2015年09月04日

今野敏「ヘッドライン」

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 今野敏 著
 「ヘッドライン」
 (集英社文庫)


報道番組「ニュースイレブン」の記者、布施。素行の悪さに目をつけられながらも、独自の取材で多くのスクープをものにしてきた彼が興味を示した女子学生猟奇殺人事件は、警視庁捜査一課第二係、黒田の担当だった。警察も知らない事実を布施が握っているらしいと感づいた黒田は、彼に張り付くことを決める。記者と刑事、異色のタッグを組んだ二人は、やがて事件に潜む大きな闇の核心に迫って―。−裏表紙より−


1作目を読んだのは2009年なので、もう6年前になります。でも最近、ドラマになったのを見たので、雰囲気は思い出すことができました。


相変わらず飄々として会議にも出ないこともあるようないい加減に仕事をしているように見える布施。今回はそんな布施がテレビ局で過去のある事件を調べていました。他の記者が調べていても誰も興味をもたないでしょうが、布施の場合は周りが興味を持ち始めます。彼が調べ直すなら何か出てきたんだろう、となるわけです。

その事件とは女子学生が殺された事件。しかも遺体がバラバラにされて遺棄されるという猟奇的な事件です。迷宮入りになりそうなその事件を捜査しているのは捜査一課第二係。捜査員がどんどん減らされる中、黒田刑事は地道に資料を読み返して何か見落としていないか日々調べています。

そんなとき、布施が興味を持っているらしいと知ったため、刑事でありながら記者に張り付くことを決めます。かなり異例のことではありますが、布施のお陰で裏社会の重要人物とも顔を合わせることができ、事件は意外な展開を見せます。

事件が起きたとき、テレビや新聞では、こぞって報道したわけですが、被害者が女子学生でしかも猟奇的な事件だったので「被害者がかわいそう」という流れで終わってしまいました。その傾向を布施は間違っている!と訴えます。

「俺たちの仕事は、視聴者の耳や眼の代わりになることです」というのが彼の持論。

テレビでは殺人や誘拐、強盗など誰かがけがをしたり殺されたりする話になると、神妙な顔つきになり真面目に静かに報道しています。でも本当はどのニュースも淡々と事実だけを並べるべきなんですよね。

それを聞いて「ひどい!」とか「かわいそうに!」と思うのは視聴者なんです。先に「ひどい事件だ」と言われる必要はないんですよね。今まであまりそんなことを考えたことがなかったので、これを読んで考えるいいきっかけになりました。

視聴者もすぐに苦情を言って、報道に対して色々と注文をつけすぎているのも原因の一つだと思うので、見る側、受け取る側にも責任はあると思います。

難しいことですが。


話の展開的には、布施がスーパーマンすぎではありますが、深い内容でしたし、最後まで楽しめました。次も発売されているので、今度は早めに読みます。


<スクープシリーズ>
「スクープ」


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2015年08月03日

今野敏「確証」

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 今野敏 著
 「確証」
 (双葉文庫)


都内で起きた強盗事件と窃盗事件。警視庁捜査3課で盗犯捜査ひと筋の萩尾秀一は、ふたつの事件には繋がりがあるとして、部下の武田秋穂とともに捜査を始める。捜査1課との軋轢や駆け引きの中で、ベテランの萩尾は何を見て、若い秋穂は何を考えるのか。「継続」と「ひらめき」が融合した円熟の警察小説、待望の文庫化。連続テレビドラマ原作。−裏表紙より−


この作家さんの作品を読むのは約半年ぶり。作品が多いですし、色んな作風の物があって、たぶん私には合わないだろうと思う作品も多いので、選んでいるうちに間が空いてしまいました。

でもやっぱりこの作家さんの警察小説は読みやすいし面白いな〜と再認識しました。

主人公は同じようなタイプの刑事が多いんですけどね。部下をうまく使いつつ、上司にも堂々と意見を言って、でも「言い過ぎたかな?」とか「あいつは自分のことをどう思っているんだろう?」とか後で悩むタイプ。そして、刑事という仕事に誇りを持っていて、この仕事を守るためなら何でもやるという気持ちが溢れているような人。

この「確証」では萩尾がその人物です。萩尾の部下は若い女性なので、他の人たち以上に「こんなとき相手が男ならこうやれば収まるけど、女性だとどうしたらいいかわからない・・」という悩みまで増えていて、なかなか大変そうです。女性からすると、女性だからって色々考えなくても良いのに、と思うんですけどね。集団になるとややこしいのですが。


この作品は捜査3課の話で、盗犯係と呼ばれるように窃盗事件の捜査をする部署なので、事件も窃盗事件です。ただ今回は3課が扱う窃盗事件と、1課が扱う強盗殺人事件との関連性が考えられたので、捜査1課も絡んできます。

そうなると、1課の妬みとか嫌味っぽい言動とかが増えてきて“捜査1課は嫌な部署”という図式になってくるわけです。それぞれの仕事に対するプライドが変に出てきてしまって、衝突もくり返されます。たまたま理解ある上司がいてくれたおかげで、捜査は円滑に進むのですが、それでも細かい問題は山ほど出てきて、もっとスムーズに捜査出来ないものかと呆れる所もありました。

萩尾がいなかったら解決できなかったであろう事件。萩尾のような職人という刑事がもっといないとダメなんじゃないの?と変なことを心配してしまいました・・。



萩尾と武田秋穂のコンビもどんどん息が合ってきて、良い感じになってきました。これはシリーズ化するでしょうから、続編を楽しみに待つことにします。


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2015年02月14日

今野敏「晩夏」

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  今野敏 著
 「晩夏」東京湾臨海署安積班
 (講談社文庫)


台風一過の東京湾で、漂流中のクルーザーから他殺体が発見された。遺体が発見された船室には鍵が掛かっていて・・。東京湾臨海署・強行犯第一係の安積警部補らは、被害者の身元確認を始める。一方、第二係の相楽たちは、前日に開かれた新木場でのパーティーで発見された、変死体の事件を追っていた。どちらも捜査が滞る中、重要参考人として身柄を確保されたのは、安積の同期で親友の速水直樹警部補だった―。安積は速水の無罪を晴らすことができるのか!? 大ベストセラー安積班シリーズ、待望の文庫化。−裏表紙より−


1年半ぶりに文庫化されたシリーズ。やっと出たか〜!と大喜びで読み始め、勿体無いですが一気読み状態でした。

大体いつも、事件が起きて安積班が捜査を始め、安積には必ず妨害したがる上司や同僚が現れ・・というパターンなのですが、いくら読んでも飽きないんですよね。お気に入りのシリーズです。


あらすじにあるように、安積の同期でもある速水警部補が重要参考人として取り調べを受けることになるのですが、その事件の捜査をしていたのは、安積の班ではありませんでした。でも、速水が犯人であるはずがないと確信している安積は、自分の捜査をしながらも、気になって仕方がありません。

まあ、冷静に考えたら、彼が犯人だなんて変だと思う証拠ばかりだったわけですが、捜査一課が彼をかなり重要視したため、安積も怒りを爆発させてしまいます。

友のためなら、上司にも意見を言うぞ!という安積の姿勢はとてもかっこいいです。でも、後でウジウジと「言い過ぎたかな」なんて悩むところもあるのですが。そこがまた人間臭くて良いんですよね。


今回は、安積班のメンバーはほとんど脇役にまわり、活躍を見せてくれず寂しい状態でした。その代わりに、捜査一課から来た若手刑事が、安積と組んだことで面白い展開がありました。その刑事のお陰で速水のかっこよさもまた際立った感じです。

前作で、女性刑事が参加することになり、私は彼女の存在が不安だったのですが、今回その女性刑事もほとんど登場せず。やっぱりいらなかったんじゃないの?と疑ってしまいました。今回は、安積班たちも活躍する場面が少なかったので、次の作品で安積班が活躍したときに彼女がどう活躍するのかを見てから判断することにします。

次はどんな話かな?楽しみです!


<安積班シリーズ>
「二重標的」
「虚構の殺人者」
「硝子の殺人者」
「警視庁神南署」
「神南署安積班」
「残照」
「陽炎」
「最前線」
「半夏生」
「花水木」
「夕暴雨」
「烈日」


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2014年07月19日

今野敏「STエピソード0 化合」

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 今野敏 著
 「ST警視庁科学捜査班エピソード0 化合」
 (講談社文庫)


現場は検察の暴走を止められるのか? エリート検事は殺人事件を異例の陣頭指揮と鑑識結果の強引な解釈で早期解決を強行する。疑念を抱く捜査一課の若手・菊川と所轄のベテラン・滝下は独断で動き始める。拘束された被疑者が“落ちる”までに二人は証拠を捜し出せるのか!? 「ST警視庁科学特捜班」シリーズ、序章。

STが結成される十年くらい前の、ある意味STが結成されるきっかけとなった出来事の話です。なので、当然ですがSTメンバーは出て来ません。

STと捜査一課の橋渡しというか連絡係をしている菊川が若い頃に担当した事件が描かれています。


公園で刺殺された男性。「逃げていく黒っぽい服を着た男を見た」と第一発見者が証言したことで、他に有力な証拠も無いのにある男性が容疑者として取り調べを受ける事になってしまいました。

慎重に捜査するべきだと主張する捜査員と、早期解決を強く望むエリート検事が、捜査方針を巡って対立していきます。表立って対立することはあまりないのですが、お互いに駆け引きしていく様子がとても面白かったです。

裁判に持ち込んだら90%以上の確率で有罪になるとか。それだけ検事の力が大きいということで、検事が決めた捜査方針に逆らうことはかなり難しいです。

まだまだ青臭さの残る、真面目で正直な若手刑事である菊川が、ベテランの滝下と組んで、検事の方針に疑問を持って何とかして暴走を止めようと画策します。

滝下という刑事は、勤務中パチンコに行ったり食事やお茶までのんびりしてしまう、一見怠け癖のあるような刑事なのですが、実は色々と考えて行動している優秀な刑事だということが少しずつわかってきます。


STシリーズでは、すっかりベテランになり、世慣れた雰囲気の漂う菊川ですが、この作品ではベテラン刑事に振り回される様子が見られてニヤニヤしてしまいました。

「STが結成されるきっかけの話でした」という雰囲気のある結末は強引だと思ったのですが、それ以外は面白かったですし、警察小説が好きな方ならSTシリーズを読んだことが無くても楽しめる作品だと思います。


STはドラマ化されることになって、どんどん新装版が発売されていますね。これをきっかけに人気が出て、どんどん書いてほしいものです。


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2014年05月07日

今野敏「転迷 隠蔽捜査4」

転迷

 今野敏 著
 「転迷 隠蔽捜査4」
 (新潮文庫)


大森署署長・竜崎伸也の身辺は、にわかに慌しくなった。外務省職員の他殺体が近隣署管内で見つかり、担当区域では悪質なひき逃げ事件が発生したのだ。さらには海外で娘の恋人の安否が気遣われる航空事故が起き、覚醒剤捜査をめぐって、厚労省の麻薬取締官が怒鳴り込んでくる。次々と襲いかかる難題と試練―闘う警察官僚(キャリア)竜崎は持ち前の頭脳と決断力を武器に、敢然と立ち向かう。−裏表紙より−


手に入れてすぐ読み始めてしまいました。途中まで読んでいる本を放っておいてまで読みたいくらい気に入っているシリーズです。

今回の竜崎も、相変わらず融通がきかず、自分の信念を曲げず、自分の信じた道を突き進んでいきます。

うまく世渡りをしようと思っている者からすれば、本当にイライラさせられる存在だと思いますが、彼と関わった人たちは、みんな何か考えを変えさせられたり、何かに気づかされたりして、今までと違う動きをしようとします。

特に伊丹は影響をたくさん受けています。影響を受けて、今までと違って竜崎をうまく使う方法を見つけた彼は、竜崎に普通では考えられない立場に立たせます。

ある意味適材適所ではあるのですが。

今回は警察関係だけではなく、外務省や厚労省まで絡んできて、更にはややこしい存在である公安も・・。お陰であちこちの縄張り争いに巻き込まれて、板ばさみにされ、さすがの竜崎もかなり苦労させられました。

娘の恋人が乗った飛行機が墜落したのでは?という心配まで浮上し、父親としても悩まされます。

でもそこは、揺るがない竜崎らしく、全てをサクッと捌いていきます。周りを戸惑わせながら。

惑わされる人たちの様子と、なぜ惑わされるのかわからない竜崎のつぶやきにニヤニヤしながら読みました。


今回も奥さんの冴子がかっこよかったです。夫を立てながらも、皮肉や嫌味を忘れない所が素敵です。すっかりファンになりました。


どうやらしばらくは所轄にいそうな竜崎ですが、そろそろ警察庁に戻ってもっと大きな舞台での活躍も見たいと思います。所轄でも面白いんですけどね。

どちらにしても、早く次の作品が読みたいです!



<隠蔽捜査>
「隠蔽捜査」
「果断」
「疑心」
「初陣」

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2014年04月21日

今野敏「軌跡」

軌跡

 今野敏 著
 「軌跡」
 (角川文庫)


目黒の商店街付近で、若い男性が血を流して倒れているのが発見された。現場に到着した大島刑事と湯島刑事の前に現れたのは、刑事調査官の谷と心理調査官の島崎優子だった。若者同士のトラブルかと思われたが、捜査は思いのほか難航する。島崎と組んで聞き込みを行うことになった大島たちは、彼女の言葉に事件解決の糸口を見出すが・・(「老婆心」より)。幻の「刑事調査官」シリーズの他、五編を収録した文庫オリジナル短編集。−裏表紙より−


老婆心」「飛鳥の拳」「オフ・ショア」「生還者」「タマシダ」「チャンナン」の6編が収録されています。

老婆心」は、私の好きな作風の警察小説で、“幻の”刑事調査官シリーズ2作目です。なぜ“幻”なのかというと、「鼓動―警察小説競作―」に1作目が収録されているだけで、このシリーズだけでの本は無いからなんです。1作目を読んでいなくても全く問題なく読めるようになっています。

この話は面白かったので、ぜひ彼らだけでの本を出してもらいたいと思います。


飛鳥の拳」は、古代から伝わるという拳法の話で、「オフ・ショア」は、ダイビングの話です。

生還者」「タマシダ」はそれぞれ内容は違いますが、どちらもSFです。「生還者」はしんみりするような話ですが、「タマシダ」はゾッとする終わり方をします。

チャンナン」はSFっぽくもありますが、作者の自伝か?という感じもしました。


・・ということで、警察小説は1作だけで、後はこの作家さんとは思えないような内容の作品ばかりでした。これだけ色々な話が書けるのはすごいと思いますが、個人的にはやはり警察小説が合ってると思ってしまいます。

それはそれで面白くないわけではないのですが、この作家さんには警察小説を期待してしまうんですよね。

つまり、今後もよく内容を見てから読まないと、合わない場合もあるということです。


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2013年09月13日

今野敏「臨界 潜入捜査」

臨界

 今野敏 著
 「臨界 潜入捜査」
 (実業之日本社文庫)


元マル暴刑事の最大の敵は原発の裏を仕切るヤクザどもだ!
元マル暴刑事・佐伯涼が環境犯罪に立ち向かう、『潜入捜査』シリーズ第5弾。三重県の原子力発電所で事故が発生し、外国人不法就労者が死亡。だが所管省庁や電力会社も、労働力を不法供給する暴力団を使って隠蔽工作に走る。佐伯が迎えうつのは、いままでにない最大の敵、国家と原発だった。さらに彼の前に、中国拳法を自在に操る無敵のヤクザが立ちはだかる・・!
−裏表紙より−


このシリーズも5作目になりました。相変わらず捜査をしない「潜入捜査」ですが、つい読んでしまう作品です。

今回は原発で働く外国人(しかも不法就労者)が死亡したことを調べに行った佐伯。ただ、ほとんどの内容は内村所長が説明してくれたことで理解できたような気がします。

まあ一応、問題となる暴力団に潜入はします。・・・が、あまりにもあっさりと佐伯のことを信用して、ぽろぽろと内部情報をしゃべってしまうヤクザたちには呆れました。

腕っぷしが強いだけの男にそこまで説明する!?

そう思っていたら、意外とあっさりと寝返る佐伯。しばらくは黙って様子を見ておくのかと思えば、反対派の住人達に暴力をふるうのを見ていきなりヤクザに背を向けました。

早っ! 確かに知りたいことは全部知った感じはしましたけど、こんなに短時間で良いなら、別に潜入しなくてもいいのでは?と思ってしまいました。潜入したせいで「裏切られた!」とヤクザは怒るわけですから。

何だかいたずらに敵を作っただけのような気がしました。


と、さんざん書いていますが、今回は原発についていろいろ考えるきっかけにもしてもらえたので、読んで良かったです。

特に内村所長の言った「核燃料による発電など。本来必要ないのです。原発を作ろうというのは純粋に政治的問題です。つまり、利権の構造でしかありません。政府が作るといったものは、国民を殺してでも、国土を破壊してでも作るものです」という言葉にハッとさせられました。

そんなこと考えたことも無かったというか、考えたくなかったのですが、確かにそうですね。

私は佐伯と同じでした。これまで特に反原発論者というわけではなかった。
必要なものならしかたがないという程度に考えていたに過ぎない。専門家が安全だというのなら安全なのだろうと思っていた。


2年前の災害で全てが神話だということがわかったわけですが、もっと早く考えないといけなかったんですよね。1994年という早い時期にこの話を書き上げていた作家さんに感動しました。



<潜入捜査シリーズ>
「潜入捜査」
「排除」
「処断」
「罪責」


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2013年07月18日

今野敏「烈日 東京湾臨海署安積班」

烈日

 今野敏 著
 「烈日 東京湾臨海署安積班」
 (ハルキ文庫)


新しく庁舎が建てられた東京湾臨海署の刑事課に新たな刑事が配属された。安積班にやって来たのは水野真帆という鑑識課出身の女性だった。歪に膨張した水死体を前にしても、怯む事なく捜査を進める水野。しかし、初任課で同期だった須田は彼女に対して何か思う所があるらしい。新顔の女性刑事は、安積班の一員として活躍する事が出来るのか―(「新顔」より)。安積、村雨、桜井、そして東報新聞社会部の女性記者・山口、それぞれの物語を四季を通じて描く、安積班シリーズ、待望の文庫化。−裏表紙より−


今回は短編集でした。あらすじにある「新顔」表題作「烈日」以外に「海南風」「開花予想」「逃げ水」「白露」「(こがらし)」「厳冬」全部で8編収録されています。

一気に読みたくなるところを、短編なので一話ずつ少しずつ読み進められました。


男所帯の安積班にとうとう、女性刑事が配属されました。別に女性が入っても良いんですけど、そのせいでフワフワするのはどうなんだろう?と思います。美人設定は必要か!?とか思っていたら、ドラマで登場した刑事だそうです。ドラマ化したときに登場させた女性刑事のキャラクターをそのまま、原作にも取り入れたようです。ドラマは見ていないのでどこまで似ているのか知りませんが、ドラマに影響を受けなくても良いのに・・。

まあ彼女が配属されて、男性陣がフワフワしているお陰で、彼らの新たな一面が見えた部分もあったので良いですが、今後、どんな活躍をさせられるのか、すっかり出来上がっている安積班のチームワークにどんな風を吹かせられるのか、楽しみ半分、不安半分・・って感じでしょうか。どんなキャラクターになるのか?で彼女の存在意義が問われる気がします。


今回は珍しく村雨の視点で進む話がありました。それが表題作の「烈日」です。若手の2人、桜井と黒木が体調不良で欠勤することになり、須田と捜査に出かけることになった村雨。普段は寡黙な彼の心の声がたくさん聞けて、チームに対する思いも聞けて、面白かったです。安積に対しても強い信頼をもっていることが再確認できて、やはりいいチームだと思えました。


他にも桜井の視点や、女性記者・山口の視点の話が収録されています。

安積以外の視点で描かれる、安積の印象を読めるのは楽しいですし、新たな魅力を発見できてもっと安積のことが好きになれます。

安積が自己分析するよりも、周りはもっと彼のことを高く評価していますし、実際にそれにこたえる活躍をみせてくれるところが良いんですよね。

安積の「厳冬も、一人でなければ、耐えられる。ここにいる仲間たちがいれば、どんな季節も耐えていけるはずだ」という言葉に感動ぴかぴか(新しい)


長編も良いですが、周りからの視点で描かれる話も収録される短編も面白いです。また読みたいと思います。文庫化されるのが楽しみです。


<安積班シリーズ>
「二重標的」
「虚構の殺人者」
「硝子の殺人者」
「警視庁神南署」
「神南署安積班」
「残照」
「陽炎」
「最前線」
「半夏生」
「花水木」
「夕暴雨」


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2013年06月29日

今野敏「ST沖ノ島伝説殺人ファイル」

ST沖ノ島伝説殺人ファイル

 今野敏 著
 「ST警視庁科学特捜班 沖ノ島伝説殺人ファイル」
 (講談社文庫)


玄界灘に浮かぶ沖ノ島。港湾工事現場での不可解な水死事件。現地へ向かった“ST”だが、そこは古代からの社、宗像大社の神域で、島での出来事を語れない“御言わず様”の因習、警察といえども現場への上陸すら許さない厳粛な掟が赤城、青山たちチームを阻む。捜査続行不可能か?“伝説”シリーズ、待望の第三弾!―裏表紙より―


この伝説シリーズの中で一番読みやすかった気がします。今までの2作は伝説自体が難しくて、作者が調べたことをたくさん書いてあって、説明臭い部分が多かったのですが、今回は意外とあっさりした感じ。

島自体が神域ということで、上陸することが難しいようになっています。警察であっても、そこが殺人事件の現場であっても、簡単に上陸できません。更には草1本すら持ち帰ってはいけないという掟もあるため、もし現場へ行っても証拠を持ち帰ることすらできません。

こういう場所にありがちな、女人禁制ですし・・。STの結城翠は上陸できないわけです。

まあ、そもそも上陸許可というものが宗像大社から出ないと誰も上陸できないので、STメンバーは現地に行ったものの、島へ行けずに関係者から事情聴取するしか捜査方法が無い状態。

事情聴取しようにも「島での出来事は語ってはならない」という「御言わず様」の掟まであり、話を聞くことさえ難しくなります。

結城と黒崎の“人間嘘発見器”コンビと、心理学者の青山の助言、そして宗教に詳しい山吹のお陰で、何とか事件は解決へ。


活躍とは言っても、それほど大したことではなく、ベテラン捜査員なら思いつきそうなことですし、事件の真相も読んでいて想像できる感じでした。

東京のSTをわざわざ出張させる意味はあったのかな?と思いました。それくらい、あっさりと解決しました。


百合根キャップの影がどんどん薄くなっているのも気になります。以前はたまに鋭い発言をしたりして「さすが!」って所もあったのですが、今はただの傍観者のようです。

次回はもう少しキャップも活躍してほしいです。


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2013年02月12日

今野敏「罪責 潜入捜査」

罪責

 今野敏 著
 「罪責 潜入捜査」
 (実業之日本社文庫)


平凡な一家を蹂躙するヤクザに佐伯の怒りが爆発する!
元マル暴刑事・佐伯涼が環境犯罪に立ち向かう、『潜入捜査』シリーズ第4弾。小学校に不法投棄された使い捨て注射器で、子供がB型肝炎に感染した。廃棄物回収業者の責任を追及する教師の家族に、ヤクザの暴力が襲いかかる。教師は命を奪われ、長男は自動車事故、高校生の長女は監禁、強姦−激しい怒りに駆られた佐伯は、古代拳法を武器にヤクザに闘いを挑む!
−裏表紙より−


内容に深みが無くて、あっさり終わるので、なんでこんなに読みたくなるのかよくわからないシリーズなのですが、新刊が次々出ているのを見ると、つい追いかけてしまいます。

登場人物たちの魅力だけで楽しめるシリーズです。


今回のヤクザたちの、女子高生に対する仕打ちはかなりひどくて、出来るだけ想像しないように、被害者の気持ちにならないように気を付けないと読み進められないくらいでした。

被害者の高校生だけではなく、その母親の気持ちも想像すると辛かったです。

彼女と母親の今後の人生が心配でたまりません。すごくあっさりと心を開いたような場面がありましたが、絶対にそんなことはあり得ないと思います。

本当に今回は読みにくかったです。


ただ、アクションの場面では相変わらず佐伯がかっこよくて無敵で、かなり強いはずの奴を相手にしても怯むことなく、冷静に戦える強さが素敵でした。

まあ、組長に対する暴力はどうか?と思いますが。目には目を的な考えと行動にちょっと呆れました。

良いのか?これで。


また新刊が平積みされているのを見かけたので、早く次も読もうと思います。



<潜入捜査シリーズ>
「潜入捜査」
「排除」
「処断」


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2013年02月08日

今野敏「初陣 隠蔽捜査3.5」

初陣

 今野敏 著
 「初陣 隠蔽捜査3.5」
 (新潮文庫)


警視庁刑事部長を務めるキャリア、伊丹俊太郎。彼が壁にぶつかったとき頼りにするのは、幼なじみで同期の竜崎伸也だ。原理原則を貫く男が愛想なく告げる一言が、いつも伊丹を救ってくれる。ある日、誤認逮捕が起きたという報に接した伊丹は、困難な状況を打開するため、大森署長の竜崎に意見を求める(「冤罪」)。『隠蔽捜査』シリーズをさらに深く味わえる、スピン・オフ短篇集。−裏表紙より−


待ちに待った文庫化!買ったとたんに一気読みしそうになり、勿体無くてわざと時間を空けたりしてしまいました。

3.5という不思議な番号が付いていることからもわかるように、この作品は竜崎ではなくて、同期で幼馴染の伊丹が主役となっています。伊丹から見た竜崎・・という構図になっていて、ファンにはたまらない作品です。

何よりも、伊丹ファンには最高の一冊ではないでしょうか?(私は竜崎の奥さん・冴子のファンですが)
伊丹が普段どんなことを考えているのかよくわかりました。意外だったのは、彼が色々と周りに気を使って、組織が円滑に進むように、嫌われないように演技をしているということ。

本能のままに動いてああいう行動になるのかと思えば、苦労しているのがわかって驚きました。


また、隠蔽捜査シリーズを読んできている人にとっては、ニヤッとできる場面がちりばめられていて、それも楽しめます。話の流れにも沿っていますから、このエピソードはあの話のことだな・・とかわかって面白いです。

特に「試練」という話は、竜崎が恋に苦しんだ「疑心」の裏話的のようになっているので、竜崎の苦しみを思い出しながらニヤニヤしてしまいました。


伊丹が困る度に竜崎を頼るのには笑えました。電話をかけてきた伊丹に対して相槌も打たずに聞く竜崎の姿も彼らしくて、目に浮かぶようでした。

反目し合っているようでいて、実はやっぱり良いコンビなんだと思うと嬉しくて、早く次の作品が読みたくなりました。早く2人の活躍が見たいです。



<隠蔽捜査>
「隠蔽捜査」
「果断」
「疑心」


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2012年09月21日

今野敏「天網 TOKAGE2特殊遊撃捜査隊」

天網

 今野敏 著
 「天網 TOKAGE2特殊遊撃捜査隊」
 (朝日文庫)


深夜の高速道路を走行中のバスが次々とジャックされた。前代未聞の犯行に大規模な追跡作戦が始まるが、ネットには警察も知らない情報が書き込まれ、事件が『実況』されていた−。覆面捜査チーム「トカゲ」に新たな敵が立ちはだかる、シリーズ第2弾。−裏表紙より−


前作よりは、トカゲらしさが出ていた気はしますが、まだまだ物足りない感じでもあります。

バイクに乗って捜査するシーンは多いですが「トカゲは何気なく走行しながら周りの状況をきちんと記憶しておく訓練をされている」という記述が出てくるのに、その記憶が活かされることが無いんですよね・・。

それが残念です。


今回はバスジャックを捜査することになった特殊班のメンバーたち。始めは1台だけだったのですが、次々と連続して同じような事件が起きました。

合わせて3台の同時バスジャック。前代未聞の事件に焦ってパニックになってしまう上層部の面々に呆れつつ、特殊班のメンバーは冷静に捜査をしようとします。

ネットに警察の捜査よりも早い段階で重要な情報が載せられていることに気づき、ネットの書き込みを誰がしているのか?書き込みしている人物が犯人なのか?


前作ではわかりにくかったメンバーの個性も少しずつわかるようになって、それぞれの魅力が出てくるようになり、より面白くなりました。

頼りない感じだったトカゲの上野も、今回リーダーを任され、心の中でグチグチ言いながらもがんばったので、少し成長した気がしました。

今後はより活躍してくれるでしょうし、他のメンバーの活躍も楽しみです。


<TOKAGEシリーズ>
「TOKAGE 特殊遊撃捜査隊」


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2012年08月06日

今野敏「処断 潜入捜査」

処断

 今野敏 著
 「処断 潜入捜査」
 (実業日本之社文庫)


法の網をかいくぐり密猟を行うヤクザを叩け!
元マル暴刑事・佐伯涼が環境犯罪に立ち向かう、『潜入捜査』シリーズ第3弾。岐阜山中で野鳥密猟がなされ、背後にいるのは、佐伯の宿敵・坂東連合傘下の艮(うしとら)組であった。組長の鬼門は、暴対法逃れのため代紋を外してはいたが、実態は経済ヤクザに過ぎない。姑息な艮組の凶暴な三人組に対し、さらに研ぎすまされた佐伯の古代拳法が唸る−。
−裏表紙より−


このシリーズも第3弾になり、どんどん面白くなる・・かと思いきや、なぜか話があっさりしてきているんですけど。自分の感想を読み返してみても、1作目が一番、内容が濃かったような・・バッド(下向き矢印)

2作目は相手となるヤクザがなかなか手ごわい感じだったので、その分アクションの場面が充実していて、そこが面白かったのですが、この3作目はヤクザもあっさりとした弱い奴でしたし、組長的な存在の人が裏で何か画策していて、これは面白い展開になりそうだぞ・・と思っているうちに、何事も無く終了してしまいましたふらふら

う〜〜ん。これは、あっさり終わりすぎでしょう!たらーっ(汗)


・・と、散々な感想を書いてしまいましたが、それでもなぜか私は「続きも読もう!」と思っているんですよねあせあせ(飛び散る汗)

やはり、登場人物たちのキャラクターが原因だと思います。憎めないというか、謎めいているから気になるというか、みんな陰があったり弱点や欠点もあるわけですが、それも全てその人の魅力になっていて、読んでいるとどんどん好きになるんです。

これは、登場人物のキャラクターで読ませるシリーズなんだと思います。

次もまた楽しく読むことにします。


<潜入捜査シリーズ>
「潜入捜査」
「排除」

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2012年07月26日

今野敏「同期」

同期

 今野敏 著
 「同期」
 (講談社文庫)


警視庁捜査一課の宇田川は現場で発砲されるが、突然現れた公安所属の同期の蘇我に救われる。数日後、蘇我は懲戒免職となり消息不明に。宇田川は真相を探るが、調べるにつれ謎は深まる。“同期”は一体何者なのか?組織の壁に抗い、友を救おうとする刑事の闘いの行方は!?今野敏警察小説の最高峰がここにある−裏表紙より−


やっぱりこの作家さんは読みやすいです。私に合いますぴかぴか(新しい) それなりに長い話なのに、あっという間に読めてしまいました。


題名からもあらすじからもわかるように“同期”がテーマになっています。宇田川と蘇我の同期二人は、数ある同期の中でも仲が良いと言える関係でした。

ところが、蘇我が突然懲戒免職されたことを知り、あわてて事情を聞こうとした宇田川は、実は彼のことをほとんど知らないことに気づかされます。思いつく限りの場所で聞き込みを続ける宇田川でしたが、蘇我の居場所はなかなかわかりません。そんなとき、殺人事件が発生し、捜査本部へ参加することになります。

その事件を調べていくうちに、どうやら公安が絡んでいるらしいことがわかり、蘇我に危険が迫っていることもわかってきます。上層部からの妨害に合いながらも、何とか同期の蘇我を助けようと立ち上がります。


同期か〜。同期って、素敵な関係ですよね。ライバルでもあり、良き理解者でもあり、同じような悩みを持っているから相談しやすい・・。私は大事にしたい仲間だと思っていますし、今でも時々連絡をとっています。かなり支えてもらったので、頭が上がらない相手でもありますがあせあせ(飛び散る汗)

まあ、宇田川や蘇我のように命がけで・・というような状態になることはありませんでしたが、もし彼女たちの誰かが何か困っていたら駆けつけるつもりではいます。相手が同じように想ってくれているか?はわかりませんがたらーっ(汗)


警察小説なので当たり前ですが、警察関係者がたくさん出てきます。でもそれぞれが個性的なので、混乱することなく読めます。始めは「嫌な奴」と嫌いそうになる人も、実は事情があってそんな態度をとってたことがわかったり、逆に「やっぱり嫌な奴だったか」という人もいます。

私が気に入ったのは、刑事らしい刑事だった2人のベテラン、植松と土岐。頭の固い、融通の利かないタイプに思える2人ですが、実は仲間想いの熱い人たちで、いざとなったら上層部にも逆らう根性があります。若手の宇田川に良い影響を与えそうな存在です。


これもシリーズ化しているようです。文庫化はまだまだ先になるでしょうが、楽しみに待つことにします。


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2012年06月23日

今野敏「排除 潜入捜査」

排除

 今野敏 著
 「排除 潜入捜査」
 (実業之日本社文庫)


海外進出企業に巣くうヤクザに元マル暴刑事の鉄拳が迫る!
元マル暴刑事・佐伯涼が環境犯罪に立ち向かう「潜入捜査」シリーズ第2弾。日本の商社が出資した、マレーシアの採掘所の周辺住民が白血病で倒れた。反公害運動封じ込めのため、暴力的な見せしめを住民に行う日本のヤクザに、佐伯の怒りが爆発する。見せしめを続ける者たちの正体は、佐伯の宿敵・泊屋組の若衆頭。佐伯の古代拳法と、ヤクザとの死闘が始まった―。
−裏表紙より−


「潜入捜査」・・と言いながら、ほぼ「捜査」をしないんですけど・・あせあせ(飛び散る汗) 「潜入」・・でも無い気がしますし。まあ、細かいことは気にしないでおきますが。


今回の佐伯は、秘書の白石景子と共に、マレーシアへ出張します。相変わらず気軽な口調でマレーシアへ行くように内村所長から指示されました。初の海外旅行ということで、佐伯はガイドブックを買って、必要な物を買いに出かけます。その辺りは人間臭いというか、かわいらしい所です。

マレーシアへは、日本の商社が関係している採掘所が原因で起きたであろう、白血病が流行している村へ調査に出かけたわけですが、現地に着いた佐伯たちを待っていたのは、村人たちのものすごい反感でした。案内役として、マレーシアの人を連れていたため、少しはマシでしたが、あまりの反感に理由を尋ねると、ヤクザの仕打ちを聞かされることに・・。

白血病にかかって死にそうになっていた赤ん坊を、母親の腕の中にいる状態のまま目の前で刺し殺すという読んでいても顔をしかめて読むのが嫌になるような、恐ろしい仕打ちをしたのは、日本のヤクザ、泊屋組の新市でした。彼が怒りにまかせて弱い者をつぶす傾向にあり、赤ん坊はもちろん、老人でも何でも表情を変えることなくあっさりと殺害してしまいます。

「白血病で死にそうだ」と訴えた母親に対して赤ん坊を殺害したことで「白血病で死ななかった」と理屈をつけます。言葉も出ないほどひどい奴ですちっ(怒った顔)

ヤクザがこれだけ残虐なことをやった分、佐伯の活躍がより光る感じがしました。新市を倒したときには「よくやった!ぴかぴか(新しい)」って気分になりましたから。本当なら「暴力には暴力を」という解決法はどうなのよ??と思いそうなものですが、ここまでやる相手に話し合いは通じない気がします。


佐伯は相変わらず冷静で、でも時々怒りにとらわれてしまったり、冷や汗を流したりして人間らしい部分も見せて、更には一方的にやっつけるわけではなく、多少は彼自身も怪我を負う・・これがリアルで良いなと思いました。

3人しかいなかった「環境犯罪研究所」に味方が2人できた様子。内村所長にはまだまだ謎がありますし、これからもどんな活躍を見せるのか楽しみです。


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2012年06月15日

今野敏「潜入捜査」

1991年に発売された「聖王獣拳法」という作品を改題して2008年に再版された物だそうです。

潜入捜査

 今野敏 著
 「潜入捜査」
 (実業之日本社文庫)


非情な手段でヤクザを叩きのめす、マル暴刑事・佐伯涼は突如、警視庁から異動を告げられる。拳銃も手帳も取り上げられた佐伯の行先は「環境犯罪研究所」。所長の内村は産廃不法投棄に暴力団が関わる事例を説明、佐伯の力を必要とする。佐伯家の祖先に始まり、佐伯自身も身につけている武術「佐伯流活法」を生かし、暴力団が支配する運送会社への潜入が命じられた―!−裏表紙より−


内容的には、とても軽いというか、中身が無い・・に近い感じ(失礼たらーっ(汗))で、読み終わって特に何か心に残るような問題があったわけでもなかったですがく〜(落胆した顔)

でも私は気に入ったんですよね。続きも読んでみよう!と思いました。

気に入った一番の理由は、主人公・佐伯の存在。そして、所長・内村やその秘書・白石景子の謎めいた部分でしょう。佐伯はある意味融通のきかない一匹狼的な人で、腕に覚えもあり、単独で暴力団事務所に乗り込んで叩きのめしてしまいます。拳銃が取り上げられたら今度は自分で材料をそろえて来て部屋で手裏剣を作ってしまうような人。しかも作った後の台所を見て「若い人がてんぷらを作りたがらない気持ちがわかるな・・」とか思ってしまう。いや・・てんぷらと手裏剣作りは同じでは無いでしょう・・。まあ、かなり非現実的な人ですね。こんな刑事がいたら怖いわ!って感じですあせあせ(飛び散る汗)

所長・内村は、おとなしい雰囲気で、でも頭は恐ろしくキレる感じ。でもわかったのはそのくらいで、彼の研究所の存在を含めて謎がいっぱいです。秘書・白石も普通の女性秘書かと思えば、どんなことが起きてもさらっと無表情で仕事をこなす所とか、生い立ちにも謎がありそう・・。

この辺りは今後、少しずつ明らかになっていくのでしょう。


産廃不法投棄という、大きな問題が取り上げられているのにも関わらず、その問題についてはあっさりと佐伯が実力行使で叩きのめして解決?してしまうので「これで終わりなんだ・・」って感じなのが残念ではあります。ある意味、水戸黄門に近い感じですね。「助さん、角さん、こらしめてやりなさい」的な??ふらふら

力で相手をねじ伏せて終了・・だったら、暴力団と変わらない気もしますよね〜。まあ、初期の作品ということで、これも今後は変わっていくのかもしれません。


警察小説と呼ぶには抵抗がある内容の作品ですが、アクション物が好きな方なら楽しめると思います。


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2012年05月09日

今野敏「凍土の密約」

凍土の密約

 今野敏 著
 「凍土の密約」
 (文春文庫)


赤坂で発生した殺人事件の特捜本部に、警視庁公安部でロシア事案を担当する倉島が呼ばれた。被害者は右翼団体に所属する男だ。二日後、今度は暴力団構成員が殺された。2つの事件に共通する鮮やかな手口から、倉島はプロの殺人者の存在を感じる。鍵はロシア、倉島は見えない敵に挑む。公安捜査官の活躍を描くシリーズ第3弾。−裏表紙より−

3作目になり、倉島はますます公安らしくなりました。上司である上田係長からも時々「公安らしくなったな」と言われるようになり、何かと頼られるようになっています。叱られることよりも褒められることが増えました。

そんな倉島に下った命令は、殺人事件の捜査本部に合流することでした。理由もわからず言われた通りに捜査本部に参加したのですが、第二の殺人が起きたことでその理由が明らかになってきます。

倉島はロシアの殺し屋が絡んでいると考え、同じ公安の西本、白崎と共に捜査を開始します。3人の情報提供者と連絡を取り、徐々に事件の真相に近づいていきます。


捜査本部にいると刑事と話すことが増えます。刑事と公安は仲が悪いということなので、刑事たちは倉島たちのことを冷たい目で見ます。普通の公安なら同じように冷たい態度で応じるところなのですが、倉島はなるべく波風を立てないように、大切な情報を少し明かしたり、協力を申し出たりします。そこも好感がもてました。


シリーズの1作目から出てきていた大物・大木天声にも接触することができた倉島は、彼にヒントを貰うことで推理をしていきます。まあ、この大木天声が話すことが私には難しすぎて、ほぼ理解できなかったので、置いていかれた感じがしたんですけどねあせあせ(飛び散る汗)

でも、このシリーズのお陰でロシアに少し興味が出てきました。

今回はロシアと日本のハーフで冷徹になりきれないけど一流の殺し屋・ヴィクトルが登場してくれなかったので、ちょっと寂しい気持ちになりました。まあ、毎回ヴィクトルが来日して適当に殺人を犯して去って行ったら、日本の警察は何をやってるんだ!って話ですが・・。次は協力者的な存在でも良いから出て欲しいです。


<公安捜査官シリーズ>
「曙光の街」
「白夜街道」


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2012年04月17日

今野敏「夕暴雨 東京湾臨海署安積班」

夕暴雨

 今野敏 著
 「夕暴雨 東京湾臨海署安積班」
 (ハルキ文庫)


東京湾臨海署管内で大規模イベントへの爆破予告がネット上に流れた。安積警部補率いる班と相楽班は警戒警備にあたるが、爆破は狂言に終わる。だが再び、翌週のコミックイベントへの爆破予告がネット上に書き込まれた。前回と違う書き込みに、予告の信憑性を訴える須田刑事。須田の直感を信じた安積は、警備の拡大を主張するが、相楽たちの反発をうけてしまう。迫り来るイベント日。安積班は人々を守ることができるのか?異色のコラボが秘められた大好評シリーズ、待望の文庫化。−裏表紙より−


久々の安積班シリーズ!ハートたち(複数ハート) なかなか文庫にならなくて寂しかったです・・。一気読みしそうになったのですが、勿体なくてなるべく時間を空けて読むようにしました。


東京湾臨海署は、新庁舎に引越することになりました。広くなって綺麗になって本当なら喜ぶべきところなんですが、安積はちょっとさみしいと感じています。外階段で部屋に戻るときに時々感じていた潮の香りを懐かしんだり、駐車場から庁舎までの距離を感じたり、上司と話をするにも内線電話が必要になったことを嘆いたり・・。

何よりも強行班係が増えて2つの班で構成されるようになったことは、安積にとっても大きな変化でした。しかももう一つの班を仕切るのが、宿敵とも言える相楽。安積の方はなるべく気にしないようにしているのに、相楽の方はライバル視しまくり!周りも「負けるな、安積!」という雰囲気ですし、安積にとっては迷惑な話です。

そんなゴタゴタの中起きた爆破予告。一度は狂言に終わったのですが、二度目の予告がネットに書きこまれたのを見た須田刑事は「今度は本物だ」と言いだします。ネットをいつも見ている人にはわかる・・というあまりにも曖昧な須田の発言を信じた安積は、上司に進言して、警備を強化させました。もちろん、自分たちも傍観せずに警備に当たります。


相変わらず署内のパトロールを欠かさない速水も、爆破予告されたイベントに安積の娘が参加することを知り、協力してくれます。速水は、爆破予告だけではなく、新たに警視庁に設けられた警備部特車二課の存在が気になっているようで、あまりにも秘密主義なこの組織にいら立っています。

あらすじに書かれていた“異色のコラボ”というのがこの警視庁警備部特車二課のことです。「機動警察パトレイバー」という作品の中に出てくるそうで、これを登場させたようです。私は全く知らなかったので、出て来ても何の感動も無かったんですけどね・・ふらふら 一度読んでみても良いかな?と思っていますが、ロボットの漫画って読んだこと無いからどうだろう??


安積班のメンバーたちも相変わらず適材適所な活躍をみせてくれます。今回は黒木も発言が多くて、須田だけではなく安積都も良いコンビネーションを見せてくれました。

今回、娘との関わりも少なく、元妻に至っては全く出てこなかったのが残念ではありますが、とても面白く読み終わりました。

早く次も文庫化してほしい!!再読を繰り返しながら待つことにします・・。


<安積班シリーズ>
「二重標的」
「虚構の殺人者」
「硝子の殺人者」
「警視庁神南署」
「神南署安積班」
「残照」
「陽炎」
「最前線」
「半夏生」
「花水木」


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2012年04月16日

今野敏「白夜街道」

白夜街道

 今野敏 著
 「白夜街道」
 (文春文庫)


警視庁公安部の倉島警部補は、自分と因縁のある元KGBの殺し屋ヴィクトルが、ロシア人貿易商のボディーガードとして日本に入国していると知らされる。そして、その貿易商が帰国前日に密会していた外務官僚が謎の死を遂げた。ヴィクトルたちを追い、倉島はモスクワに飛ぶ。緊迫の追跡捜査を描く、アクション・ノヴェルの傑作。−裏表紙より−


「曙光の街」から4年後の話です。あまりにもやる気が無く、公安の仕事をなめていた倉島も4年経って公安らしい考え方ができるようになり、行動もそれらしくなっていました。随所に出てくる公安らしい考えに何だか微笑ましい気持ちになりながら読み進めました。

一方、ヴィクトルは考えや行動に変化は無い(よりパワーアップしたかも?)ですが、少しは人間らしい生活をするようになったようです。何よりも定職に就いたのがすごい!前作で出会ったエレーナと同居も続けていて、彼女とは離れすぎず、でも付きすぎず・・という不思議な生活を送っています。恋人ではなく兄妹のような関係・・ヴィクトルらしいといえるかもしれません。

ヴィクトルは先輩の経営する警備会社に勤めていて、ペデルスキーという貿易商の警護をしながら再び日本にやって来ました。今回はヒットマンとしてではないので、本名で堂々と入国したため、マークされていた彼の名前はすぐに公安へ届けられました。

本名で来たことに疑問を感じながらも、倉島たち公安は彼のことを調べ始めます。捜査中に話を聞いた外務省の官僚が不審死したことで、外務省も巻き込んで大きな事件へと発展していきます。


今回は、倉島と共に、捜査一課の刑事がモスクワへ行ったことで、公安と捜査一課の刑事の違いがより明確になって面白かったです。

実戦に強いのは捜査一課の方かと思ったら、意外とそうではないこととか、事件を国レベルとして捉えるか、1人の人レベルで捉えるかの違いで事件に対する考えが大きくかわることもわかりました。


ヴィクトルは相変わらず冷静でカッコ良く任務を全うするのですが、彼のある意味脆い部分が明らかになって、機械的な彼の人間らしい一面が見られたのも良かったです。この彼の弱い一面があるせいで、また事件に巻き込まれていくんだろうな・・。


公安の刑事もかなり謎な存在ですし、人を上から見るイメージがあったのですが、今回は外務官僚の酷さがより際立っていました。実社会でもこんな感じの人が多いのかな?その自信はどこから来るの?とあきれる態度!むかっ(怒り)なぜ自分は偉いと思えるのか?かなりイライラさせられました。

それにしても、ロシア国内の情勢や雰囲気などの説明を読むと、「日本は平和ボケしている」と言われても仕方ないなと思います。そして、そう言われてもどうしたらいいのかわからないのが「平和ボケ」している良い証拠なんでしょうねあせあせ(飛び散る汗)


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2012年03月30日

今野敏「曙光の街」

曙光の街

 今野敏 著
 「曙光の街」
 (文春文庫)


日本でKGBの諜報活動をしていたヴィクトルは、ソ連崩壊後に解雇され、失意のどん底にあった。そこへヤクザ組長を殺す仕事が舞い込んだ。再び日本に潜入した彼を待ち受けていたものは―。警視庁外事課とヤクザを相手にスリリングな戦いを展開するうちに、やがて明らかになる日ソ時代の驚くべき秘密!−裏表紙より−


生活にも困るような日々を送っていたヴィクトルは、大金につられるようにして日本へやって来ました。日本人の父を持つ彼は日本語も流暢に話すことができました。そのため、税関を通ったり、ホテルに泊まったりすることにも支障がなかったわけです。

日本人としてスムーズに入国したヴィクトルは、密かにターゲットに近づいていきます。

そんな動きを知った公安警察は倉島という刑事に捜査を命じます。その倉島はかなりやる気のない人物で、捜査一課などの華やかさのない公安という部署に不満を持っていました。不満を持っていたというか、どうせちょっと調べたらそれで良いんでしょ?と投げていた感じです。

更にターゲットである組長に付いている兵藤というヤクザも、狙われているとの情報を得て、命の恩人でもある組長を守るため銃を手に入れて対抗しようとします。彼は経済ヤクザが主流となりつつあるその世界では古いタイプのヤクザと言える存在で、周りの人からは「将来を考えろ」と言われています。

淡々と着実に仕事を進めるヴィクトルとそれを止めようとする2人が関わったとき、変化が起こることに・・。


暗殺という物騒な事件を通して、元KGBのヴィクトルと、公安警察の倉島、ヤクザの兵藤の3人の成長が描かれています。3人がそれぞれ明るい未来に向かって進んで行く最後の部分ではとても清々しい気持ちになりました。

「曙光」という題名がよく合う作品でした。ちなみに・・「曙光」というのは「物事の前途に見えはじめた明るいきざし」のことだそうです。なるほど〜。


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