2011年04月28日

山本周五郎「花も刀も」

花も刀も

 山本周五郎 著
 「花も刀も」
 (新潮文庫)



剣で家を再興しようと淵辺道場に入門した平手幹太郎は、道場での稽古おさめの試合で筆頭代師範に勝利をおさめた。席次が上がるだろうと期待していた矢先、師範から破門を言い渡される。酒も飲まず、女あそびもせず、剣の道一筋で生きる彼の人生とは−「花も刀も」他「落武者日記」「若殿女難記」「古い樫木」「枕を三度たたいた」「源蔵ケ原」「溜息の部屋」「正体」計8編収録


まっすぐで不器用な平手。そのまっすぐさのせいで、ちょっとしたきっかけで大きく道を外れてしまう・・。

父親も剣の道を進んでいましたが、成功することなく、家は貧しいままでした。そこで幹太郎に夢を託し、幼少の頃から剣を持たせます。

父親の教えをきっちり身にしみ込ませて上達した彼は、田舎を離れ江戸へ出ることに。そして淵辺道場に入門しました。

稽古おさめで好成績を残した彼に師範は破門を言い渡します。「もう教えることはない」というのがその理由。自暴自棄になって飛び出す気持ちもわかる気がするほど、師範の言葉や態度は理不尽なものでした。

道場を出た彼は、ある女性と知り合います。彼女に助けられて人生を立て直す平手。

このまま人生はうまく進むか?と思われるのですが、また問題が・・。

器用な人にとってはたいしたことのない出来事ばかりなのですが、不器用な彼には大きな問題で、気づけば理由なく人を斬ってしまうまでになってしまいます。


きっと武士にはこういう人が多かったんだろう・・と思います。自分に厳しく、そして他人にも厳しい・・そんな彼の人生が深く刺さる話です。


若殿女難記」は、私の好きな話です。若殿が国入りするときに、部下たちが陰謀を図り、自分たちが雇った男を替え玉に据えます。ところがその替え玉の男は女好きで、毎晩のように宴会を開いては女性を口説いていました。

大丈夫か?この替え玉・・と心配になっていると、意外な結末が。読み終わるとスッキリ!痛快な物語です。


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2011年03月25日

山本周五郎「松風の門」

松風の門

 山本周五郎 著
 「松風の門」
 (新潮文庫)



若君のお相手として召出されていた少年が、剣術のお相手中に若君の右目を傷つけ、失明させてしまった。神童とまで呼ばれていた彼が生きた壮絶な人生とは−「松風の門」他「鼓くらべ」「狐」「評釈堪忍記」「湯治」「ぼろと釵」「砦山の十七日」「夜の蝶」「釣忍」「月夜の眺め」「薊」「醜聞」「失恋第五番」計13編収録


若君・宗利が10歳のとき、剣術の相手をした家臣の子・小次郎が払った剣の切っ先が宗利の目に当たってしまい、失明してしまいました。

宗利は、神童と呼ばれて人気のあった小次郎を妬んでいて、小次郎に「自分で転んで傷つけたことにする。誰にも内緒だ」と言って、自分が少し優位にたった気分がしていました。

父親の跡を継いで、領主として国に初めて帰ったとき、小次郎と会おうとするのですが、行方不明になっていました。周りの人に聞くと彼はかなり変わってしまったと言います。神童としての面影は無くなった・・と。

そんなとき領地内で、百姓たちが一揆を企ているという情報があり、穏便に済ませるにはどうすれば良いのか?を話し合っていました。

ところが、小次郎が独断で一揆を起こそうとしている所へ乗り込み、首謀者である浪人者3人を斬ってしまいます。

宗利はその行いに怒り、叱責しますが、家臣は「彼は間違っていない」と主君に教えます。

一揆を起こすことは当時、大罪と言われていました。お上に逆らうんですから・・。だから、穏便に・・とは言っても何も罰しないとお上として面目が立たないわけです。

でも、浪人者に煽られた形の百姓たちを罰すると反感も高まってしまう。だからこそ、小次郎が1人で首謀者を斬ったのです。そして彼はその日のうちに切腹しました。自分の独断でしたことだからお上には関係ない・・と知らせるために。

宗利は彼の想いに気づき、そっと墓参りをするのでした・・。


自分の主君の目を傷つけて、何事もなかったように生きていくのは難しい時代でした。でも主君から「秘密だ」と言われている以上、誰にも言えませんし、理由無く自害することも罪です。

彼は死に場所を探していたわけです・・・。


この本も考えさせられる、悲しい話がたくさん詰まっている作品集です。


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2011年02月26日

山本周五郎「一人ならじ」

一人ならじ

 山本周五郎 著
 「一人ならじ」(いちにんならじ)
 (新潮文庫)



足軽の栃木大助は普段から「痛い」ということを決して言わない男だった。彼は合戦の最中、敵が壊そうとしていた橋桁の代わりに自分の片足を突っ込み、味方を渡らせたため、骨折してしまった。それ以後、戦に行けない身体となってしまい、縁談も破談となってしまったのだった・・。−「一人ならじ」他「三十二刻」「殉死」「夏草戦記」「さるすべり」「薯粥」「石ころ」「兵法者」「盾輿」「柘榴」「青嵐」「おばな沢」「茶摘みは八十八夜から始まる」「花の位置」計14編収録


足軽という身分で「我慢強い」というだけでは、この時代では珍しいことでもなく、大助も決して目立つような存在ではありませんでした。

幼少の頃から父親に「我慢する大切さ」を教えられたため、それを全うしただけのこと。本人も当然のこととしていて、自ら目立とうとすることもなく、日々精進していたのでした。

ある合戦で片足を橋桁代わりにして骨折してしまい、足を切り放すことになりました。それ以来、戦に出られない足軽は主君の役に立てない・・ということで評判を落としてしまい、縁談も無くなってしまいました。

彼が片足を突っ込んだとき、そばには丸太があり、それを使わなかった大助のことを非難する声も上がったのでした。

それでも彼は気にせず、今自分にできることをやり続け、いつかは片足でも戦に出てお役に立てるようになろうと決心するのでした。


この時代では当たり前だった我慢強さと主君のために・・という覚悟。平和な今を生きる私は感動してしまいました。


石ころ」は、戦場で特別な高名を上げず、必ず一つずつ石を拾ってきている多田新蔵という武士の話。

彼の妻・松尾は石を拾って来る良人に理由を尋ねます。彼は「どこにでもあるなんてことのない石だけど、馬に蹴られても踏まれても文句も言わずころげている。この素朴さが好きなんだ」と言います。それを聞いても理解できない妻。少しずつ良人に対する不信感が芽生えてきていました。

そんなとき良人が戦場でどんな戦い方をしているのか、父親が語ってくれます。新蔵は戦場でどんな高名な武将を討っても、首を取ろうとせずそのままにして次の敵へと向かうため、手柄が他の人になるのでした。

なぜ手柄を人にゆずるのかを聞くと、新蔵は「手柄よりも敵を多く倒すことが大事だと思うから」と淡々と答えるのでした。

この時代にはいくつの首を取るか?が戦場での手柄になるので、それを取らずに行くことはかなり強い心が必要なことでした。戦場で功名を上げることが武士として名誉なことですし、主君の役に立ったことになるわけですから・・。



「覚悟」というのは口で言うのは簡単でも、実際には難しいことです。それが当たり前のようにできていた当時の武士たち(武士だけではなく他の人たちもですが)の生き方に感動します。

そんな感動の話がたくさん詰まったこの本も、私のお気に入りの1冊です。



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2011年02月07日

山本周五郎「人情武士道」

人情武士道

 山本周五郎 著
 「人情武士道」
 (新潮文庫)



信子の家を訪ねて来たのは友人の和枝。彼女から「夫に仕官の口を紹介してほしい」と頼まれた信子は、夫・欽之助に頼んだが、夫から叱られてしまう。欽之助は和枝が昔、自分が縁談を断られた相手だと知り、思いがけない方法で仕官の口を紹介する−「人情武士道」他「曽我平九郎」「癇癪料二十四万石」「竹槍念仏」「風車」「驕れる千鶴」「武道用心記」「しぐれ傘」「竜と虎」「大将首」「猿耳」「家常茶飯」計12編収録


和枝はこの時代には珍しく明け透けに何でも話す女性で、年頃のときに周りの友人たちに対して恋の話を堂々と話していました。

美人だったので、縁談話がいくつもあったのですが全て断り、付き合っていた美男と結婚したのでした。

信子は和枝とは違い、控えめで見た目も特に美人というわけでもありませんでした。それでも欽之助を婿にもらい、無口な夫ではありましたが、幸せな毎日を送っていました。

そんな二人が久しぶりに再会し、粗末な着物を着てやつれた和枝を見て驚くことに。しかも、夫の仕官の口を紹介してほしいとまで頼まれたのでした。

そのことを知った和枝の夫は、欽之助が過去に和枝に縁談を申し込んでいたことを信子にばらします。ショックを受ける信子・・。

でも欽之助の想いを知って、最後には更に幸せに、満ち足りた気分になれたのでした。


欽之助の、妻や妻の友人、そしてその夫にまで気を使い、うまく性格を利用して士官の口を紹介したやり方に感心してしまう話です。


竜と虎」は、なぜかいつもケンカが絶えない二人、西郡至と灰島市郎兵衛の話。1人ひとりを見ると正確もよく、評判も良い人なのですが、なぜか二人が揃うとケンカしてしまう・・。でもお互い他の人の前では、お互いを推薦するのでした。二人のケンカが始まると市郎兵衛の娘がうまく仲裁に入ります。

最後には婿と舅の関係になることに・・。その経緯が笑える話です。


笑える話もありますが、相手の性格や行動パターンなどを見極めて、うまく物事を収めていくような話も多い作品集です。

人間関係について勉強できるかも・・。


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2011年01月19日

山本周五郎「あとのない仮名」

あとのない仮名

 山本周五郎 著
 「あとのない仮名」
 (新潮文庫)


私が持っているのとは表紙が違うんですが・・。消費税もなく360円という安さで売っていた時代に家族が買ってたみたいです。もっとシンプルな地味な表紙です。今はカラフルでキレイな絵になっているようですね。


江戸で5本の指に入るほどの腕をもつ植木職人の男が、妻との感情の行き違いがもとで家族も職も捨てて、あそび惚けてしまっています。そんな男の心の中を描いた作品−「あとのない仮名」他「討九郎馳走」「義経の女」「主計は忙しい」「桑の木物語」「竹柏記」「妻の中の女」「しづやしづ」計8編収録


一流の腕をもつ植木職人だった源次は、誰にも何も言わずに家を出て、飲めない酒を飲んで、飲み屋などの女性の家に上がり込んでいました。

仕事もせず、女性にたかるようにして日々過ごす源次。弟子が説得に来ることもあるのですが、絶対に戻ろうとはしません。

昔、庭の手入れをしたことのある屋敷に行っては家主から酒や食事を出してもらって、小遣いなんかももらったりしながら過ごす源次に、家主たちは説教を繰り返します。

一大決心して3年ぶりに家に戻ったところ、長男に追い出されてしまい、戻る場所もなくなってしまいます。

源次をそこまで追い詰めたのは何だったのか?


一流の職人だからこその悩みだったり、追い詰められる気持ち・・私にはちょっと理解できない部分もありました。

男性の方がもしかしたら源次の気持ちを理解しやすいのかもしれません。女性は、出て行かれて苦労している奥さんの方に感情移入してしまいますから・・・。

良い年した大人なんだから、しっかりしろよ!とか思ってしまうんですよね〜。



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2010年12月28日

山本周五郎「ちいさこべ」

山本周五郎著 「ちいさこべ

(新潮文庫)


江戸で起きた大火事のせいで両親を亡くした大工の茂次。店も同じ火事で焼けてしまい、一からやり直すことになった。周りの人たちが何とか助けようとしたが、彼は「誰の助けも借りない」と言い切り、仕事を続ける。苦しい中、近所のみなしごたちの面倒まで引き受けたのだった。あまり多くを語らない茂次の心意気に感動する作品。−「ちいさこべ」他「花筵」「ちくしょう谷」「へちまの木」計4編


驚くほど無口で頑固な茂次。これぞ江戸っ子って感じでしょうか(あくまでも私のイメージですが)。

茂次が若棟梁として川越に出向いて工事をしていたときに江戸で大火事が起きました。そのせいで両親を一気に失ってしまったのです。それでも仕事場を離れることなく職人の一人に江戸の店のことは全て任せ、自分は川越の仕事を完璧に終わらせました。

帰ってみると、おりつという幼馴染を(家事や雑用などをするため)店で住み込みで雇うことになっており、しかもおりつが次々とみなしごたちを集めて来ていたのでした。

店も一からというときに子どもを10人以上育てるのは無理だ・・と一度は断るのですが、結局は承諾して面倒をみることになります。

大きな仕事をいくつか引き受けてしまっていたため、金を苦心しながら集めて仕事にかかる茂次たち。同じ仕事仲間たちが助けようとしてくれるのですが、それを全て断り、一人で(自分たちだけで)店を建て直そうとします。両親の葬式も法事も一切することなく、仏壇に骨壷をおいたまま・・。

そんな茂次に何度も反発する職人たちやおりつ。説明をしてくれない茂次にいら立ちが募ります。

やっと心のうちを明かしたとき、茂次の決意や思いを知り、みんな感動するのでした。


思わず涙が出てしまう、感動の話です。


花筵」も感動します。涙なしでは読めません。

お市は、昔から病気がちで実家にいるときにはすぐに布団に入れられてしまい、甘やかされて育ちました。陸田(くがた)家に嫁に来てからはそんなこともなく比較的、健康に過ごすようになり、嫁として少しずつ強くなっていきました。

姑・磯女や夫・信蔵、義理の弟たちともうまく生活していたのですが・・・。

夫にある疑いがかけられて逮捕監禁されてしまい、家は破綻してしまうのです。それからの苦労は並大抵のことではありませんでしたが、姑や義弟たちの明るい性格やお市の強い精神力で次々襲いかかる苦難を乗り越えます。


陸田家の人たちの言動に時々クスッと笑いながら、最後には号泣・・そんな話です。


4編しか収録されていないので、それぞれ少し長めの話になっていますが、気づけば読み終えている・・というくらい引き込まれる話ばかりです。


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今読んでいるのは・・
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2010年12月15日

山本周五郎「大炊介始末」

山本周五郎著 「大炊介始末

(新潮文庫)


大炊介(おおいのすけ)は、相模守高茂の長子に生まれた。健康に賢い子に育った彼を家臣たちも「名君になられる」と楽しみにしていた。ところが18歳の秋、1人の家臣を突然手打ちにして以来、精神的に不安定になり、国許で過ごす間も酒を飲んで暴れたり、手打ちにしたり狂態は増悪するばかりだった。そんな若殿を見かねて相模守は、命をちぢめるように命令を下した。命を受けて国許へ向かった兵衛は、なぜ若殿が狂ってしまったのか探り始めた−「大炊介始末」他「ひやめし物語」「山椿」「おたふく」「よじょう」「こんち午の日」「なんの花か薫る」「牛」「ちゃん」「落葉の隣り」計10編収録


藩主にしては優しすぎたため、苦しむことになった大炊介。自分よりも周りのことばかりを考えてしまい、悩みを誰にも相談できず、結局自分が悪者になる道を選ぶのでした。

そんな彼のことを小さい頃から知っていた兵衛は、彼の学友として城にあがり、共に勉強し剣術の稽古もしてきました。

学友の中で誰よりも若殿にかわいがられた兵衛は、若殿を討つ役目を負いました。でも簡単に命じられた通りに討つことができず、国許での様子を聞いて回り、最後は若殿の元へ行って、話し合いをすることに。

なぜ若殿は突然、狂ってしまったのか。若殿の側近たちはなぜ今でも彼を慕っているのか。

悲しい大炊介の気持ちと苦しみ、そして家臣たちの慕う気持ちに涙が出そうになる話です。


おたふく」は、自分の顔を「おたふくのようだ」と思い込み、控えめで自分に自信が持てない女性の話。おしず、おたかという二人の姉妹がいたのですが、二人とも周りから評判になるくらいの美人姉妹でした。ところが、本人たちは本気で「自分は醜い」と思いこんでいて、周りの人に気遣い、控えめに静かに暮らしていました。

おしずは母親の面倒を看ていたせいもあり、婚期を逃してしまったのですが、36歳になったとき初めて縁談が持ち込まれます。嫁いだ彼女は甲斐甲斐しく世話を焼き、近所とも仲良く暮らしていたのですが、あるとき夫から疑いを持たれます。

彼女の秘めた想いに思わず涙がこぼれる、素敵な話です。


よじょう」は、宮本武蔵に斬られた料理人の息子の話。出来心から天下の剣豪に対し、包丁を投げつけた料理人。武蔵は思わず斬り捨ててしまいました。

周りの人たちは「何も斬り殺さなくても・・」と不満げでした。でも息子は特に気にすることもなく家出をします。その後、たどり着いた所が偶然にも武蔵の家の近くでした。

そこで周りは「やはり父親の敵をうつつもりなんだ」と勝手に解釈し、武蔵自身もそう思い、日に何度も息子の小屋の付近をそっくり返って歩いて見せます。

その様子を鼻で笑う息子。  息子の周りで起きる、他人の勝手な思い込みによる出来事に思わず笑ってしまいます。

「よじょう」とは、昔、敵を討とうと捜し回っていたのに見つけられず、見つけたときには相手は病気で死んでいたため、着ていた着物を代わりに斬って恨みをはらそうとした・・という故事のことです。


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2010年12月02日

山本周五郎「人情裏長屋」

山本周五郎著 「人情裏長屋

(新潮文庫)


「松村信兵衛に会いたいときは、居酒屋“丸源”に行けば良い」と噂されるほどいつも居酒屋に居て酔っ払っている浪人・信兵衛は裏長屋に住んでいるが、働く様子も無く、酒びたりのくせに同じ長屋で困っている人を見かけるとお金を貸してあげたりして助けていた。あるとき、同じ長屋の浪人から乳飲み子を預かることになり、慣れぬ子育てに奮闘していた・・−「人情裏長屋」他「おもかげ抄」「三年目」「風流物屋敷」「泥棒と若殿」「長屋天一坊」「ゆうれい貸屋」「雪の上の霜」「秋の駕籠」「豹」「麦藁帽子」計11編収録


人なつっこい笑顔と、親切なのにさっぱりした性格が気に入られ周りから何かと頼られ「先生」と呼ばれるようになった信兵衛。

剣術の腕がたつので、金が必要になると道場へ出かけて行き、道場主(師範)に立ち会いを申し込んでわざと負けてやり、こっそりと金を貰っていました。勝ってしまうと面倒なことになるので、ギリギリまで追いつめてわざと負ける・・これが、立ち会い後も金を貰えるコツでした。

困っている人を見ると放っておけない性格で、同じ長屋にいた乳飲み子を抱えた浪人にも何かと世話を焼いていたのですが、その彼が「仕官の口を探すため」という理由で乳飲み子を一方的に託されてしまいます。

「子どもを捨ててまで得たい仕事とは何だ」と怒り心頭の信兵衛でしたが、乳飲み子を放っておけず、みんなの助けを借りながらも必死で育てます。


近頃の世の中では考えられないような近所同士の繋がり、そして人情、助け合い。暖かい気持ちになれる話でした。


ゆうれい貸屋」は、題名の通りゆうれいを貸す商売の話。長屋に住んでいる弥六は働きもしない怠け者でした。女房にも愛想をつかされ逃げられてしまい、一人になったとき部屋に女のゆうれいが現れます。「うらめしや〜」とオドロオドロしく出ても全く相手にされないことに呆れた彼女(ゆうれい)は、弥六に「ゆうれいの貸し出しをしてはどうか?」と持ちかけます。

ドラマ化されたこともあるというこの作品は、始めは笑えて、最後にはゾッとするそんな話で、なかなか楽しめますよ。

長屋天一坊」は、長屋の店子たちの家系図を知りたがった大家の話。天一坊という盗賊が現われ「自分は将軍の御落胤だ」と名乗った・・という事件があり、それを聞いた大家が「どこにどんな立派な家系の子孫がいるかわからない」と欲をかき、店子の家系を知りたがりました。何度も出自を聞かれて苛立った店子たちがある秘策を思いつきます。

強欲な大家一家をぎゃふんと言わせる計画に思わずニヤッとしてしまう面白い作品です。


長屋ものを中心にした短編集。笑える話も多いので、読みやすいと思います。


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2010年11月15日

山本周五郎「おさん」

山本周五郎著 「おさん

(新潮文庫)


「床の間の大工」と呼ばれ、床柱や欄間などに細工をほどこす仕事をしている職人の参太。それなりにあそんでいて、吉原には馴染みの女もいたが、心の底から人を好きになったことがなかった。あるとき酔った参太の前に現れたおさんと一晩共に過ごしたとき、初めて彼女に夢中になってしまった。夫婦となった二人だったが、おさんにはある問題があり・・−「おさん」他「青竹」「夕靄の中」「みずぐるま」「葦は見ていた」「夜の辛夷」「並木河岸」「その木戸を通って」「偸盗」「饒舌り過ぎる」計10編収録


夫婦生活の中で見知らぬ男性の名前を呼んでしまうという性を持つおさん。我を忘れて自分も知らぬ間に名前を口ずさんでしまうのですが、参太はその度に「浮気しているのでは?」と確認せずにはいられず、それに疲れてしまい、距離を置こうとします。

参太が距離を置き始めると、おさんは寂しくて他の男性を家に引き込んでしまいます。そして、結末は悲惨・・というか悲しすぎました。

すでにおさんと距離を置いた後の参太の視点から書かれていて、おさんとの出会いを振り返る感じで話が始まります。

旅先から戻った参太がおさんのその後を知り、心の中で話しかける・・という結末。

どちらの気持ちもわかるだけに本当に辛い話でした。


葦は見ていた」は、将来は国家老か?と期待された若い武士の話。藤吉計之介というこの武士は、江戸で出会った芸妓に入れ込んでしまい、一緒に住むまでにもなりました。ところが芸妓に去られてしまい、自暴自棄になります。そんな様子を見兼ねた親友が説得し、根回しもしてくれて立ち直り、立派な武士となりました。そして隠居となった計之介は釣りに出かけ、流れ着いた遺書を読みます。

その遺書は「計さま」と呼びかけるように書かれ、女から男へあてた悲しい恋文でした。それを読んだ計之介は特に何も思い出すことも無く捨ててしまいます・・。

計之介の将来を思って身を引いて自殺した芸妓の気持ちが悲しくて辛い話です。


その木戸を通って」は、平松家に来た記憶を失った娘の話。「平松正四郎に会いたい」とだけ言って自分の身元も何も思い出せない娘。何かの罠か?と疑う正四郎でしたが、そのうち娘の人柄に惚れ、夫婦になります。

やっと平松家に馴染んだ頃、時々ふと記憶を取り戻すのか「その木戸を通って・・」とあらぬ方向を指さす娘。そして、あるときいなくなってしまいます・・。

謎が謎のまま、でも不思議と温かい気持ちの残る話です。


饒舌り過ぎる」は、私の大好きな話です。土田正三郎と小野十太夫は、道場の仲間で、いつも一緒に行動していて、周りも公認する仲良しでした。いつも一緒にいるので、勤務先を変更するときも「二人を離すのは良くないのでは?」と上司まで気を配るほどでした。

普段の土田は行動もきびきびしていて頼りがいのある男ですが、小野といるとなぜかおとなしくてのんびりした男に変わってしまいます。そしてほとんどしゃべりません。

でも小野はすぐに「土田、お前はしゃべりすぎるぞ」と叱って止めるのです。

そんな二人の会話や行動が微笑ましくて、ずっと笑いながら読み進める感じなんです。ですが、最後にはホロッと泣かされる・・。

男同士の堅い友情、素敵だな〜と羨ましい気持ちで読み終える話です。


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2010年09月17日

山本周五郎「深川安楽亭」

山本周五郎著 「深川安楽亭

(新潮文庫)


「安楽亭」という飲み屋は抜け荷(密貿易)の拠点となっている。そのため、命知らずの若者が出入りしていて、見知らぬ客は入ることができない。そんな安楽亭にあるとき見知らぬ客が入り込んで酒を毎晩飲むようになっていた−「深川安楽亭」他「おかよ」「上野介正信」「百足ちがい」「四人囃し」「あすなろう」「枡落し」など計12編収録


その客は誰にも気づかれずそっと入って来たようで、突然大声を出さなければずっと気づかれずに終わったかもしれないくらい、存在感の無い客でした。

一度来てからはなぜか当たり前のように常連となり、毎晩飲んでは「金はある!」と叫んでいたのですが、それでもやはり存在感のない状態が続きました。

ある晩、安楽亭に出入りしている若者がお店者を連れて戻ります。彼は恋人の身請金欲しさに、店の金を盗んで袋叩きにされていました。

大金が欲しい彼は、「金はある!」という客から奪い取ろうと計画するのですが・・。

十手持ちも入れないこの店で起きる、暗い雰囲気の話。でも、妙に涙を誘う悲しい話でもあります。


おかよ」は、足軽で引っ込み思案の弥次郎が戦で手柄をたて、出世する話。茶屋で勤めるおかよと出会い、おかよは戦に行く弥次郎へお札を渡し「手柄をたててくれ」と祈ります。弥次郎は「戦へは行きたくない」という思いだったのですが、おかよのためにがんばり、手柄をたてます。

ところがおかよは弥次郎の前から姿を消します。茶屋の女では身分が違いすぎて、足を引っ張ることになるから・・と言うのです。「女というのは、自分の一生を捧げた人のために一度でも役に立てたらそれでいい」というおかよの気持ちは潔くて、そして悲しい結末でした。

短い話なのですが、ぎゅっと詰まっている感じでとても深い話になっています。

百足ちがい」は、又四郎というおっとりした武士の話。幼い頃せっかちで短気だった彼にある和尚が“参つなぎ”という方法を教えます。そのとき腹が立っても3日待つ、それでもダメなら、3カ月、3年・・と待ってみると考えも変わるという思想なのですが、それを忠実に守るあまり、決闘にも間に合わず、役に立たない男として位置づけられてしまいました。一足ちがいではなく、百足ちがいなんですね。

そんな彼の行動がかなり笑える話です。


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2010年08月27日

山本周五郎「ひとごろし」

山本周五郎著 「ひとごろし

(新潮文庫)


福井藩きっての臆病者という不名誉な評判をたてられた双子六兵衛が、上意討ちのためにお抱え武芸者だった仁藤を追って旅に出ることになった。剣の腕もなく、臆病な六兵衛が決行した上意討ちの方法とは?−「ひとごろし」他「壺」「暴風雨の中」「雪と泥」「鵜」「女は同じ物語」「しゅるしゅる」「裏の木戸はあいている」「地蔵」「改訂御定法」計10編収録


特別に何か臆病だというエピソードがあったわけではないのに、あまりにも平凡だったからか「臆病者」という評判になってしまった六兵衛。

武士が「臆病者」というのはかなりの不名誉で、特に実務もない双子家にとってはちょっとした危機でもありました。

たった一人の肉親でもある妹のおかねからは「嫁に行けない」「縁談話が持ち込まれないのは兄のせいだ」と文句を言われ続けていました。

そこで起きた事件、そして上意討ち。思わず立候補してしまった六兵衛は、仁藤を討つための旅に出ます。上意討ちを果たすために六兵衛がとった行動は武士らしくなく、笑えます。


裏の木戸はあいている」は、私が特に気に入っている話です。高林喜兵衛は、幼い頃、近所にいた一家が少しの金が無かったせいで心中してしまったのを見て、本当に困っている人の役に立ちたい・・と、裏の木戸を開けてそこに少しの金を入れた木箱を置いておきました。

金に困った人はそこからそっと金を持って行き、返せるときに返すのです。始めは戻ってくる金も少なくて、喜兵衛は自分の家計を切り詰めながら木箱の金を足していました。最近は戻る金も増えてきたのですが、実は隣人の久之助も気づいてこっそり足しておいてくれたのです。

武士が町民の暮らしを気遣って、こっそりと金を貸していることや、隣人でもあり友人でもある久之助の喜兵衛を助ける気持ちが読んでいてほんのり沁みる、良い話です。

」も好きな話です。百姓の家に生まれた七郎次は剣術がうまくなり、それを自慢に思っていました。あるとき、荒木又右衛門という剣術使いの家に奉公することになり、剣術を教えてもらおうとしました。

すると又右衛門は「庭にある杉の影が移る所に極意を書いた壺がうまっているから見つけ出すように」と言います。その日から必死で土を掘っていた七郎次でしたが、気づけば草や瓦礫を横へ投げて畑を作っていたのです。

それを見た又右衛門は「刀法の達人になれば武士の資格があるのではない。さむらいとは『おのれ』を棄て、御しゅくんのため、藩のため国のためにいつなんときでも命をなげだす者のこと」と諭します。


この本も笑いあり涙ありで面白い作品集です。


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2010年07月22日

山本周五郎「扇野」

山本周五郎著 「扇野

(新潮文庫)


流れ絵師の栄三郎が書いている枯野の襖絵の下絵が「何かが足りない感じ」と評された。素人に指摘されて心外だったが、自分でも同じように感じていたため、悩んでしまう。そんなとき、息抜きのために出掛けた料理茶屋で出会った芸妓に惹かれる。その芸妓・おつるに助けてもらい、襖絵を完成させたのだが・・−「扇野」他「夫婦の朝」「合歓木の蔭」「おれの女房」「めおと蝶」「つばくろ」「三十ふり袖」「滝口」「超過勤務」の計9編収録


栄三郎は元武士で、三男に生まれたため、家を継ぐことができず、養子にも行けず、小さい頃からグレて絵師の元へ通い詰めていました。その師匠である絵師によって酒の味を覚えさせられた栄三郎は、気づけば家から勘当され、身を持ち崩していました。

そんな姿を見て回船問屋・角屋の主人が拾ってくれます。そして資金や住む場所を提供して、絵を描く環境を整えてくれたのです。

そしてある武家から頼まれた襖絵を描き始めたのですが、行き詰ってしまいます。

角屋の娘・おけいから息抜きをするように言われ、出かけた栄三郎は芸妓・おつるが落としていった扇子を見て、それをヒントに絵を完成させるのです。

会った瞬間から惹かれ合った二人には様々な障害が訪れますが・・。

最後は思わず泣いてしまうような、感動的な結末が待っていて、でも幸せな部分もあって、なんともいえない気持ちになりました。


三十ふり袖」は、27歳のお幸という娘の話。27歳で独身というのは、昔は「もう嫁の口はない」と絶望視されるほどの年増でした。30近くになってもふり袖だなんて・・ってことです。この時代に生きていなくて良かった〜。

そんなお幸に「妾にならないか?」という話が持ち上がります。お幸には病気の母親がいて、お金がかかってしまい、生活に困っているので、妾になればお金ももらえて良いのでは?ということでした。

自分が嫁に行けずに妾になっている・・という事実が受け入れられず、なかなか相手の男性に心を開けず、自分の境遇を悲観しては泣いて過ごす日々でした。

ところが、本当の男性の想いを知って、自分の浅はかさに気づき、実は幸せだったのだとわかり、感動するのです。


この短編集は、恋人同士や夫婦のお互いを想う気持ちや、それを支えて見守る人たちの気持ちや行動に勘当できる話が詰まっています。

読んだら幸せな気分になったり、ちょっとホロリと泣けたり、とても素敵な話がたくさん入っているので、ぜひ読んでみて下さいね。


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2010年06月22日

山本周五郎「小説 日本婦道記」

山本周五郎著「小説 日本婦道記

(新潮文庫)


紀州徳川家の年寄役で、千石の食禄をもらっていた佐野家の主・藤右衛門は「松の花」という稿本に朱を入れていた。「松の花」は、藩譜のなかに編まれる烈女節婦の伝記と、紀州家中でほまれ高き女性たちを記録したものだった。ところが、妻が重態のため集中できずにいた。妻が静かに息をひきとってから、妻の知られざる面を目の当たりにし、藤右衛門は驚いてしまう−「松の花」他「梅咲きぬ」「二十三年」など計11編収録


武家の生活というのは、対面を保たないといけないため、意外と内情は火の車だったりしたようです。

佐野家は千石録りですから、千石に見合った家を保つ必要があります。家の造りはもちろん、家来やお手伝い的な人たちの数も揃える必要があるのです。

藤右衛門は、現役のときは忙しさもあって、家のことはほぼ何も知らずにいました。大金が必要だったとき、サッと出して来る妻の様子を見ても特に不思議には思っていませんでした。

でも本当は妻が奥向きで倹約してきたからこそできたことだったのです。妻が亡くなったとき、家来たちが泣き続けているのを見て「そんなに慕われていたのか・・」と初めて思った藤右衛門。妻の形見分けをさせるため遺品を整理すると、数の少なさ、そして着物の質素さに驚かされます。

家来たちの祝い事には、新しく立派な物をあげていたという妻。でも自分の着物には継ぎをして、色あせても新しい物を作ろうとはしなかったのです。

亡くなって初めて妻の献身ぶりに気づかされました。


梅咲きぬ」は、嫁の習い事を次々と変えさせる姑の話。加代は、姑・かなと上手くやっているのですが、習い事だけは自由にさせてもらえず「もう少し道を極めたい」と思ってもすぐに「もうこれは良いから次を・・」と言われてしまいます。始めは姑を恨んだ加代でしたが「妻が身命をうちこむのは家をまもり良人に使えることで、習い事で道を極めようとすると“妻の心”に隙ができてしまう」と諭され、姑の気持ちを知って晴々した気持ちになります。

二十三年」は、ある武家で乳母をしていたおかやという女性の話。5歳のときに母親を亡くした男児を育てるため、おかやはずっと仕えていきますが、ある日遠くへ旅立つという主・靱負に暇を出されます。それでもどうしても付いて行きたかったおかやは、事故に合い、頭に障害が残って口がきけないし、ぼんやりする・・という振りをしてついていきます。


厳しい武家の生活の中で、夫や家、子どものために行きぬいた妻や母たちの優しさと強さ、生き方の美しさ、哀しさなどが書かれている短編集です。泣いてしまう話もたくさん・・。

とてもページ数の少ない本で、この作家さんらしい文章や物語がたくさん詰まっています。読みやすいと思うので、ぜひ読んでみて下さい。


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うちにある本はもうすっかり色が変わってしまっています・・。価格を見たら240円でした。今では500円くらいするみたいですね。

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2010年05月28日

山本周五郎「四日のあやめ」

山本周五郎著 「四日のあやめ

(新潮文庫)


長い間、確執のあった馬廻り組と徒士組がとうとう衝突した。この知らせを聞いた千世は、夫には伝えず家人にも口止めをした。後にそのことを知った夫・主税介は、妻を責めるが・・本当の妻の思いとは?−「四日のあやめ」他「契りきぬ」「貧窮問答」「ゆだん大敵」など9編収録


主税介に妹を紹介するときに、千世の兄が「妹は四日の菖蒲(あやめ)という感じ」と表現した・・という一文が出てくるのですが、それを聞いた主税介は「六日の菖蒲というのは聞いたことがあるが・・」と思い、印象に残ったそうなんです。

「六日の菖蒲」も知らなかった私。辞書で調べてみると「端午の節句(五月五日)の翌日の菖蒲のように、せっかく用意したが肝腎のときに遅れて役にたたないこと」だそうです。

なるほど・・こんな表現があるんですね。勉強になりましたわーい(嬉しい顔) 

徒士組と馬廻り組の衝突は、主家には関係のないことで、これは私闘として罰せられる出来事でした。ところが、意外な展開を見せ、声をかけたのに参加しなかった主税介が逆に責められることになります。


契りきぬ」は、足軽の娘だったなつが借金のために身を売ることになった話。身を売る商売でありながらふっ切ることができず、一線を超えずにいたなつですが、ある武士と出会い人生が変わっていきます。とてもせつない恋の話です。

貧窮問答」は、渡り中間と奉公先の主人との話。貧乏な旗本の元へ一日だけ奉公に行った又平は、主人の人柄に惚れこんでしまい、気づけば酒や米などを自腹で買っては貢いでしまいます。二人の何とも言えないのんびりしたような、お人好しな感じの会話が楽しい話です。


悲しい恋の話もありますが、ちょっとほほ笑んでしまうような楽しい話もあり、楽しめる一冊になっています。


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2010年05月06日

山本周五郎「あんちゃん」

山本周五郎著 「あんちゃん

(新潮文庫)


自分の妹に対して恋心を抱いてしまい、間違いを犯しそうになった兄・竹二郎は、自分の醜い行いを恥じて家を飛び出す。その後は、いくら妹に説得されても家へは寄り付かず、父親の死に目にも会えなかった。久しぶりに帰った家で待っていた妹から思いがけない話を聞かされる−「あんちゃん」他「いさましい話」「菊千代抄」「思い違い物語」「七日七夜」「凌霄花」「ひとでなし」「籔落し」計8編収録


あらすじを読むと「え!?バッド(下向き矢印)」という気分になるような、嫌な話に思えそうですが、読んでみると悲しい恋の話で、竹二郎に対してかわいそうな気持ちになります。

私には兄弟がいないので兄弟を好きになってしまう気持ちはよくわかりませんが、この竹二郎は「叶わぬ恋」というよりも「こんな感情を抱く自分は人間ではない」とまで思いつめて、自分を痛めつけます。

その行動や想いが痛いほど伝わって、涙が出てしまう部分もあります。

最後はうまく収まるのですが、意外な結末です。それでも何だか納得できてしまうのが不思議です。

菊千代抄」は、女なのに男として育てられた菊千代という若様の話。昔から伝わる風習として、最初に女子が生まれると男子として育てることになっていたため、菊千代は後継ぎの男子が生まれるまで男子として育てられました。自分が実は女だと気づいてからの菊千代の悲しみがたまりません・・。

凌霄花(のうぜんかずら)」は、商家の一人娘と武士の一人息子の恋の話。商家の娘と武士は、昔は結ばれない運命でした。それでも娘を武家に養子に出してから結婚することはありましたが、この話の娘・ひさ江は一人娘だということで、それも難しい状態でした。だからせめて一年に一度、凌霄花の咲くときに会おうと約束をします。 

七日七夜」は、旗本の四男坊という境遇に生まれた武士の話。貧乏旗本の四男坊といえば、貰い手もなく、長男の世話になるしかない存在で、この話の昌平もかなり雑な扱いを受けます。それでも我慢を重ねてきましたが、とうとうキレてしまい、家を飛び出します。


生まれたときの運命というか、境遇に翻弄されながらも必死で生きていく人たちの話が多い短編集です。

最後にはみんなそれぞれ納得のいく終わり方をしているので、読み終わっても幸せな気持ちが続く感じがします。


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2010年04月10日

山本周五郎「雨の山吹」

山本周五郎著 「雨の山吹

(新潮文庫)


孤児となって葛西家に引き取られ、実子のように育てられた妹が旅先で自殺した。遺体は発見されなかったが、遺品を見つけ病死として葬儀を済ませた。ところが数年後、妹が生きているらしいことを聞きつけ、兄は遠国まで追って行ったが・・−「雨の山吹」他「暗がりの乙松」「喧嘩主従」「彩虹」「恋の伝七郎」「山茶花帖」「半之助祝言」「いしが奢る」「花咲かぬリラの話」「四年間」計10編収録


突然、遺書を送って来た妹。遺品を見つけた兄は深い悲しみと怒りを感じながら骨壷に入れて持ち帰りました。そしてやっと悲しみから逃れ、日常に戻った頃になって今度は、妹が生きて目撃されることに・・。

武家としては、一度死んだとした者が生きている・・なんてことは許されるはずもなく、しかも家来と駆け落ちしたとなると一大事なので、斬って捨てるつもりで追いかけますが・・。

結末はあたたかく、読み終わっても優しい気持ちが続く感じになります。

山茶花帖」は、芸者と若い侍の愛の話。芸者と侍は絶対に結ばれない・・というくらいその障害は大きいものでした。でも芸者は侍への気持ちを捨てずに黙って読み書きなど学んで待ちました。これも素敵な結末です。

いしが奢る」は、偶然出会った娘と侍が運命に翻弄されながらも結ばれていく話。偶然の出会いと思われていたのが実は、計画されていたものだった・・と知った侍はそれでも娘を想い、信じ続けます。

山本周五郎の作品の感想を書く度に、自分の文章力の無さを痛感します・・もうやだ〜(悲しい顔)

本当はとても良い話ばかりなんですよ。ぜひ読んでみて下さい。


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2010年03月29日

山本周五郎「ならぬ堪忍」

山本周五郎著 「ならぬ堪忍

(新潮文庫)


生命を賭けるに値する真の“堪忍”とは何かを問う−「ならぬ堪忍」(裏表紙あらすじより)城代家老を“御意討ち”するように命じられた宗近新八郎は、許婚にさり気なく別れを告げ、城代家老の元へ向かった。いざ斬ろうとした瞬間、家老本人から真実が語られ、新八郎の決心は変化していく−「宗近新八郎」など計13編収録


あらすじは自分なりの言葉で書こうと自分の中で決めていたのですが、今回の表題作はとても短く(4ページしかありません)書きにくかったので、裏表紙に書かれているあらすじを使わせていただきました。

4ページと短いのですが、とても内容は濃くて武士の生き方がよくわかる作品になっています。

宗近新八郎」は、元々よくない噂が絶えなかった城代家老を討つように言われたわけですが、新八郎自身は噂話には関わらないように過ごしていて「斬るべきだ!」と息巻いていた若い武士たちとはかけ離れた存在でした。

その新八郎に命令がくだる・・何だか皮肉ではありますが。斬った後は立ち退くように言われるのですが、本人は切腹するつもりで出かけます。

命を賭けた新八郎と城代家老の心の交流、そして新八郎の苦難をしって助けようとする許婚の気持ちに感動してしまいました。

新三郎親子」は、岡山池田藩に引っ越して来た武士の親子の話。この武士・新三郎の父が実は・・。病気の母親のために雁を撃ちに行った新三郎が、気づかないうちにお上の狩場に入り込んでしまい、更に銃を取り上げようとしたお鳥見(お上の狩場の番人のこと)を斬って自首します。

自首しても死罪となるわけですが、それを助ける方法がありながらあえてお家のために助けようとしない母親と、それを運命と受け止める新三郎・・武家の厳しさを感じる作品です。


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2010年01月27日

山本周五郎「やぶからし」

山本周五郎著 「やぶからし

(新潮文庫)


夫が実家に勘当されてしまった嫁は、その後も嫁ぎ先で暮らしていくことを決める。やがて再婚し、子どもも生まれ幸せな生活を送る娘の元へ前夫が表れ、金を要求する。自分一人で対処しようとする娘がとった行動は・・・−「やぶからし」他「入婿十万両」「抜打ち獅子兵衛」「蕗問答」「笠折半九朗」「避けぬ三左」「鉢の木」「孫七とずんど」「菊屋敷」「山だち問答」「こいそと竹四郎」「ばちあたり」計12編収録


「やぶからし」というのは草の名前で、周りの植物を全て枯らしてしまう草なので、生えてきたのを見かけるとすぐに抜いてしまわれる草です。「藪をも枯らしてしまう植物」ということで「やぶからし」と言います。前夫は自分のことを「やぶからし」に例えて、自分を卑下しています。

この夫に嫁いだ娘は、両親が居ないため、舅や姑のことを本当の親だと思って慕います。夫が勘当された後、婿を迎えて幸せに暮らします。

舅や姑を悲しませないために一人で前夫にお金を払いますが、最後に金額が増えたため、家族を捨てる覚悟を決めます。

菊屋敷」は、美しい妹に振り回された姉の話。美しい妹が居るために、自分の容姿を比較してしまい、自信がもてない姉。自由奔放な妹に人生を振り回されてしまうのですが、最後には自分の人生を振り返り満足します。

入婿十万両」は、財政難に陥っていた京極家の内情を調べ、借金を返すために何をすれば良いか、解決策を出すために武家に婿に入った商家の男の話。元商家の息子ということで、城内でもいじめられ、家庭内でもプライドの高い嫁に嫌われ、肩身の狭い立場になります。でも最後には鮮やかな解決策を出すことで見直されます。

この本は、愛情というよりも、人生観のような物が書かれていて、感動もありますが、考えさせられるような作品が多いです。


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2010年01月20日

山本周五郎「月の松山」

山本周五郎著 「月の松山

(新潮文庫)


余命3ヶ月と宣告された宗城孝也は、それを誰にも告げず1人で抱えて生きることを決めた。自分を醜く装うことで、婚約者や自分が継ぐはずだった道場の安泰と幸福をはかろうとする−「月の松山」他「お美津簪」「羅刹」「松林蝙也」「荒法師」「初蕾」「壱両千両」「追いついた夢」「おたは嫌いだ」「失恋第六番」の計10編収録


余命3ヶ月と知って、誰にも打ち明けずに生きる・・すごい精神力だと思います。しかも、後に残される人たちのために自ら悪者になろうとする。簡単にできることではありません。

道場の弟子に対してもかなり厳しい稽古をつけ、婚約者には冷たい態度をとる。みんなが不思議に思って聞いても冷たく言い返して理由を言わない。最後には、1人で全てを背負って決闘にのぞみ、討たれてしまいます。

「おれが自分を醜くすれば、あとが美しく纏まる。あの人(婚約者)の気持ちにはもうおれは残っていないだろう」と言って亡くなります。それを聞かされた弟子は「それはひどい、あんまりだそれは」と言います。

死んでいく者も残される者もどちらも本当に辛い結果・・・。そして、あまりにも辛い生き方です。

今回も涙無しでは読めませんでした。あまり笑う話は無く、今回はしんみり、考えさせられる話が多かったです。


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2010年01月09日

山本周五郎「与之助の花」

山本周五郎著 「与之助の花

(新潮文庫)


与之助は城の宝庫からある御宝物を無断で借り出した。それをごろつき侍に見られ、ゆすられてしまう。与之助はなぜ御宝物を持ち出したのか?それには大事な理由があったのだが・・−「与之助の花」他「恋芙蓉」「孤島」「非常の剣」「磔又七」「武道宵節句」「一代恋娘」「奇縁無双」「春いくたび」「万太郎船」「噴上げる花」「友のためではない」「世間」の計13編収録


勘定奉行の家の次男・与之助は、たくさん読んでいた本の中に書いてあった顕微鏡を作ろうとして、色々工夫した結果、城にある宝物が必要になり、許しが出ないので無断で借りることに・・。

もちろん、無断で借り出すなんていうことは許されるはずもなく、バレれば重罪として裁かれることになります。ゆすられたらお金を払うしかないわけで・・あせあせ(飛び散る汗)

更に、兄に好意をもっている遠縁の娘・由紀に対し、ひそかに恋してしまい、悩みは増えてしまいます。

最後にどうやって始末をつけるのか・・。短い話ですが一気に泣けてしまいますもうやだ〜(悲しい顔)

「奇縁無双」は、我侭な藩主の娘を一介の藩士が懲らしめる話で、我侭な娘の意外な一面が見られて微笑ましくなりますし、「恋芙蓉」は、しんみり・・じ〜ん・・とします。(←よくわかる説明ですねたらーっ(汗)

誰でも共感できるような話が多いので、読みやすいですよ。


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posted by DONA at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:山本周五郎