2023年07月11日

ポール・ギャリコ「ミセス・ハリス、パリへ行く」

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 ポール・ギャリコ 著
  亀山龍樹 訳
 「ミセス・ハリス、パリへ行く」
 (角川文庫)※電子書籍


1950年のロンドン。ハリスおばさんはもうすぐ60歳の通いの家政婦。夫を亡くし、質素な生活を送っている。ある日、勤め先の衣装戸棚でふるえるほど美しいクリスチャン・ディオールのドレスに出会う。今まで身なりなど気にしてこなかったが、自分もパリでドレスを仕立てようと決意し、必死でお金をためることに。やがて訪れたパリで、新しい出会い、冒険、そして恋?何歳になっても夢をあきらめない勇気と奇跡の物語。―出版社HPより―


初めましての作家さんです。ネットの感想を読んで面白そうだったので読みました。

確かに面白いんですけど、勝手に想像していた雰囲気と違ったのでなかなか馴染めず。おばさんがパリに行くということは、旅先で何かしら事件が起こって、おばさんが巻き込まれて、類まれなる推理力で華麗に解決する!的な話かと。

ところがいつになっても事件は起きない。まあ小さな事件はたくさん起きますが、事件というより障害とか問題とかそんな感じ。警察が絡んでくるようなことは一切起きません。「ややこしいことになったな〜」というくらいのことなので、盛り上がりに欠ける気がしました。

ではハリスおばさんが可愛らしいおばさんだから魅力的なのか?というとそうでもなく。誰にでも言いたいことを言いますし、口調もなかなかキツイですし(これは訳のせいかもしれませんが)、結構なわがままぶりですし、全く可愛らしさはありません。でもなぜか憎めない・・。

あらすじを改めて読んで驚いたのですが、おばさんはもうすぐ60歳だそうで、ということはまだ59歳ってこと!?70代かと思っていました。それくらいパワフルでどっしりした感じがしました。


通いの家政婦としては大ベテランで、仕事もテキパキと完璧なので、ハリスおばさんから認められないと仕事に来てもらえないという存在。カリスマ家政婦って感じですね。でも金銭的には余裕が無く、朝から晩まで必死で働いても食べて行くのがやっとという状態です。ところが、とある家で見たディオールのドレスに心を奪われてしまい、自分もパリでディオールのドレスを買いたい!と思うようになります。

服にそこまでの思い入れを持ったことがないので、ある意味羨ましくもあります。

ドレスを買うために、パリに行かないといけなくて、その旅費も必要になります。安い給料での生活を更に切り詰め、他にもいろいろな方法でお金を貯めます。よく無事に行けたもんだと感心する状況でしたが、何とかパリに向かうことになりました。

パッと行って、サッと買って帰るつもりが、そうはいかなくなります。そこからが盛り上りなので書きませんが、読みながら苦笑する場面が続きます。

おばさんは無事にドレスが買えるでしょうか?? 

おばさんが巻き起こす色んな問題の数々。本人も自覚しないことがほとんどなだけに笑えます。近くにはいてほしくないですけど、ちょっと離れてなら見たいかも。


ハリスおばさんの話は何冊か出ているようです。読むかどうかは微妙かな? 気が向いたら読んでみるかもしれません。


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2023年04月11日

柚月裕子「孤狼の血」

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 柚月裕子 著
 「孤狼の血」
 (角川文庫)


昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上とコンビを組むことに。飢えた狼のごとく強引に違法捜査を繰り返す大上に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。やがて金融会社社員失踪事件を皮切りに、暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが・・。正義とは何か。血湧き肉躍る、男たちの闘いがはじまる。−裏表紙より−


極道の世界が描かれている話は何度も読んでいますが、彼らの世界って昔の武士の考えとよく似ていて、命を懸けても仁義を通す所や、親兄弟を守る所なんかはある意味かっこよくもありますが、やはり読めば読むほど関わりたくないと思ってしまいます。一般人を巻き込まないではいられないですからね。彼らにとっては一般人は家族の仇を取る時に邪魔になったら排除するべき存在ですし、もし家族が名誉を傷つけられても絶対に許さないですから、敵になるとかなり怖い存在です。

最近は色々法律も出来て規制も厳しくはなっていますが、それでも抜け道はありますし、警察内部にも協力者がいるなんていう話を読む度に本当かもしれないと怖くなります。あり得そうですよね。政治家との関係も濃いそうです。


ここに登場する刑事は、マル暴らしいヤクザのような風貌の大上刑事。しかも癒着が噂されるような、ヤクザと近い存在の刑事。そんなベテラン刑事と組むことになったのは日岡刑事。新人ながら高学歴で頭は良いようです。そんな彼に大上は煙草を咥えて見せます。そして「火を点けろ!」と怒るのです。冗談かと思いましたけど、あわてて火を点ける日岡。「先輩がタバコを咥えたら火を点けるのが当たり前」だと言います。

それこそヤクザのようなことを言いだす彼に戸惑いますが、とりあえず精いっぱい気遣いながら共に捜査していきます。

噂されるような癒着があるか?はわかりませんが、ヤクザと馴染みの関係ではあるようで、次々家を訪ねていっては親し気に話していきます。

捜査というよりは茶飲み相手とお茶しているような感覚です。とはいえ、相手はヤクザですから、多少のピリッと感はあるわけですが。

大上のやり方ははっきり言ってグレイというより黒な状態。1人の人間としては良いかもしれませんが、警察官としては絶対にダメなやり方。相手が相手だけに綺麗ごとでは済まないのでしょうが、それにしても・・。でも彼に起きた出来事はひどすぎるとは思います。

日岡はどんな刑事になっていくのか?楽しみなような怖いような。
普通ならシリーズ物は早く追っていきたくなるものですが、これはちょっと間を空けて追うことにしようかな。続けてヤクザの話は読みたくないけど、日岡のことは気になるので。


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タグ:柚月裕子

2023年03月15日

松岡圭祐「ècriture 新人作家・杉浦李奈の推論Z レッド・ヘリング」

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 松岡圭祐 著
 「ècriture 新人作家・杉浦李奈の推論Z レッド・へリング」
 (角川文庫)


24歳になった李奈は引っ越しを終えた新居で心機一転、小説家として新たな一歩を踏み出そうとしていた。新刊の評判は上々。しかしそんな状況に水を差すような事態が! アマゾンの評価は軒並み星一個となり、行った覚えのない店での痴態が撮影され、書きもしない官能小説が自分名義で編集者に送られていたのだ。一体何が起きているのか? 混迷を極める中、出版社にいる李奈を呼び出す内線電話がかかってきて……。−裏表紙より−


本が好き」で献本申し込みしました。

前に読んだのは4巻。そして今回は7巻。その間に李奈の本は多少売れるようにはなってきているようで、引っ越しが出来ました。物語の出だしから、良かった良かったと思えたのですが。

当然そのまま終わるわけもなく、いきなり新居が世間に明かされ、アマゾンでの評価が軒並み下がり、挙句には出版社に書いた覚えのない官能小説が李奈の名義で送られます。若い女性が書いた官能小説は需要があると出版話が持ち掛けられてしまうのですから何とも悲しい展開です。

一気に嫌がらせを仕掛けて来たと思われる人物は、出版社にいた李奈を呼び出します。一人で呼び出された店に行くと、そこにいた男性にある依頼をされます。丁寧に頼めばいいのに、さんざん嫌がらせをして、これ以上続けられたくなかったら、という強迫をしてきます。

脅迫に屈したくない李奈でしたが、嫌がらせの仕方が巧妙で卑劣だったため、一応依頼を飲む形をとります。

その依頼とは、古い聖書を見つけることでした。脅迫してきた人物の身元はすぐに判明するのですが、依頼の意味がなかなかわかりません。その聖書もすでに新たな聖書が次々と作られたためにほぼ絶版状態であることがわかり、難航を極めます。

その聖書に詳しいという人物に会いに行くと亡くなっていて、事件を解決するなんていう寄り道もありました。

李奈は探偵ではなく、小説家なのですから、本業もあるため、かかりきりになるわけにはいかず、ちょっと別のことをしているとまた新たな嫌がらせがあったり、急に拉致されて脅されたりします。李奈やその友だちが脅迫される度に「まだそんなことを調べているのか!」と叱責するのですが、そんなに色々わかっているなら、とりあえず全て明かせば良いのに、屁理屈をこねて明かしてくれません。

いちいち捕まえては脅すのも意味がわかりません。それをされる度に調査が中断するのに。

絶版かもしれないけどそこまで価値があるとは思えない聖書を見つける目的は何だろう?と気になり、読み進めると、なるほど・・という目的が。ある意味納得ですけど、それってどうなの??

かなり前に一時期ブームになって、専門家たちがテレビ番組に出て来てはあちこち掘り返していましたけど、結局見つかることはなかったアレです。

李奈が最後に解決してくれるのですが、これが事実なのかは知りませんが、かなりしっくりきた気がします。


これでやっと本業に戻れそうですし、最後には嬉しい報告もあったので、これからきっと作家としても人気が出てくることでしょう。

シリーズを1巻から読まないといけないな。ってこれ前回も書いた気がしますけど。今度こそ実行したいです。更に、ここにも出て来た「万能鑑定士Q」なるシリーズも読んでみたくなりました。こちらはかなりたくさん出版されているようなので、追うのが大変そうですが。


<「ècriture 新人作家・杉浦李奈の推論」シリーズ>
「W シンデレラはどこに」


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タグ:松岡圭祐

2023年02月28日

知念実希人「天久鷹央の推理カルテ」

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 知念実希人 著
 「天久鷹央の推理カルテ」
 (新潮文庫)※電子書籍


統括診断部。天医会総合病院に設立されたこの特別部門には、各科で「診断困難」と判断された患者が集められる。河童に会った、と語る少年。人魂を見た、と怯える看護師。突然赤ちゃんを身籠った、と叫ぶ女子高生。だが、そんな摩訶不思議な事件”には思いもよらぬ病”が隠されていた・・?頭脳明晰、博覧強記の天才女医・天久鷹央が解き明かす新感覚メディカル・ミステリー。−出版社HPより−


「泡」「人魂の原料」「不可視の胎児」「オーダーメイドの毒薬」の4編収録

死神シリーズを書いている作家さんです。そういえば似た雰囲気はあるかも。


病院にやって来る患者の中に、原因が判断できない場合があり、そういう時に呼ばれるのが「統括診断部」。その責任者である鷹央がこの物語の主役なのですが、彼女のことは特に好きにはなりませんでした。こういう女性ってよく描かれますが、私は好きではないです。

頭が良くて美人で、でも暴力的で人を見下すタイプ。風変わりなのは良いのですが、人を馬鹿にするような言動は好きになれません。

でも彼女が解き明かす事件や病気については面白かったですし、時々悲しい場面もあって気づけば入り込んで読んでいました。


病気を解明することは少なく、ほとんどが事件なのが残念ですけど、判断しかねる病気を解明するのって、もし真剣に書かれても素人が読んでわかるのか?というと微妙なので、これで良いのかもしれません。


シリーズはかなり出ているようです。この先もきっと病院で巻き起こる色んな事件を解き明かしていくのでしょう。読んでいくうちに彼女のことも好きになれるかな? とりあえずしばらく追ってみるつもりです。


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タグ:知念実希人

2023年02月24日

田中啓文「漫才刑事」

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 田中啓文 著
 「漫才刑事」
 (実業之日本社文庫)※電子書籍


腰元(こしもと)興行所属の若手漫才コンビ「くるぶよ」のボケ担当・“くるくるのケン“。彼が大阪府警難波署の刑事・高山一郎であることは相方の“ぶよぶよのブン“にも言えない秘密だ。お笑い劇場で起こる数々の事件にも、刑事であることは伏せ事件解決に協力する。しかしある日、同僚の交通課巡査・城崎ゆう子に正体がばれ…爆笑間違いなしの警察&芸人小説!−出版社HPより−


「ふたつの顔を持つ男」「着ぐるみを着た死体」「おでんと老人ホーム」「人形に殺された男」「漫才師大量消失事件」「漫才刑事最後の事件」の6編収録。


どこかで聞いたことがあるようなお笑い事務所に所属している漫才コンビのボケ担当・ケン。彼には相方にも言っていない秘密があります。実は、大阪府警難波署の刑事なのです。お笑いが副業というわけでもなく、どちらも真剣にやっているから余計ややこしい状態。

刑事と漫才師の掛け持ちだなんて、現実にはあり得ないですね。

漫才師としてはほとんどテレビにも出ていないので出来る技だということになっています。少し人気が出てきて、テレビに呼ばれることがあっても、相方だけに出てもらうようにして自分は断るという徹底ぶり。劇場だけは出演して腕を磨いています。


そんな忙しい彼が遭遇する事件の数々。かなり軽いタッチと展開なので、事件も軽そうに思えますが、実はしっかりミステリになっています。その辺りは読み応えがあります。

ただ、彼の上司の惚けっぷりには笑えますが。

こんな上司だからこそ、彼の二刀流が成り立つわけですけど、警察官がこんな感じで大丈夫か?と心配にはなります。


ちょっとほろりとしてしまう話もあり、ゾクッとする話もあり、なかなか楽しめました。

んなあほな!と突っ込みつつ楽しい時間が過ごせました。

続編もあるのかな?もしあったら読みたいです。


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タグ:田中啓文

2023年01月26日

霜月りつ「神様の子守はじめました。5」

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 霜月りつ 著
 「神様の子守はじめました。5」
 (コスミック文庫α)


就活に失敗し、神社に神頼みをしにいった羽鳥梓が四神の卵を預かり、子供たちが生まれてから、はや5ヶ月。神子たちといろいろな感動体験もしたし、死にそうな目にもあった。神子たちを育てるのは普通の人間である梓にとっては大変なことだったが水精の翡翠と火精の紅玉がいつも力を貸してくれるのでなんとかなっていた。そんなおり、翡翠の故郷の村が土砂崩れの危険に迫られていると知り―!?−裏表紙より−


早5ヶ月って!5年じゃなくて?? というくらい一気に成長してしまった神子たち。人間で考えたらすでに4〜5歳にはなっていそうです。
ずっと家に閉じこもっているなら良いですが、子どもたちにも友だちが出来ているので、あまり一気に大きくなってしまうと違和感がすごすぎて心配。でも最近は成長も止まってきているようなのでそこは良かったですが。


今回の神子たちも大活躍。1話目から翡翠の故郷の危機を救います。人間たちの自然に対する冒とくや神を信じなくなり顧みなくなったことへの報復のような出来事。私自身も信心深くないので何だか身につまされる話でした。

便利な世の中の方が暮らしやすいけど、自然も大事にしないと、って難しいです。


梓が神子を預かるきっかけになった神社を掃除している時に、お世話になっている神様からまた手伝いを頼まれます。部屋に付いた霊を払ってほしいというものでした。心霊的なことは苦手な梓ですが、神子たちの力を借りて除霊していきます。

霊がたくさん出てくる割には軽く読みやすい話で助かりました・・。


最後の話では、いつまでも声が出せず、心の声で語りかけてくる白花の声を探しに行きます。心配しなくてもそのうち出るよ、ってことでもないのか、と感心。

苦しい思いをしてきた白花ですが、これからきっと明るく優しい子どもになっていくことでしょう。彼女の活躍も楽しみです。


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タグ:霜月りつ

2022年06月23日

小前亮「残業税」

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 小前亮 著
 「残業税」
 (光文社文庫)


残業をすればするほど取られる税金が増える「時間外労働税」が導入された。残業時間は劇的に減って、社会のありようは変わりつつあった。だが、もっと働かせたい企業も残業したい労働者も多く、サービス残業という「脱税」は絶えないのだが・・。根っから真面目な残業税調査官と熱血労働基準監督官が働く人たちのために奮闘する、リアルすぎるお仕事ミステリー!−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

税金について詳しくないので、読み始めた時は「残業税」という物があるのかと思ってしまいました。よく考えたら払ったことないわ、と思い、架空の話だとわかって興味深く読み進められました。


正式名称は「時間外労働税」なるほど、こういう税金があっても面白そうとか思いつつ読んでいたのですが色々問題が出てきて、そう簡単には導入できない税金だということは分かりました。

税金を課せられなくてもサービス残業が多いのに、税金まで課せられたら更に増えそうですし、当然脱税も後を絶たないでしょう。

残業はさせられないけど、仕事は終わらない、となると人員を増やして、時間内に一気に済ませるしかないわけですが、何人もで出来る仕事も限られてくるでしょうし、なかなか難しそうです。

話の中でも問題が次々起こっていくわけです。それを残業税調査官と労働基準監督官が調査して税金を徴収していきます。


半分くらいまで面白く読んでいたのですが、税金の仕組みの細かい所を読み飛ばしていたらだんだんわからなくなってきました。後半は読むのが苦しくなり、結局挫折しました・・。

もっと税金について詳しく知っていくようにしないとこの話の面白さは完全にわからない気がします。なぜ「残業税」は実際には導入できないのか、なぜ脱税が増えるのか、などなどがわかっている方は楽しめると思います。

もう少し社会について知ってから読みなおしたいと思います。・・・いつになるやら。


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タグ:小前亮

2022年06月17日

松岡圭祐「ècriture 新人作家・杉浦李奈の推論W シンデレラはどこに」

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 松岡圭祐 著
 「ècriture 新人作家・杉浦李奈の推論W シンデレラはどこに」
 (角川文庫)


中堅・グライト出版が大々的に売りだした新人作家REN。刊行した作品が女子中高生を中心に次々ベストセラーになるが、既刊からのパクリ問題が浮上しブームは突如として失速。出版界の事件を解決してきた李奈には、被害作家からの相談がよせられる。自著からの盗作も判明し、頭を悩ませる中、別の難題も抱えていた。「シンデレラの原典を探れ」という不可解なメールが届いたのだ。送り主の意図、そしてその正体は一体・・!?−裏表紙より−


初めましての作家さんです。以前から感想を読んで面白そうだとチェックしていた作家さんだったので、「本が好き」で献本申し込みしました。

シリーズの4作目から読むことになったので、登場人物の細かい設定などはわかりにくい部分がありました。ただ、そこは読み進めるのに大きな問題とはならなかったので助かりました。


杉浦李奈は作家として活動していますが、どうやらあまり売れていないようです。出版されている本も少ない様子。でも彼女には謎解き能力があるので、出版界での事件などを解決してほしいと様々な人から声をかけられています。

本人としてはそれよりも作品を出させて欲しいわけですが。


今回持ち上がった事件は、ある作家による盗作疑惑問題でした。RENという新人作家が出す本が次々とベストセラーになり注目されますが、どうやらあまり売れていない作家の作品を盗んでいる様子。

ただ、盗作となると著作権で争うことになるのですが、その線引きが曖昧なので立証が難しいのです。確かに、小説の題材となる物、その設定、人物像、人物名などは考えることって重なることも多いですから、どこまで似ていたら盗作なのか?は微妙になってきます。

登場人物の名前から設定から全部同じだともちろんパクリとなるわけですが、性別を変えたり、住んでいる場所の設定を変えたり、少し違うようにすればそれはパクリとも言い難くなります。

でもパクられた人からすれば、絶対に自分の作品を使っている!とわかるわけです。小説を書くのが簡単という作家さんはいないでしょうから、血のにじむような努力をして生み出した作品をいとも簡単に盗まれたらかなりショックだと思います。

李奈の作品もパクられていることがわかり、この問題も解決しないといけないのですが、更に李奈の元に「シンデレラの原典を探れ」という謎のメールが届き、周りの人間に危害を加えると書かれていたため、そちらに取り掛かることに。

シンデレラの原典なんて考えたこともありませんでした。李奈がすでに知っているだけでもたくさんの話があり、調べていくと世界中に似た話があることがわかってきます。なかなかエグい内容の物もあり、なるほどと感心しながら読み進めました。

継母と義理の姉にいじめられる美少女という設定、そして王子様(お金持ちの男性)が助けてくれるという設定、苦労した子ども時代を過ごした人にとっては憧れの設定ですから、似たような話が作られるのは当然ではありますね。

日本にもあったのは驚きでしたけど。ディズニーのシンデレラで知った身としては、王子様、パーティー、魔法、ドレス・・と日本というかアジアではありえない設定なので。不幸な境遇の少女を領主が救うと考えればあり得ますね。

どのように解決したのか?は読んでもらったら良いですが、なるほどそうなりますか、って感心しましたし、爽快な結末でした。


盗作問題とシンデレラ、一見関係なさそうな問題ですが、きれいに回収されて面白かったです。ちょっとあっさりし過ぎな気はしましたけど、それまでの部分で興味深く読めたのが良かったです。

これは1作目から探して読まないといけないと思いましたし、他の作品も読んでみたいと思いました。
しかもすでに5作目も発売されている様子。急がないと!


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2022年06月13日

柚月裕子「チョウセンアサガオの咲く夏」

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 柚月裕子 著
 「チョウセンアサガオの咲く夏」
 (角川書店)


柚月裕子の13年がつまった短編集
美しい花には毒がある
献身的に母の介護を続ける娘の楽しみとは……。

柚月裕子は短編も面白い
「佐方貞人」シリーズ、「孤狼の血」シリーズ、『盤上の向日葵』『慈雨』など数々のベストセラー作品を世に送り出してきた著者。ミステリー、ホラー、サスペンス、時代、ユーモアなど、デビュー以来の短編をまとめた、初のオムニバス短編集。「佐方貞人」シリーズスピンオフ「ヒーロー」収録。柚月裕子の13年がつまった短編集。
−出版社HPより−


お気に入りの作家さんの作品集です。読みたいに決まっているので「本が好き」で献本申し込みしました。

「チョウセンアサガオの咲く夏」「泣き虫の鈴」 「サクラ・サクラ」「お薬増やしておきますね」「初孫」「原稿取り」「愛しのルナ」「泣く猫」「影にそう」「黙れおそ松」「ヒーロー」 が収録されています。

短編は何度か読んだことがありますが、オムニバス形式は初めてです。色んなジャンルの作品を書かれる方だとわかりました。

どれも面白かったですが、合うか合わないかはありますね。

表題作がやはり一番印象に残りました。でもとても短い話でびっくりしました。短いのに内容はギュッと詰まっていて、始めは親の介護をして大変な毎日を送る女性の話としてしんみりと読んでいたのですが、少しずつ方向が変わっていき、最後には「え〜!?」となりました。なかなかブラックな話です。

「初孫」これもブラックでした。なかなか子どもが出来ない夫婦の話で、こちらも応援するような気持ちで読み進めていたら最後にど〜ん!とオチが。まあそういうこともあるでしょうけど・・・いやいや、それはダメでしょう!な内容でした。

どちらも身内の話だけに怖さが倍増です。

「お薬増やしておきますね」「愛しのルナ」もブラックというかゾッとしました。オチが怖いのが多かったです。

「泣く猫」は短い話なのにほろりとさせられましたし、「ヒーロー」も感動的でした。

「ヒーロー」は佐方シリーズのスピンオフ作品で、シリーズのファンにはたまらない内容です。本人に自覚なく良い言葉をさらりと言ってくれる佐方にまた惚れ直しました。


目をそむけたくなるような話もありますが、この作家さんの新たな面が見られた気がして、読んで良かったです。

佐方シリーズだけではなく他の作品も読んでみようと思えました。

まだ読んだことが無い方にも、作家さんのことを知るきっかけとしてお勧めです。


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タグ:柚月裕子

2022年04月20日

鴨崎暖炉「密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック」

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 鴨崎暖炉 著
 「密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック」
 (宝島社文庫)


「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」との判例により、現場が密室である限りは無罪であることが担保された日本では、密室殺人事件が激増していた。そんななか著名なミステリー作家が遺したホテル「雪白館」で、密室殺人が起きた。館に通じる唯一の橋が落とされ、孤立した状況で凶行が繰り返される。現場はいずれも密室、死体の傍らには奇妙なトランプが残されていて―。−裏表紙より−


「読書メーター」で献本申し込みして当選しました。


「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」という判決が出されて以降、殺人事件といえば密室殺人となるほど流行っていた時代の話です。もちろん、現実にはそんな時代はありませんけど。

この判例はつまり、密室殺人事件で密室トリックが解明出来なければ、容疑者が密室内以外どこにいようともアリバイが証明できなくても容疑が晴れるということです。

だから、殺人事件を起こそうと思ったら、変にアリバイ工作するよりも、密室を作ってしまった方が確実だということになり、密室殺人が多発していました。

でも素人が簡単に密室を作れるはずもなく、密室つくりの達人みたいな人が登場します。まあそれは自然な流れですけどね。



そんな時代に、とあるミステリー作家が遺したホテルで密室連続殺人が起きます。そのホテルは作家が生きている頃に密室を作ったことがあり、いまだにそのトリックが解明されていないため、密室事件に興味を持っているマニアから人気になっていました。

ミステリーファンの中でも密室殺人のマニアでもある人たちが泊っている中で起きる連続殺人事件。ホテルに通じる唯一の橋も落とされてしまい、部屋だけではなくホテル自体も大きな意味での密室状態でした。犯人は必ず宿泊客の中にいるわけで、誰が犯人なのか、密室のトリックは解明できるのか、動機はなんなのか、など謎が次々と。


殺人が起きる度に、新たな密室が作られるので、密室殺人が好きな方にはたまらない作品だと思います。私も嫌いではないのですが、想像力が乏しいせいもあって、密室の様子がいまいち頭で再現できないのがもどかしかったです。

簡単な図はついているのですがそれだけでは理解出来ないこともたくさんありました。殺人のドラマはあまり気持ち良い物ではないですが、これはぜひ映像化されたものを見てみたいです。

トリックを暴く人の解説と共に密室の様子を映像でしっかり見せてほしいです。そうしないと「なるほど!」と思えません。

しかし、これだけ何個も密室が出てくると、作家さんの頭ものぞいてみたくなりますね。どういう構造をしていたらここまで次々思いつくんでしょう。変なことに興味がいってしまいました。


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タグ:鴨崎暖炉

2022年04月14日

柚月裕子「検事の信義」

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 柚月裕子 著
 「検事の信義」
 (角川文庫)


任官5年目の検事・佐方貞人は、認知症だった母親を殺害して逮捕された息子・昌平の裁判を担当することになった。昌平は介護疲れから犯行に及んだと自供、事件は解決するかに見えた。しかし佐方は、遺体発見から逮捕まで「空白の2時間」があることに疑問を抱く。独自に聞き取りを進めると、やがて見えてきたのは昌平の意外な素顔だった・・・。(「信義を守る」)−裏表紙より−


「裁きを望む」「恨みを刻む」「正義を質す」「信義を守る」の4編収録されています。

映像化されている作品もあって読んだことがあるような錯覚を覚えてしまいました。映像化されたものを先に見ていると、その俳優さんが頭に出てきてしまいますが、その場の雰囲気や街並みなどは思い浮かべやすくて良いですね。



「裁きを望む」
これはドラマで見ました。でも結末は忘れていたので楽しめて良かったです。ある資産家の隠し子が親子鑑定してもらうために画策する話です。普通に親子鑑定してほしいと言ってもしてもらえないので二重三重に伏線を張って裁判所も巻き込みながら思いを遂げていきます。そこまでしなくても・・と思ってしまいますが、何だか切ない気持ちになりました。



「恨みを刻む」
これもドラマで見ました。アリバイの矛盾点からどんどん事件が思わぬ方向に転がっていきます。最後がスッキリとはいきませんが、佐方は良い上司に恵まれていて羨ましく思いました。



「正義を質す」
これも結末がスッキリしない感じでした。色々な立場の色々な人たちの思惑が絡み合って、検察の世界も政治の世界に似ているように見えました。



「信義を守る」
これも何とも言えない読後感でした。悲しくて切なくて、でもそれだけでは語れない重い問題。母親のことを自分で介護したくて、でも精神的にも体力的にも大変で、でも他人に任せたくなくて・・・。本当に簡単には言えない問題です。自分にもいつかは降りかかってくる問題。でもまだどこか他人事な感じがあって、それではいけないと思いつつどうにもできない。

国の制度で何とかしてほしいですが、それだけではどうにもできないであろうこともわかりますし、親には長生きしてもらいたいけど介護は大変で、どうすれば助けられるのか、助けてもらえるのか、今から色々調べておくべきなのでしょうね。


今回の佐方も自分の信念を貫きつつ、信じられる上司と頼りになる事務官に支えられながら検事の仕事をまっとうしていました。すっきり出来ない話も多かったですが、やはりこのシリーズは面白いです。


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タグ:柚月裕子

2022年02月28日

「警官の道」

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 アンソロジー
 「警官の道」
 (角川書店)


警官で生きるとは? 豪華警察小説アンソロジー
「組織で生きる者の矜恃」
オール書き下ろし新作
次世代ミステリー作家たちの警察小説アンソロジー
「孤狼の血」スピンオフ、「刑事犬養」シリーズ新作収録
収録作
葉真中顕 「上級国民」 刑事事件化されなかった交通事故に隠された真実
中山七里 「許されざる者」 東京オリンピックの裏で起きた悲劇
呉勝浩 「Vに捧げる行進」 街で頻出する落書き犯の驚愕の意図
深町秋生 「クローゼット」 バディを組む上野署の刑事が抱える秘密
下村敦史 「見えない刃」 性犯罪の捜査に乗り出した女刑事が見たもの
長浦京 「シスター・レイ」 半グレたちのトラブルに巻き込まれた謎の女
柚月裕子 「聖」 ヤクザに憧れ事務所に出入りする少年が目指すもの。
−出版社HPより−


大好きな警察小説のアンソロジー。読みたいに決まっているので「本が好き」で献本申し込みしました。


上級国民」って数年前によく聞いた言葉です。あの痛ましい事故の・・・。この話でも事故を起こした人物が上級国民だからという描かれ方をしています。それを逆手にとって利用した人たちはある意味頭が良いのでしょうけど、そんなことに使わずもっと世の中に活かしてほしい気がします。

許されざる者」も去年のオリンピックの少し前によく聞いた話がモチーフになっています。オリンピックに関わる人が実は学生時代にいじめっ子だったという報道がされて降板する事態になりましたね。確かにいじめられた側からするといつまでも忘れられませんし、心の大きな傷となって残る物で、いじめた側があっさり忘れて普通に人生を歩んでいると腹が立つのはわかります。

Vに捧げる行進」もタイムリーな内容でした。コロナ禍の今起こっていることで、ずっと背筋がぞわっとするような不気味な雰囲気を漂わせた話で、結末もあまりスッキリ出来ず。まさに今の世の中を表す内容でした。

クローゼット」もある意味最近よく聞かれる問題かもしれません。LGBTの話です。他人の嗜好なんて気にしなければ良いのに、どうしても癪に障るというか、イライラする人っているんですね。だから隠さないといけなくなるんですが。言葉遣いなど気になる所が多くて、ちょっと読みにくい気がしました。

見えない刃」は性犯罪の捜査をする刑事たちの話です。被害者がなかなか名乗り出にくい犯罪ですから、泣き寝入りも多いのが現状で、捜査するのも難しいです。そういう事件の担当になった女性刑事。でも彼女の言動は男性刑事よりも的を射ていない感じがあってイライラする部分も。最終的には考えを改めて、良い方向へ向かいそうなので良かったですけど。

シスター・レイ」は他の作品とちょっと毛色が違う雰囲気でした。アクションものって感じです。始まり方はよくある日常の話かな?という感じでしたが、気付けば激しいアクションが始まっていました。主人公が謎の女なので違う視点で話が進んだ方が面白かったかもしれないと思います。

」も警察物というにはちょっと違う感じです。ヤクザに憧れている青年がどうやって生きていくのか?という話ですが、ヤクザに憧れているその理由も何だか的外れな感じで、納得出来ません。だからこそ最後にうまく軌道修正できそうになったのはホッとしました。


警察小説といっても色んなタイプの話があってそれぞれ楽しめました。あまりまっとうな警察官が出てこなかった気はしますけど、出てくる警察官たちは自分のポリシーを持って仕事をしているのはわかりました。それが正しいかどうかは微妙ですけど。

どれも短編だったので、もっとページ数を使って長い話として読みたかったものもありました。シリーズになっている作品もあるので、一度読んでみたいと思います。


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2021年07月28日

天野節子「氷の華」

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 天野節子 著
 「氷の華」
 (幻冬舎文庫)※電子書籍


専業主婦の恭子は、夫の子供を身籠ったという不倫相手を毒殺、完全犯罪を成し遂げたかに思えたが、ある疑念を抱き始める。殺したのは本当に夫の愛人だったのか。罠が罠を呼ぶ傑作ミステリ。−出版HPより−


初めましての作家さんです。

専業主婦で、子どもがいなくて夫と二人暮らしで、更にはお手伝いさんまでいるという何とも羨ましい生活をしている恭子。結婚前からお嬢さまだったので、当然のように優雅に暮らしていたところ、夫の不倫相手だと名乗る女性から電話がかかってきます。

恭子が料理が出来ないことや、子どもが出来ないことに対して夫が愚痴をこぼしていたと聞かされた上に、自分は妊娠したと告げられました。

普通なら泣きわめいて、夫に怒鳴り散らして、大喧嘩になるでしょうが、ちょうど夫は海外に出張中でそれも出来ず、また恭子の性格上もし夫がそばにいても大げんかになることはなかったでしょう。

自分に子どもがいないのに、不倫相手に子どもが出来たことがどうしても許せなかった恭子は、愛人宅のカギを夫の部屋から見つけ出し、留守中に忍び込みます。

この辺りの恭子の行動は本当に冷静で、持ち出してはいけない物は持ち出さず、自分のアリバイも完ぺきに作り上げていました。完全犯罪が成し遂げられたとある意味安心していたのですが、事件発覚後、犯罪が見つかるのではないか?という心配ではない疑惑が浮上します。

それは「私が殺したのは本当に不倫相手だろうか?」ということでした。

不倫相手宅に飾ってあった夫との2ショット写真で確認していますし、夫の字で記入された母子手帳も確認したというのに、どんどん浮かんでくる疑惑。

警察とのやりとりや帰って来た夫との話の中でその疑惑は大きくなっていくばかりでした。


読者としても、これはどうやらはめられたようだぞ、とは思うのですが誰にどうやって?という部分が解決されず、気になったまま話が進んでいくので早く解決してほしくて一気読みです。

恭子もそのうち気づくわけですが、その時に起こす彼女の行動はなかなかでした。プライドが高いと大変ですね・・・。

サラッと離婚して終了というわけにはいかないようです。

真犯人の執念にも驚かされます。やっぱり女性同士って怖いわ〜。


結末はとても後味が悪いので、大きな声でお勧めしにくいですが、それまでの展開はミステリ好きにはたまらない作品だと思います。


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タグ:天野節子

2021年07月15日

角田光代「紙の月」

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 角田光代 著
 「紙の月」
 (ハルキ文庫)※電子書籍


ただ好きで、ただ会いたいだけだった。わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が1億円を横領した。正義感の強い彼女がなぜ? そして――梨花が最後に見つけたものは?! あまりにもスリリングで狂おしいまでに切実な、角田光代の傑作長篇小説。各紙誌でも大絶賛され、ドラマ化もされた第25回柴田錬三郎賞受賞作が、遂に文庫化!−出版HPより−


この作家さんの作品は「八日目の蝉」以来です。同じようにずっしりと重い内容で、女性は共感しやすいかもしれません。私は共感出来ませんでしたけど。


主人公は梨花という41歳の女性。夫と二人暮らしで専業主婦でしたが、パートとして銀行で営業の仕事を始めました。

専業主婦で良かったのですが、子どもが出来なかったことで時間を持て余してしまったことと、社会から置いて行かれている感じがしてしまったことが理由で働くことにしました。

その気持ちは同じ女性として何だかわかる気がします。結婚するまでは「いつ結婚するの?」と聞かれ続け、結婚したら「いつ子どもが出来るの?」と聞かれ続ける女性。もちろん男性もあるのでしょうが、女性は特に「結婚して子どもを産んで一人前」という昔からの既定が強いと思います。

でももし子どもが出来なかったら、専業主婦でいるのも何だか違う気がします。もちろんそれで満足な人もいるでしょうが、梨花は満足できない女性でした。

パートとはいえ、銀行員として色々なお宅へ行っては定期口座などを作ってもらったり、口座を新設してもらったりして、お客様からほめてもらえると充実した毎日が送れるようになります。

少ないながらも自分で働いて手に入れた給料は特別な思いになりますね。たまには夫にごちそうしてあげようと、ちょっとしたお店に連れて行くのですが、そこでの夫の反応から梨花の気持ちに変化が。

この部分はとてもよくわかりました。この夫は自分では遅れた感覚の持ち主だとは思っていないでしょうけど、女性からしてみればかなり遅れている感覚を持っていて、「女性よりも男性の方がたくさん稼げる」とか「女性よりも男性の方が稼いで養うのが当たり前」とか「女性は男性に食べさせてもらわないと生きていけない」とか思っているわけです。

でもそれを言っては「感覚がズレている」と思われるのでは?というのはわかっているので直接的な言い方はしません。だから遠回しに「お前より俺が上だ」と言ってくるわけです。

梨花としてみれば「それは当然でしょ?パートなんだから、夫が働いてくれないと食べていけないに決まっている」と思っているのですが、わざわざ言われることに違和感を覚えます。


そういう小さい出来事からどんどん話が展開していき、気付けば銀行員という立場を利用した大事件を起こすことに。

犯罪に手を染めていく理由も動機も何だか共感出来なかったので、後半はひたすら「何でこうなったの?」と疑問に思いながら読み進めました。


話の展開の仕方が、時系列バラバラになっているのも読みにくかったです。始めから梨花という女性が事件を起こしたと知って、過去に彼女と関わりのあった人たちがどういう気持ちになっているのか、また彼らが現在どんな生活を送っているのかなどが描かれていて、そういう場面っているのかな?と疑問でした。

それよりも、梨花の夫からの視点があったら面白かったのでは?と思います。それを書いてしまったら想像する部分が減るのがよくないのかもしれませんが、夫の存在がどんどん薄くなり、事件発覚後に全く登場しなくなるいことには違和感がありました。


面白かったとは思うのですが、色々不満な点もある作品でした。
とりあえず、人というのはとても弱い存在で、ちょっとしたきっかけさえあればいくらでも転落していくことが出来るということはよくわかりました。現実世界でニュースになる横領事件の犯人もこんな小さな出来事がきっかけで起こしているのかもしれません。そう思うと誰もが犯罪者になる要素があるんですよね。ちょっと怖くなりました。


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タグ:角田光代

2021年07月09日

安東能明「撃てない警官」

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 安東能明 著
 「撃てない警官」
 (新潮文庫)※電子書籍


総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。−出版HPより−


初めましての作家さんです。

大好きな警察小説ですし、文章自体は読みやすかったのですが、最終話を残して挫折してしまいました。

連作短編になっていて1話ずつ一応解決はするのですが、ずっと始めの事件を引きずったまま話が進みます。まあそれが連作短編なわけですが。

その引きずり方がしつこいというか、確かに上昇志向が強い人なら悔しいでしょうけど、いつまでも言わなくても良いのに、と思ってしまいました。

しかも引きずり方が、自殺した部下を救える方法はなかっただろうか?という後悔ではなく、その責任の所在は誰にあったのか?にとらわれているのが気に入りませんでした。

人の命よりも出世??

私には理解できない考え方でした。


主人公の柴崎がそんな感じで、周りの人たちも似たような出世欲の塊ばかりで好きになれず。

残念でした。



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タグ:安東能明

2021年06月14日

行成薫「僕らだって扉くらい開けられる」

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 行成薫 著
 「僕らだって扉くらい開けられる」
 (集英社文庫)※電子書籍


もしも突然「超能力」に目覚めたら? 誰もが抱いたことのあるそんな妄想が、現実になってしまった5人。でもその能力は「触らず物を動かせる(ただし10cmだけ)」、「相手を金縛りにできる(ただし自分の頭髪が抜ける)」といった、役立たずなものばかり。そんな彼らが、謎の誘拐事件に巻き込まれ……。さえない僕らだって、きっとできることがある! W最弱W超能力者たちによるW最強Wエンタメ小説。−出版HPより−


テレキネシス(念動力)、パラライズ(金縛り)、パイロキネシス(発火能力)、サイコメトリー(精神測定能力)、マインド・リーディング(読心術)、テレパシー(精神感応)の能力に目覚めた6人の物語です。

なんて便利そうな力!と憧れてしまいそうですが、実はそれぞれの能力は色々と欠点があり、読み進めると結構ショボいと思ってしまいます。

まず、テレキネシス。念じれば物が動く能力で、リモコン要らずで便利そうだと思いますけど、実は10センチしか動かせません。しかも重い物は無理で軽い物だけ。例えば、カウンターで食べるラーメン店などで、隣の人の前にあるラー油が取りたい、でも知らない人の前に手を伸ばすのはちょっと・・という時に、この力を使ってちょっと自分に引き寄せてから取る、という感じで使えるのですが。

う〜〜ん、要りますか?この能力。「すみません・・」と声を掛けて取ればそれでいい気がしますよね。


パラライズは、相手に触れて金縛りにさせることができる能力なのですが、これは力を使う度に毛がごっそり抜けるという弊害が。ひえ〜!相手を金縛りにしたいような状況って今まであったことがないので、これは本気で要らないかも。


パイロキネシスは、念じれば発火させることが出来る能力です。ただ、感情によって火力が変わるので、怒りに任せると火事になりかねません。でもまあこれは訓練すれば何とかコントロール出来るようになるかもしれないな、とは思います。ただ、この能力は要らないかも。日常でどうしても火がつけたいのに点ける物がなくて困る状況もないので。


サイコメトリーは、物を触ったら、それを直前に触っていた人の気持ちがわかる能力です。これはこれで面倒な感じはしますけど、ここに出てくる能力者は極度の潔癖症で、誰が触ったのかわからない物に触れるのがかなりのストレス。そういう状況だとますます要らない能力な気がします。


マインド・リーディングは、読心術なので、相手の目を見れば考えていることがわかります。使い方によっては便利かも?あまり知りたくないこともありますけど。でも自分に対して負の感情を抱いているのを知ってしまうと対人恐怖症になりそうです。実際、ここに出てくる能力者は学校の先生でしたが生徒たちの心の声を聞いてしまって立ち直れなくなり引きこもりになってしまいました。


テレパシーは、相手に自分の感情を声に出さずに伝えられる能力です。ここに出てくるのは子どもだったので、全くしゃべることが出来ないという状況になっていました。まあこれは訓練すれば治りそうですね。この能力も要らないな〜。伝えたくないことの方が多い気がするので。



そんな色んな問題のある超能力者たちが、1〜5話ではそれぞれが日常においてどんな能力の使い方をしているか?や、ちょっとした事件を解決したり、問題の解決に乗り出したりしている様子が描かれていて、独立した短編でありながら同じ町や同じ店、共通した人物が出てきて繋がっている連作短編の状態で話が進みます。

超能力者たちは最終話までお互いの存在を知らずに生活していますが、最終話で一致団結します。

あらすじにもあるように、謎の誘拐事件に巻き込まれていくわけです。そこで、彼らのほんのちょっとした力、問題点の多い力を使って解決していきます。題名の「僕らだって扉くらい開けられる」という状況になるわけですね。


なぜ、一つの町に突然超能力に目覚める人が続出したのか?も明らかにされ、今一つ自信が持てなかった彼らが前向きに生きていく大きなきっかけとなりました。



笑える部分の多い小説ですが、シリアスな部分もあり、奇想天外な展開に目が離せない状態でした。終わって見れば何だったんだ!?って感じですけど、重い小説が続いた時なんかに箸休めにぴったりな作品でした。


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タグ:行成薫

2021年06月10日

斎藤千輪「ビストロ三軒亭の奇跡の宴」

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 斎藤千輪 著
 「ビストロ三軒亭の奇跡の宴」
 (角川文庫)※電子書籍


今回の訳ありゲストは――。【フルーツ尽くしのコースを注文する怪しい女性二人組】【謎の暗号文に悩むアイドル志望の少年とその母親】【給仕にダメ出しを続けるギャルソン・正輝の父親】お客様でにぎわう中、スタッフの一人が突如倒れ、三軒亭が大ピンチに! 名探偵ポアロ好きの凄腕シェフ・伊勢の切ない過去や、主人公のギャルソン・隆一のさらなる成長も描かれる、大好評ビストロ三軒亭シリーズ第三弾!−出版HPより−

結局2作目を飛ばして読みました。

サラッと読めてあまり深く考えずにすむので快適な読書時間を過ごせます。

ただ、その分記憶にも残りにくい・・

感想を書けるほど覚えていないので、いつか再読して感想を書きます。


<ビストロ三軒亭シリーズ>
「謎めく晩餐」


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タグ:斎藤千輪

2021年03月16日

柚月裕子「ウツボカズラの甘い息」

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 柚月裕子 著
 「ウツボカズラの甘い息」
 (幻冬舎文庫)


家事と育児に追われる高村文絵はある日、中学時代の同級生、加奈子に再会。彼女から化粧品販売ビジネスに誘われ、大金と生き甲斐を手にしたが、鎌倉で起きた殺人事件の容疑者として突然逮捕されてしまう。無実を訴える文絵だが、鍵を握る加奈子が姿を消し、更に詐欺容疑まで重なって・・・。すべては文絵の虚言か企みか? 戦慄の犯罪小説。−出版HPより−


ウツボカズラというのは、食虫植物の一種です。読み終わったら題名がしっくりくる内容でした。


物語はとある女性の日常の様子から始まります。他の人より精神的に辛そうではあるけれど、よくいる感じの専業主婦の日常で、彼女がどんな風に立ち直っていくか?が描かれていくのかと思ったら、次の場面ではいきなり殺人事件が。

その殺人事件の捜査をする警察の様子と主婦の日常が交互に描かれていて、それが少しずつ重なり合っていきます。

読み進めるうちに、きっと殺されたのはあの人だな、とかきっと犯人はあの人だな、とかわかってきて、全く関係なさそうな殺人事件と主婦がいよいよ関係してくるとちょっと嬉しくなってしまいました。

動機はまだわからないけど、まあ彼女が殺したんだろうと予測しながら読み進めると驚きの展開が。

犯人が違うというのは、私の推理力ではよくあることですけど、まさかそんなことが! という別の驚き。そうなると、彼女の人生があまりにも辛くて悲しくて、幸せな家庭なのになんでこんなに病んでいるんだろう?と疑問だったことも一気に解決しました。

彼女が壊れてしまったのも、こんな事件に巻き込まれてしまったのも納得です。

そこまで一気読み状態でした。


ただ、犯人がわかってからが慌ただしすぎたのが残念でした。もっとゆっくりじっくりと犯人の人生についても描いて欲しかったですし、犯人にたどり着くまでの警察の動きももっと知りたかったです。

ちょっと動機がわかり辛いというか、納得しかねました。


最後まで読んでも誰も救われない感じがして、後味悪かったです。事件解決までの疾走感は心地よかったので、最後さえもう少し細かければ・・・。


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タグ:柚月裕子

2021年03月03日

斎藤千輪「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」

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 斎藤千輪 著
 「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」
 (角川文庫)※電子書籍


三軒茶屋にある小さなビストロ。来る人の望みを叶える魔法のような店。料理は本格派、サービスは規格外。どんな事情の客も大歓迎。――ここ『ビストロ三軒亭』には、お決まりのメニューが存在しない。好みや希望をギャルソンに伝えると、名探偵ポアロ好きな若きオーナーシェフ・伊勢優也が、その人だけのオリジナルコースを作ってくれる、オーダーメイドのレストランなのだ。ひと月ほど前までセミプロの舞台役者だった神坂隆一は、姉の紹介でこの店のギャルソンとして働くことに。個性豊かな先輩ギャルソンたちに気後れしつつも、初めて挑んだ接客。だが、担当した女性客が、いろいろな謎を秘めた奇妙な人物であることを、隆一はまだ知らずにいた……。美味しい料理と謎に満ちた、癒しのグルメミステリー。−出版HPより−


この作家さんの作品は2作目。同じようにレストランの話です。

一応ミステリですが、日常の軽い謎なので、重い話の本が続いた時には良い気分転換になれるかもしれません。


「ビストロ三軒亭」は、本格的なフレンチが出てくるレストラン。普通のビストロとの違いは、決まったコース料理が無くて、お客のリクエストに応えて好みのコースを作ってくれる所と、担当してくれるギャルソンを指名できる所です。

オーダーメイドでコースを作ってくれるのはとても素敵ですね。この部分では、近くにあったら通ってしまうかも!と思うのですが、ギャルソンが・・。指名したくないわ・・と思ったら担当は新人になる確率が高いし、指名したら「ご指名ありがとうございます」って言われるし、苦手です・・。

気軽に楽しめるビストロ、となっていますが、ギャルソンが常にそばにいるだけで十分堅苦しいと思ってしまう私には向かない店かも。

でも料理はかなり美味しそうです。なので一度は食べてみたいかな?


個性的なギャルソンたちと、個性的なシェフが、やって来るお客さんのちょっとした謎を解き明かす展開です。美味しい料理を提供しながら、さり気ない会話や行動をヒントに謎解きしていくので、面白く読めました。

シェフにも何やら暗い過去がありそうな描写もあり、気になっていたのですが、最後にはすっきり解決してしまい、もっと引っ張らなくて大丈夫なのか?と心配になるくらいでした。

4話収録されていたのですが、印象に残ったのは3話目でした。ビストロが試食会を開いたときに来てもらった大食い女性3人の話です。食べることが大好きなのに、味覚障害になってしまう・・。私も食べるのは好きなので辛いだろうなと彼女の気持ちになって心が痛くなりました。人間って弱いなと改めて感じさせられた話でした。


間違えて3作目を購入済みなので、早く2作目を手に入れて読もうと思っています。とりあえず3作目を読んでも問題は無さそうですけどね。


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タグ:斎藤千輪

2021年02月19日

小田菜摘「平安あや解き草紙 その姫、後宮にて天職を知る」

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 小田菜摘 著
 「平安あや解き草紙 その姫、後宮にて天職を知る」
 (集英社オレンジ文庫)※電子書籍


時は平安。過去に入内の話はあったものの立ち消えになってしまい、婚期を逃したまま実家に居座っている藤原伊子(かのこ)。当時の結婚相手となるはずだった東宮は早世し、彼の息子が現在の帝である。ところが、ここにきてなぜかその帝が伊子の入内を希望してきた。彼は十六歳、伊子はその倍の年齢だ。いくらなんでも無理でしょう、と断るために出かけた先で、伊子が再会したのは十年前に別れた恋人、嵩那(たかふゆ)。彼との関係は誰にも知られていないけれど、処女ではない身で入内なんてできないと思っていたのだ。だが帝の熱烈な要請によって、尚侍として後宮に入ることになってしまった伊子に謎の人物からの脅迫文が届き…!? −出版HPより−


初めましての作家さんです。軽い文章で読みやすかったです。

ただ、登場人物の名前が覚えられなくて困りました・・。平安時代の話ですから、一人に対しての呼び方が山ほどあるんですよね。主人公はともかく、元彼も帝も、とにかく呼びかける時だけでも、言う人によって呼び方が変わりますし、説明文のときも違いますし、どれが誰のことなのか理解するまでに時間がかかりすぎました。登場人物の数はかなり少ないのでまだマシでしたけど。

それ以外の部分では、平安時代らしい(特に平安貴族の)しきたりも興味深かったですし、主人公・伊子の恋愛模様もちょっと笑える所があって面白かったですし、謎解きもあって楽しめました。


この時代は、十代どころかそれ以下の年齢から結婚することもあるので、伊子のように32歳はすっかりおばさんです。何度も「婚期を逃した」という描写が出てくるのが悲しいくらいです。今だったらまだ若いと言われるのに。

一夫多妻制ですから、女同士の確執もなかなかのものです。だれが帝の寵愛を受けるのか?という争いが醜いこと! まだこの話の中ではマシですけど、源氏物語のようにドロドロしてきたらギブアップしそうです。

更に面倒なことは、男女が面会するときには、御簾とか衝立とか扇子などで顔を隠さないといけないところ。父親と年頃になった娘でもです。恋仲になって初めてその衝立は外されるわけです。それでなくても、重くて長い着物を着て窮屈なのに、人に会うたびに色々と隠さないといけないなんて、面倒臭すぎます。

この時代に生まれていたら、もしも貴族だったら生きていけないな〜とか変なことを考えてしまいました。


このシリーズはすでに3冊出ているようです。続きを早めに読まないと、また名前がわからなくなりそう・・。でもちょっと別に続きは要らないかな?とも思ってもいるので、成り行きに任せようか・・。


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