2017年09月08日

大沼紀子「真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥」

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 大沼紀子 著
 「真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥」
 (ポプラ文庫)


真夜中に開店する不思議なパン屋「ブランジェリークレバヤシ」。あれから五年の歳月が経ち、暮林や弘基には様々な変化の波が訪れていた。それは常連客である班目やソフィアたちにとっても同様だった。そしてもちろん、希実にとっても・・。「まよパン」シリーズ、ついに完結!!−裏表紙より−


前作で終わりでも良いのでは?と思っていたので、発売されてもなかなか手が伸びず。一応最後まで見届けるつもりで読みました。

読み始めたら1作読み飛ばしたか?と思うくらい状況が変わっていてびっくりしました。こんな話あったっけ?と何度思ったことか。

最終巻ですべてを丸く収めるために仕方ないことだったのかもしれませんが、それにしても変化大きすぎ。


前作から5年経ったという設定になっているのですが、5年経つ前の話の方がじっくり読みたかったです。先に話を進めておいて、後で回想するみたいにちょっと戻るというのはどうにも入りにくい構成です。

無理やり全部納めなくても、もっとふんわりした終わり方でも良かったような気がします。


とりあえずみんなうまくいきそうで良かったとは思いますけどね。

希実と弘基はやっぱりそうですか、って感じです。何となくうまくいきそうです。

暮林さんも新たに進んで行けそうですし。

最後にやっとなぜ真夜中に開いているのかがわかるわけですが、何だかロマンチックだね〜って感じです。あまりピンとこなかった私はひねくれものってことかな?


まあ、最後まで読むことができて良かったです。


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タグ:大沼紀子

2017年08月16日

山口恵以子「食堂のおばちゃん」

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 山口恵以子 著
 「食堂のおばちゃん」
 (ハルキ文庫)


焼き魚、チキン南蛮、トンカツ、コロッケ、おでん、オムライス、ポテトサラダ、中華風冷や奴・・。佃にある「はじめ食堂」は、昼は定食屋、夜は居酒屋を兼ねており、姑の一子と嫁の二三が、仲良く店を切り盛りしている。心と身体と財布に優しい「はじめ食堂」でお腹一杯になれば、明日の元気もわいてくる。テレビ・雑誌などの各メディアで話題となり、続々重版した、元・食堂のおばちゃんが描く、人情食堂小説(著者によるレシピ付き)。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。ネットでの感想を読んで面白そうだったので買いました。

改めてあらすじを見ると、結構話題になっていたようですね。そうなるとまた実写化されるのかな?でも一子のような年齢である程度美人で、料理も出来る女優さんっているかな?と心配です。二三も難しそう。だからといって、そこを適当に設定を変えられると違いますし。・・と、余計な心配をしてしまいました。


で、内容ですが。

よくある下町の定食屋さんって感じの素朴な「はじめ食堂」が話の舞台です。切り盛りするのは姑の一子と、嫁の二三。二人とも夫を亡くした未亡人で、血のつながりのない関係ですが、かなり仲良くやっています。気を使い過ぎず、でもお互いを気遣ってとてもいい関係です。

この食堂で出てくる料理も素朴だけど温かくて美味しそうです。レシピも巻末に付いていますしそれだけでもお得ですね。


ただ食堂でご飯を食べて終わり、というわけではなく、日常のちょっとした謎もすべての話に付いてきます。それをお客さんの言葉などから解き明かしていきます。

読んですぐのときは、事件を通して色々と思うこともあったのですが、数日経った今となってははっきり思い出せないくらいの小さな謎たちです。


後半になって、新たな出会いもあったので、今後の展開も楽しみになりました。シリーズとして続いているようなので次も早めに読むつもりです。

でもどうやら2冊目は前の話に戻るようで・・・。まあとにかく読んでみます。


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タグ:山口恵以子

2017年06月20日

西澤保彦「腕貫探偵」

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 西澤保彦 著
 「腕貫探偵」
 (実業之日本社文庫)


大学に、病院に、警察署に・・突如現れる「市民サーヴィス課臨時出張所」。そこに座る年齢不詳の奇妙な男に、悩める市民たちはついつい相談を持ちかけてしまう。隣人の遺体が移動した? 幸せ絶頂の母がなぜ突然鬱に? 二股がバレた恋人との復縁はあり? 小さな謎も大きな謎も、冷静かつ鋭い観察力で腕貫男がさらりと解明! ユーモアたっぷりに描く連作ミステリ7編。−裏表紙より−


変わった題材で書くのが得意な作家さんです。

本を買ったとき、なぜか「敏腕探偵」だと思い込んでいて、改めて読むときに見て「腕貫??」と戸惑ってしまいました。

腕貫をしているお役所の役人さんが悩める市民の相談に乗るという話で、殺人事件から恋愛相談まで何でも話を聞いて、サクッと解決してくれます。

年齢不詳で印象に残らないタイプの男性なのですが、話を聞いただけでズバッと的確なアドバイスをしてくれます。

淡々と手短に。

普通、悩み相談って相手にしゃべらせて楽にならせようとするもので、長々時間を取りますが、この人はあっさり時間になったら終了。しかも答えが謎めいていて、頭に「?」マークを浮かべたまま去ることになります。

読者の私も当然、「?」となったまま読み進めると、相談者はいつの間にか腕貫男のアドバイスを正確に理解して、サラッと解決するんです。

何だか置いて行かれた感じ・・・と思っているうちに1話終了。

こんな謎めいたヒントで解決出来るだけの頭があるなら、相談しなくても良かったんじゃない?と思わされる人たちでした。

大体、自分の名前を覚えるのさえ大変じゃない!?と思うような複雑な名前の人ばかりで、そこも気になってしまって余計に話に入りこめませんでした。

1話出たらもう出てこないならともかく、妙に絡んできますし、そうなると気になって前に戻ったり進んだりして忙しくなってしまいました。

謎がすっきり解決するのは爽快ですが、それ以外の部分で引っ掛かりが多すぎました。シリーズになっているようですが、次を読むかは保留かな?


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タグ:西澤保彦

2017年04月28日

二宮敦人「一番線に謎が到着します 若き鉄道員・夏目壮太の日常」

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 二宮敦人 著
 「一番線に謎が到着します 若き鉄道員・夏目壮太の日常」
 (幻冬舎文庫)


郊外を走る蛍川鉄道の藤乃沢駅。若き鉄道員・夏目壮太の日常は、重大な忘れ物や幽霊の噂などで目まぐるしい。半人前だが冷静沈着な壮太は、個性的な同僚たちと次々にトラブルを解決。そんなある日、大雪で車両が孤立。老人や病人も乗せた車内は冷蔵庫のように冷えていく。駅員たちは、雪の中に飛び出すが―。必ず涙する、感動の鉄道員ミステリ。−裏表紙より−


亜矢子の忘れ物」「清江と化けて出たダーリン」「俊平と、立派な髭の駅長」の3編と、その間間に「俊平の憂鬱」という話が一から三まで書かれています。


この作品は、シリーズ2作目から読んでしまったのですが、それでも違和感なく読むことができました。1作目から読んだ方が、駅長についても謎が深まって面白かっただろうとは思いますが。

2作目よりも1作目の方が、鉄道員たちの熱量が強くて「良いね〜、熱いね〜」と感心させられました。

清江と化けて出たダーリン」は、ちょっと情けない感じでしたが、それ以外の話では仕事に一生懸命な様子と、鉄道の仕事に誇りを持っている様子がとてもかっこよく思えました。

仕事に対してここまで情熱を注ぐことが出来るなんて本当に素敵ですし、羨ましいです・・。

最終話は特に、普段やる気ない感じで仕事をしているように感じる人さえも、いざという時の行動力はすさまじくて、圧倒されました。

最後まで読むと、短編の間に挟まっている話がうまく絡んで来て、全てがすっきり解決する感じも面白かったです。


夏目壮太が主人公で、彼の鋭い観察眼で謎解きが行われるわけですが、その部分はそれほど大事ではなく、鉄道の裏側が垣間見えたり、駅長の様子が笑えたり、鉄道員たちの仕事ぶりに感動したり、という辺りがこのシリーズの醍醐味だと思います。

こういう特殊な仕事の裏側なんかに興味がある人にお勧めの作品です。

3作目は書かれるのかな?楽しみに待ちます。


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タグ:二宮敦人

2017年02月09日

吉永南央「糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ」

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 吉永南央 著
 「糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ」
 (文春文庫)


紅雲町のはずれにある小さな商店街。通称「ヤナギ」が大家の発案で改装されることになった。手掛けるのは新進気鋭の女性建築家だという。長年の客で、数日前に店の前で車に轢かれそうになったお草も改装話を見守っていたが、関係者それぞれの<秘密>と思惑が絡んで計画は空中分解寸前に―。大好評シリーズ、待望の第4弾!−裏表紙より−


今回もしっとりした雰囲気の中話は進んでいきました。ただ、いつもより不穏な空気もあって驚かされることも。悪人の出てこないシリーズだったのに、若干悪い人も登場。まあ彼も根っからの悪人では無かったわけですが。

人間関係が複雑で、誰が誰の子どもだっけ?とか、誰と誰が友人で、誰と誰が知り合い?というのがだんだんわからなくなって混乱することもありました。

そんなに登場人物が多いわけでは無かったのに・・。お草さん視点で描かれるから、人物の年齢もわかりにくかったです・・。


お草さんは相変わらず元気なご老人です。でも自分の年齢についてしっかり理解はできていて、無理はしませんし、年齢以上に諦めることもしません。

うまく休憩もとりながら、適度に動いて、新しい物にも挑戦して、本当に素敵なお年寄りです。


今回の商店街の改装についても、気づけば巻き込まれているのですが、どこで意見を言うべきか、黙っているべきかよく心得ているので、うまくアドバイスしながら手伝っていきます。

それぞれの思惑を全て理解していたのは実はお草さんだけだったのかも。若い人には出来ない関わり方で、うまく丸く収めた感じがしました。何ともできない問題はありましたが・・。


続きもあるようなので、楽しみに待つことにします。


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タグ:吉永南央

2017年01月18日

谷瑞恵「思い出のとき修理します3 空からの時報」

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 谷瑞恵 著
 「思い出のとき修理します3 空からの時報」
 (集英社文庫)


穏やかに交際を続ける明里と秀司。ある日「秀司の時計店を女が手伝っている」と教えられた明里は、店で骨董店の娘・郁実と出会う。東京での仕事を辞めて帰ってきたという彼女は、商店街のお祭り準備で秀司が不在がちの今だけ、店番をしているのだという。自分と境遇の似た彼女に共感を覚えつつも、秀司との関係に少しだけ不安を感じて・・。切なく温かく、心を癒やす連作短編集、シリーズ第3弾。−裏表紙より−


3作目、また何だか秀司の性格が変わったような・・。それまでの詳しい内容を覚えていない自分が悪い気もしますが。

正に「穏やかに」交際を続ける明里と秀司。ベタベタくっついているわけではないですが、サラッと手を繋いだり、頭をポンと叩いて励ましたり、明里のことをあっさり公表したり、妙に親密な感じになっています。

でも明里は何だか不安に思っているようで、秀司の店に女性の店番が来たと聞いてちょっとやきもちをやいてしまいます。

その女性のことは、好きになれない感じではあったのですが、もっと自信をもっても良いはずの明里がやきもちを焼いては自己嫌悪に陥る描写は読んでいてイライラさせられました。

やっぱり私、恋愛話って苦手なんだと改めて思わされました・・。

普通なら微笑ましく読める部分なんでしょうね〜。

サッサと収まる所に収まってくれたら良いのに、と思ってしまいました。


今回も時計店に持ち込まれた時計にまつわる話が多かったですが、それ以外の話もあり、明里の秘密も明らかになります。それが最後には解決したので、ここからは一気に良い感じで収まる気はします。

次も手元にあるので、一応読んでみようかな?


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タグ:谷瑞恵

2017年01月17日

香月美夜「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜第一部『兵士の娘T』」

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 香月美夜 著
 「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜第一部『兵士の娘T』」
 (TOブックス)


とある女子大生が転生したのは、識字率が低くて本が少ない世界の兵士の娘。いくら読みたくても周りに本なんてあるはずない。本がないならどうする?作ってしまえばいいじゃない!目指すは図書館司書!本に囲まれて生きるため、本を作るところから始めよう!
緻密な世界観と多くの魅力的なキャラクターで大人気を集める本作が待望の書籍化!本好きのための、本好きに捧ぐ、ビブリア・ファンタジー!
−裏表紙より−


ネットでの感想を読んだら面白そうで、読みたいと思っていたら献本になっていたので「本が好き」で申し込みました。

とりあえず表紙を見ると、おばさんが読んで大丈夫なのか!?と心配になってしまったのですが、読み始めると一気に本の世界に引き込まれてしまいました。

この表紙のイラストがあるお陰でイメージもしやすくなりますし、これで良かったのかも。文庫じゃないから持ち歩けませんしね。



本が大好きというか、活字中毒といえるくらい本が好きすぎる女子大生が、突然事故にあい、目覚めたときには見知らぬ世界にいました。

なぜか青い髪の少女になってしまった彼女。しかも病弱な少女だったため、ちょっと動いては熱が出てしまう生活を強いられます。

更に、日本でも無ければ現代かどうかもわからない世界。言葉は少女の記憶を頼りになんとかなりますが、生活水準がかなり低い家庭だったため、不便な生活を送ることに、

活字中毒なのに、本もない!字も読めない、書けない状態になってしまい、彼女は何とかして本を手に入れようとします。でも結局本が手に入らないらしいとわかり、だったら本を作ればいいんだ!と張り切ります。本を作るだけではなく、最終的には司書になりたい!という壮大な夢を語るわけですが・・。

でも便利な機械はもちろん、紙もペンも無い世界。しかも病弱ときているため、なかなか計画は進みません。様々な困難に立ち向かいながら地道に進んでいこう!というところで一冊目終了。


架空の世界が描かれているわけですが、その世界観も面白くて、登場人物も魅力的で、何よりも本がどうやって出来上がるのかも楽しみでほぼ一気読みでした。

最後には何だか怪しい雲行きになりそうな発言もありましたし、物語をひっかきまわしてくれそうな人も出てきましたし、続きもとても楽しみな物語になりました。

次もぜひ読みたいです。


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タグ:香月美夜

2016年12月19日

伊坂幸太郎・中山七里・柚月裕子・吉川英梨「ほっこりミステリー」

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 伊坂幸太郎・中山七里・柚月裕子・吉川英梨 著
 「ほっこりミステリー」
 (宝島社文庫)


凄腕の殺し屋・兜が登場する、伊坂幸太郎の人気シリーズ作品「BEE」。『さよならドビュッシー』の映画化で話題の中山七里が贈る「二百十日の風」は、田舎を舞台にした心温まる物語。大藪春彦賞受賞で勢いづく柚月裕子は「心を掬う」で涙を誘う。「アゲハ」がドラマ化された吉川英梨は、「18番テーブルの幽霊」で驚きのトリックを描く! 心がじんわり温まる、゛人の死なないミステリー小説”が待望の文庫化。−裏表紙より−


旅行先で読もうと思って購入したこの本。旅行って非日常を楽しむ場面ですが、ファンタジー的な物だと旅行を邪魔しそうですし、ガッツリミステリーもしんどいかな?と思って選びました。「ほっこり」「人が死なない」と書かれていたので、ふわ〜っと軽い気持ちで読めるかな?と思ったわけです。

お気に入りの作家さんも書いていますし、わくわくして読み始めると、いきなり「殺し屋」の話・・。伊坂さんの殺し屋ですから、エグさは無く、クスリと笑える内容なのですが、文章の端々に物騒なワードが・・。

それはともかく、やっぱり面白い話を書いてくれるな〜と感心しながら読み終えました。兜の出てくる話、他も読んでみたいと思いました。


2話目は物騒なワードは少なめではありますが、内容がちょっと、いやかなりヘビー。ある意味ミステリーですけど、不思議なことも起こりますし、嫌な人もいっぱい出てきて、人間の嫌な部分がいっぱいで暗くなる気がしました。後味は悪くないので、「心温まる物語」と言えなくもないですけど、気分悪い感じもありました。


3話目の柚月さんの作品は読んだことがありました。安定の佐方シリーズです。


そして4話目は、またまた物騒ワードのオンパレード。まず「爆弾」が出てくるので「爆弾処理班」だとか「人質」だとか・・。事件の質は物騒ですけど、内容は人情的で感動するような物なのですが、「ほっこり」と言われると違う気がします。


色々文句のように書きましたが、それぞれの話は面白かったですし、読んでよかったと思います。題名さえ違えば感想も違ったんだろうと思います。

とりあえず、旅先で読むのは違うかも?


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2016年11月29日

森晶麿「ホテルモーリスの危険なおもてなし」

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 森晶麿 著
 「ホテルモーリスの危険なおもてなし」
 (講談社文庫)


かつて高級リゾートだった<ホテルモーリス>に、今は毎日ギャングがやってくる。迎え撃つのは、伝説のホテルマンの妻でオーナーのるり子、元殺し屋のコンシェルジュ日野、そして立て直しを命じられた新人支配人の准。アガサ・クリスティ賞作家がもてなす、劇場型ミステリー『ホテルモーリス』改題。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

読み終わって、う〜〜ん何というか・・・面白くないわけではないんですけど、私は合わなかったんですよね・・。

始めは面白くて、ぐいっと話に引き込まれたんですけど、途中から急に失速してしまいました。何が原因なのかは自分でもわからないですけど、日野がビールをあおって倒れた辺りからついていけない感じがしました。


倒産しそうなホテルに投資している会社から支配人として派遣された准が、ホテルに向かう所から話は始まります。

派遣されることになった理由には色々な事情が絡んでいて、きっと准が策略にはまらずホテルを立派に立て直すストーリーなんだろうと予想しながら読んだのがいけなかったのかもしれません。

准が良い奴なんですが、仕事がバリバリできるかというとそうでもなく、オーナーやコンシェルジュに若干押され気味で、何となく存在しているだけのように思えたんですよね。


そのホテルモーリルには、ギャングたちが常連となっていて、殺し屋なども泊まりにやってきます。それを伝説のコンシェルジュ日野が迎え撃つわけです。結構危ない方法で。

人が死ぬわけでは無いですが、なんかもっとスマートな方法で追い出すことってできないのか?と思うと読みにくくなってしまいました。


ただ、最後に思いがけないどんでん返しがあって、そこは感心させられました。なるほど、そう考えれば色々なことがしっくりはまってくるんだな、と納得しました。

だから最後には面白いと思ったんですけどね。途中がどうも好きにはなれませんでした。

評価が難しい作品でした。


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タグ:森晶麿

2016年11月28日

「警察アンソロジー 所轄」

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 日本推理作家協会 編
 「警察アンソロジー 所轄」
 (ハルキ文庫)


東池袋署管内で発見された女性の白骨死体。娘が逮捕されたが・・(「黄昏」)。警視庁から沖縄県警に移動した与座哲郎は、県人との対応に戸惑いもあり・・(「ストレンジャー」)。佐方貞人検事は、米崎西署で逮捕した覚せい剤所持事件に疑問を持ち始め―(「恨みを刻む」)。西成署管内で、ネットに投稿されたビデオクリップのDJが病院に担ぎ込まれ・・(「オレキバ」)。臨海署管内で強盗致傷事件が発生。昔の事件とリンクして―(「みぎわ」)。沖縄、大阪、東京など各所轄を舞台にした傑作警察小説アンソロジー。−裏表紙より−


私の大好きな、薬丸岳さんの夏目刑事や、柚月裕子さんの佐方検事、今野敏さんの安積警部補が出てくるとなれば、読まずにはいられません。

どれも読んだことが無い話で、短いですがそれぞれの魅力がしっかりと出ている作品ばかりでした。

初めての作家さんも2名。慣れないから読みにくい部分もありましたが、内容は面白かったです。また別の作品を読んでみても良いかな?と思いました。


薬丸岳「黄昏」では、被疑者が犯行を犯した動機に疑問をもって再捜査する夏目刑事の様子が描かれています。彼らしい優しい目線の話になっていて、最後はちょっとほろりとさせられる所もありました。


柚月裕子「恨みを刻む」では、供述書の些細な部分が気になり、再捜査することにした佐方検事の様子が描かれています。彼らしい細かくて鋭い洞察力が活きてくる作品でした。でも最後には彼の上司が良い所を全部攫っていた所もあり、佐方の影が一気に薄くなっていました・・。


今野敏「みぎわ」では、ちょっとセンチな気持ちになる安積警部補が描かれています。短くてあっという間に読めてしまえる作品ですが、安積班のメンバーも良い感じで活躍していますし、安積の若くて青臭い時代も少し見えて、なかなか面白かったです。安積ファンはぜひ読んでもらいたいです。


題名が「所轄」なので、本庁との確執みたいなことがメインになっているのかと思ったら、全くそんな話はなく。でも所轄らしい地元に密着した捜査は読んでいて面白かったです。


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2016年10月28日

名取佐和子「金曜日の本屋さん」

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 名取佐和子 著
 「金曜日の本屋さん」
 (ハルキ文庫)


ある日、「北関東の小さな駅の中にある本屋は読みたい本が見つかる本屋″らしい」というネット上の噂を目にした大学生の倉井史弥。病床の父に以前借りた本を返すように言われたが、じつは失くしてしまっていた。藁にもすがる思いで、噂の駅ナカ書店<金曜堂>を訪ねる彼を出迎えたのは、底抜けに明るい笑顔の女店長・南槇乃。倉井は南に一目惚れをして―。人と本との運命的な出会いを描くハートウォーミングストーリー、開店!−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

本好きにとってたまらない内容の作品みたいだったので読んでみることにしました。

だって「読みたい本が見つかる本屋」ですよ!? 最高じゃないですか! 

普段、どれだけ読みたい本が見つからないことか。いつになったら見つかるのか、もしかしたらもう古本でしか見つからないかも、という本さえあります。でも私は古本は無理なので、あきらめるしかない物もたくさんあります。

そういう本たちが見つかるなら、リストを持って買いに行きたいです。

という感じでワクワクしながら読み進めました。

その本屋さんは、本が見つかる以外にもワクワクする所があったんです。それは、地下に書庫がある! 地下鉄を作るはずだった部分を使って書庫にしていて、想像しただけで楽しくなります。

駅のホーム全体に本棚があって、本がずらりと並んでいるなんて最高でしょう!

それだけでも見に行きたいです。


話の内容は、何だかビブリア古書堂と雰囲気が似ている気がしました。美人の女店主と、彼女に憧れる若者バイト。設定も似ていますし、お客さんが本のことを質問して店主が答えて、本を見つけ出すところとか、本が絡んだちょっとした謎と謎解きとか、よく似ています。

バイトくんが本を読めない所も同じだと思ったら、こちらのバイトくんはただの思い込みで、実際は読書好きだったのですが、そこも似ていますね。

店主とバイトくんの恋物語がうっとおしいと感じるのも同じ。その辺りを少なめに書いていただけると楽しめると思います。


バイトくんが読書を嫌っていた理由というのが、本を読んでもきちんと理解できていると思えないからで、自分で「読書をする資格がない」と言っていました。

そんな彼に、店主が

「読書は究極の個人体験です。人によって響く部分が違うのは、当たり前なのです。作者の思いやテーマを汲み取る努力を、読者がしなければならない義理はありません。好きに読めばいいんです。感想を誰かと同じになんかしなくていいんです」

と言って彼を励まし、読書ができるようになりました。


私も他の人と感想が違うとか、きちんとテーマを読み切れていないとかよく感じていたので、彼女の言葉にはちょっと安心させられました。

感想が人と違っても良いんだ、という当たり前のことに改めて気づかせてもらえただけでも、この本を読んで良かったです。


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タグ:名取佐和子

2016年09月20日

緑川聖司「晴れた日は図書館へいこう」

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 緑川聖司 著
 「晴れた日は図書館へいこう」
 (ポプラ文庫)


茅野しおりの日課は、憧れのいとこ、美弥子さんが司書をしている雲峰市立図書館へ通うこと。そこでは、日々、本にまつわるちょっと変わった事件が起きている。六十年前に貸し出された本を返しにきた少年、次々と行方不明になる本に隠された秘密・・本と図書館を愛するすべての人に贈る、とっておきの日常の謎”。 知る人ぞ知るミステリーの名作が、書き下ろし短編を加えて待望の文庫化。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

何ともあっさりと1時間くらいで読んでしまえる作品でした。

主人公のしおりは小学5年生。お気に入りのいとこが司書をしていることもあって、図書館が大好きな女の子。毎日のように図書館へ行っては本を読んだり借りたりしています。

そして図書館で起きるちょっとした事件も、いとこと共に解決していきます。殺人などの血なまぐさい事件ではなく、本が関係したちょっとした事件。腹立たしいものもありましたが、ほとんどはほのぼのと終わっていく話になっていて、固いミステリーが続いたときに読むとほっこりして良さそうです。


図書館ってほとんど行かないですが、図書館という空間は好きです。図書館の本が苦手なので触れないのですが、本に囲まれた場所はテンションが上がります。自分の本を持って行って読んだら良いようなものですが、結局は家で読んでいます・・。

図書館の司書って大変そうだとぼんやりとは思っていましたが、これを読むとその大変さが更によくわかります。重い本を抱えて移動することは重労働ですし、本を整理したり、イベントを企画したり運営したり、本が紛失したり汚されたりするたびに対応しないといけませんし。なかなかハードです。

本が好きだったら、やりがいはありそうですけど、その分、悲しい気持ちになることも多そうです。

シリーズ化されているようです。また血なまぐさいミステリーが続いて心がやさぐれたら、読んでみようかな?


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タグ:緑川聖司

2016年09月07日

二宮敦人「なくし物をお探しの方は二番線へ」

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 二宮敦人 著
 「なくし物をお探しの方は二番線へ」
 (幻冬舎文庫)


蛍川鉄道の藤乃沢駅で働く若手駅員・夏目壮太は駅の名探偵”。ある晩、終電を見送った壮太のもとに、ホームレスのヒゲヨシが駆け込んできた。深夜密かに駅で交流していた電車運転士の自殺を止めてくれというのだが、その運転士を知る駅員は一人もいない―。小さな駅を舞台に、知らぬ者同士が出会い、心がつながる。あったか鉄道員ミステリ。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。あらすじを見て面白そうだったので「本が好き」で献本申し込みしました。

来てみたらシリーズ2作目だとわかりびっくり。でも、2作目から読んでも何の問題もなく読み進めることができます。

しかもなかなか面白かった! 軽い文体なのに意外と重い内容も書かれていて、時々じんわりと泣かされながら、ちょっと微笑みながら読むことができました。気づけば終わっていた、という感じ。

連作短編になっていて、1話ずつが短かったのも読みやすくて良かったです。


夏目壮太という若手駅員が活躍する物語で、お客さんが持ち込むちょっとした謎をさらりと解決して見せます。始めの話は軽くて、でも「なるほど」と感心させられるような内容だったのですが、2話目以降はちょっと重めになります。

特にホームレスのヒゲヨシと貨物運転士の清水さんの話は泣きそうになりました。貨物運転士ってそうなんだ〜と知らなかったことも知ることができましたし、最後は2人の素敵な関係に読んでいてほっこりさせられて、お気に入りの話になりました。

最後の話は、若干納得できない部分もあったのですが、彼らの関係はともかく、今まで出てきた人たちがすべて丸く収まる感じは心地よかったです。


壮太は、どうやら新たな一歩を踏み出しそうなので、続きも楽しみな展開で終わりました。まさかこれで終わりではないと思いますが、続きが出たら読んでみたいです。

というか、その前に1作目を見つけて読むことにします。


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タグ:二宮敦人

2016年07月26日

葉真中顕「ロスト・ケア」

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 葉真中顕 著
 「ロスト・ケア」
 (光文社文庫)


戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奥に響く痛ましい叫び―悔い改めろ!介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味・・・。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る! 全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

読む前からきっと重い話だろうと覚悟はしていたのですが、読み終わるとやっぱり重くて感想が整理できない状態になりました。


話は、2011年12月、<彼>に死刑判決が降る裁判の様子から始まります。<彼>はどうやら殺人を犯したようだということしかわかりません。ただ続いて何人かの感情が描かれている文章から察するに、この殺人によって救われた人と、怒りが収まらない人がいることはわかります。

そして次の章では、2006年11月へ。ここから<彼>が起こした事件の内容が明らかにされていきます。そして<彼>と表記されているのはこの中に出てくる誰なのか?動機は何なのか?が少しずつ明かされていくのです。


ミステリーだけではなく、高齢化社会について描かれています。家で介護することの大変さ、介護ビジネスの難しさ、社会システムの問題点などなど。

私自身は、介護をしたことが無いので、介護する人の大変さは想像するしかありませんが、中で描かれていた娘が母親を介護する様子は涙があふれて仕方ありませんでした。あまりにも壮絶で、娘さんの苦しみも、介護されている母親の苦しみも痛いほど伝わって、読むのが苦しいくらいでした。と言っても、実際に介護された方の気持ちなんて、経験していない私に理解できるわけないのですが。

更に介護ビジネスについて、老人ホームや介護施設などを経営している会社の社員の話もあります。その社員の言っていること全てに賛同するわけでは決してないですが、いくつかの部分では自分の携わる保育の世界と共通する所がたくさんあって、激しく共感してしまいました。

老人の介護をすることは、家族だけでは難しい。でも、それをビジネスにするとなぜか社会から白い目で見られる。現場を知らない偉い人たちが考えたルールを全部正確に守っていたらビジネスとして成り立たない部分がある。この辺りは本当にわかります。一般の会社がやるからには、利益がないと倒産してしまうのは当然のことで、福祉としてそれは変だ、ダメだと言うなら、それなりの資金を回してくれ!ってことです。予算は無い、でも介護はクリーンで無いと・・というのは矛盾しています。

利益を得るために何をやっても良いというわけでは無いですけどね。詰め込みすぎたり、職員の待遇がひどすぎたり、虐待したり、そういうことになるのは絶対にダメです。

今は待機児童の問題で、保育士の給料が安すぎる、なんて叫ばれていますが、介護士も本当に安いです。労働に見合わない職業ですよね?結局、彼らの善意に甘えている所が大きいと思います。


介護されている人が喪失感を感じて「早く死にたい」と考えるのは何となくわかります。我が子に迷惑をかけるなんて、想像するだけでも辛いです。でもだからといって、<彼>がしたことに賛同はしたくないんですよね。

でも気持ちはわかる・・・・・。

本当に難しい問題ですし、自分もどうやって気持ちを整理したら良いのかわかりません。正義ってなんでしょうね??

色々考えさせられた作品でした。とりあえず、福祉についてルールを決めている偉い人たちに読んでもらいたいものです。


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タグ:葉真中顕

2016年07月20日

藤崎翔「こんにちは刑事ちゃん」

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 藤崎翔 著
 「こんにちは刑事ちゃん」
 (中公文庫)


ベテラン刑事・羽田隆信は後輩の鈴木慎平と殺人事件の捜査中、犯人に撃たれ殉職した―はずだった。目がさめると、なんと鈴木家の赤ちゃんに生まれ変わっていた!?最高にカワイイ赤ちゃんの身体と、切れ味鋭いおっさんの推理力で、彼は周囲で巻き起こる難事件に挑む! 笑って泣ける衝撃のユーモア・ミステリー、誕生!−裏表紙より−


初めましての作家さんです。表紙の絵を見ると「笑わせてやろう!」感が出すぎていて、あまり好みのタイプではないのですが、ネットでの感想を読めば読むほど面白そうに思えて、ついつい買ってしまいました。


あらすじを読んでもわかる通り、禿げたおっさん刑事としてスタートした主人公が後輩刑事の家に誕生した赤ちゃんに生まれ変わってしまいます。

「見た目は子ども、頭脳は大人」というコナンを思い出してしまいますね。この話の場合は「見た目は赤ちゃん、頭脳はおっさん」なので、コナンよりも年齢差が大きいですが・・。

連作短編になっていて、「おっさんの章」から始まり、「ねんね」「寝返り」「はいはい」「あんよ」と続き、最後に「別れの章」があります。一つの章に一つの事件が起きます。

章の名前の通り、赤ちゃんが成長していく過程も描かれていて、中身がおっさんなだけに、身体能力に対する苦労がたくさんあって、その描写が笑えるんです。

でも周りからすれば(中身がおっさんなので)かなりやりやすい赤ちゃんではあります。かわいげがないかもしれませんが。

普通の赤ちゃんと違う・・と悩んでしまう母親のことを気遣って必死で普通の赤ちゃんのような反応しようとする処とか、笑える処がたくさんあります。

鋭い推理力を見せつつ、後輩を助けつつ、事件をスパッと解決していく部分は爽快ですし、なかなか面白い展開が続きます。

そして、最後の「お別れの章」では涙涙・・。別れが来ることはわかっていたのに、つい号泣してしまいました。でもどうやらまた彼は違うものに生まれ変わるようです!

それは第2弾として書く予定だとか。「作者がやる気を失わなければ」的な条件があるようですが、ぜひぜひ書いてもらいたいです。禿げたおっさんが、今度はふさふさモフモフの毛に悩む様子が読みたいです。


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タグ:藤崎翔

2016年06月28日

新宮広明「サマーキャンプ 潜入捜査官・高階紗香の慟哭」

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 新宮広明 著
 「サマーキャンプ 潜入捜査官・高階紗香の慟哭」
 (幻冬舎)


1人目は東京立川に住む主婦。1年前に5歳の息子を幼稚園に預けたまま忽然と姿を消した。2人目は急成長中のディベロッパー勤務エリート社員。彼は半年前、職場のトイレで自殺。そして先々週、司法書士が幹線道路でダンプカーに轢かれ死んだ。一見何の事件性も関係もない3人の残された持ち物からは新興宗教「聖浄心会」のチラシが発見された。謎の教団が事件に関与しているのか。警視庁捜査一課「特殊班4係」の極秘捜査開始。 集団心理の機微をうがつ、骨太社会派ミステリ。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。あらすじを見て面白そうだったので「本が好き」で献本申し込みしました。

帯に「読者は3回騙される!」と書いてありました。こんな風に書かれるとつい身構えてしまいますよね??何かある度に「ここが騙しなのか?」なんて疑いながら読みました。

始めはちょっと入りにくい雰囲気なのですが、高階が本格的に潜入した辺りからは一気に面白くなって引き込まれていく感じがしました。ずっと肩に力が入りながら読んでいく状態が続き、何度か分けないと疲れてしまいました。

ドラマとかで、こっそり忍び込んで何かを探し出す・・みたいな場面ではつい目をそらしてしまうくらい蚤の心臓を持つ私としては、潜入捜査官の話はドキドキが止まらなくなってしまうんですよね。


潜入先は、新興宗教「聖浄心会」。なんだかありそうな名前ですね。キリスト教と仏教の良いとこどりしたような宗教。ってそのまんまやん!と突っ込みを入れたくなるような名前です。

宗教の内容としては何とも薄っぺらい教え!と思うのですが、人間って弱いのに強がるくせがあるせいで、心が折れやすくてつぶれやすい。だからこんな薄っぺらい宗教でも心に訴えかけるような何かがあればはまってしまうのはわかる気はします。

この教団が殺人に関わっているのか?というのが一番の謎なのですが、それよりも教祖の存在すらも謎。どんな教団でも教祖って大事で、その人物を全面に押し出して崇め奉るようにして成り立っていくものだと思うのですが、「聖浄心会」はほとんどの人が教祖を見たことがないという。

まあそのシステムのお陰(?)で謎は深まるし、事件も起きるし、潜入しやすいし・・となるわけですが。


殺人の動機と犯人については、同情はしませんが辛すぎて、読み終わってからもしばらく心が痛い感じがしました。安易な気持ちで起こした事件が色んな人の人生を狂わせてしまう。本当に辛い事件でした。

決して後味の良い話ではありませんが、最後まで楽しめました。楽しめた、と書くのがためらわれるような内容なので難しいですが。


社会派ミステリ、というよりも警察小説が好きな人なら楽しめるかと思います。後味は悪いので、口直しの本を用意してから読まれることをお勧めします。


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タグ:新宮広明

2016年06月22日

天野頌子「よろず占い処 陰陽屋猫たたり」

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 天野頌子 著
 「よろず占い処 陰陽屋猫たたり」
 (ポプラ文庫ピュアフル)


傷心の妖狐高校生、沢崎瞬太の夏休みは今年も補習とともに始まった。まったくやる気の出ないなか、陰陽屋に持ち込まれたのはアラフォー女子の恋愛相談。冷たい対応の店主安部祥明に対して、やけに相談者に感情移入する瞬太だがその理由は・・?また、行方をくらましていたバーテンダー葛城が帰ってきた。頼まれていた人捜しにも進展があり、化けギツネの仲間にぐっと近づいた瞬太たちなのだった。すっかりおなじみになった珍妙コンビの人気シリーズ第七弾!−裏表紙より−


シリーズも7作目になり、このほのぼの感に飽きて来てしまいました・・。

でも本当はまだ続くんですよね〜。

とりあえず、瞬太の仲間が出てきそうで出てこないまま進んでいきますし、片思いの相手との関係については「もうあきらめたら?」と冷たく思ってしまうくらいどうでもよくなっていますし・・。

今回もあまり大きな進展がないまま終わってしまいました。

瞬太の留年問題だけは何とかクリアできましたけど、まだまだ油断禁物です。

このシリーズはどうなったら終わりになるんでしょうね??ゴールが見えなくなりました。


続きはどうしようかな?? 

保留にしておきます。


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タグ:天野頌子

2016年05月17日

ヒキタクニオ「触法少女」

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 ヒキタクニオ 著
 「触法少女」
 (徳間文庫)


幼い頃、母親に棄てられた過去をもつ深津九子。児童養護施設から通う学校では、担任が寄せる暗い欲望を利用して教師を支配していた。同じクラスの西野も九子の下僕だし、里実からは憧れの対象として崇められていた。ある日、母親の消息を知るチャンスが巡ってきた。運命は激しく動き出す。母親なんていらない。戦慄だけでは終わらない、読者の心を震わせる書下し長篇完犯罪ミステリー!
−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

帯に「人を殺しても罰せられない魔法 それが刑法第41条」と書いてあったので、未成年しかも10代前半くらいの少女が殺人を犯す物語だろうと想像できていましたが、始めから終わりまでなかなか暗い内容でした・・。


主人公の九子は、母親に棄てられた少女。父親のことも知らずに育ちました。彼女は見た目がかなり美人らしく、それを自分でもわかっていてうまく利用して暮らしています。

担任や同級生の男子を手玉にとる感じはゾッとしました。中学生でこんな状態だったら大人になったらどうなるんだ!?と心配してしまいました。


幼い頃に虐待されて育つとこうなってしまうのか・・と思うと、かわいそうになるのと同時に親に対して激しい怒りを感じました。

人を殺すことはいけない、でも殺したい気持ちになるのはわからなくもない、そんな気分にさせられました。私は不自由なく幸せに育ったので、九子の気持ちなんて本当はわからないとは思います。でも自分がもしこんな目にあったら・・・と考えると、想像するだけでも泣けてきます。

虐待された子どもがみんなこうなるわけではないでしょうが、やはり心の傷は大きいでしょう。・・なんて、私が書いても何の説得力もないんですよね。

感想が書きにくい作品です。


単純に、完全犯罪を描いただけではなく、意外などんでん返しのようなものもあって、最後まで気が抜けない展開でした。

ただ、最後まで読み切っても、結局誰も救われていないよな・・と思うと悲しい気持ちになりました。


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2016年04月21日

長岡弘樹「教場」

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 長岡弘樹 著
 「教場」
 (小学館文庫)


希望に燃え、警察学校初任科第九十八期短期課程に入校した生徒たち。彼らを待ち受けていたのは、冷厳な白髪教官・風間公親だった。半年にわたり続く過酷な訓練と授業、厳格な規律、外出不可という環境のなかで、わずかなミスもすべて見抜いてしまう風間に睨まれれば最後、即日退校という結果が待っている。必要な人材を育てる前に、不必要な人材をはじきだすための篩。それが、警察学校だ。−裏表紙より−


この作家さんの作品を読むのは3作目。話の舞台は警察学校で、生徒たちにスポットを当てた連作短編になっています。

この作家さんが描く人物は、謎の行動をすることが多く、しばらく「何してるの?」と疑問がいっぱいになります。そして、最後になぜこんな行動をとったのかが明かされて「なるほど!」となるのです。

今回は教官の風間がそのタイプの人で、彼の行動一つ一つが謎だらけでした。登場の仕方からして謎な人でしたし。でも実は生徒のことを色々考えていることがわかり、感動することが多かったです。ただ、今までと違ってそこまで温かい人でもなくて、切り捨てる所は切り捨てる所がちょっと冷たい気もしました。

でもそこまで厳しくして無理そうな人はサッサと切り捨ててあげた方が本人のため、ということもあるでしょうけど。警察官という自分に厳しくいないといけない職業ですから余計にそうなのかも。


少しのミスも許されない環境で過ごす生徒たちのストレスは計り知れないもので、教官が見ていない所で生徒同士でもめるのは仕方ないことなのかもしれませんが、中には仕返しの仕方がエグイ物もあって、読んでいて顔をしかめることもありました。

障害が残るようなやり方はどうなんだ!?と思いつつも、やられた方の心の傷も深いだろうし、何とも言えない後味の悪さもありました。

最後の話では、脱落者もいましたが、卒業生たちには警察官として活躍していくであろう未来が見えてうれしくなりました。

新たな学生たちも入校してきて、彼らにもまた問題が起こるのでしょうが・・。


それにしても、警察官ってみんなこんな過酷な生活をしたのですかね?? なのに、たまに不祥事が起きるのはなんでだろう?すごく不思議です。これを乗り越えられたなら、その後の生活もきちんとできそうなのに。やはりストレスのせいなのか?

それだけ難しく厳しい職業ってことでしょうか?


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タグ:長岡弘樹

2015年12月11日

丸山正樹「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」

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 丸山正樹 著
 「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」
 (文春文庫)


仕事と結婚に失敗した中年男・荒井尚人。今の恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一の技能を活かして手話通訳士となる。ろう者の法廷通訳を務めていたら若いボランティア女性が接近してきた。現在と過去、二つの事件の謎が交錯を始め・・・。マイノリティーの静かな叫びが胸を打つ。衝撃のラスト!−裏表紙より−


初めましての作家さんです。読書メーターで知った作品なのですが、あとがきによると読書メーターで人気が出たそうです。なるほど・・その流れに乗ったわけですね。

内容が面白そうだと思ったのと、手話の世界に少し興味があったので読んでみたわけですが、知らないことがいっぱいあって驚きました。

まず、手話に種類がいくつかあるということ。日本と海外では違う手話なんだろうとは思っていましたが、まさか日本語の中でも種類があるとは。しかも手話通訳の人と、ろう者が使う手話が違うとは!

ろう者はより一層苦労して理解しているのか、と思うとなんでこんな状態になったのか?不思議でなりません。

確かにろう者が使う「日本手話」は顔の表情や眉の上げ下げなんかでも表現するということなので、健常者には難しいのでしょうが。


そして、題名にも入っている「デフ」という言葉も知りませんでした。ろう者のことを Deaf と呼ぶそうです。


更に、この物語の主人公・荒井もそうなのですが、「コーダ」という言葉。これも知りませんでした。Children of Deaf Adults の頭文字を取って付けられた言葉で、「聞こえない両親から生まれた聞こえる子ども」だそうです。

このコーダの孤独が細かく描かれていて、読むのが辛い場面もありました。1人聞こえると大事にされるかと思ったらそうでもないんですね・・。そうか、異質な物になるのか・・と妙に感心してしまいました。


主人公が暗い過去をもっているせいで、全体的に暗い雰囲気が漂っている作品ではありますが、知らない世界を知ることができる喜びと、ミステリになっているので、どんな結末になるのかが気になることもあって、次々と読み進めることができました。

「法廷の手話通訳士」という副題のわりには、あまり法廷のシーンが無かったのが残念ではありますが、もしかしたらまた続編というか、シリーズ化でもして書いてくれるのかな?と期待してしまいました。


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タグ:丸山正樹