2017年01月18日

谷瑞恵「思い出のとき修理します3 空からの時報」

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 谷瑞恵 著
 「思い出のとき修理します3 空からの時報」
 (集英社文庫)


穏やかに交際を続ける明里と秀司。ある日「秀司の時計店を女が手伝っている」と教えられた明里は、店で骨董店の娘・郁実と出会う。東京での仕事を辞めて帰ってきたという彼女は、商店街のお祭り準備で秀司が不在がちの今だけ、店番をしているのだという。自分と境遇の似た彼女に共感を覚えつつも、秀司との関係に少しだけ不安を感じて・・。切なく温かく、心を癒やす連作短編集、シリーズ第3弾。−裏表紙より−


3作目、また何だか秀司の性格が変わったような・・。それまでの詳しい内容を覚えていない自分が悪い気もしますが。

正に「穏やかに」交際を続ける明里と秀司。ベタベタくっついているわけではないですが、サラッと手を繋いだり、頭をポンと叩いて励ましたり、明里のことをあっさり公表したり、妙に親密な感じになっています。

でも明里は何だか不安に思っているようで、秀司の店に女性の店番が来たと聞いてちょっとやきもちをやいてしまいます。

その女性のことは、好きになれない感じではあったのですが、もっと自信をもっても良いはずの明里がやきもちを焼いては自己嫌悪に陥る描写は読んでいてイライラさせられました。

やっぱり私、恋愛話って苦手なんだと改めて思わされました・・。

普通なら微笑ましく読める部分なんでしょうね〜。

サッサと収まる所に収まってくれたら良いのに、と思ってしまいました。


今回も時計店に持ち込まれた時計にまつわる話が多かったですが、それ以外の話もあり、明里の秘密も明らかになります。それが最後には解決したので、ここからは一気に良い感じで収まる気はします。

次も手元にあるので、一応読んでみようかな?


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タグ:谷瑞恵

2017年01月17日

香月美夜「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜第一部『兵士の娘T』」

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 香月美夜 著
 「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜第一部『兵士の娘T』」
 (TOブックス)


とある女子大生が転生したのは、識字率が低くて本が少ない世界の兵士の娘。いくら読みたくても周りに本なんてあるはずない。本がないならどうする?作ってしまえばいいじゃない!目指すは図書館司書!本に囲まれて生きるため、本を作るところから始めよう!
緻密な世界観と多くの魅力的なキャラクターで大人気を集める本作が待望の書籍化!本好きのための、本好きに捧ぐ、ビブリア・ファンタジー!
−裏表紙より−


ネットでの感想を読んだら面白そうで、読みたいと思っていたら献本になっていたので「本が好き」で申し込みました。

とりあえず表紙を見ると、おばさんが読んで大丈夫なのか!?と心配になってしまったのですが、読み始めると一気に本の世界に引き込まれてしまいました。

この表紙のイラストがあるお陰でイメージもしやすくなりますし、これで良かったのかも。文庫じゃないから持ち歩けませんしね。



本が大好きというか、活字中毒といえるくらい本が好きすぎる女子大生が、突然事故にあい、目覚めたときには見知らぬ世界にいました。

なぜか青い髪の少女になってしまった彼女。しかも病弱な少女だったため、ちょっと動いては熱が出てしまう生活を強いられます。

更に、日本でも無ければ現代かどうかもわからない世界。言葉は少女の記憶を頼りになんとかなりますが、生活水準がかなり低い家庭だったため、不便な生活を送ることに、

活字中毒なのに、本もない!字も読めない、書けない状態になってしまい、彼女は何とかして本を手に入れようとします。でも結局本が手に入らないらしいとわかり、だったら本を作ればいいんだ!と張り切ります。本を作るだけではなく、最終的には司書になりたい!という壮大な夢を語るわけですが・・。

でも便利な機械はもちろん、紙もペンも無い世界。しかも病弱ときているため、なかなか計画は進みません。様々な困難に立ち向かいながら地道に進んでいこう!というところで一冊目終了。


架空の世界が描かれているわけですが、その世界観も面白くて、登場人物も魅力的で、何よりも本がどうやって出来上がるのかも楽しみでほぼ一気読みでした。

最後には何だか怪しい雲行きになりそうな発言もありましたし、物語をひっかきまわしてくれそうな人も出てきましたし、続きもとても楽しみな物語になりました。

次もぜひ読みたいです。


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タグ:香月美夜

2016年12月19日

伊坂幸太郎・中山七里・柚月裕子・吉川英梨「ほっこりミステリー」

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 伊坂幸太郎・中山七里・柚月裕子・吉川英梨 著
 「ほっこりミステリー」
 (宝島社文庫)


凄腕の殺し屋・兜が登場する、伊坂幸太郎の人気シリーズ作品「BEE」。『さよならドビュッシー』の映画化で話題の中山七里が贈る「二百十日の風」は、田舎を舞台にした心温まる物語。大藪春彦賞受賞で勢いづく柚月裕子は「心を掬う」で涙を誘う。「アゲハ」がドラマ化された吉川英梨は、「18番テーブルの幽霊」で驚きのトリックを描く! 心がじんわり温まる、゛人の死なないミステリー小説”が待望の文庫化。−裏表紙より−


旅行先で読もうと思って購入したこの本。旅行って非日常を楽しむ場面ですが、ファンタジー的な物だと旅行を邪魔しそうですし、ガッツリミステリーもしんどいかな?と思って選びました。「ほっこり」「人が死なない」と書かれていたので、ふわ〜っと軽い気持ちで読めるかな?と思ったわけです。

お気に入りの作家さんも書いていますし、わくわくして読み始めると、いきなり「殺し屋」の話・・。伊坂さんの殺し屋ですから、エグさは無く、クスリと笑える内容なのですが、文章の端々に物騒なワードが・・。

それはともかく、やっぱり面白い話を書いてくれるな〜と感心しながら読み終えました。兜の出てくる話、他も読んでみたいと思いました。


2話目は物騒なワードは少なめではありますが、内容がちょっと、いやかなりヘビー。ある意味ミステリーですけど、不思議なことも起こりますし、嫌な人もいっぱい出てきて、人間の嫌な部分がいっぱいで暗くなる気がしました。後味は悪くないので、「心温まる物語」と言えなくもないですけど、気分悪い感じもありました。


3話目の柚月さんの作品は読んだことがありました。安定の佐方シリーズです。


そして4話目は、またまた物騒ワードのオンパレード。まず「爆弾」が出てくるので「爆弾処理班」だとか「人質」だとか・・。事件の質は物騒ですけど、内容は人情的で感動するような物なのですが、「ほっこり」と言われると違う気がします。


色々文句のように書きましたが、それぞれの話は面白かったですし、読んでよかったと思います。題名さえ違えば感想も違ったんだろうと思います。

とりあえず、旅先で読むのは違うかも?


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2016年11月29日

森晶麿「ホテルモーリスの危険なおもてなし」

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 森晶麿 著
 「ホテルモーリスの危険なおもてなし」
 (講談社文庫)


かつて高級リゾートだった<ホテルモーリス>に、今は毎日ギャングがやってくる。迎え撃つのは、伝説のホテルマンの妻でオーナーのるり子、元殺し屋のコンシェルジュ日野、そして立て直しを命じられた新人支配人の准。アガサ・クリスティ賞作家がもてなす、劇場型ミステリー『ホテルモーリス』改題。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

読み終わって、う〜〜ん何というか・・・面白くないわけではないんですけど、私は合わなかったんですよね・・。

始めは面白くて、ぐいっと話に引き込まれたんですけど、途中から急に失速してしまいました。何が原因なのかは自分でもわからないですけど、日野がビールをあおって倒れた辺りからついていけない感じがしました。


倒産しそうなホテルに投資している会社から支配人として派遣された准が、ホテルに向かう所から話は始まります。

派遣されることになった理由には色々な事情が絡んでいて、きっと准が策略にはまらずホテルを立派に立て直すストーリーなんだろうと予想しながら読んだのがいけなかったのかもしれません。

准が良い奴なんですが、仕事がバリバリできるかというとそうでもなく、オーナーやコンシェルジュに若干押され気味で、何となく存在しているだけのように思えたんですよね。


そのホテルモーリルには、ギャングたちが常連となっていて、殺し屋なども泊まりにやってきます。それを伝説のコンシェルジュ日野が迎え撃つわけです。結構危ない方法で。

人が死ぬわけでは無いですが、なんかもっとスマートな方法で追い出すことってできないのか?と思うと読みにくくなってしまいました。


ただ、最後に思いがけないどんでん返しがあって、そこは感心させられました。なるほど、そう考えれば色々なことがしっくりはまってくるんだな、と納得しました。

だから最後には面白いと思ったんですけどね。途中がどうも好きにはなれませんでした。

評価が難しい作品でした。


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タグ:森晶麿

2016年11月28日

「警察アンソロジー 所轄」

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 日本推理作家協会 編
 「警察アンソロジー 所轄」
 (ハルキ文庫)


東池袋署管内で発見された女性の白骨死体。娘が逮捕されたが・・(「黄昏」)。警視庁から沖縄県警に移動した与座哲郎は、県人との対応に戸惑いもあり・・(「ストレンジャー」)。佐方貞人検事は、米崎西署で逮捕した覚せい剤所持事件に疑問を持ち始め―(「恨みを刻む」)。西成署管内で、ネットに投稿されたビデオクリップのDJが病院に担ぎ込まれ・・(「オレキバ」)。臨海署管内で強盗致傷事件が発生。昔の事件とリンクして―(「みぎわ」)。沖縄、大阪、東京など各所轄を舞台にした傑作警察小説アンソロジー。−裏表紙より−


私の大好きな、薬丸岳さんの夏目刑事や、柚月裕子さんの佐方検事、今野敏さんの安積警部補が出てくるとなれば、読まずにはいられません。

どれも読んだことが無い話で、短いですがそれぞれの魅力がしっかりと出ている作品ばかりでした。

初めての作家さんも2名。慣れないから読みにくい部分もありましたが、内容は面白かったです。また別の作品を読んでみても良いかな?と思いました。


薬丸岳「黄昏」では、被疑者が犯行を犯した動機に疑問をもって再捜査する夏目刑事の様子が描かれています。彼らしい優しい目線の話になっていて、最後はちょっとほろりとさせられる所もありました。


柚月裕子「恨みを刻む」では、供述書の些細な部分が気になり、再捜査することにした佐方検事の様子が描かれています。彼らしい細かくて鋭い洞察力が活きてくる作品でした。でも最後には彼の上司が良い所を全部攫っていた所もあり、佐方の影が一気に薄くなっていました・・。


今野敏「みぎわ」では、ちょっとセンチな気持ちになる安積警部補が描かれています。短くてあっという間に読めてしまえる作品ですが、安積班のメンバーも良い感じで活躍していますし、安積の若くて青臭い時代も少し見えて、なかなか面白かったです。安積ファンはぜひ読んでもらいたいです。


題名が「所轄」なので、本庁との確執みたいなことがメインになっているのかと思ったら、全くそんな話はなく。でも所轄らしい地元に密着した捜査は読んでいて面白かったです。


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2016年10月28日

名取佐和子「金曜日の本屋さん」

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 名取佐和子 著
 「金曜日の本屋さん」
 (ハルキ文庫)


ある日、「北関東の小さな駅の中にある本屋は読みたい本が見つかる本屋″らしい」というネット上の噂を目にした大学生の倉井史弥。病床の父に以前借りた本を返すように言われたが、じつは失くしてしまっていた。藁にもすがる思いで、噂の駅ナカ書店<金曜堂>を訪ねる彼を出迎えたのは、底抜けに明るい笑顔の女店長・南槇乃。倉井は南に一目惚れをして―。人と本との運命的な出会いを描くハートウォーミングストーリー、開店!−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

本好きにとってたまらない内容の作品みたいだったので読んでみることにしました。

だって「読みたい本が見つかる本屋」ですよ!? 最高じゃないですか! 

普段、どれだけ読みたい本が見つからないことか。いつになったら見つかるのか、もしかしたらもう古本でしか見つからないかも、という本さえあります。でも私は古本は無理なので、あきらめるしかない物もたくさんあります。

そういう本たちが見つかるなら、リストを持って買いに行きたいです。

という感じでワクワクしながら読み進めました。

その本屋さんは、本が見つかる以外にもワクワクする所があったんです。それは、地下に書庫がある! 地下鉄を作るはずだった部分を使って書庫にしていて、想像しただけで楽しくなります。

駅のホーム全体に本棚があって、本がずらりと並んでいるなんて最高でしょう!

それだけでも見に行きたいです。


話の内容は、何だかビブリア古書堂と雰囲気が似ている気がしました。美人の女店主と、彼女に憧れる若者バイト。設定も似ていますし、お客さんが本のことを質問して店主が答えて、本を見つけ出すところとか、本が絡んだちょっとした謎と謎解きとか、よく似ています。

バイトくんが本を読めない所も同じだと思ったら、こちらのバイトくんはただの思い込みで、実際は読書好きだったのですが、そこも似ていますね。

店主とバイトくんの恋物語がうっとおしいと感じるのも同じ。その辺りを少なめに書いていただけると楽しめると思います。


バイトくんが読書を嫌っていた理由というのが、本を読んでもきちんと理解できていると思えないからで、自分で「読書をする資格がない」と言っていました。

そんな彼に、店主が

「読書は究極の個人体験です。人によって響く部分が違うのは、当たり前なのです。作者の思いやテーマを汲み取る努力を、読者がしなければならない義理はありません。好きに読めばいいんです。感想を誰かと同じになんかしなくていいんです」

と言って彼を励まし、読書ができるようになりました。


私も他の人と感想が違うとか、きちんとテーマを読み切れていないとかよく感じていたので、彼女の言葉にはちょっと安心させられました。

感想が人と違っても良いんだ、という当たり前のことに改めて気づかせてもらえただけでも、この本を読んで良かったです。


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タグ:名取佐和子

2016年09月20日

緑川聖司「晴れた日は図書館へいこう」

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 緑川聖司 著
 「晴れた日は図書館へいこう」
 (ポプラ文庫)


茅野しおりの日課は、憧れのいとこ、美弥子さんが司書をしている雲峰市立図書館へ通うこと。そこでは、日々、本にまつわるちょっと変わった事件が起きている。六十年前に貸し出された本を返しにきた少年、次々と行方不明になる本に隠された秘密・・本と図書館を愛するすべての人に贈る、とっておきの日常の謎”。 知る人ぞ知るミステリーの名作が、書き下ろし短編を加えて待望の文庫化。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

何ともあっさりと1時間くらいで読んでしまえる作品でした。

主人公のしおりは小学5年生。お気に入りのいとこが司書をしていることもあって、図書館が大好きな女の子。毎日のように図書館へ行っては本を読んだり借りたりしています。

そして図書館で起きるちょっとした事件も、いとこと共に解決していきます。殺人などの血なまぐさい事件ではなく、本が関係したちょっとした事件。腹立たしいものもありましたが、ほとんどはほのぼのと終わっていく話になっていて、固いミステリーが続いたときに読むとほっこりして良さそうです。


図書館ってほとんど行かないですが、図書館という空間は好きです。図書館の本が苦手なので触れないのですが、本に囲まれた場所はテンションが上がります。自分の本を持って行って読んだら良いようなものですが、結局は家で読んでいます・・。

図書館の司書って大変そうだとぼんやりとは思っていましたが、これを読むとその大変さが更によくわかります。重い本を抱えて移動することは重労働ですし、本を整理したり、イベントを企画したり運営したり、本が紛失したり汚されたりするたびに対応しないといけませんし。なかなかハードです。

本が好きだったら、やりがいはありそうですけど、その分、悲しい気持ちになることも多そうです。

シリーズ化されているようです。また血なまぐさいミステリーが続いて心がやさぐれたら、読んでみようかな?


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タグ:緑川聖司

2016年09月07日

二宮敦人「なくし物をお探しの方は二番線へ」

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 二宮敦人 著
 「なくし物をお探しの方は二番線へ」
 (幻冬舎文庫)


蛍川鉄道の藤乃沢駅で働く若手駅員・夏目壮太は駅の名探偵”。ある晩、終電を見送った壮太のもとに、ホームレスのヒゲヨシが駆け込んできた。深夜密かに駅で交流していた電車運転士の自殺を止めてくれというのだが、その運転士を知る駅員は一人もいない―。小さな駅を舞台に、知らぬ者同士が出会い、心がつながる。あったか鉄道員ミステリ。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。あらすじを見て面白そうだったので「本が好き」で献本申し込みしました。

来てみたらシリーズ2作目だとわかりびっくり。でも、2作目から読んでも何の問題もなく読み進めることができます。

しかもなかなか面白かった! 軽い文体なのに意外と重い内容も書かれていて、時々じんわりと泣かされながら、ちょっと微笑みながら読むことができました。気づけば終わっていた、という感じ。

連作短編になっていて、1話ずつが短かったのも読みやすくて良かったです。


夏目壮太という若手駅員が活躍する物語で、お客さんが持ち込むちょっとした謎をさらりと解決して見せます。始めの話は軽くて、でも「なるほど」と感心させられるような内容だったのですが、2話目以降はちょっと重めになります。

特にホームレスのヒゲヨシと貨物運転士の清水さんの話は泣きそうになりました。貨物運転士ってそうなんだ〜と知らなかったことも知ることができましたし、最後は2人の素敵な関係に読んでいてほっこりさせられて、お気に入りの話になりました。

最後の話は、若干納得できない部分もあったのですが、彼らの関係はともかく、今まで出てきた人たちがすべて丸く収まる感じは心地よかったです。


壮太は、どうやら新たな一歩を踏み出しそうなので、続きも楽しみな展開で終わりました。まさかこれで終わりではないと思いますが、続きが出たら読んでみたいです。

というか、その前に1作目を見つけて読むことにします。


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タグ:二宮敦人

2016年07月26日

葉真中顕「ロスト・ケア」

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 葉真中顕 著
 「ロスト・ケア」
 (光文社文庫)


戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奥に響く痛ましい叫び―悔い改めろ!介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味・・・。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る! 全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

読む前からきっと重い話だろうと覚悟はしていたのですが、読み終わるとやっぱり重くて感想が整理できない状態になりました。


話は、2011年12月、<彼>に死刑判決が降る裁判の様子から始まります。<彼>はどうやら殺人を犯したようだということしかわかりません。ただ続いて何人かの感情が描かれている文章から察するに、この殺人によって救われた人と、怒りが収まらない人がいることはわかります。

そして次の章では、2006年11月へ。ここから<彼>が起こした事件の内容が明らかにされていきます。そして<彼>と表記されているのはこの中に出てくる誰なのか?動機は何なのか?が少しずつ明かされていくのです。


ミステリーだけではなく、高齢化社会について描かれています。家で介護することの大変さ、介護ビジネスの難しさ、社会システムの問題点などなど。

私自身は、介護をしたことが無いので、介護する人の大変さは想像するしかありませんが、中で描かれていた娘が母親を介護する様子は涙があふれて仕方ありませんでした。あまりにも壮絶で、娘さんの苦しみも、介護されている母親の苦しみも痛いほど伝わって、読むのが苦しいくらいでした。と言っても、実際に介護された方の気持ちなんて、経験していない私に理解できるわけないのですが。

更に介護ビジネスについて、老人ホームや介護施設などを経営している会社の社員の話もあります。その社員の言っていること全てに賛同するわけでは決してないですが、いくつかの部分では自分の携わる保育の世界と共通する所がたくさんあって、激しく共感してしまいました。

老人の介護をすることは、家族だけでは難しい。でも、それをビジネスにするとなぜか社会から白い目で見られる。現場を知らない偉い人たちが考えたルールを全部正確に守っていたらビジネスとして成り立たない部分がある。この辺りは本当にわかります。一般の会社がやるからには、利益がないと倒産してしまうのは当然のことで、福祉としてそれは変だ、ダメだと言うなら、それなりの資金を回してくれ!ってことです。予算は無い、でも介護はクリーンで無いと・・というのは矛盾しています。

利益を得るために何をやっても良いというわけでは無いですけどね。詰め込みすぎたり、職員の待遇がひどすぎたり、虐待したり、そういうことになるのは絶対にダメです。

今は待機児童の問題で、保育士の給料が安すぎる、なんて叫ばれていますが、介護士も本当に安いです。労働に見合わない職業ですよね?結局、彼らの善意に甘えている所が大きいと思います。


介護されている人が喪失感を感じて「早く死にたい」と考えるのは何となくわかります。我が子に迷惑をかけるなんて、想像するだけでも辛いです。でもだからといって、<彼>がしたことに賛同はしたくないんですよね。

でも気持ちはわかる・・・・・。

本当に難しい問題ですし、自分もどうやって気持ちを整理したら良いのかわかりません。正義ってなんでしょうね??

色々考えさせられた作品でした。とりあえず、福祉についてルールを決めている偉い人たちに読んでもらいたいものです。


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タグ:葉真中顕

2016年07月20日

藤崎翔「こんにちは刑事ちゃん」

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 藤崎翔 著
 「こんにちは刑事ちゃん」
 (中公文庫)


ベテラン刑事・羽田隆信は後輩の鈴木慎平と殺人事件の捜査中、犯人に撃たれ殉職した―はずだった。目がさめると、なんと鈴木家の赤ちゃんに生まれ変わっていた!?最高にカワイイ赤ちゃんの身体と、切れ味鋭いおっさんの推理力で、彼は周囲で巻き起こる難事件に挑む! 笑って泣ける衝撃のユーモア・ミステリー、誕生!−裏表紙より−


初めましての作家さんです。表紙の絵を見ると「笑わせてやろう!」感が出すぎていて、あまり好みのタイプではないのですが、ネットでの感想を読めば読むほど面白そうに思えて、ついつい買ってしまいました。


あらすじを読んでもわかる通り、禿げたおっさん刑事としてスタートした主人公が後輩刑事の家に誕生した赤ちゃんに生まれ変わってしまいます。

「見た目は子ども、頭脳は大人」というコナンを思い出してしまいますね。この話の場合は「見た目は赤ちゃん、頭脳はおっさん」なので、コナンよりも年齢差が大きいですが・・。

連作短編になっていて、「おっさんの章」から始まり、「ねんね」「寝返り」「はいはい」「あんよ」と続き、最後に「別れの章」があります。一つの章に一つの事件が起きます。

章の名前の通り、赤ちゃんが成長していく過程も描かれていて、中身がおっさんなだけに、身体能力に対する苦労がたくさんあって、その描写が笑えるんです。

でも周りからすれば(中身がおっさんなので)かなりやりやすい赤ちゃんではあります。かわいげがないかもしれませんが。

普通の赤ちゃんと違う・・と悩んでしまう母親のことを気遣って必死で普通の赤ちゃんのような反応しようとする処とか、笑える処がたくさんあります。

鋭い推理力を見せつつ、後輩を助けつつ、事件をスパッと解決していく部分は爽快ですし、なかなか面白い展開が続きます。

そして、最後の「お別れの章」では涙涙・・。別れが来ることはわかっていたのに、つい号泣してしまいました。でもどうやらまた彼は違うものに生まれ変わるようです!

それは第2弾として書く予定だとか。「作者がやる気を失わなければ」的な条件があるようですが、ぜひぜひ書いてもらいたいです。禿げたおっさんが、今度はふさふさモフモフの毛に悩む様子が読みたいです。


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タグ:藤崎翔

2016年06月28日

新宮広明「サマーキャンプ 潜入捜査官・高階紗香の慟哭」

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 新宮広明 著
 「サマーキャンプ 潜入捜査官・高階紗香の慟哭」
 (幻冬舎)


1人目は東京立川に住む主婦。1年前に5歳の息子を幼稚園に預けたまま忽然と姿を消した。2人目は急成長中のディベロッパー勤務エリート社員。彼は半年前、職場のトイレで自殺。そして先々週、司法書士が幹線道路でダンプカーに轢かれ死んだ。一見何の事件性も関係もない3人の残された持ち物からは新興宗教「聖浄心会」のチラシが発見された。謎の教団が事件に関与しているのか。警視庁捜査一課「特殊班4係」の極秘捜査開始。 集団心理の機微をうがつ、骨太社会派ミステリ。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。あらすじを見て面白そうだったので「本が好き」で献本申し込みしました。

帯に「読者は3回騙される!」と書いてありました。こんな風に書かれるとつい身構えてしまいますよね??何かある度に「ここが騙しなのか?」なんて疑いながら読みました。

始めはちょっと入りにくい雰囲気なのですが、高階が本格的に潜入した辺りからは一気に面白くなって引き込まれていく感じがしました。ずっと肩に力が入りながら読んでいく状態が続き、何度か分けないと疲れてしまいました。

ドラマとかで、こっそり忍び込んで何かを探し出す・・みたいな場面ではつい目をそらしてしまうくらい蚤の心臓を持つ私としては、潜入捜査官の話はドキドキが止まらなくなってしまうんですよね。


潜入先は、新興宗教「聖浄心会」。なんだかありそうな名前ですね。キリスト教と仏教の良いとこどりしたような宗教。ってそのまんまやん!と突っ込みを入れたくなるような名前です。

宗教の内容としては何とも薄っぺらい教え!と思うのですが、人間って弱いのに強がるくせがあるせいで、心が折れやすくてつぶれやすい。だからこんな薄っぺらい宗教でも心に訴えかけるような何かがあればはまってしまうのはわかる気はします。

この教団が殺人に関わっているのか?というのが一番の謎なのですが、それよりも教祖の存在すらも謎。どんな教団でも教祖って大事で、その人物を全面に押し出して崇め奉るようにして成り立っていくものだと思うのですが、「聖浄心会」はほとんどの人が教祖を見たことがないという。

まあそのシステムのお陰(?)で謎は深まるし、事件も起きるし、潜入しやすいし・・となるわけですが。


殺人の動機と犯人については、同情はしませんが辛すぎて、読み終わってからもしばらく心が痛い感じがしました。安易な気持ちで起こした事件が色んな人の人生を狂わせてしまう。本当に辛い事件でした。

決して後味の良い話ではありませんが、最後まで楽しめました。楽しめた、と書くのがためらわれるような内容なので難しいですが。


社会派ミステリ、というよりも警察小説が好きな人なら楽しめるかと思います。後味は悪いので、口直しの本を用意してから読まれることをお勧めします。


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タグ:新宮広明

2016年06月22日

天野頌子「よろず占い処 陰陽屋猫たたり」

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 天野頌子 著
 「よろず占い処 陰陽屋猫たたり」
 (ポプラ文庫ピュアフル)


傷心の妖狐高校生、沢崎瞬太の夏休みは今年も補習とともに始まった。まったくやる気の出ないなか、陰陽屋に持ち込まれたのはアラフォー女子の恋愛相談。冷たい対応の店主安部祥明に対して、やけに相談者に感情移入する瞬太だがその理由は・・?また、行方をくらましていたバーテンダー葛城が帰ってきた。頼まれていた人捜しにも進展があり、化けギツネの仲間にぐっと近づいた瞬太たちなのだった。すっかりおなじみになった珍妙コンビの人気シリーズ第七弾!−裏表紙より−


シリーズも7作目になり、このほのぼの感に飽きて来てしまいました・・。

でも本当はまだ続くんですよね〜。

とりあえず、瞬太の仲間が出てきそうで出てこないまま進んでいきますし、片思いの相手との関係については「もうあきらめたら?」と冷たく思ってしまうくらいどうでもよくなっていますし・・。

今回もあまり大きな進展がないまま終わってしまいました。

瞬太の留年問題だけは何とかクリアできましたけど、まだまだ油断禁物です。

このシリーズはどうなったら終わりになるんでしょうね??ゴールが見えなくなりました。


続きはどうしようかな?? 

保留にしておきます。


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タグ:天野頌子

2016年05月17日

ヒキタクニオ「触法少女」

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 ヒキタクニオ 著
 「触法少女」
 (徳間文庫)


幼い頃、母親に棄てられた過去をもつ深津九子。児童養護施設から通う学校では、担任が寄せる暗い欲望を利用して教師を支配していた。同じクラスの西野も九子の下僕だし、里実からは憧れの対象として崇められていた。ある日、母親の消息を知るチャンスが巡ってきた。運命は激しく動き出す。母親なんていらない。戦慄だけでは終わらない、読者の心を震わせる書下し長篇完犯罪ミステリー!
−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

帯に「人を殺しても罰せられない魔法 それが刑法第41条」と書いてあったので、未成年しかも10代前半くらいの少女が殺人を犯す物語だろうと想像できていましたが、始めから終わりまでなかなか暗い内容でした・・。


主人公の九子は、母親に棄てられた少女。父親のことも知らずに育ちました。彼女は見た目がかなり美人らしく、それを自分でもわかっていてうまく利用して暮らしています。

担任や同級生の男子を手玉にとる感じはゾッとしました。中学生でこんな状態だったら大人になったらどうなるんだ!?と心配してしまいました。


幼い頃に虐待されて育つとこうなってしまうのか・・と思うと、かわいそうになるのと同時に親に対して激しい怒りを感じました。

人を殺すことはいけない、でも殺したい気持ちになるのはわからなくもない、そんな気分にさせられました。私は不自由なく幸せに育ったので、九子の気持ちなんて本当はわからないとは思います。でも自分がもしこんな目にあったら・・・と考えると、想像するだけでも泣けてきます。

虐待された子どもがみんなこうなるわけではないでしょうが、やはり心の傷は大きいでしょう。・・なんて、私が書いても何の説得力もないんですよね。

感想が書きにくい作品です。


単純に、完全犯罪を描いただけではなく、意外などんでん返しのようなものもあって、最後まで気が抜けない展開でした。

ただ、最後まで読み切っても、結局誰も救われていないよな・・と思うと悲しい気持ちになりました。


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2016年04月21日

長岡弘樹「教場」

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 長岡弘樹 著
 「教場」
 (小学館文庫)


希望に燃え、警察学校初任科第九十八期短期課程に入校した生徒たち。彼らを待ち受けていたのは、冷厳な白髪教官・風間公親だった。半年にわたり続く過酷な訓練と授業、厳格な規律、外出不可という環境のなかで、わずかなミスもすべて見抜いてしまう風間に睨まれれば最後、即日退校という結果が待っている。必要な人材を育てる前に、不必要な人材をはじきだすための篩。それが、警察学校だ。−裏表紙より−


この作家さんの作品を読むのは3作目。話の舞台は警察学校で、生徒たちにスポットを当てた連作短編になっています。

この作家さんが描く人物は、謎の行動をすることが多く、しばらく「何してるの?」と疑問がいっぱいになります。そして、最後になぜこんな行動をとったのかが明かされて「なるほど!」となるのです。

今回は教官の風間がそのタイプの人で、彼の行動一つ一つが謎だらけでした。登場の仕方からして謎な人でしたし。でも実は生徒のことを色々考えていることがわかり、感動することが多かったです。ただ、今までと違ってそこまで温かい人でもなくて、切り捨てる所は切り捨てる所がちょっと冷たい気もしました。

でもそこまで厳しくして無理そうな人はサッサと切り捨ててあげた方が本人のため、ということもあるでしょうけど。警察官という自分に厳しくいないといけない職業ですから余計にそうなのかも。


少しのミスも許されない環境で過ごす生徒たちのストレスは計り知れないもので、教官が見ていない所で生徒同士でもめるのは仕方ないことなのかもしれませんが、中には仕返しの仕方がエグイ物もあって、読んでいて顔をしかめることもありました。

障害が残るようなやり方はどうなんだ!?と思いつつも、やられた方の心の傷も深いだろうし、何とも言えない後味の悪さもありました。

最後の話では、脱落者もいましたが、卒業生たちには警察官として活躍していくであろう未来が見えてうれしくなりました。

新たな学生たちも入校してきて、彼らにもまた問題が起こるのでしょうが・・。


それにしても、警察官ってみんなこんな過酷な生活をしたのですかね?? なのに、たまに不祥事が起きるのはなんでだろう?すごく不思議です。これを乗り越えられたなら、その後の生活もきちんとできそうなのに。やはりストレスのせいなのか?

それだけ難しく厳しい職業ってことでしょうか?


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タグ:長岡弘樹

2015年12月11日

丸山正樹「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」

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 丸山正樹 著
 「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」
 (文春文庫)


仕事と結婚に失敗した中年男・荒井尚人。今の恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一の技能を活かして手話通訳士となる。ろう者の法廷通訳を務めていたら若いボランティア女性が接近してきた。現在と過去、二つの事件の謎が交錯を始め・・・。マイノリティーの静かな叫びが胸を打つ。衝撃のラスト!−裏表紙より−


初めましての作家さんです。読書メーターで知った作品なのですが、あとがきによると読書メーターで人気が出たそうです。なるほど・・その流れに乗ったわけですね。

内容が面白そうだと思ったのと、手話の世界に少し興味があったので読んでみたわけですが、知らないことがいっぱいあって驚きました。

まず、手話に種類がいくつかあるということ。日本と海外では違う手話なんだろうとは思っていましたが、まさか日本語の中でも種類があるとは。しかも手話通訳の人と、ろう者が使う手話が違うとは!

ろう者はより一層苦労して理解しているのか、と思うとなんでこんな状態になったのか?不思議でなりません。

確かにろう者が使う「日本手話」は顔の表情や眉の上げ下げなんかでも表現するということなので、健常者には難しいのでしょうが。


そして、題名にも入っている「デフ」という言葉も知りませんでした。ろう者のことを Deaf と呼ぶそうです。


更に、この物語の主人公・荒井もそうなのですが、「コーダ」という言葉。これも知りませんでした。Children of Deaf Adults の頭文字を取って付けられた言葉で、「聞こえない両親から生まれた聞こえる子ども」だそうです。

このコーダの孤独が細かく描かれていて、読むのが辛い場面もありました。1人聞こえると大事にされるかと思ったらそうでもないんですね・・。そうか、異質な物になるのか・・と妙に感心してしまいました。


主人公が暗い過去をもっているせいで、全体的に暗い雰囲気が漂っている作品ではありますが、知らない世界を知ることができる喜びと、ミステリになっているので、どんな結末になるのかが気になることもあって、次々と読み進めることができました。

「法廷の手話通訳士」という副題のわりには、あまり法廷のシーンが無かったのが残念ではありますが、もしかしたらまた続編というか、シリーズ化でもして書いてくれるのかな?と期待してしまいました。


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タグ:丸山正樹

2015年12月08日

大山淳子「猫弁と魔女裁判」

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 大山淳子 著
 「猫弁と魔女裁判」
 (講談社文庫)


事務所に来ない。最愛の婚約者との挙式の相談もすっぽかした。天才弁護士・百瀬は、青い瞳をした女性国際スパイの強制起訴裁判にかかりきりになっていたのだ。それはまさか、幼い百瀬を置き去りにしたあの人? 百瀬によって幸せをつかんだみんなが彼の力になろうと立ち上がる。人気シリーズ、涙の完結!−裏表紙より―


とうとう最終巻。最終巻って寂しくて、読みたくない物ですが、このシリーズは読みたいと思いました。早く読んで、どんな結末を迎えるのか知りたかったです。

まあ、思った通りの展開だったかな? 特に涙涙で大変ってことも無かったですし、それなりに泣けて、それなりに笑えて、怒って、ふんわり良い感じの所に着地した感じはしました。

本当にこの人を旦那にして良いの?という思いは消えませんが、まあ亜子ならうまくやっていけるかな?とも思えます。亜子じゃないと無理かも。その辺の所がわかっていない百瀬には最後までイライラさせられました。

やっと母親も登場し、でも特に母と息子の感動の再会!というわけではなく、さらりと終わる所も、このシリーズらしい気がしました。

今回の話で良い味を出していたのは、亜子のお父さん。娘を嫁に出す父親としての複雑な心境を色々と語ってくれていて、亜子とのやりとりは特に感動しました。

結局最後まで、場面の途中で視点が変わっていくのが気になってしまい、時々集中できない部分があったのが残念でした。

でも最後まで百瀬の話が読めて、彼の人生の一部が見られて良かったです。

またいつか続編などが出たら読もうと思います。亜子との生活の様子も見てみたい気がします。ちょっと怖いですが・・。


<猫弁シリーズ>
「天才・百瀬とやっかいな依頼人たち」
「猫弁と透明人間」
「猫弁と指輪物語」
「猫弁と少女探偵」


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タグ:大山淳子

2015年08月27日

E・J・コッパーマン「海辺の幽霊ゲストハウス」

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 E・J・コッパーマン 著
  藤井美佐子 訳
 「海辺の幽霊ゲストハウス」
 (創元推理文庫)


ニュージャージーの海辺に建つ古い屋敷をリフォームしてゲストハウスにし、9歳の娘メリッサと新生活を始めようとしていたシングルマザーのアリソン。だがひょんなことから、屋敷に取り憑いている前オーナーと私立探偵の幽霊が見えるようになってしまう。彼らから、自分たちの死についての調査を手伝ってほしいと頼まれたのだが・・。明るく楽しいコージーミステリ・シリーズ!―裏表紙より―


あらすじを読んで面白そうだったので買って読み始めたのですが、どうも進まない・・。いつになったら読み終わるのか?と自分でも呆れてしまうくらいになりました。


まず、シングルマザーとしてがんばるアリソンは、明るくて面白い人のように感じていたのに、愚痴が多くて勘も鈍い人だとわかってきて、だんだん興味を失っていったのも原因の一つです。別れた夫のことを「豚野郎」と呼んでいる、という記述があるのに、どうしてそんな呼ばれ方をするのか?がよくわかりませんでした。でも本人は「良いあだ名を付けた!」と喜んでいる様子。まあ、まだ1作目ですから細かく書けていないだけかもしれませんが。

そして、何よりも肝心な幽霊たち・マキシーとポールが魅力的ではない! 自分たちが死ぬことになった事件を調べてほしいと依頼する所まではわかりますが、幽霊ってこんなに我儘なの!?と思うくらい、自分のことばかり。

アリソンが最後のチャンスだと言いつつ、アリソンの人生については後回しにしてほしいとあからさまに思っていて、調査を優先するように何度も要求しますし、マキシ―に至っては、アリソンがリフォームした部分を壊していくという暴挙にまで出ます。

自分の家を改装されるのが嫌なのはわかりますが、そうやって工事を遅らせれば遅らせるほど、調査に時間をかけられなくなるのに、そんなこともわからないのか!とイライラします。


始めの方からずっと、事件の調査をしているわりには、展開がなかなか無くて、盛り上がりがあったと思ったらすぐにまた平凡な毎日が続いて・・という繰り返しで、怠い場面が多かったのも、読み終わるのに時間がかかった原因だと思います。

これからどうなっていくんだろう?という緊張感や、ワクワク感があまりありませんでした。

娘のメリッサと、アリソンの母親のある秘密が明かされてからは面白くなり、2人が出てくる場面は楽しく読めました。


幽霊たちの事件は解決したので、シリーズ2作目からはアリソンの周りで起きる事件を調査していくのでしょうから、そうなればもう少し面白い展開もあるかな?と思います。

これは、2作目以降に期待かな??


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2015年07月27日

芦原すなお「ミミズクとオリーブ」

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 芦原すなお 著
 「ミミズクとオリーブ」
 (創元推理文庫)


讃岐名物の「醤油豆」。焼いたカマスのすり身と味噌をこね合わせた「さつま」、黒砂糖と醤油で煮つけた豆腐と揚げの煮物。カラ付きの小海老と拍子木に切った大根の煮しめ。新ジャガと小ぶりの目板ガレイ(ぼくらの郷里ではこれをメダカと呼ぶ)の唐揚げ・・・次々と美味しいものを作るぼくの妻は、なんと名探偵だった! 数々の難問を料理するそのお手並みを、とくとご賞味あれ。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。どんな作家さんか知りませんが、ある程度年齢を重ねた方かな?と思うような文章でした。優しい温かな文章なのですが、私にはちょっと入り込みにくい感じもありました。


「ミミズクとオリーブ」「紅い珊瑚の耳飾り」「おとといのおとふ」「梅見月」「姫鏡台」「寿留女」「ずずばな」の7編収録されています。

大抵の話が、作家をしている“ぼく”の元に事件が持ち込まれて、それをぼくの妻が解決していく、という展開になっています。奥さんは「事件の起きた現場を見たくない」と言うので、ぼくが代わりに事細かく見て帰って報告し、それを聞いてサラッと解決します。いわゆる安楽椅子探偵ですね。

この奥さんは、あらすじの通り料理がものすごく上手で、しかも着物の仕立てなんかもこなしてしまうような、昔の奥さんという感じの女性で、旦那さんを励まし、支えていく鏡のような人なんです。

繊細な心の持ち主でもあります。男性ならこんな女性が奥さんになってくれたら・・と憧れるだろうと思えるような女性です。しかも頭も良いんですよね。


それに比べて、主人の方は酒を飲んで、作家の仕事はいつしているの?と心配になるくらい常にダラダラしているような人。こういう頼りない人にはしっかり者の女性が似合うのかもしれません。


夫婦の生活ぶりや語り口などを読んでいると、昭和初期くらいの話かな?と思えるのですが、実はそれほど古い話ではないんですよね。表紙の奥さんも着物を着ていますし、いかにも日本家屋のような家ですし。なのに“携帯電話”とか出てきてびっくりしました。事件の捜査方法も細かい科学的な検査が出来ていましたし。その辺でも違和感がありました。


名探偵の夫である“ぼく”の目線で全てが語られるのもあまり好きではありませんでした。推理部分ではなるほど、と思える部分もありましたが事件の背景や、それに関わった人たちの人生などにあまり触れられていないので、全体的に浅くて軽い気がしました。


物語の雰囲気は良いんですけどね〜。シリーズ化しているようですが、続きを読むかどうかは保留にします。


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タグ:芦原すなお

2015年07月03日

友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」

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 友井羊 著
 「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」
 (宝島社文庫)


店主の手作りスープが自慢のスープ屋「しずく」は、早朝にひっそり営業している。早朝出勤の途中にぐうぜん店を知ったOLの理恵は、すっかりしずくのスープの虜になる。理恵は最近、職場の対人関係がぎくしゃくし、ポーチの紛失事件も起こり、ストレスから体調を崩しがちに。店主でシェフの麻野は、そんな理恵の悩みを見抜き、ことの真相を解き明かしていく。心温まる連作ミステリー。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

ネットでの評判が良くて読んでみました。・・が、期待値が高すぎたせいか、そこまでお気に入りにはならず、残念です。

まず、1話目から引っかかってしまったのは、登場人物の名前と人物がわかりにくかった所です。明らかに私の理解力の低さが悪いのでしょうが、名字で書いたり、名前で書いたりされてしまったせいもあって、誰が誰なのか、先輩後輩の関係性もわかりにくく、何度も前に戻って見直すことがありました。

日常の人が死なないミステリーは大好きですし、美味しそうな料理が出てきたら更に最高!と思うタイプなのですが、謎解きをするシェフの人柄が把握しきれなかったせいで、あまり魅力を感じられませんでした。

シェフの娘さんの露ちゃんはかわいかったんですけど。彼女がもっと活躍してくれたら楽しめたかもしれません。なので、彼女が謎の中心となった話は楽しく読めました。

最終話で、シェフの過去が明かされてびっくりしました。そういう過去を持つような人とは思えなかったので。もう少しそういう雰囲気がそれまでに出ていたら好感が持てたのかもしれません。


でも、ネットでは評価が高かったので、こんな感想になったのは私が原因だとは思います。出てくるスープは美味しそうなんですけどね〜。

シリーズとなって続いていきそうな雰囲気で終わりましたが、続きを読むかどうかは保留にします。


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タグ:友井羊

2015年05月28日

「晴れた日は謎を追って がまくら市事件」

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 伊坂幸太郎・大山誠一郎・伯方雪日・福田栄一・道尾秀介 著
 「晴れた日は謎を追って がまくら市事件」
 (創元推理文庫)


不可能犯罪ばかりが起こる街、蝦蟇倉市。賑やかな商店街や老婦人が営む和菓子屋があり、いわくつきの崖や海を望むホテルがあるこの街は、一見のどかなようで、どこかおかしい。蝦蟇倉警察署には“不可能犯罪係”が存在し、スーパーの駐車場では怪しい相談屋が混む所を開いている。この街の日常は、いつも謎に彩られている。第一線で活躍する作家による、不思議な街の道案内。−裏表紙より−


不可能犯罪ばかり起こるという蝦蟇倉市を舞台にした小説ばかり5話収録されています。道尾秀介「弓投げの崖を見てはいけない」、伊坂孝太郎「浜田青年ホントスカ」、大山誠一郎「不可能犯罪係自身の事件」、福田栄一「大黒天」、伯方雪日「Gカップ・フェイント

色々な作家さんが書いているわけですが、さり気なく他の話のことにも触れられていたりして、関連性も楽しめるようになっています。

どれも面白かったですが、一番気に入ったのは「浜田青年ホントスカ」です。この作家さんだけ読んだことがあるので、馴染やすかったのもあるかもしれません。

どんでん返しが多くて、始めから何気ない描写にも気を配って読んでおかないと、最後に置いて行かれる感じになるのは、伊坂さんらしい作品です。彼らが結局どうなったのか、その後を想像するのも面白いかもしれません。


他に読みやすかったのは福田栄一「大黒天」です。初めて読んだ作家さんでしたが、私には読みやすかったです。実は名前も知らなかった作家さんなので、今度からは本屋さんでも気を付けてみておきたいと思います。話の内容も面白かったですが、登場人物のキャラクターが入りやすかったです。


「不可能犯罪係自身の事件」も面白かったです。これは、キャラクターよりもまさしく不可能犯罪!という密室での殺人を解き明かす部分がミステリ好きにはたまらない内容でした。複雑だったのですが、あざやかというか、視点を変えるだけで解決できる、実は簡単な事件だったというオチも好みでした。もう少し人物が魅力的なら更に面白かったのでしょうが・・。


初めて読む作家さんも多く、興味が出た方もおられたので、新たな出会いができて良かったです。またアンソロジーも読みたいです。


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