
今村翔吾 著
「蹴れ、彦五郎」
(祥伝社文庫)※電子書籍
駿河今川氏の家督を継いだものの、彦五郎氏真は隣国の圧迫に抗し切れず没落の一途を辿る。苦難の日々の中、氏真は近江の地で子どもたちの師となり、その未来に明るい光を見る。しかし、天下人・織田信長は、氏真が心通わせた子らを殺害。蹴鞠の名手である氏真が信長に見せた、最後の意地とは・・(「蹴れ、彦五郎」)小田原征伐で奮戦した北条氏規を描いた「狐の城」、信玄が廃嫡した武田義信の苦悩の物語「晴れのち月」、江戸を築いた太田道潅を綴る「瞬きの城」など、珠玉の八編を収録。−出版社HPより−
短編集とは知らずに読み始め、1話目の彦五郎のことが気に入ってしまったので、話が短くて残念でした。
題名から想像できるように、彦五郎は蹴鞠の名手です。普段は温和で争いごとが苦手な優しい人物で、鞠を蹴るのが唯一の楽しみという感じなのですが、実は県農でもすごい、という映像化したら面白そうな人物です。
戦国時代の只中、武士として生まれたら武士として生きる以外に道がない時代。そんな時代に生まれなければもっと違う人生があったのかもしれないとしみじみ思わされました。
彼のような人物が世の中を動かしていたら、今の日本も違っていたのかもしれないとも思います。権力を握ったら変わるのかもしれませんが。
他に印象に残っているのは「晴れのち月」という話。武田信玄を父に持つ義信の苦悩が描かれています。親が大人物だと子どもは苦労します。それは今の世の中でも同じですが。
この時代では一つの国を動かすことになるので、より比べられてしまうのは仕方がないですが読んでいて辛い部分がたくさんありました。
義信がどこか抜けているような人物だったら良かったのですが、父親に負けず劣らずの優秀ぶりだったので余計に辛い。
しかも父親からも怖れられる優秀さとくれば大変なのもわかりますよね。
この時代、肉親が肉親を殺害することも普通にあることで、大人物である父親からすれば、その身分を脅かす存在は消してしまいたいもの。
少し意見を言っただけで睨まれてしまうので生きづらいと思います。
彼も違う時代に生まれていれば、武田信玄という偉大な人物の元に生まれなければ、もっと力を発揮して天下をとっていたかもしれません。
どの話も短いながら読み応えはありました。
ただ、読み終わってから時間が経ちすぎて、すでに忘れ気味・・
また機会があれば読み直してみたいです。
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