神の精度」他「死神と藤田」「吹雪に死神」「恋愛で死神」「旅路を死神」「死神対老女」計6話収録


題名の通り、死神が主人公(と言って良いのか?)の話です。

ターゲットに接近し、一週間調査した後「見送り」か「可」かを決めて報告します。「可」と判断された場合、その人には翌日死が訪れますもうやだ〜(悲しい顔)

死神は、ターゲットに接近しやすいような状況や姿で現れるため、この話の主人公である千葉もその相手によって若者だったり、おじさんだったりイケメンだったりします。

死神には市や町の名前が付いていて、ミュージックを愛しているためCDショップで視聴していて、人間に素手で触ると人は気絶してしまいます。

死神と藤田」では、藤田というやくざにつかまってしまいます。そうやって藤田に接近することになったわけです。部下の阿久津という若者と親しくなり、共に藤田を助けようとします。まあ、結局は死ぬわけですけどね・・バッド(下向き矢印)

吹雪に死神」では、雪山で遭難したことになり、ある洋館へ入り込みます。そこでは連続殺人が起きているのですが、それは死神が「可」と判断した人たちがそろっているせいなのです。この話では同僚と一緒になり、二人で推理して事件は解決させます。

恋愛で死神」は、萩原という男性が死ぬのを確認する所から始まります。そして回想していく展開になっています。萩原の恋愛相談にのる形で接近しました。

旅路を死神」では、人殺しの森岡という若者を千葉が車に乗せます。逃亡する森岡と話をしながら旅を続け、ホテルにも泊まります。そこで塀に落書きしていた若者と出会い、会話することで千葉はまた新たな人間の気持ちを知ります。

死神対老女」では、いきなり老女から「人間じゃないでしょ」と言われます。美容院を営む老女から「「明後日、客にたくさん来てほしいから客を連れてきてほしい」と頼まれます。なぜ明後日に客が来てほしいのか?謎のまま千葉は助けます。


死神からみた人間の様子は、不思議というか、何気なくやっている行動などにも疑問をもったりして、自分のことも見つめ直せる感じでした。←ちょっと大げさかな?

千葉は任務につくといつも雨が降るので「雨男」と言われます。でも千葉は「雨男」は「雪男みたいなもの?」なんてずれた返しをするんですわーい(嬉しい顔) 死神ですからね。ずれた返しをする度に人間からは「面白いね」と言われ、それがまた理解できない千葉です。真剣に仕事しているのに「面白い」とはどういうことだ?むかっ(怒り)・・ってわけです。

短編集ですが、それぞれの話に出てきた人が他の話しにも登場したりして、それも楽しめます。ぜひ、1話目から順番に読んで下さい。


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2009年11月06日

伊坂幸太郎「陽気なギャングの日常と襲撃」

伊坂幸太郎著 「陽気なギャングの日常と襲撃

(祥伝社文庫)


銀行強盗の4人組それぞれが巻き込まれた4つの事件。更に誘拐事件まで起きて、銀行強盗と同じように協力(?)しながら解決していく。


陽気なギャングの続編です。

前半は4人それぞれの日常の中で巻き込まれる事件が書かれていて、後半には4人全員で事件に取り組みます。前半と後半はとても強い関わりがあって、前半に出てくる何気ない細かい部分が出てくるので「ここで出てくるのか」なんて感動もありますぴかぴか(新しい)

全員で行動するよりも、個々に行動しているときの方がより個性が際立って感じました。その後で全員がまとまると更に4人の関係がわかりやすくなって「確かにこの4人じゃないとね」と思えるんですよ。

書くのはなかなか大変そうですが、話はまだまだ作れそうです。また続編が出たら良いな・・わーい(嬉しい顔)


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2009年11月02日

伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」

伊坂幸太郎著 「陽気なギャングが地球を回す

(祥伝社文庫)


映画化されていたそうですね〜。知りませんでしたがく〜(落胆した顔) 確かに映像化しても映えそうな話です。


嘘を見抜く・正確な体内時計・スリ・演説・・が得意な4人が集まって銀行強盗をしている。ところが逃亡中に事故に合い、現金輸送車襲撃犯たちにせっかく盗んだ大金を横取りされてしまう。諦めきれない4人は取り返そうと動き出すが・・


この作家さんの作品に必ず登場するちょっと変わった人物がこの作品でも登場。今回の場合は4人とも変わっていると言ってもいいかもしれませんがあせあせ(飛び散る汗)

銀行強盗を悪いことだと認識してやっていないというだけでも十分変ですしね。更に、その家族たちも銀行強盗をしていると知っているのに止めないがく〜(落胆した顔) 「それってどうなん?」って思ってしまいますふらふら

銀行強盗に失敗してから次々と事件が起き、お金を取り返そうと動く4人は事件に巻き込まれます(自分から進んで巻き込まれた感もあり) 後半は謎がどんどん解明されていきながら、どんでん返しも何度かあり、面白い結末でした。・・と言いつつ、結構結末は見えていたんですけどねたらーっ(汗)


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