2021年07月28日

天野節子「氷の華」

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 天野節子 著
 「氷の華」
 (幻冬舎文庫)※電子書籍


専業主婦の恭子は、夫の子供を身籠ったという不倫相手を毒殺、完全犯罪を成し遂げたかに思えたが、ある疑念を抱き始める。殺したのは本当に夫の愛人だったのか。罠が罠を呼ぶ傑作ミステリ。−出版HPより−


初めましての作家さんです。

専業主婦で、子どもがいなくて夫と二人暮らしで、更にはお手伝いさんまでいるという何とも羨ましい生活をしている恭子。結婚前からお嬢さまだったので、当然のように優雅に暮らしていたところ、夫の不倫相手だと名乗る女性から電話がかかってきます。

恭子が料理が出来ないことや、子どもが出来ないことに対して夫が愚痴をこぼしていたと聞かされた上に、自分は妊娠したと告げられました。

普通なら泣きわめいて、夫に怒鳴り散らして、大喧嘩になるでしょうが、ちょうど夫は海外に出張中でそれも出来ず、また恭子の性格上もし夫がそばにいても大げんかになることはなかったでしょう。

自分に子どもがいないのに、不倫相手に子どもが出来たことがどうしても許せなかった恭子は、愛人宅のカギを夫の部屋から見つけ出し、留守中に忍び込みます。

この辺りの恭子の行動は本当に冷静で、持ち出してはいけない物は持ち出さず、自分のアリバイも完ぺきに作り上げていました。完全犯罪が成し遂げられたとある意味安心していたのですが、事件発覚後、犯罪が見つかるのではないか?という心配ではない疑惑が浮上します。

それは「私が殺したのは本当に不倫相手だろうか?」ということでした。

不倫相手宅に飾ってあった夫との2ショット写真で確認していますし、夫の字で記入された母子手帳も確認したというのに、どんどん浮かんでくる疑惑。

警察とのやりとりや帰って来た夫との話の中でその疑惑は大きくなっていくばかりでした。


読者としても、これはどうやらはめられたようだぞ、とは思うのですが誰にどうやって?という部分が解決されず、気になったまま話が進んでいくので早く解決してほしくて一気読みです。

恭子もそのうち気づくわけですが、その時に起こす彼女の行動はなかなかでした。プライドが高いと大変ですね・・・。

サラッと離婚して終了というわけにはいかないようです。

真犯人の執念にも驚かされます。やっぱり女性同士って怖いわ〜。


結末はとても後味が悪いので、大きな声でお勧めしにくいですが、それまでの展開はミステリ好きにはたまらない作品だと思います。


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タグ:天野節子

2021年07月15日

角田光代「紙の月」

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 角田光代 著
 「紙の月」
 (ハルキ文庫)※電子書籍


ただ好きで、ただ会いたいだけだった。わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が1億円を横領した。正義感の強い彼女がなぜ? そして――梨花が最後に見つけたものは?! あまりにもスリリングで狂おしいまでに切実な、角田光代の傑作長篇小説。各紙誌でも大絶賛され、ドラマ化もされた第25回柴田錬三郎賞受賞作が、遂に文庫化!−出版HPより−


この作家さんの作品は「八日目の蝉」以来です。同じようにずっしりと重い内容で、女性は共感しやすいかもしれません。私は共感出来ませんでしたけど。


主人公は梨花という41歳の女性。夫と二人暮らしで専業主婦でしたが、パートとして銀行で営業の仕事を始めました。

専業主婦で良かったのですが、子どもが出来なかったことで時間を持て余してしまったことと、社会から置いて行かれている感じがしてしまったことが理由で働くことにしました。

その気持ちは同じ女性として何だかわかる気がします。結婚するまでは「いつ結婚するの?」と聞かれ続け、結婚したら「いつ子どもが出来るの?」と聞かれ続ける女性。もちろん男性もあるのでしょうが、女性は特に「結婚して子どもを産んで一人前」という昔からの既定が強いと思います。

でももし子どもが出来なかったら、専業主婦でいるのも何だか違う気がします。もちろんそれで満足な人もいるでしょうが、梨花は満足できない女性でした。

パートとはいえ、銀行員として色々なお宅へ行っては定期口座などを作ってもらったり、口座を新設してもらったりして、お客様からほめてもらえると充実した毎日が送れるようになります。

少ないながらも自分で働いて手に入れた給料は特別な思いになりますね。たまには夫にごちそうしてあげようと、ちょっとしたお店に連れて行くのですが、そこでの夫の反応から梨花の気持ちに変化が。

この部分はとてもよくわかりました。この夫は自分では遅れた感覚の持ち主だとは思っていないでしょうけど、女性からしてみればかなり遅れている感覚を持っていて、「女性よりも男性の方がたくさん稼げる」とか「女性よりも男性の方が稼いで養うのが当たり前」とか「女性は男性に食べさせてもらわないと生きていけない」とか思っているわけです。

でもそれを言っては「感覚がズレている」と思われるのでは?というのはわかっているので直接的な言い方はしません。だから遠回しに「お前より俺が上だ」と言ってくるわけです。

梨花としてみれば「それは当然でしょ?パートなんだから、夫が働いてくれないと食べていけないに決まっている」と思っているのですが、わざわざ言われることに違和感を覚えます。


そういう小さい出来事からどんどん話が展開していき、気付けば銀行員という立場を利用した大事件を起こすことに。

犯罪に手を染めていく理由も動機も何だか共感出来なかったので、後半はひたすら「何でこうなったの?」と疑問に思いながら読み進めました。


話の展開の仕方が、時系列バラバラになっているのも読みにくかったです。始めから梨花という女性が事件を起こしたと知って、過去に彼女と関わりのあった人たちがどういう気持ちになっているのか、また彼らが現在どんな生活を送っているのかなどが描かれていて、そういう場面っているのかな?と疑問でした。

それよりも、梨花の夫からの視点があったら面白かったのでは?と思います。それを書いてしまったら想像する部分が減るのがよくないのかもしれませんが、夫の存在がどんどん薄くなり、事件発覚後に全く登場しなくなるいことには違和感がありました。


面白かったとは思うのですが、色々不満な点もある作品でした。
とりあえず、人というのはとても弱い存在で、ちょっとしたきっかけさえあればいくらでも転落していくことが出来るということはよくわかりました。現実世界でニュースになる横領事件の犯人もこんな小さな出来事がきっかけで起こしているのかもしれません。そう思うと誰もが犯罪者になる要素があるんですよね。ちょっと怖くなりました。


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タグ:角田光代

2021年07月09日

安東能明「撃てない警官」

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 安東能明 著
 「撃てない警官」
 (新潮文庫)※電子書籍


総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。−出版HPより−


初めましての作家さんです。

大好きな警察小説ですし、文章自体は読みやすかったのですが、最終話を残して挫折してしまいました。

連作短編になっていて1話ずつ一応解決はするのですが、ずっと始めの事件を引きずったまま話が進みます。まあそれが連作短編なわけですが。

その引きずり方がしつこいというか、確かに上昇志向が強い人なら悔しいでしょうけど、いつまでも言わなくても良いのに、と思ってしまいました。

しかも引きずり方が、自殺した部下を救える方法はなかっただろうか?という後悔ではなく、その責任の所在は誰にあったのか?にとらわれているのが気に入りませんでした。

人の命よりも出世??

私には理解できない考え方でした。


主人公の柴崎がそんな感じで、周りの人たちも似たような出世欲の塊ばかりで好きになれず。

残念でした。



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タグ:安東能明

2021年06月14日

行成薫「僕らだって扉くらい開けられる」

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 行成薫 著
 「僕らだって扉くらい開けられる」
 (集英社文庫)※電子書籍


もしも突然「超能力」に目覚めたら? 誰もが抱いたことのあるそんな妄想が、現実になってしまった5人。でもその能力は「触らず物を動かせる(ただし10cmだけ)」、「相手を金縛りにできる(ただし自分の頭髪が抜ける)」といった、役立たずなものばかり。そんな彼らが、謎の誘拐事件に巻き込まれ……。さえない僕らだって、きっとできることがある! W最弱W超能力者たちによるW最強Wエンタメ小説。−出版HPより−


テレキネシス(念動力)、パラライズ(金縛り)、パイロキネシス(発火能力)、サイコメトリー(精神測定能力)、マインド・リーディング(読心術)、テレパシー(精神感応)の能力に目覚めた6人の物語です。

なんて便利そうな力!と憧れてしまいそうですが、実はそれぞれの能力は色々と欠点があり、読み進めると結構ショボいと思ってしまいます。

まず、テレキネシス。念じれば物が動く能力で、リモコン要らずで便利そうだと思いますけど、実は10センチしか動かせません。しかも重い物は無理で軽い物だけ。例えば、カウンターで食べるラーメン店などで、隣の人の前にあるラー油が取りたい、でも知らない人の前に手を伸ばすのはちょっと・・という時に、この力を使ってちょっと自分に引き寄せてから取る、という感じで使えるのですが。

う〜〜ん、要りますか?この能力。「すみません・・」と声を掛けて取ればそれでいい気がしますよね。


パラライズは、相手に触れて金縛りにさせることができる能力なのですが、これは力を使う度に毛がごっそり抜けるという弊害が。ひえ〜!相手を金縛りにしたいような状況って今まであったことがないので、これは本気で要らないかも。


パイロキネシスは、念じれば発火させることが出来る能力です。ただ、感情によって火力が変わるので、怒りに任せると火事になりかねません。でもまあこれは訓練すれば何とかコントロール出来るようになるかもしれないな、とは思います。ただ、この能力は要らないかも。日常でどうしても火がつけたいのに点ける物がなくて困る状況もないので。


サイコメトリーは、物を触ったら、それを直前に触っていた人の気持ちがわかる能力です。これはこれで面倒な感じはしますけど、ここに出てくる能力者は極度の潔癖症で、誰が触ったのかわからない物に触れるのがかなりのストレス。そういう状況だとますます要らない能力な気がします。


マインド・リーディングは、読心術なので、相手の目を見れば考えていることがわかります。使い方によっては便利かも?あまり知りたくないこともありますけど。でも自分に対して負の感情を抱いているのを知ってしまうと対人恐怖症になりそうです。実際、ここに出てくる能力者は学校の先生でしたが生徒たちの心の声を聞いてしまって立ち直れなくなり引きこもりになってしまいました。


テレパシーは、相手に自分の感情を声に出さずに伝えられる能力です。ここに出てくるのは子どもだったので、全くしゃべることが出来ないという状況になっていました。まあこれは訓練すれば治りそうですね。この能力も要らないな〜。伝えたくないことの方が多い気がするので。



そんな色んな問題のある超能力者たちが、1〜5話ではそれぞれが日常においてどんな能力の使い方をしているか?や、ちょっとした事件を解決したり、問題の解決に乗り出したりしている様子が描かれていて、独立した短編でありながら同じ町や同じ店、共通した人物が出てきて繋がっている連作短編の状態で話が進みます。

超能力者たちは最終話までお互いの存在を知らずに生活していますが、最終話で一致団結します。

あらすじにもあるように、謎の誘拐事件に巻き込まれていくわけです。そこで、彼らのほんのちょっとした力、問題点の多い力を使って解決していきます。題名の「僕らだって扉くらい開けられる」という状況になるわけですね。


なぜ、一つの町に突然超能力に目覚める人が続出したのか?も明らかにされ、今一つ自信が持てなかった彼らが前向きに生きていく大きなきっかけとなりました。



笑える部分の多い小説ですが、シリアスな部分もあり、奇想天外な展開に目が離せない状態でした。終わって見れば何だったんだ!?って感じですけど、重い小説が続いた時なんかに箸休めにぴったりな作品でした。


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タグ:行成薫

2021年06月10日

斎藤千輪「ビストロ三軒亭の奇跡の宴」

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 斎藤千輪 著
 「ビストロ三軒亭の奇跡の宴」
 (角川文庫)※電子書籍


今回の訳ありゲストは――。【フルーツ尽くしのコースを注文する怪しい女性二人組】【謎の暗号文に悩むアイドル志望の少年とその母親】【給仕にダメ出しを続けるギャルソン・正輝の父親】お客様でにぎわう中、スタッフの一人が突如倒れ、三軒亭が大ピンチに! 名探偵ポアロ好きの凄腕シェフ・伊勢の切ない過去や、主人公のギャルソン・隆一のさらなる成長も描かれる、大好評ビストロ三軒亭シリーズ第三弾!−出版HPより−

結局2作目を飛ばして読みました。

サラッと読めてあまり深く考えずにすむので快適な読書時間を過ごせます。

ただ、その分記憶にも残りにくい・・

感想を書けるほど覚えていないので、いつか再読して感想を書きます。


<ビストロ三軒亭シリーズ>
「謎めく晩餐」


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タグ:斎藤千輪

2021年03月16日

柚月裕子「ウツボカズラの甘い息」

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 柚月裕子 著
 「ウツボカズラの甘い息」
 (幻冬舎文庫)


家事と育児に追われる高村文絵はある日、中学時代の同級生、加奈子に再会。彼女から化粧品販売ビジネスに誘われ、大金と生き甲斐を手にしたが、鎌倉で起きた殺人事件の容疑者として突然逮捕されてしまう。無実を訴える文絵だが、鍵を握る加奈子が姿を消し、更に詐欺容疑まで重なって・・・。すべては文絵の虚言か企みか? 戦慄の犯罪小説。−出版HPより−


ウツボカズラというのは、食虫植物の一種です。読み終わったら題名がしっくりくる内容でした。


物語はとある女性の日常の様子から始まります。他の人より精神的に辛そうではあるけれど、よくいる感じの専業主婦の日常で、彼女がどんな風に立ち直っていくか?が描かれていくのかと思ったら、次の場面ではいきなり殺人事件が。

その殺人事件の捜査をする警察の様子と主婦の日常が交互に描かれていて、それが少しずつ重なり合っていきます。

読み進めるうちに、きっと殺されたのはあの人だな、とかきっと犯人はあの人だな、とかわかってきて、全く関係なさそうな殺人事件と主婦がいよいよ関係してくるとちょっと嬉しくなってしまいました。

動機はまだわからないけど、まあ彼女が殺したんだろうと予測しながら読み進めると驚きの展開が。

犯人が違うというのは、私の推理力ではよくあることですけど、まさかそんなことが! という別の驚き。そうなると、彼女の人生があまりにも辛くて悲しくて、幸せな家庭なのになんでこんなに病んでいるんだろう?と疑問だったことも一気に解決しました。

彼女が壊れてしまったのも、こんな事件に巻き込まれてしまったのも納得です。

そこまで一気読み状態でした。


ただ、犯人がわかってからが慌ただしすぎたのが残念でした。もっとゆっくりじっくりと犯人の人生についても描いて欲しかったですし、犯人にたどり着くまでの警察の動きももっと知りたかったです。

ちょっと動機がわかり辛いというか、納得しかねました。


最後まで読んでも誰も救われない感じがして、後味悪かったです。事件解決までの疾走感は心地よかったので、最後さえもう少し細かければ・・・。


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タグ:柚月裕子

2021年03月03日

斎藤千輪「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」

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 斎藤千輪 著
 「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」
 (角川文庫)※電子書籍


三軒茶屋にある小さなビストロ。来る人の望みを叶える魔法のような店。料理は本格派、サービスは規格外。どんな事情の客も大歓迎。――ここ『ビストロ三軒亭』には、お決まりのメニューが存在しない。好みや希望をギャルソンに伝えると、名探偵ポアロ好きな若きオーナーシェフ・伊勢優也が、その人だけのオリジナルコースを作ってくれる、オーダーメイドのレストランなのだ。ひと月ほど前までセミプロの舞台役者だった神坂隆一は、姉の紹介でこの店のギャルソンとして働くことに。個性豊かな先輩ギャルソンたちに気後れしつつも、初めて挑んだ接客。だが、担当した女性客が、いろいろな謎を秘めた奇妙な人物であることを、隆一はまだ知らずにいた……。美味しい料理と謎に満ちた、癒しのグルメミステリー。−出版HPより−


この作家さんの作品は2作目。同じようにレストランの話です。

一応ミステリですが、日常の軽い謎なので、重い話の本が続いた時には良い気分転換になれるかもしれません。


「ビストロ三軒亭」は、本格的なフレンチが出てくるレストラン。普通のビストロとの違いは、決まったコース料理が無くて、お客のリクエストに応えて好みのコースを作ってくれる所と、担当してくれるギャルソンを指名できる所です。

オーダーメイドでコースを作ってくれるのはとても素敵ですね。この部分では、近くにあったら通ってしまうかも!と思うのですが、ギャルソンが・・。指名したくないわ・・と思ったら担当は新人になる確率が高いし、指名したら「ご指名ありがとうございます」って言われるし、苦手です・・。

気軽に楽しめるビストロ、となっていますが、ギャルソンが常にそばにいるだけで十分堅苦しいと思ってしまう私には向かない店かも。

でも料理はかなり美味しそうです。なので一度は食べてみたいかな?


個性的なギャルソンたちと、個性的なシェフが、やって来るお客さんのちょっとした謎を解き明かす展開です。美味しい料理を提供しながら、さり気ない会話や行動をヒントに謎解きしていくので、面白く読めました。

シェフにも何やら暗い過去がありそうな描写もあり、気になっていたのですが、最後にはすっきり解決してしまい、もっと引っ張らなくて大丈夫なのか?と心配になるくらいでした。

4話収録されていたのですが、印象に残ったのは3話目でした。ビストロが試食会を開いたときに来てもらった大食い女性3人の話です。食べることが大好きなのに、味覚障害になってしまう・・。私も食べるのは好きなので辛いだろうなと彼女の気持ちになって心が痛くなりました。人間って弱いなと改めて感じさせられた話でした。


間違えて3作目を購入済みなので、早く2作目を手に入れて読もうと思っています。とりあえず3作目を読んでも問題は無さそうですけどね。


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タグ:斎藤千輪

2021年02月19日

小田菜摘「平安あや解き草紙 その姫、後宮にて天職を知る」

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 小田菜摘 著
 「平安あや解き草紙 その姫、後宮にて天職を知る」
 (集英社オレンジ文庫)※電子書籍


時は平安。過去に入内の話はあったものの立ち消えになってしまい、婚期を逃したまま実家に居座っている藤原伊子(かのこ)。当時の結婚相手となるはずだった東宮は早世し、彼の息子が現在の帝である。ところが、ここにきてなぜかその帝が伊子の入内を希望してきた。彼は十六歳、伊子はその倍の年齢だ。いくらなんでも無理でしょう、と断るために出かけた先で、伊子が再会したのは十年前に別れた恋人、嵩那(たかふゆ)。彼との関係は誰にも知られていないけれど、処女ではない身で入内なんてできないと思っていたのだ。だが帝の熱烈な要請によって、尚侍として後宮に入ることになってしまった伊子に謎の人物からの脅迫文が届き…!? −出版HPより−


初めましての作家さんです。軽い文章で読みやすかったです。

ただ、登場人物の名前が覚えられなくて困りました・・。平安時代の話ですから、一人に対しての呼び方が山ほどあるんですよね。主人公はともかく、元彼も帝も、とにかく呼びかける時だけでも、言う人によって呼び方が変わりますし、説明文のときも違いますし、どれが誰のことなのか理解するまでに時間がかかりすぎました。登場人物の数はかなり少ないのでまだマシでしたけど。

それ以外の部分では、平安時代らしい(特に平安貴族の)しきたりも興味深かったですし、主人公・伊子の恋愛模様もちょっと笑える所があって面白かったですし、謎解きもあって楽しめました。


この時代は、十代どころかそれ以下の年齢から結婚することもあるので、伊子のように32歳はすっかりおばさんです。何度も「婚期を逃した」という描写が出てくるのが悲しいくらいです。今だったらまだ若いと言われるのに。

一夫多妻制ですから、女同士の確執もなかなかのものです。だれが帝の寵愛を受けるのか?という争いが醜いこと! まだこの話の中ではマシですけど、源氏物語のようにドロドロしてきたらギブアップしそうです。

更に面倒なことは、男女が面会するときには、御簾とか衝立とか扇子などで顔を隠さないといけないところ。父親と年頃になった娘でもです。恋仲になって初めてその衝立は外されるわけです。それでなくても、重くて長い着物を着て窮屈なのに、人に会うたびに色々と隠さないといけないなんて、面倒臭すぎます。

この時代に生まれていたら、もしも貴族だったら生きていけないな〜とか変なことを考えてしまいました。


このシリーズはすでに3冊出ているようです。続きを早めに読まないと、また名前がわからなくなりそう・・。でもちょっと別に続きは要らないかな?とも思ってもいるので、成り行きに任せようか・・。


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2021年01月08日

柚月裕子「朽ちないサクラ」

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 柚月裕子 著
 「朽ちないサクラ」
 (徳間文庫)


警察のあきれた怠慢のせいでストーカー被害者は殺された!? 警察不祥事のスクープ記事。新聞記者である親友に裏切られた……口止めした森口泉は愕然とする。情報漏洩の犯人探しで県警内部が揺れる中、親友が遺体となって発見された。警察広報職員の泉は、警察学校の同期・磯川刑事と独自に調査を始める。次第に核心に迫る二人の前にちらつく新たな不審の影。事件の裏には思いも寄らぬ醜い闇が潜んでいた……。−裏表紙より−


こういう警察小説を読む度に思うのは、警察という組織の情けなさ、レベルの低さです。まあ警察に限ったことではないんですけど、何か不祥事が起きたら何とかして隠そうとする考えは無くならないのでしょうね。


ストーカー被害にあっていた女性の訴えを退けた上に、その期間に職員慰安旅行に行っていたという信じられないことをした警察。それは絶対に隠したいでしょうが、なぜか一つの新聞社からスクープ記事が出てしまいます。

広報職員をしている泉が、友人の新聞記者に何気なく話した内容から記事にされてしまったと思い込み、問い詰めたのですが、絶対に自分がリークしたのではないと否定されてしまいます。

その友人が「思い当たることがあるから調べる」と言った後、遺体となって発見されてしまいます。始めは事故死と判断されたのですが、すぐに疑いがもたれ、捜査が始まることに。

自分のせいで友人が殺されたのでは?と感じた泉は担当刑事や同期の刑事、上司にも協力を求めながら独自に調査を始めます。


そして出てくるのが「サクラ」。人の名前ではなく、公安警察のことなんです。なるほど、確かに「朽ちない」ですし、「朽ちてはいけない」ですね。しかし、公安という組織は謎がいっぱいですし、出てくると結末がモヤモヤしがちで、何が正解なのかわからない状態になります。

人間の組織と思えない感覚です。「国」や「警察組織」のためなら何人か死んでも仕方ないやん!という考えで動くなんて、どういう神経になれば出来るのか。理解できませんし、理解したくもない感じです。ある意味、心を殺しているのでしょうね・・。


最後までモヤッとしていますし、結局誰が主人公?という状態でしたが、どうやら泉の物語だったようで、続編もあるそうです。文庫化される頃にまだ覚えていたら読もうかな?


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タグ:柚月裕子

2020年05月29日

太田愛「幻夏」

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 太田愛 著
 「幻夏」
 (角川文庫)

 
毎日が黄金に輝いていた12歳の夏、少年は川辺の流木に奇妙な印を残して忽然と姿を消した。23年後、刑事となった相馬は、少女失踪事件の現場で同じ印を発見する。相馬の胸に消えた親友の言葉が蘇る。「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」あの夏、本当は何が起こっていたのか。今、何が起ころうとしているのか。人が犯した罪は、正しく裁かれ、正しく償われるのか? 司法の信を問う傑作ミステリ。日本推理作家協会賞候補作。−裏表紙より−


修司、鑓水、相馬のトリオシリーズ第2弾。

前作では、修司が通り魔殺人事件に巻き込まれるところから話が始まり、3人ともそれぞれの立場でボロボロになりながら戦い抜いたのですが、今回は何となくのどかな雰囲気でスタート。

ある夏の、ある少年たちの日常が描かれます。でも最後には少年の一人、水沢尚が突然姿を消してしまいます。

そして23年後・・・。

少年の中の一人だった相馬が遭遇した少女失踪事件に、23年前の少年失踪時間との類似点を見つけ、もしかしたらあの事件も解決できるかもと立ち上がります。


修司は鑓水の探偵事務所で働いていて、23年前に失踪した少年の母親からの依頼で事件を調べ始めます。

トリオの再結成です!


尚が失踪したとされる現場に残されていた謎の印が、少女失踪事件の現場にも残されていたのですが、印の意味もわかりませんし、23年前と今回の関連もよくわかりません。

調べていく彼らの前に次々と新事実が。


失踪した尚の父親は、冤罪事件の被害者でした。自白を強要されて、裁判でも無実が証明できず、殺人の罪をきせられて服役していました。やっと真犯人が見つかったときにはすでに刑期を務め終えた後でした。

ろくに謝罪もされないままだった父親が尚の家の近くで殺されていたこともわかり、その事件との関連も疑われ始めます。


ネタバレになるので書きにくいですが、一つ謎が解明されたらまた次の謎、新事実が表れて、息をつく暇を与えないような展開が続きます。


前作は、大企業による隠蔽事件でしたが、今回のテーマは冤罪事件。

人が人を裁く難しさを改めて考えさせられますし、人を裁く人間がこんなにいい加減で良いのか!?と怒りがわく場面もたくさんありました。

とはいえ、人を殺害することに対して評価は絶対に出来ませんけど。

でも気持ちはわからなくもないとも思えて、何とも複雑な読了感でした。


始めから誰も自分や組織の保身を考えずに、事実だけを見つめて行動していたらこんなことにはならなかったのに・・と思うと悔しくてたまりませんでした。

彼が今後うまく立ち直ってくれることを願わずにはいられません。


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タグ:太田愛

2020年03月02日

今野敏・五十嵐貴久・三羽省吾・誉田哲也「警官の目」

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 今野敏・五十嵐貴久・三羽省吾・誉田哲也 著
 「警官の目」
 (双葉文庫)


ご存じ、萩尾警部補が殺人現場から消えた遺体の謎を追う・・「消えたホトケ」。父親と同じ警察官となった男の決意・・「汚名」。驚異的な運動能力の犯人を追跡する刑事たち・・「シェパード」。殺人事件を解決に導いた情報とは・・「裏切りの日」。豪華執筆陣による多種多様な警察小説を、ぜひ。−裏表紙より−


アンソロジーにしては珍しく読んだことのない話ばかりでした。

大好きな今野敏の作品も未読。ご存じ萩尾警部補って誰??という状況。もしかして読んだことあるのかもしれませんが、覚えていない・・。何せシリーズの多い方ですから。


とりあえず、読んだのがかなり前過ぎて、ほとんど内容を思い出せないので、またいつか時間が出来たら再読して感想をあげようと思います。


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2020年01月21日

本城雅人「騎手の誇り」

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 本城雅人 著
「騎手の誇り」
 (新潮文庫)


十二年前の落馬事故――。その真相を知るために、息子・和輝(かずき)も騎手となり、かつての父の好敵手で、不動のトップ騎手・平賀と同じ厩舎に入った。父は、本当は平賀に殺されたのではないか……。新人競馬担当記者・仁美(ひとみ)とともに事故の謎を追う中で、平賀のある秘密に気づいた和輝は、自らの身にも迫る危険を感じ取る。亡き父と息子の絆に涙する、長編ミステリ。『サイレントステップ』改題。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。ネットで感想を読んで面白そうだったので読んでみました。

はっきり言って、競馬には興味もないですし、馬券を買ったこともありません。でも、なぜか日曜日にはテレビで競馬中継を見ている・・。全く興味はないのですが、家族で見る人がいたもので。

馬のことも、騎手のことも、勝敗についても、レース内容についてもわかりませんが、見ていると走っている馬のきれいさには惹かれました。

無駄な肉のない細い足腰、なびく鬣はとても魅力的です。そして、蹄の音もカッコいい!

どの馬が走りそうかなんてことはわかりませんが、漠然と「きれいな馬だな」程度の感想は浮かびます。

騎手の乗り方も素敵です。ものすごく大変な職業だろうということはわかっていました。とにかく乗るときの姿勢が大変そう。その姿勢をレースの間保っておいて、更には鞭を振ったり、何よりも馬を手綱一つで操っているなんて!


そんな浅い知識しかない私が読んでもわかりやすい内容でした。

ある騎手の成長物語でありながら、彼の父親の死亡事故の真相を探るミステリでもあり、読みごたえもありました。

レースでは決してはかり知ることができない、裏の努力の部分もたくさん知ることが出来ました。

それぞれ属する団体があって、その中でも優秀な馬に乗れるのは1人だなんて・・。全く知らなかったので驚きました。


馬主からの要請によって、騎手も選ばれて、勝ち馬に乗る騎手は始めから決まっていて、成績の良い騎手は勝てる馬に乗れるということなんですね。

たくさん勝てる騎手は、環境にも恵まれるってことで、その他の騎手は馬を選ぶことも、レースの進め方を自分で選ぶことも出来ない。なかなか大変な世界です。

新人の頃は雑用に追われるし、勝ちを収めるのもかなり大変そうです。


ミステリ自体はまあそんな感じだろうという収まり方でしたが、必要だったかな?という感じもしました。ミステリはなくても、ただ一人の騎手の成長物語でも良さそうです。

競馬って、レースそのものよりも、裏側の方が楽しいのかもしれないと思うようになりました。


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タグ:本城雅人

2019年12月09日

山口恵以子「愛は味噌汁 食堂のおばちゃん3」

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 山口恵以子 著
 「愛は味噌汁 食堂のおばちゃん3」
 (ハルキ文庫)


オムレツ、エビフライ、豚汁、ぶり大根、麻婆ナス、鯛茶漬け、ゴーヤチャンプル―・・・昼は定食屋で夜は居酒屋。姑の一子と嫁の二三が仲良く営んでおり、そこにアルバイトの万里が加わってはや二年。美味しくて財布にも優しい佃の「はじめ食堂」は常連客の笑い声が絶えない。新しいお客さんがカラオケバトルで優勝したり、常連客の後藤に騒動が持ち上がったり、一子たちがはとバスの夜の観光ツアーに出かけたり―「はじめ食堂」は、賑やかで温かくお客さんたちを迎えてくれる。文庫オリジナル。−裏表紙より−


「歌と麻婆ナス」「寂しいスープ春雨」「愛は味噌汁」「辛子レンコン危機一髪」「モツ煮込みよ、大志を抱け」の5編です。


シリーズ3作目ですが、前作が昔の話に戻っていたので、進み具合は2作目という感じですね。

1作目からかなり間が空いてしまったので、人間関係がちょっと忘れている部分もありました。とはいえ、別に困ることもないですけど。ただ、勝手に二三さんの子どもが男の子だと思っていたので、女性だったことに戸惑いました。なんでそう思っていたのか・・??


今回も食堂にやってくるお客さんたちの色々な事情や謎を解決していく一子と二三、そしてアルバイトの万里。まあ基本的に万里はあたふたしているだけという感じですが。でも万里は料理の面でかなり戦力になってくれているので一子と二三は楽になってきたようです。

今までの定番メニューに加えて、万里の若い感性で新たなメニューも登場するようになった食堂は、ますますお客さんを増やしています。


どの話もあったかい雰囲気で癒されたのですが、特に「愛は味噌汁」では泣きそうになりました。

万里の同級生が店にやってくるのですが、学生の頃は男性だったはずの彼が、女性へと変わっていました。最近ではそういうことにも理解が得られるようになってきているとはいえ、身内となるとまだまだ簡単には受け入れられないようで、親に反対されてしまっています。

絶縁状態になっている彼女のために、はじめ食堂のみんなが手助けをしていきます。

もちろん、簡単に「良いよ」とはなりませんが、これから前向きに受け入れようとはしてくれるようで、安心できました。自分だったらどう思うのか?を考えながら読んでいました。



最後の話では、テレビの取材までやってくることに。肩に力が入ってしまう万里に、一子と二三は「いつも通りで良い」と声を掛けますが・・。

この話は万里の気持ちもわかるな〜と。若さゆえの力の入り方です。テレビとなると余計に気合が入るのはわかる気がします。

この取材でますますお客も増えそうです。


またドタバタの展開になることでしょう。次も読んでいくことにします。


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タグ:山口恵以子

2019年12月03日

柚月裕子「慈雨」

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 柚月裕子 著
 「慈雨」
 (集英社文庫)


警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。旅先で知った少女誘拐事件は、16年前に自らが捜査にあたった事件に酷似していた。手掛かりのない捜査状況に悩む後輩に協力しながら、神場の胸には過去の事件への悔恨があった。場所を隔て、時を経て、世代をまたぎ、織り成される物語。事件の真相、そして明らかになる事実とは。安易なジャンル分けを許さない、芳醇たる味わいのミステリー。−裏表紙より−

最近お気に入りの作家さんです。

・・が、細かい部分はすっかり忘れてしまいました。

「慈雨」という題名がしっくりくるような内容だったことは覚えています。退職後の警察官がお遍路に行っているときに起きた事件が過去に扱った事件と酷似していて、もしかして冤罪??という状態になって悩む・・。


お遍路姿と雨がぴったりな内容。


またいつか再読して感想をあげたいです。



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タグ:柚月裕子

2019年11月27日

ヒロモト「ニャーロック・ニャームズの名推理」

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 ヒロモト 著
 「ニャーロック・ニャームズの名推理 猫探偵はタマネギをかじる」
 (宝島社文庫)


野良猫として流浪していたニャトソンは、鰹が丘という街で理知的な猫・ニャームズと出会う。以後とな推理をする彼に導かれ、ハリモトフジンに飼われることになったニャトソンは、キャッという間にニャームズのもとへ舞い込む事件に巻き込まれていく。動物たちの目を通して見ると、人間の世界は複雑怪奇に思えてくる。クールなニャームズと、語り部のニャトソンが贈る、ユーモアたっぷりの動物ミステリー。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

ネットで感想を読んで面白そうだったので読んでみたのですが、詳しい内容が思い出せなくなってしまいました。


名探偵ホームズに憧れる猫・ニャームズと、その助手猫、ワトソンならぬニャトソンの物語です。

舞い込む事件の数々をニャームズの名推理で解き明かし、その謎解きをニャトソンが猫集会で披露します。


謎解き自体は面白かった覚えがあるのですが、ニャームズもニャトソンもかわいいと思えませんでした。外国っぽいユーモアも理解できませんでしたし・・。

ハリモトフジンはなかなか魅力的な人みたいですが、まだまだ謎が多すぎて理解しきれませんでしたし。


海外物、特にホームズが好きな人、猫が好きな人なら楽しめるのかな?と思います。


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タグ:ヒロモト

2019年09月27日

横関大「チェインギャングは忘れない」

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 横関大 著
 「チェインギャングは忘れない」
 (講談社文庫)


護送車が襲われ、五人の受刑囚が脱走した日、シングルマザーの早苗は記憶喪失の青年・修二と出逢う。母子は次第に彼に心を惹かれていく。一方、池袋署の刑事たちは連続殺人犯“サンタクローズ”を追っていた。二つの事件が交錯するとき、チェインギャングたちが動き出す。過去と現在を繋ぐ爽快な真相とは。−裏表紙より−


チェインギャングとは、鎖につながれた囚人という意味だそうです。




かなり前に読んだので、内容が思い出せず。感想も書けないので、時間があるときに軽く再読して書きます。




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タグ:横関大

2019年08月05日

長岡弘樹「赤い刻印」

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 長岡弘樹 著
 「赤い刻印」
 (双葉文庫)


時効間近の事件を追う、刑事である母。捜査線上に浮かんだ人物に、母と娘の胸中は―。40万部超のベストセラー『傍聞き』の表題作(日本推理作家協会賞短編部門受賞)で主人公を務めた母娘が、再び登場!(表題作「赤い刻印」)辛い現実にさらされた人間たちの謎めいた行動と、その先に待つ一筋の希望を描いたミステリー短編集。緻密な伏線から浮かびあがる人生の哀歓が、深々と心に沁みる。
−裏表紙より−


赤い刻印」他「秘薬」「サンクスレター」「手に手を」の4編収録されています。


「傍聞き」は、2012年に読んだので、7年前の記憶を掘り起こしながら読むことになるわけですが、最近のことすら怪しいのに思い出すはずもなく・・。

今回の表題作「赤い刻印」の母娘のこともすっかり忘れていました。でも、忘れていても大丈夫な内容だったので良かったです。前作を読まなくても十分楽しめると思います。

あまりいないタイプの母娘でした。クールな関係であまりベタベタしていないのに、さり気なくお互いのことを想い合って信頼している感じが素敵でした。

どんでん返しというか、ラストが意外な展開を見せてびっくりさせられつつも、納得できましたし、感心もさせられました。他の3作も驚きと納得が待っています。

前半、なぜこんなことが起きるのか?と不思議に思う行動も、ラストでスッキリ解決されますし、どんな終わりを迎えるのか?と不安な展開を見せていても、なるほどな終わり方が待っていてスッキリできます。


最後の話も暗い展開しか予想できなかったのですが、何とか良い方向へ収まってくれてホッとさせられました。


短編というのも読みやすく、ギュッと内容が詰まっていてとても面白かったです。

また他の作品も読みたいと思います。お気に入りの作家さんになりました。


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タグ:長岡弘樹

2019年07月12日

アミの会(仮)「毒殺協奏曲」

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 アミの会(仮) 著
 「毒殺協奏曲」
 (PHP文庫)


合唱部の女性顧問の「毒殺未遂事件」。学校側は事故と主張するが、生徒たちは犯人捜しを始めて・・(「伴奏者」)、作家が開いた鍋パーティーで、ある書店員の様子が急変して・・(「猫は毒殺に関与しない」)、ネットで知り合いm意気投合した自殺志願の男女。服毒自殺を図るも、事態は思わぬ展開に―(「劇的な幕切れ」)。サスペンス、心理戦、謎解き、どんでん返し。人気作家8人による「毒殺」縛りの多彩な傑作アンソロジー。−裏表紙より−


永嶋恵美「伴奏者」柴田よしき「猫は毒殺に関与しない」新津きよみ「罪を認めてください」有栖川有栖「劇的な幕切れ」松村比呂美「ナザル」小林泰三「吹雪の朝」篠田真由美「完璧な蒐集」光原百合「三人の女の物語」の8編収録されています。

好きな作家さんがたくさん参加しているアミの会(仮)。今回は永嶋恵美、柴田よしきしか読んだことがありませんでした。もしかしたら他のアンソロジーではあるかもしれませんが・・


柴田よしきの作品は読んだことがありました。柴田よしきで「猫」といえば「正太郎!」 これは、猫探偵正太郎シリーズに入っていた作品です。クスリと笑えて、ちょっとゾクッとする面白い展開です。


印象に残ったのは、「劇的な幕切れ」「罪を認めてください」「吹雪の朝」です。


劇的な幕切れ」は、初対面の男女が一緒に服毒自殺しようと、森の奥深くへ入っていくのですが、いざ毒を飲むぞ!というときになって、思いがけない出来事が。 だいたい、自殺を一人で出来ないから誰か一緒にお願いします、というのが納得いきません。その呼びかけに手を挙げる人がいるのもどうなんだ!? 今回はこういう幕切れで良かったですけど。


罪を認めてください」は、愛猫を亡くした婦人が起こした事件の話です。始めの方はどういう展開になるのかよくわからず、ぼんやりと読み進めていたのですが、後半どんどん引き込まれました。猫一匹で・・と思わなくもないですけど、ペットってそれだけ大事な存在になるんですね・・。ちょっと切なかったです。


吹雪の朝」は、話の展開はともかく、毒に対する蘊蓄が勉強になったな〜と思いました。毒を使う予定も無ければ、入手方法もないですけど、普通にサスペンスとか見るのが好きなので、そういうときに役に立ちそう! なるほど「致死量」ってそういうことなのね〜でした。物語としては愛するが故に・・という切ない内容でした。



アミの会(仮)のアンソロジーは他にもあるようなのでまた探して読もうと思います。


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2019年06月11日

伊岡瞬「代償」

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 伊岡瞬 著
 「代償」
 (角川文庫)


平凡な家庭で育った小学生の圭輔は、ある不幸な事故をきっかけに、遠縁で同学年の達也と暮らすことに。運命は一転、過酷な思春期を送った圭輔は、長じて弁護士となるが、逮捕された達也から依頼が舞い込む。「私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。私の弁護をしていただけないでしょうか」。裁判を弄ぶ達也、巧妙に仕組まれた罠。追い詰められた圭輔は、この悪に対峙できるのか? 衝撃と断罪のサスペンスミステリ。−裏表紙より−


初めましてかと思ったら、実は二作目だった作家さんです。以前読んだ作品のことは覚えていません・・。前の方は珍しい話だったようなので、この作品の方がこの作家さんらしいのかもしれません。


二部構成で描かれています。第一部では、圭輔という小学生が、ある事故をきっかけにその平和な暮らしから一気に転落し、遠縁の同学年だった達也とその母親と暮らすことになります。

この達也というのがかなりの曲者で、彼の言動を読む度に怒りと気持ち悪さが止まりませんでした。本当に小学生なのか!?と何度も疑ってしまいました。育て方ひとつでこんなにねじ曲がってしまうものなのか、と思うと恐ろしくもありました。 達也の母親もまたひどい人で・・。2人で共謀して、素直などこにでもいそうな平均的ともいえる純粋な小学生の圭輔を貶めていく様子は、辛くて仕方ありませんでした。


そして、第二部では、すっかり大人になった圭輔が逆境に負けず弁護士になっています。あんな環境で育って、どうやって司法試験を受けられたのか?とても不思議ですが、その答えは後々明かされていきます。 彼にも見方がいたというのが本当に救いでした。

弁護士となった圭輔の所に、達也から依頼が。とても丁寧に頼まれるのですが、あの達也ですからそんな殊勝な態度のまま終わるわけもなく・・。

心配は当たりどんどん追いつめられていく圭輔。いつまで苦しめられるのか・・と読むのがしんどくなりました。でも展開が気になって次々読み進めることになるのですが。最後は大逆転してくれると信じて読みました。


結局、最後までスッキリ爽快!という解決ではありませんでしたが、今後はきっと達也とその母親に苦しめられることはなさそうなので、ホッとはできました。


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タグ:伊岡瞬

2019年06月05日

山口恵以子「恋するハンバーグ 食堂のおばちゃん2」

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 山口恵以子 著
 「恋するハンバーグ 食堂のおばちゃん2」
 (ハルキ文庫)


トンカツ、ナポリタン、ハンバーグ、オムライス、クラムチャウダー・・帝都ホテルのメインレストランで副料理長をしていた孝蔵は、愛妻一子と実家のある佃で小さな洋食屋をオープンさせた。理由あって無銭飲食した若者に親切にしたり、お客が店内で倒れたり―といろいろな事件がありながらも、「美味しい」と評判の「はじめ食堂」は、今日も大にぎわい。ロングセラー『食堂のおばちゃん』の、こころ温まる昭和の洋食屋物語。巻末に著者のレシピ付き。−裏表紙より−


「食堂のおばちゃん」シリーズの2作目ですが、内容は1作目より前の話になっています。一子さんの若かりし頃のお話です。


有名ホテルで副料理長をしていた孝蔵が、実家の跡に洋食屋をオープンさせました。孝蔵の料理の腕はもちろん、妻・一子の美貌と気風の良さ、面倒見の良さが評判となり、人気の店になりました。

とはいえ、始めのころは、一流ホテルの料理人としてのプライドもあって、お客との距離が縮まらず苦労させられることもありました。孝蔵はとてもやさしい人なので、一子の口出しにも文句を言わず、取り入れるべきだと思えば、きちんと取り入れ、お客の舌に合うメニューを仕上げていきました。

おかげで人気の店となったのですが、色々とトラブルの起きます。 まあ、そうじゃないと話は成り立たないのですが・・。


6編に分けて、それぞれ問題が起きるわけですが、冷静に物事を判断する孝蔵と、お人よしで自らトラブルに巻き込まれに行っているようにも見える一子が、周りの力も借りながら解決していきます。


泣きそうになったり、思わず笑顔になったりするドタバタな話たちに、ほっこりしました。


巻末には美味しそうなレシピもあって、お得です。

シリーズの続きも描かれるのかな? まだまだこの食堂のドタバタが読みたいです。


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タグ:山口恵以子