2023年10月24日

吉永南央「薔薇色に染まる頃」紅雲町珈琲屋こよみ

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 吉永南央 著
 「薔薇色に染まる頃」紅雲町珈琲屋こよみ
 (文春文庫)


一度は売ったものの、手放したことを後悔していた帯留。それが戻ってきたと「小蔵屋」を営むお草のもとに連絡がくる。さっそく東京の店に向かうが、そこで、旧知のバーの雇われ店長が殺されたという話を耳にする。その後、お草は、新幹線の車中で何者かに追われている母子に出会い、事態は思わぬ方向へ・・。人気sリーズ第10弾!−裏表紙より−


10作目です。前作もそうでしたけど、少しずつ内容がハードになってきた感じがします。

今回はそれにも増してアクション要素も。高齢なお草さんには無理なんじゃないか?という問題にまで首を突っ込んでしまいます。よくぞご無事で!とホッとしました。

今までも読んでいて急に場面が変わったり、時間が飛んだのか?というような急展開があったり、ちょっとついて行けない時があったのですが、今回はそれが一段と激しくてかなりおいて行かれた感じがありました。

急に出てくる帯留めと、それを怪しげな質屋が連絡してきて買い戻しに行って、いつの間にそんな話になったんだ?と疑問がわきました。更にその店の近くで昔とある男の子と関りがあったようで、その話も突然出てくるので「これは何が起きているの?」状態でした。

いつもはそういう急展開があっても読み進めたらそのうち理解出来てくるのですが、今回は置いて行かれたまま話がどんどん進んで行き、しかも突然知らない子どもと逃避行が始まるという展開。

ずっと頭に「?」が浮かんだまま、でもお草さんのことが心配で、無事に帰って来てほしくて、必死で次々読み進めました。

ハラハラドキドキの展開が続いたのですが、突然あっさりと終了するところはこのシリーズらしいのかもしれません。

ミステリとかハードボイルドとかだとここから更に裏切られて、誰を信じたら良いんだ?的な展開になりそうなものですけど、良い人は良い人でちゃんとお草さんを助けてくれて終了。ある意味良い展開ではありますけど、物足りなさもあるかも。でもこのシリーズであればこれで良いかな。


まだまだ頭の展開は早いし、頭がキレるし、杖をついている割にはしっかり動けるし、お草さんの活躍は続きそうです。今後の展開も楽しみです。


<紅雲町珈琲屋こよみ>
「萩を揺らす雨」
「その日まで」
「名もなき花の」
「糸切り」
「まひるまの星」
「花ひいらぎの街角」
「黄色い実」
「初夏の訪問者」
「月夜の羊」


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2022年12月16日

吉永南央「紅雲町珈琲屋こよみ 月夜の羊」

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 吉永南央 著
 「紅雲町珈琲屋こよみ 月夜の羊」
 (文春文庫)


コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営むお草は、朝の散歩の途中、“たすけて”と書かれた一枚のメモを拾う。折しもその日の夕方、紅雲中の女子生徒が行方不明に。その後、家出と判明するが、では助けを求めているのは、いったい誰なのか?日常に潜む社会のひずみを炙り出しつつ、読む人の背中を押してくれる人気シリーズ第9弾。−裏表紙より−


いつものように日課の散歩をしている途中で「たすけて」と書かれたメモを拾ったお草さん。いたずらとも思えず、別の日にも近くを通ってみると不審な家を発見します。

とりあえず中を覗いてみると女性が倒れていました。慌てて救急車を呼んで対応し、のちに病院へも行ってみます。そういうところがお草さんらしいというか、そこまでお節介やくか?と驚いてしまいます。

でも中年というか老年に近い女性が一人で倒れていたことを心配する気持ちはわからなくはないですけど。


その女性との関わりが意外な展開に。

ひきこもりに学校の校則に、若者たちを取り巻く色々な問題が取り上げられ、お草さんと共に考える内容になっていました。

話があちこち跳ぶ感じがするのと、誰が何?という場面が多々あるのもこのシリーズらしいです。


「あれ?どういうことだろう?」と思ってもそこであまり悩まず読み進めるときっと解決されるので、慣れると読みやすくなるとは思います。

今回あまり食器が売れず、試飲のお客さんが多かったような。

経営は大丈夫だろうか?と変な心配もしてしまいました。


色々お節介を焼きつつ、最後には「自分で考えなさい」と放置するお草さんの対応はある意味、親切なのでしょうし、この対応の仕方って実際にはやりにくいでしょう。それをさらりとやれてしまうのはやはり年の功かな?


続きも楽しみです。久実ちゃんの恋愛もまだまだ不安定なのでそちらも気になります。


<紅雲町珈琲屋こよみ>
「萩を揺らす雨」
「その日まで」
「名もなき花の」
「糸切り」
「まひるまの星」
「花ひいらぎの街角」
「黄色い実」
「初夏の訪問者」


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2021年12月22日

吉永南央「紅雲町珈琲屋こよみ 初夏の訪問者」

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 吉永南央 著
 「紅雲町珈琲屋こよみ 初夏の訪問者」
 (文春文庫)


お草が営む紅雲町の小蔵屋では、近頃町にやってきた親切で物腰がスマートな男のことが話題になっていた。ある日、その男は小蔵屋を訪ね、お草に告げた。「私は、良一なんです」。お草が婚家に残し、三歳で水の事故で亡くなった息子・良一。男はなんの目的で良一を騙るのか、それとも・・。ほろ苦くも胸を打つ人気シリーズ第8弾。−裏表紙より−

あらすじを読んでびっくり! まさかの出来事です。でももし本当に生きていてくれたらどんなに良いか、と期待してしまいました。

お草さんはさすが母親だからわかるのか、ほとんど動じることなくその言葉を聞いていました。でも実は息子が事故で亡くなった時、遺体を見ていなかったそうで、そんなことを聞いたらますます本当に息子なんじゃないの!?と期待が膨らみます。

でも冷静なお草さんは、なぜ彼がそんな発言をしたのか、どんな目的があるのかを冷静に聞いていきます。昔の手紙を見せられたり色々証拠という物を出してくる彼に、静かに諭すお草さん。

何より、久実ちゃんにも相談しませんし、親友にも言わないところが強い。

誰にも心配かけず、静かに動向を見守って対処していきました。


彼にまつわるアレコレ以外に、久実ちゃんの恋も色々あります。彼氏はなかなかの好青年っぽいので応援したいところですが、このままで良いのか?と不安になる出来事も。

久実ちゃんにはいつも笑っていてほしいです。


お草さんのお店はお客さんもたくさんついていて、売れ行きも好調です。これからも素敵なお店とお草さんの様子を読んでいくのが楽しみです。


<紅雲町珈琲屋こよみ>
「萩を揺らす雨」
「その日まで」
「名もなき花の」
「糸切り」
「まひるまの星」
「花ひいらぎの街角」
「黄色い実」


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2020年12月23日

吉永南央「黄色い実 紅雲町珈琲屋こよみ」

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 吉永南央 著
 「黄色い実 紅雲町珈琲屋こよみ」
 (文春文庫)


お草の営む「小蔵屋」の頼れる店員・久実。なぜか男っ気のない久実にもついに春が・・? 浮きたつ店に元アイドルの女性が店の敷地内で暴行を受けたという衝撃のニュースが飛び込んでくる。容疑者は地元名士の息子。そして、暴行現場で拾った「あるもの」がお草と久実を悩ませることになる。心に勇気の火を灯す人気シリーズ第7弾。−裏表紙より−


今回はまた重い重いお話でした。

どっしりと構えて受け止めるお草さんの姿が頼もしいような、もう少し何とかしてあげて欲しかったような、複雑な心境になりました。


可愛らしくて、性格はさっぱりとしている久実ちゃんですが、今まではなぜか男性の影がなく。でも前作からちょっと良い感じになってきたかな?という人が現れてきました。

よくしゃべって、お草さんとも雇い主と雇われ人という関係ではなく、本当の母子のように仲が良いのに、意外とプライベートのことは話していなかったんだということに気づかされました。

お草さんがちょっと話題を振ってもごまかす感じが続いて、読んでいてもどかしい気持ちにさせられました。


そんなときに起きたのが、元アイドルの女性が暴行を受けた事件。小蔵屋の駐車場内で起きたということで、店の中にも暗い空気が・・。

現場を見に行ったお草さんが拾ったのは、久実ちゃんが身に着けていたある物で、もしかして・・という不安がよぎります。

お草さんが突っ込んで聞いてもはぐらかす久実ちゃん。内容が内容だけにあまり強くも聞けず、うやむやのまま時が過ぎていきます。

そして、気付けば被害者のはずが加害者になっている?という状況にまでなってしまい、読んでいても苦しくなってしまいました。


何で被害者の女性ばかりが苦しまないといけないのか! 本当に犯人には腹が立ちます。自分の欲望のために人生を棒に振る上に、相手の人生も壊してしまう、そのことにしっかり気づいてもらいたいものです。

同じ女性としては読むのが辛い内容でした。

次はもう少し軽めに進めてくれたら良いな。


<紅雲町珈琲屋こよみ>
「萩を揺らす雨」
「その日まで」
「名もなき花の」
「糸切り」
「まひるまの星」
「花ひいらぎの街角」


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2019年11月13日

吉永南央「花ひいらぎの街角 紅雲町珈琲屋こよみ」

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 吉永南央 著
 「花ひいらぎの街角 紅雲町珈琲屋こよみ」
 (文春文庫)



「小蔵屋」を営むお草のもとに、旧友の初之輔から小包が届く。中身はかつて彼が書いた小説に絵を添えた巻物。お草はその小説を活版印刷の本にしようとして、制作を依頼した印刷会社の個人データ流出事件に巻き込まれ、さらに周囲の人々の<過去>を辿ることに・・。お草さんの想いと行動が心に沁みる一冊。シリーズ第6弾。
−裏表紙より−


前作は展開が早くて面白かったのですが、今回はお草さん自身の問題ではないことが多くて、もどかしい気持ちにもなりました。

メインで描かれるのは、旧友の書いた小説を、こっそりと活版印刷の本にしてプレゼントしてあげよう!というお草さんの素敵な企みについてなのですが、それ以外にも色々と。

中でも久実ちゃんの恋愛模様については、うまくいってほしくて「お草さん何とかしてよ〜!」ともどかしい気持ちが出てしまいました。でも私の思いが届くわけもなく、お草さんは人生経験豊富なので、ほとんど口出しすることもなく、ひっそりと応援するにとどまります。

背中を押してあげたら良いのにとも思いますが、背中を押されて付き合ってもそんなにうまくいくとも思えませんね・・。この件は何とも苦い苦しい終わり方になってしまいました。


また、印刷会社の事件にも巻き込まれてしまいます。そこは複雑になってしまって、イマイチわからない展開だったのですが、活版印刷で本を作るって素敵だなというのはよくわかりました。

推理小説なんかだと雰囲気が違うでしょうけど、恋愛小説や時代小説なんかだったら合いそうです。

本の装丁を考えるのも楽しそうです。私自身には文章を書く能力は無いのですが、誰かのために本を作ってあげるというのは楽しそうです。売れ行きを考えないで良いなら楽しそう。


最後には、旧友とお草さんに何か起こるのか?と予想していたのですが、特に何が起こるでもなく、ふんわりと良い感じで話は終わりました。素敵なプレゼントが出来るセンスのあるお草さんは本当にかっこいいですし、あこがれます。


まだ続きがありそうです。文庫になったら読んでいきます。


<紅雲町珈琲屋こよみ>
「萩を揺らす雨」
「その日まで」
「名もなき花の」
「糸切り」
「まひるまの星」

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2018年08月20日

吉永南央「まひるまの星 紅雲町珈琲屋こよみ」

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 吉永南央 著
 「まひるまの星 紅雲町珈琲屋こよみ」
 (文春文庫)


紅雲町では山車蔵の移転問題が持ち上がり、お草が営む小蔵屋の敷地が第一候補に。話し合いが必要だが、お草は母の言いつけで「うなぎの小川」とは絶縁状態で、話し合いができない。かつては親友だった女将と亡母の間に、なにがあったのか。紅雲町を歩き回るうち、お草は町全体に関わる重い事実にたどり着く。シリーズ第5弾。−裏表紙より−


5作目になるこのシリーズ。今作が今までで一番展開が激しくて面白かったかも。お草さんも行動的でしたし。ただ、お年寄りですから、無理しすぎてハラハラするところもあったのですが。もっと久実ちゃんに任せても良いのかな?とも思いました。

ちょっと気弱になる場面もあったので、もっと元気なお草さんが読みたかったです。でも話の内容としては面白かったです。


紅雲町の山車蔵を移転しなければならないことになり、古い契約のせいで小蔵屋の敷地が第一候補にされてしまいます。さすがに敷地内に山車蔵が出来てしまったら営業は続けられないので、閉店することになるかも!?という事態に。

お草としては「まあそれも仕方ないか」と諦めの気持ちにもなっていたのですが、久実を始め常連たちからの強い要望もあって、他に候補地はないか?と一通り探ることになりました。

そこで候補に挙がったのが、「うなぎの小川」の向かい側にある工場跡地。そこに移動させたら便利なことも多いと思われたのですが、実は小川の女将と絶縁状態になっているお草が関わっているせいでなかなか移転させられそうにもありません。

誰とでも大抵仲良くやっていけるはずのお草がどうして小川の女将と絶縁状態なのか? そこには亡き母の言いつけがありました。昔は親友だったはずの女将と亡母との間には何があったのか? 亡き母が遺していった女将に渡すはずの着物も引き出しにあるのを見つけて複雑な心境になってしまいます。


普段は慎重なお草さんですが、お母さんのことが絡むと冷静ではいられないようです。心のどこかでは「亡くなった人のことをいつまでも気にしたって仕方ない」と思っているのですが、その相手が母親となると無下にも出来ず・・。

その気持ちはわかりますが、何せ亡くなっているので詳しい事情を聞けなくて大変な苦労を強いられることに。


最後には、一個人ではなく町全体に関わる大きな出来事になってしまいますが、それぞれが反省すべき点は反省して進んでいきそうなので丸く収まって良かったです。

お草さんの元気な姿にもまた会えそうなので、続きを楽しみにしておきます。

<紅雲町珈琲屋こよみ>
「萩を揺らす雨」
「その日まで」
「名もなき花の」
「糸切り」


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2017年02月09日

吉永南央「糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ」

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 吉永南央 著
 「糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ」
 (文春文庫)


紅雲町のはずれにある小さな商店街。通称「ヤナギ」が大家の発案で改装されることになった。手掛けるのは新進気鋭の女性建築家だという。長年の客で、数日前に店の前で車に轢かれそうになったお草も改装話を見守っていたが、関係者それぞれの<秘密>と思惑が絡んで計画は空中分解寸前に―。大好評シリーズ、待望の第4弾!−裏表紙より−


今回もしっとりした雰囲気の中話は進んでいきました。ただ、いつもより不穏な空気もあって驚かされることも。悪人の出てこないシリーズだったのに、若干悪い人も登場。まあ彼も根っからの悪人では無かったわけですが。

人間関係が複雑で、誰が誰の子どもだっけ?とか、誰と誰が友人で、誰と誰が知り合い?というのがだんだんわからなくなって混乱することもありました。

そんなに登場人物が多いわけでは無かったのに・・。お草さん視点で描かれるから、人物の年齢もわかりにくかったです・・。


お草さんは相変わらず元気なご老人です。でも自分の年齢についてしっかり理解はできていて、無理はしませんし、年齢以上に諦めることもしません。

うまく休憩もとりながら、適度に動いて、新しい物にも挑戦して、本当に素敵なお年寄りです。


今回の商店街の改装についても、気づけば巻き込まれているのですが、どこで意見を言うべきか、黙っているべきかよく心得ているので、うまくアドバイスしながら手伝っていきます。

それぞれの思惑を全て理解していたのは実はお草さんだけだったのかも。若い人には出来ない関わり方で、うまく丸く収めた感じがしました。何ともできない問題はありましたが・・。


続きもあるようなので、楽しみに待つことにします。

<紅雲町珈琲屋こよみシリーズ>
「萩を揺らす雨」
「その日まで」
「名もなき花の」


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2014年08月11日

吉永南央「名もなき花の 紅雲町珈琲屋こよみ」

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 吉永南央 著
 「名もなき花の 紅雲町珈琲屋こよみ」
 (文春文庫)


小蔵屋を営むお草は、新聞記者の萩尾の取材を手伝って以来、萩尾と、彼のライフワークである民俗学の師匠・勅使河原、その娘のミナホのことが気にかかっている。15年前のある〈事件〉をきっかけに、3人の関係はぎくしゃくしているらしいのだ。止まってしまった彼らの時計の針を、お草は動かすことができるのか。好評第3弾!−背表紙より−

前作を読んでから1年半くらい経っているので、主な登場人物以外は忘れてしまっていて、これは誰だろう?と悩みながら読み進める感じでした。

特に萩尾と勅使河原先生の2人は誰??状態でした。前回も出てきたんでしょうね・・。


今回も連作短編になっていて、1話毎に違う事件が起きるのですが、ずっと萩尾やミナホ、勅使河原の関係は続いていきます。お草さんは何だか今までよりもパワーダウンしたような気がしました。

今までならもっと早く踏み込んで、突き放して、お草さんの想いを伝えて解決していたと思うのですが、今回はとても奥ゆかしいというか、おとなしくて遠くから見守っていることが多かったです。

まあ確かにむやみに踏み込んで行ってどうにかなる問題でもなかったわけですけどね。

今現在起きた事件ならば、お節介を焼いて解決できますけど、今回の場合は過去の話なので、さすがに難しかったようです。読んでいても3人の気持ちがすれ違っているのがもどかしくて、イライラする所もありました。

こんなにすれ違っているなら近くにいなければいいのに、とても近くにいる人たち。わだかまりはあってもやはりお互い気にかかる存在のようです。

人の気持ちって複雑でややこしいですね。読みながらそんなことを考えてしまいました。それは年齢を重ねても解決していかないことなのかもしれません。


今回は店員の久実ちゃんの活躍があまり見られず残念でした。次ではもっとパワフルに活動してもらいたいです。そして、元気なお草さんにまた会いたいです。


<紅雲町珈琲屋こよみシリーズ>
「萩を揺らす雨」
「その日まで」



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2012年11月29日

吉永南央「その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ」

その日まで

 吉永南央 著
 「その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ」
 (文春文庫)


コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」の近くに、ライバル店「つづら」が開店した。つづらは元和菓子屋だったが、近隣では経営難のオーナーから詐欺まがいの手口で土地家屋を買い叩く業者グループがいるという噂がある。小蔵屋を営む気丈なおばあちゃん・杉浦草は、背景を調べ始めるが・・・。人気シリーズ第2弾。−背表紙より−


第1弾と同じように、元気に動き回るお草さん。ただ、今回は事件自体が結構ハードな内容なので、前作のように鮮やかに解決!というわけにはいきませんでした。

短編ではありますが、全て同じ事件に関与していることばかりになっています。


今回は、近所にライバル店が出来たことでお草さんの気持ちが揺れてしまうことに・・。ライバル店なんか怖くないはずなのに、どうしても心が乱れる・・そんな様子が何度も出てきて、少し心配になることもありました。

でも、やはり色々な経験を積んできて今のお草さんがあるわけで、問題を抱えた人に寄り添ったり突き放したりしながら、いい方向へ導いていきます。

従業員の久実さんも相変わらず元気で明るく、正義感が強く、お草さんを助けて働いています。そんな彼女に今回は少し変化もありました。


お草さんのパワフルな言動にちょっと笑わせられながら、時にはほろりとさせられたりもあり、とても楽しく読み切ることができました。


今回、お草さんとは違う人なのですがとても印象に残った言葉があったので書き出しておきます。

自閉症の子どもとあそぶボランティアをしていた女子大生にお草さんが「なぜボランティアをしようと思ったのか?」と質問したときに返ってきた答えです。
「自分のためですよ。余ってる時間と気持ちを、誰かのために使いたかったんです。つまり、したいことをしてる。だから、自分のため」
・・・なるほど、そう考えれば結果がすぐに出なくても、前向きにいられるかもしれないな、と感心しました。


続きもあるそうなので、また楽しみに文庫化を待つことにします。

<紅雲町珈琲屋こよみシリーズ>
「萩を揺らす雨」



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2011年05月21日

吉永南央「萩を揺らす雨」

萩を揺らす雨

 吉永南央 著
 「萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ」
 (文春文庫)



紅雲町にあるコーヒー豆と和食器を販売する店「小蔵屋」。この店を経営する杉浦草は、気丈で行動力もある76歳のおばあさん。彼女が解決する日常のちょっとした謎が書かれた短編集。「紅雲町のお草」「クワバラ、クワバラ」「0と1の間」「悪い男」「萩を揺らす雨」計5編収録


表紙の絵を見ると明るくて軽い話なんだろうな・・と思うのですが、題名はしっとりしている。このギャップが気になって、なかなか手に取らなかったようです。

中身は、題名がすごく合うしっとりした話ばかりでした。


主人公のおばあちゃん・お草さんは、おばあちゃんと呼ぶのをためらうくらい元気でアクティブな女性。でも、年相応のどっしりとした雰囲気も持ち合わせていて、理想のおばあちゃん像と言えるかもしれません。

家族も居なくて身軽なので、両親が亡くなったのを機に、雑貨店だった所を改装し、夢だったコーヒー豆と和食器を売る店にしました。それが65歳のとき。

それからは客と良い距離を保ちながら、会話を楽しんだり静かな時間を共有したりして店を経営しています。

客たちが話す内容を聞いて、謎を解明しようとすることで話は進みます。

老人とは思えない身軽さで歩いて調査をするお草さん。でも、警察官に職務質問されることも・・。老人でなければ不審に思われないはずなのに、老人が1人でウロウロしているとそれだけで声を掛けられる。徘徊老人と間違えられるんです。

そんなときにお草さんは、警察官を怒鳴りつけてしまうのです。こういう話では、冷静に諭したり、逆に素直にボケた振りをして付いて行ったりする・・というパターンが多いと思うのですが、お草さんは怒鳴りつけて逃げ出す。

その展開に驚かされながらも、一気にお草さんが好きになりました。


お草さんの「自分はまだまだ若い」と思いたい気持ちと「でも自分は年老いた」と感じる、その葛藤が事件の合い間に書かれていて、それがこの話を重く深い物にしている感じがしました。

明るくあっさり読める話ではありませんが、それでもあっという間に読めてしまう話でした。


続編も出るようなので、文庫化されるのを楽しみに待つことにします。


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