2024年09月04日

今村翔吾「蹴れ、彦五郎」

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 今村翔吾 著
 「蹴れ、彦五郎」
 (祥伝社文庫)※電子書籍


駿河今川氏の家督を継いだものの、彦五郎氏真は隣国の圧迫に抗し切れず没落の一途を辿る。苦難の日々の中、氏真は近江の地で子どもたちの師となり、その未来に明るい光を見る。しかし、天下人・織田信長は、氏真が心通わせた子らを殺害。蹴鞠の名手である氏真が信長に見せた、最後の意地とは・・(「蹴れ、彦五郎」)小田原征伐で奮戦した北条氏規を描いた「狐の城」、信玄が廃嫡した武田義信の苦悩の物語「晴れのち月」、江戸を築いた太田道潅を綴る「瞬きの城」など、珠玉の八編を収録。−出版社HPより−


短編集とは知らずに読み始め、1話目の彦五郎のことが気に入ってしまったので、話が短くて残念でした。

題名から想像できるように、彦五郎は蹴鞠の名手です。普段は温和で争いごとが苦手な優しい人物で、鞠を蹴るのが唯一の楽しみという感じなのですが、実は県農でもすごい、という映像化したら面白そうな人物です。

戦国時代の只中、武士として生まれたら武士として生きる以外に道がない時代。そんな時代に生まれなければもっと違う人生があったのかもしれないとしみじみ思わされました。

彼のような人物が世の中を動かしていたら、今の日本も違っていたのかもしれないとも思います。権力を握ったら変わるのかもしれませんが。


他に印象に残っているのは「晴れのち月」という話。武田信玄を父に持つ義信の苦悩が描かれています。親が大人物だと子どもは苦労します。それは今の世の中でも同じですが。

この時代では一つの国を動かすことになるので、より比べられてしまうのは仕方がないですが読んでいて辛い部分がたくさんありました。

義信がどこか抜けているような人物だったら良かったのですが、父親に負けず劣らずの優秀ぶりだったので余計に辛い。

しかも父親からも怖れられる優秀さとくれば大変なのもわかりますよね。

この時代、肉親が肉親を殺害することも普通にあることで、大人物である父親からすれば、その身分を脅かす存在は消してしまいたいもの。

少し意見を言っただけで睨まれてしまうので生きづらいと思います。

彼も違う時代に生まれていれば、武田信玄という偉大な人物の元に生まれなければ、もっと力を発揮して天下をとっていたかもしれません。


どの話も短いながら読み応えはありました。

ただ、読み終わってから時間が経ちすぎて、すでに忘れ気味・・
また機会があれば読み直してみたいです。


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2024年04月24日

今村翔吾「玉麒麟 羽州ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「玉麒麟 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社文庫)※電子書籍


侍火消にして府下十傑に数えられる鳥越新之助。新庄の麒麟児と謳われたぼろ鳶組”頭取並は、闇に堕ちたのか?豪商一家惨殺及び火付けの下手人として手配された新之助は、一家の娘を人質に逃亡を続け、火盗改、江戸の全火消の包囲を次々と打ち破っていく。一方、幕府の命で動きを封じられたぼろ鳶組頭取松永源吾は、仲間のため、己のため、決意を胸に立ち上がる。書下ろし長編時代小説。−出版社HPより−


このシリーズ、すっかりはまっています。ただ・・・巻数を書いてほしい! 毎回「次に読むのはどれだ??」と悩まないといけないのがややこしいです。

今回の主役(ヒーロー)は、新之助。普段はヘラヘラ笑っていて、ほとんど怒らず温厚な性格で、頼りない面ばかりが目立つ彼ですが、実は剣の腕は超一流なので、剣が必要な事態になった時はかなり頼れる存在でもあります。


ムードメーカー的な役割もあり、常に笑顔でみんなからいじられる存在。特にお頭である源吾の妻・深雪からは常に厳しく当たられています。でもそれは愛のあるいじりという感じで、2人の掛け合いは微笑ましい場面です。


そんな彼が今回、豪商の一家を惨殺して更には火付けまで行った犯人として江戸中の火消や火盗改などから追われることに。しかも、その家の娘を攫って逃げているという最悪な状況。

いきなり彼が逃げている場面から始まるので驚かされます。もちろん、絶対に何か事情があったのだろうことは読者にはわかりますが、そこからハラハラドキドキの展開が続きます。

仲間たちは彼を助けようと動き出そうとしますが、なぜか軟禁状態にされてしまうぼろ鳶たち。明らかに何らかの大きな力が働いているのがわかります。


動けないぼろ鳶たちに代わって動いてくれたのは長谷川平蔵。ありがたい存在です。そして、他の組の火消たちも新之助がそんなことをするはずがないと信じてしっかり守ってくれます。


真相が明らかになると、なるほど彼らしいという感じで、何だか笑顔になってしまいました。ハメた人物には怒りしかありませんが。


彼の人柄の良さが存分に味わえる作品で、最後まで面白かったです。


<羽州ぼろ鳶組シリーズ>
「火喰鳥」
「夜哭鳥」
「九紋龍」
「鬼煙管」
「菩薩花」
「夢胡蝶」
「狐花火」


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2024年01月15日

今村翔吾「童の神」

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 今村翔吾 著
 「童の神」
 (ハルキ文庫)※電子書籍


「世を、人の心を変えるのだ」「人をあきらめない。それが我々の戦いだ」-平安時代「童」と呼ばれる者たちがいた。彼らは鬼、土蜘蛛・・などの恐ろしげな名で呼ばれ、京人から蔑まれていた。一方、安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の最中に、越後で生まれた桜暁丸は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓っていた。そして遂に桜暁丸は、童たちと共に朝廷軍に決死の戦いを挑むが―。差別なき世を熱望し、散っていった者たちへの、祈りの詩。第一〇回角川春樹小説賞(北方謙三、今野敏、角川春樹選考委員大激賞)受賞作にして、第十六〇回直木賞候補作。−出版社HPより−


平安時代の物語です。なかなか読むことのない時代ですし、あまり興味もない時代なので、読むのが不安でしたが、なかなか面白かったです。

酒呑童子というこの時代の妖怪、鬼のことを描いたそうですが、酒呑童子を知らないので読んでいてもわかりませんでした。調べてみると、平安時代の鬼のことみたいですね。山に住んでいて、近くの姫たちを攫っては食べていたとか。

すっごい悪者のようですが、この物語では普通の人間のように描かれています。

ただ、純粋な日本人ではなく、母親が白人だったようで、今でいうハーフですね。日本人のノペッと平らな顔ではなく、目鼻立ちのくっきりした顔で、目も黒ではなく青いというのは、この時代ではかなり異質な存在だったでしょう。

しかも、ちょうど日食の時に生まれたということで、周りから忌み嫌われてしまいました。生まれる時代が悪かった・・・。


他にも土蜘蛛と呼ばれる存在の者たちや山奥で暮らす者たちもいて、彼らをまとめて「童」と呼んでいた京人たち。朝廷も彼らの存在を消したくて、何度も何度も軍を差し向けては戦を仕掛けていきます。

鬼と呼ばれた桜暁丸は、童たちをまとめようと力を尽くし、京人に復讐するために立ち上がります。

何度も戦いが起こり、たくさんの童たち、京人たちの命が奪われ、何度も裏切りに合い、でも仲間も増えていき、目まぐるしい展開が続きます。


登場人物も多く、話が複雑になってくるので、読むのに時間がかかってしまいましたが、結末が気になって次々読めました。

同じ人間なのにどうして・・・と常に思いながら読んでいました。物語の中にのめり込むように読んだので、読み終わるとかなり疲れていました。肩に力が入り過ぎます。

朝廷としては彼らの力が怖くて、消したくて必死だったのでしょうが、ちょっとプライドを捨てて、協力を求めたら戦わずに済んだだろうに、とか思うと虚しくもなります。


結末は想像したようにしかならず。この展開で幸せに終わるわけはないのですが、でも「これで終われる」という何ともいえない安堵感はありました。


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2023年12月28日

今村翔吾「夏の戻り船 くらまし屋稼業」

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 今村翔吾 著
 「夏の戻り船 くらまし屋稼業」
 (ハルキ文庫)※電子書籍


「皐月十五日に、船で陸奥に晦ましていたたきたい」−かつて採薬使の役目に就いていた阿部将翁は、幕府の監視下に置かれていた。しかし、己の余命が僅かだと悟っている彼には、最後にどうしても果たしたい遠い日の約束があった。平九郎に仕事を依頼した将翁だが、幕府の隠し薬園がある高尾山へ秘密裡に連れて行かれる。山に集結した薬園奉行、道中奉行、御庭番、謎の者・・平九郎たち「くらまし屋」は、将翁の切なる想いを叶えられるのか!?続々重版中の大人気時代エンターテインメント、堂々のシリーズ第三弾。−出版社HPより−


久しぶりのくらまし屋。内容忘れたな・・と思っていても、読み始めたら色々思い出しました。


今回の依頼者は「採薬使」という役目に長年就いていた将翁。長年仕えて来たというのに、晩年になった彼を軟禁しようとしている幕府。実は薬に詳しい者たちを謎の集団が拉致するという事件が起きているのです。

確かに、脅されて将軍などを毒殺させようとされると困りますから、監視下に置きたい気持ちはわかります。でも、引退した人物を軟禁するなんて・・。命を取られないだけマシなのか。

幕府の監視下に置かれる彼をそこから脱出させ、しかも拉致しようと狙っている集団からも守らないといけないという大変な任務となりました。

しかも、「船で陸奥にくらましてほしい」という依頼。交通手段はともかく、場所も日にちも指定されているので、下見の時間も限られてしまいます。

平九郎の仲間たちが内偵を進めてくれて、何とか依頼をこなすわけですが、今回の敵はなかなか手ごわいです。

薬草の世界では有名で、しかも研究熱心だった将翁は狙われて当然の人物なので、強敵が彼を奪いに来ます。笑いながら人を殺していくというかなりおかしな人物が数人。怖すぎです。

腕に覚えのある人たちが将翁を守っていたのですが、そんな彼らでさえも命の危険を感じてしまうほどの強敵でした。たくさんの人を殺していく敵ですが、平九郎が何とか追い払って、将翁を船に乗せるとあっさり終了。

なぜ将翁が陸奥に行きたいのか?を語る涙のシーンではありますが、必死で襲ってきた敵たちのあっさりした引き方にちょっとがっかりもしました。何度も襲われても困りますけど何となく物足りなさも感じてしまいました。


きっと敵たちをまとめておいて、最後にドンとやっつけていくのでしょう。それを楽しみに追いかけることにします。


<くらまし屋シリーズ>
「くらまし屋稼業」
「春はまだか」 感想書き忘れ



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2023年12月19日

今村翔吾「狐花火 羽州ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「狐花火 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社文庫)※電子書籍


天才花火師と謳われるも、愛娘を花火の事故で喪い、妻も世を儚み命を絶つ―。明和の大火の下手人秀助は、事故の原因たる怠惰な火消に復讐を誓い、江戸を焼いた。二年前、新庄藩火消頭松永源吾と対決の末捕えられ、火刑となったはずだが、朱土竜、瓦斯と、秀助と思しき火付けが今再び起きる!秀助は生きているのか?江戸の火消が再び結集し、猛り狂う炎に挑む。−出版社HPより−


一作目に登場し、火付けをして死刑になったはずの秀助が再登場!?という展開。

天才花火師だったのに、娘と妻を失った悲しみを世の中にぶつけるために火付けをしてしまった秀助。1作目に登場したときは、源吾と心を通わせることが出来て、最後は救われた感じになった秀助ですが、やはり昔の火付けは大罪なので、死刑になりました。

・・・死刑になったはず? なのに、今回も秀助が蘇えったかのような火事が多発します。

いつもの火消方法では消えない火事。水を掛けると更に炎が大きくなるというやっかいな火事。

秀助に想いを馳せながらも江戸の火消が活躍します。

更には、番付に載っている火消を次々に襲うという事件まで発生。犯人は誰なのか? ぼろ鳶の火消も襲われますが・・。


1作目では簡単にしか語られなかった秀助の人生ですが、今回は火付けという罪を犯してからの彼の様子も描かれて、どんな思いで生きてきたのかもわかりました。

番付狩りの犯人の思いも深い物があって、これからの活躍も楽しみになりました。


ただ・・・・。
だんだん登場人物が増えてきて誰が誰だか、どこの組だか、なんだかわからなくなってきました。一覧表が必要になりそうです。

そして今回も奥様大活躍でした。今までは彼女の強さがメインでしたが、今回は彼女の純粋さが最高でした。源吾はいい奥さんをもらったな、としみじみ。

息子もかわいく育っていますし、今後も楽しみです。


<羽州ぼろ鳶組シリーズ>
「火喰鳥」
「夜哭鳥」
「九紋龍」
「鬼煙管」
「菩薩花」
「夢胡蝶」


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2023年08月30日

今村翔吾「てらこや青義堂 師匠、走る」

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 今村翔吾 著
 「てらこや青義堂 師匠、走る」
 (小学館文庫)※電子書籍


明和七年、泰平の江戸日本橋で寺子屋の師匠をつとめる坂入十蔵は、かつては凄腕と怖れられた公儀隠密だった。貧しい御家人の息子・鉄之助、浪費癖のある呉服屋の息子・吉太郎、兵法ばかり学びたがる武家の娘・千織など、個性豊かな筆子に寄りそう十蔵の元に、将軍暗殺を企図する忍びの一団・宵闇が公儀隠密をも狙っているとの報せが届く。翌年、伊勢へお蔭参りに向かう筆子らに同道していた十蔵は、離縁していた妻・睦月の身にも宵闇の手が及ぶと知って妻の里へ走った。夫婦の愛、師弟の絆、手に汗握る結末―今村翔吾の原典ともいえる青春時代小説。−出版社HPより−


最近お気に入りになっている作家さんのシリーズではない作品。

題名と表紙の雰囲気から寺子屋の日常のちょっとした騒動を師匠と筆子がドタバタしつつ解決していく、的な話しかと思っていたのですが、まさかこんな内容だとは!と驚きました。ドタバタではありますが、命のやり取りをするような真剣なドタバタですし、内容も重い。


元公儀隠密というすごい経歴をもつ十蔵が営む寺子屋には、個性的な筆子が4人ほど。さすがに他にもいるようですが、他の寺子屋で破門された子どもも拒まないため、どうしても個性的な子どもが集まるようです。そして、授業料も安いため、ずっと貧しい状態です。

元隠密ということは公には出来ないため、誰も知りませんが、只者ではないとは思われているようです。


筆子が持ち込むゴタゴタを解決?と思ったら、急に不穏な空気が。個性的な筆子である4人と伊勢参りに出かけることになったところから話は急展開していきます。

実は十蔵は昔結婚していたのですが、隠密時代に一方的に離縁していました。隠密という仕事上、家族がいることが足かせになるし、家族も命を狙われることが多発したため、里に帰しました。

せっかく平穏な日常を手に入れたのに、十蔵の命を狙う隠密集団がいるとの情報が。そんな中出かけた伊勢参りの旅。筆子も連れていましたが、不穏な動きが活発化してきて、更には里に帰した妻の命も狙われているとわかりあわてて駆けつけます。


筆子たちも師匠を助けるため命がけの戦いを強いられ、十蔵も筆子を守るため、妻を救うために戦い、目が離せない展開が続きます。

緊迫した場面が続く中、奥さんの存在に助けられました。命狙われていますけど!?わかってる?と言いたいくらいのんきな反応を繰り返していて、でもかなりしっかりした性格と頭の良さもあって、十蔵を顎で指図するような感じがとても素敵でした。

何でこんな良い人と別れたんだ!と十蔵を叱りたくなるほどの存在。


最後は何とか収まる所に収まって、良い感じになりました。これはシリーズ化は難しいかな?毎回ここまでの命がけの戦いをしていたらもたない気がします。もっと軽いいざこざなら続けられるのに残念です。でもまた彼らに会いたいな。


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2023年03月30日

今村翔吾「夢胡蝶 羽州ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「夢胡蝶 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社文庫)※電子書籍


花魁・花菊は死を希った。吉原の大見世で最高位の花魁となるも、やはりここは苦界でしかない。父母と彼岸での再会を望み、燃え盛る妓楼に身を置いた。だが紅蓮の炎に飛び込んできた男がいた。花菊は業火の中、ぼろ鳶組纏番・彦弥と運命の出会いをする―。連続する火付け、下手人と思しき者の殺害、黒幕が?新庄藩火消頭・松永源吾が情念渦巻く吉原で謎に挑む。−出版社HPより−


今回は彦弥が大活躍の巻でした。

ぼろ鳶組の纏番として活躍している彦弥は、女たらしでよく女性を泣かせています。特別良い顔でもなさそうですが、優しくて口もうまいんでしょうね。

身が軽くて、ポンと屋根の上に上れる身体能力があるので、火事場でも大活躍してくれています。

今回の火事は吉原で起きました。吉原の火事は、吉原の火消が対処することになっているのですが、たまたまその場にいた彦弥が単独で花魁を助け出します。苦界から抜けられることはないなら死んでも良いかと覚悟を決めていた花魁にとっては、彦弥は迷惑な存在でした。でもうまく言いくるめて逃がすことが出来たため、花魁は当然、彦弥に惚れます。店の主人からも感謝され、お礼を言いに来てくれるのですが、それに対してはクールな対応をする彦弥。でも、花魁と交わした約束はきっちり守ろうと努力するところがかっこいい!


吉原の火消に関わることになるぼろ鳶組ですが、吉原ならではの掟や考え方に戸惑います。火事になったら変に建物が残るよりも燃えてしまった方がありがたいなんて、ひどい考え!と腹が立ちますが、そこは制度にも問題があるわけで、商売をする者としては当たり前の考えなのかもしれないとも思います。

ただの火事と思われた物がだんだんきな臭くなっていき、殺人事件まで発生することに。いつものように複雑化していきます。

罪を犯した人の動機が悲しすぎて泣きそうになりました。吉原で働く女性は、男を良い気持ちにさせて手のひらの上で転がすことが出来るはずなのに、好きになると一途なんですね・・。何だか悲しい話でした。

彦弥の活躍と、花魁とのほのぼのしたやりとりがほっこりさせてくれたのが救いでした。これからも彼らの関係が続くと良いですが。


<羽州ぼろ鳶組シリーズ>
「火喰鳥」
「夜哭鳥」
「九紋龍」
「鬼煙管」
「菩薩花」


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2023年02月09日

今村翔吾「八本目の槍」

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 今村翔吾 著
 「八本目の槍」
 (新潮社文庫)※電子書籍


石田三成とは、何者だったのか。加藤清正、片桐且元、福島正則ら盟友「七本槍」だけが知る真の姿とは・・。「戦を止める方策」や「泰平の世の武士のあるべき姿」を考え、「女も働く世」を予見し、徳川家に途方もない経済戦”を仕掛けようとした男。誰よりも、新しい世を望み、理と友情を信じ、この国の形を思い続けた熱き武将を、感銘深く描き出す正統派歴史小説。吉川英治文学新人賞受賞。−出版社HPより−


日本史は好きな方ではありますが、そこまで詳しいわけではないので、石田三成についてもよく知りませんでした。秀吉の家臣で、頭が良い戦略家ということくらい。

大河ドラマなどでは秀吉の横で賢いことを言う人、という感じで特別スポットライトを浴びる感じではないですね。


この作品ではそんな三成とはどんな人物で、どんな人生を歩んで、どんな考えをもっていたのか?が描かれます。

本人の視点ではなく「賤ヶ岳の七本槍」(しずがたけのしちほんやり)と呼ばれた7人の武将から見た三成が描かれています。それぞれの視点で短編になっていて、三成の人生が描かれるため、1話毎に三成が処刑される場面も描かれてしまうのが辛かったです。

処刑された時、それぞれがどう感じ、どう動いたのか。描きたいことはわかるのですが、何度も処刑されている感じがして何だか・・。


歴史上の人物で、もしこの人がもっと長く生きていたら今の日本は違っただろう、と思うのは織田信長が私の中で1番なのですが、石田三成の話を読んで、彼ももっと生きていたら、もっと出世していたら、と思いました。

女性も働く世の中。ずっと問題になっていることで、いつまでも実現できない問題。このことを江戸時代より前に考えていた人がいたなんて。これがフィクションでなければ、本当に惜しい人です。

戦がなくなった時に武士の存在はどうなるのか、そういうことをしっかり考えていける人物が今もいてくれたら、もっと良い社会になるでしょうね。

長い江戸時代に、必要のない武士がたくさんいて、でも武士をやめるわけにいかないと思い込んでいて、生活が苦しくても両刀差して練り歩く。どう考えても無駄な時代です。

もっと早く武士をやめていたら今頃どんな日本になっていたのだろう?と考えてしまいます。


この中で描かれる秀吉も好きになりました。彼が選んだ女性はイマイチですし、息子もどうなの?って感じですが、なり上がって来たからこそ、家臣の細かい所にも目を配れて、実は良い人なんだと思えました。人生の終わりに差し掛かった頃までは。

やはり人って世に名を遺したいと思うんでしょうか。他国に目を向けるのが早すぎた気がします。それよりも地固めをもっとするべきでしたね。


読んでいる間、それぞれの人物に思い入れをし過ぎて、読み終わるのに時間がかかってしまいました。読み終わったら、大河ドラマを見終わったようなずっしりとした疲れが出ました。

でも読んで良かったと思える作品でした。


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2022年12月09日

今村翔吾「菩薩花 羽州・ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「菩薩花 羽州・ぼろ鳶組」
 (祥伝社文庫)※電子書籍


番付のためか―。火消番付への関心は高く、お家の評判にも繋がる。その噂が人々の口にも上りだす頃、ぼろ鳶組松永源吾は、無謀にも他の火消から手柄を奪おうと闘う仁正寺藩火消柊与市の姿を目にする。そんな折、火消による付け火を疑う読売書きが姿を消し・・。真相を追う源吾らの前に現れたのは、火難の遺児を救い育て、「菩薩」と崇められる定火消進藤内記だった。−出版社HPより−


娯楽の少ない時代、火事もある意味エンタメのようなもので、人々の生活を全て失くしてしまうくらいの大事件でもありましたが、火事を命がけで消す火消の存在は憧れでもあり、ヒーローでもありました。

そんな彼らの活躍を番付という形で読売が持ち上げるため、更に盛り上がるってものです。今でいう人気ランキングのようなものですね。この番付が単なる人気投票でないのは、それを作っている読売書きが現場で彼らの活躍をしっかり取材した上で順位を決めているという点。見た目がかっこよくても簡単に順位を上げられないため、火消たちの間でもその順位を上げることは火消としての立場や活躍ぶりも評価されるということになるので必死になっています。


物語はとある藩で火消の人数を減らす案が出ているところから始まります。それを阻止するためには、番付で順位を上げること、そう言われた火消は決意を新たにするというところでプロローグとなる場面は終了。

結局、どこの藩のことを書いていたのかわからないまま本編が始まります。起きた火事が火付けではないか?しかも火消による付け火ではないか?と疑いが浮上します。

読者としては、プロローグで描かれていた彼の仕業?と疑うわけですが・・。



今回の敵はなかなか薄気味悪いタイプでした。こういう人って暴力をふるう人よりもタチが悪いし、どちらかというとこっちの方が怖い気がします。火事で家族を失った子どもを救って育てるのは素晴らしいことですが、その後、火消に育てるところまではわかりますけど。

彼を崇拝するあまり、火事を消すためなら自分の命も投げ出す覚悟をもっているというのは怖い。怖すぎます。それを止めずに何なら「よし、行ってこい」的な送り出しをするのが恐ろしいです。

そんな恐ろしさよりも、火事を消してもらった人からすれば、命がけで消してくれたと感謝の気持ちが大きくなり、崇め奉るわけです。きっとその人も始めはそこまで怖い人ではなかったのでしょうが、崇め奉られるうちにどんどん自分のことを勘違いしていったのでしょう。


今までの犯人たちもなかなか怖い人ばかりでしたが、私的には今回の人が一番ぞっとしました。良い人に見えるだけにより怖い。


そして最後には嬉しい出来事があり、犯人の怖さをすっかり忘れるくらいでした。今後がますます楽しみです。


<羽州ぼろ鳶組シリーズ>
「火喰鳥」
「夜哭鳥」
「九紋龍」
「鬼煙管」


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2022年08月30日

今村翔吾「鬼煙管 羽州ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「鬼煙管 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社)※電子書籍


「人も同じ、身分は違えども煙草(たばこ)の銘柄ほどのもの」煙管(きせる)の吸い口を見つめ、平蔵(へいぞう)は人の儚(はかな)き生を思い、正義と悪との境(さかい)を憂(うれ)えていた――。京都西町奉行長谷川(はせがわ)平蔵は、火を用いた奇(き)っ怪(かい)な連続殺人を止めるため、最も頼りにする江戸の火消、松永源吾(まつながげんご)を京に呼ぶ。源吾は平蔵の息子・銕三郎(てつさぶろう)と真相に迫るが、やがて銕三郎が暴走し――。勇壮な男たちが京の街を駆け抜ける!−出版社HPより−


今回の話は京が舞台です。今と違って江戸(東京)から京(京都)に行くのは簡単ではありません。何日もかかってしまうというのに、それでも江戸から松永を呼び寄せようというのですから、いかに平蔵の信頼が厚いかってことです。

今回も当然、松永を始め火消の人たちは大活躍、そしてとてもかっこよかったですが、今回一番驚いたのは、今まで読んでいた長谷川平蔵が、私のよく知っている「鬼平」とは違っていたことです。

まさかその父親だったなんて!

今回、事件を引っ掻き回すようなことになった平蔵の息子が、実は「鬼平」だったようです。えー!?って叫びそうになりました。勘違いするほどこの親子は人情に厚くカッコいいってことなんですけど。

昔は親子で同じ名前を名乗ることが多かったから大変です。


いつもは松永や、他の火消のカッコいいセリフに泣かされそうになるのですが、今回は長谷川平蔵に全てもっていかれた感じがしました。電車の中で読んだのでこらえましたが、家で読んでいたら号泣していたと思います。

こんなところで、こんな目に合うとは・・・

武士らしくかっこよかったですけど、悔しくてたまりませんでした。

息子が立派に継いでくれるわけですからまだ救われますけど。


そして、今回ほとんど登場しなかった奥様ですが、松永の落ち込むタイミングで的確な手紙を送ってきて、その内容は励ましつつ愚痴りつつ、本当に素敵でした。手紙だけでも私の心を鷲掴みしてくれました。

次はどんな活躍をみせてくれるか楽しみです。


<羽州ぼろ鳶組シリーズ>
「火喰鳥」
「夜哭鳥」
「九紋龍」


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2021年11月29日

今村翔吾「九紋龍 羽州ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「九紋龍 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社) ※電子書籍


火事を起こし、その隙(すき)に皆殺しの押し込みを働く盗賊千羽(せんば)一家が江戸に入った。その報を受け、新庄(しんじょう)藩火消通称“ぼろ鳶(とび)”組頭・松永源吾(まつながげんご)は火付けを止めるべく奔走(ほんそう)する。だが藩主の親戚・戸沢正親(とざわまさちか)が現れ、火消の削減を宣言。一方現場では九頭の龍を躰(からだ)に刻み、町火消最強と恐れられる「に組」頭“九紋龍(くもんりゅう)”が乱入、大混乱に陥(おちい)っていた。絶対的な危機に、ぼろ鳶組の命運は!?−出版社HPより−


今回の悪者は、火付け盗賊団です。

この時代に火付けをするのは、それだけでも死罪になり、家族や親戚までもが罪に問われるくらいの大罪だというのに、火事の隙に盗みまで働くとは!なんてひどい奴ら!と憤っていたら、更にその店の奉公人を女子どもも容赦なく殺してしまうという極悪非道ぶり。

これは思いっきり憎めますし、やっつけがいのある悪者たちなので、最終的にすっきり爽快で終わってくれるだろうと読み進めていると、謎の火消が現れます。

なぜか、火事の現場で弥次馬たちを遠ざけようと暴れる火消です。野次馬たちとの乱闘があるせいで、他の火消も火事場に駆けつけることが出来ずにまたケンカになって、現場は大混乱になっていました。

火消一人が相手なら倒して行けそうなものですが、その火消は身体も大きくて力も強かったため、倒すことも出来ず毎回苦戦させられました。

また、かなり無口で親しい人もいないため、なぜそんな行動をとっているのかを聞き出すことも出来ませんでした。

本当は火付け盗賊団だけを相手にすればいいはずなのに、謎の火消が立ちふさがるせいで、思うように犯行を止められません。


なぜその火消はそんな行動をするのか?盗賊団の正体は?など早く答えが知りたくて次々と読み進めることになりました。

途中には、源吾の奥様の言動に笑わされ、残虐な犯行を少し薄めてもらいながらの読書でした。


源吾やその仲間たちはもちろんかっこいいのですが、誰よりも奥様がかっこよくて面白くて大好きになりました。最後の場面でも大活躍してくれて、今後も楽しみな存在になりました。


まだまだ続きそうなシリーズ。次々追いかけていこうと思います。

<羽州ぼろ鳶組シリーズ>
「火喰鳥」
「夜哭鳥」



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posted by DONA at 14:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:今村翔吾

2021年10月26日

今村翔吾「夜哭鳥 羽州ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「夜哭鳥 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社)※電子書籍
 

「八咫烏(やたがらす)」の異名を取り、江戸一番の火消加賀鳶(かがとび)を率(ひき)いる大音勘九郎(おおとかんくろう)を非道な罠(わな)が襲う。身内を攫(さら)い、出動を妨害、被害の拡大を狙う何者かに標的にされたのだ。家族を諦(あきら)めようとする勘九郎に対し、「火喰鳥(ひくいどり)」松永源吾(まつながげんご)率いる羽州(うしゅう)「ぼろ鳶(とび)」組は、大音一家を救い、卑劣な敵を止めるため、果敢に出張るが……。業火(ごうか)を前に命を張った男たちの団結。手に汗握る傑作時代小説。−出版社HPより−


今回の事件は、かなり腹が立つ卑劣な物でした。動機も納得できませんし、あり得ない物。そんなことで放火するとか意味がわかりません。他に方法があると思うのに、悪い奴というのはほんと浅はかですね。浅はかだからこそ捕まるんですけど。


ぼろ鳶組と並んで人気の高い、加賀鳶組。その組頭である勘九郎も事件に巻き込まれてしまいます。その他の火消たちも次々と犠牲に。

火消といっても、武家が抱えている火消もあれば、町で町人が作っている火消もあります。ただ、その出動にはいろいろと手順があるそうで、その面倒臭いところを利用されて、今回の火付けは行われました。

出動を促す鐘を鳴らすのが誰が一番じゃないといけないとか、その鐘が鳴らされないと出動できないとか・・。

火をつけた悪者は、火事を広げて被害を大きくしたいので、鐘を鳴らすのを出来るだけ遅らせようとしました。そのために取った行動が腹が立つ! 火消本人を狙うのではなく、身内を攫って脅すというやり方!

しかもその動機がくだらない! ひたすら腹が立つ相手だったので、同情することも無く、ただただぼろ鳶組の人たちと他の火消たちを応援していれば良かったのである意味読みやすく、入り込みやすかったですけど。


今回もぼろ鳶組の人たちの活躍ぶりと、頭である源吾の潔さと、その奥様の嫌味の効いた言葉の数々にスカッとさせられました。いつも頼りなさげな新之助も大活躍で、彼のかっこよさが際立っていましたし、新たな仲間も増えてこれからも楽しみになりました。

<羽州ぼろ鳶組シリーズ>
「火喰鳥」


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posted by DONA at 15:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:今村翔吾

2021年05月26日

今村翔吾「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社文庫)※電子書籍


かつて、江戸随一(ずいいち)と呼ばれた武家火消がいた。その名は、松永源吾(まつながげんご)。別名、「火喰鳥(ひくいどり)」――。しかし、5年前の火事が原因で、今は妻の深雪(みゆき)と貧乏浪人暮らし。そんな彼の元に出羽新庄(でわしんじょう)藩から突然仕官の誘いが。壊滅した藩の火消組織を再建してほしいという。「ぼろ鳶(とび)」と揶揄(やゆ)される火消たちを率(ひき)い、源吾は昔の輝きを取り戻すことができるのか。興奮必至、迫力の時代小説。(解説・吉田伸子)−出版社HPより−


この作家さんの「くらまし屋」シリーズを読んで面白かったので、こちらも読んでみました。読書メーターで読友さんにお勧めもされました。

なるほど、面白かった!

くらまし屋は裏の稼業なわけですが、こちらはきちんとした公の仕事、火消です。しかも、武家火消。そういうのがあるのは知りませんでした。そういえば、よく「町火消」って言いますね。町人がやるか、武士がやるかってことでしょうね。なぜ両方必要なのかはよくわかりませんけど。

もしかしたら、武家屋敷での火事を町火消では消しにくいのかな?


このシリーズの主人公は松永源吾という火消として活躍していた人。昔は「火喰鳥」という異名を付けられるくらいのカリスマ的火消でしたが、大きな火事が原因で心に傷を負ってしまい、火消を辞めて浪人暮らしをしていました。

そんな彼の昔の姿を知っていた、とある武士から誘いを受け、出羽新庄藩の火消組織を立て直すという大役を引き受けることに。

財政難でもある藩なので、お金が掛けられない中での立て直し。もともといるメンバーたちも素人のような動きしか出来ない人たちでした。そこでまず始めたのは、使える人を探すことでした。

とはいえ、お金が足りないので町火消から引き抜いたり、他の藩から引き抜くわけにはいきません。

日常生活を送りながら、気になる人を見つけていった源吾。力が強かったり、身軽で屋根の上にも飛び乗れたり、風をよむことで火の流れをみることができたり、色んな才能をもった人たちを仲間にすることが出来ました。

せっかく良い仲間を見つけたのに、実は源吾に問題が。引退することになった5年前の心の傷が癒えておらず、実は火が怖かったのです。それをどうやって乗り越えていくのかが一つのテーマになっています。


昔は火事が起きたら、火を消すというよりも延焼を防ぐために風下の家を壊していくという方法で、火事を止めていました。何とももどかしい状態です。そんな危ない現場に飛び込んでいくのはかなり勇気がいるでしょう。

率先して飛び込んでいく源吾たちの姿は本当にかっこよくて、惚れ惚れしながら読み進めました。


更に、源吾の奥さんが良い味を出しているんです! 旦那さんに対して冷たい感じがするのですが、さすが火消の妻、かっこいい姿を見せてくれました。

続きも楽しみです。


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posted by DONA at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:今村翔吾

2021年01月05日

今村翔吾「くらまし屋稼業」

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 今村翔吾 著
 「くらまし屋稼業」
 (ハルキ文庫)※電子書籍


万次と喜八は、浅草界隈を牛耳っている香具師・丑蔵の子分。親分の信頼も篤いふたりが、理由あって、やくざ稼業から足抜けをすべく、集金した銭を持って江戸から逃げることに。だが、丑蔵が放った刺客たちに追い詰められ、ふたりは高輪の大親分・禄兵衛の元に決死の思いで逃げ込んだ。禄兵衛は、銭さえ払えば必ず逃がしてくれる男を紹介すると言うが──涙あり、笑いあり、手に汗を握るシーンあり、大きく深い感動ありのノンストップエンターテインメント時代小説、ここに開幕!(解説・吉田伸子)−出版社HPより−


初めましての作家さんです。読書メーターでの感想を読んで面白そうだったので、とりあえず電子書籍で手に入れました。


物語の始めにいきなり主人公・堤平九郎が出てくるのですが、すぐに違う人たちの話が始まります。しかもかなり不穏な雰囲気。やくざ稼業から抜け出そうとする2人の男たち。やくざ稼業から抜け出すだけでも大変なことなのに、親分に指示されて集めに行ったお金を持ったまま逃げるという恐ろしいことをしようとしていました。

当然、あっという間にたくさんの手下たちから命を狙われます。このままでは殺されてしまう・・という状態で逃げ込んだのは、別の親分の元でした。

しばらくは匿ってもらえますが、やはりこちらの親分としても、別の家の手下たち(しかも当然ながら強面の男性たち)に周りでウロチョロされると鬱陶しいわけで、親分としては追い出したい・・。そこで「くらまし屋」の出番です。

くらまし屋というのは、夜逃げ屋のことですが、夜逃げよりも更に巧妙に逃がしてくれます。

ただし、その分だけ料金はお高め。くらまし屋の堤平九郎と一度会って話をした上で、逃がしてもらえるかが決まるという大変さもあります。

逃がすと決めたら、絶対に何があっても逃がす、という謳い文句だけに、くらまし屋としても自分たちが「逃がそう」と思える相手でないとやりません。


くらまし屋のメンバーは、平九郎の他に、七瀬というしっかりしてきれいな女性と赤也という色んな人に化けられるきれいな男性の3人です。

平九郎は普段は飴屋をしているのですが、ものすごく剣の腕も立ち、何やら暗い過去を抱えている感じです。他の2人も色々ありそうですが、平九郎が一番謎めいています。



彼らの人生も気になりますし、3人の掛け合いが面白いですし、逃がす側だけではなく逃がしてもらう側の人生も興味深いですし、更には今回出て来た強い敵もまだまだ出て来そうなので、続きがとても楽しみになりました。

実際にすでに2作目も読みましたが、変わらず面白かったので、これからも追いかけていく予定です。


しかも、この作家さんの他のシリーズも面白いそうで、そちらも読んでみようかな?でも先にこちらのシリーズを読み切った方が良いかな?と悩み中。


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posted by DONA at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:今村翔吾