2018年01月27日

西條奈加「世直し小町りんりん」

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 西條奈加 著
「世直し小町りんりん」
(講談社文庫)


長唄の師匠であるお蝶は三味線の腕前と美声で気性も粋な弁天との評判。お蝶の兄嫁の紗十(さと)はたおやかな色白美人で観音のたたずまい。人呼んで<弁天観音>美人姉妹は、頼まれ事を抜群の機知で解決していく。にぎやかな日々の裏で、お蝶を狙う影が大きく動き始める。凛とした痛快時代小説。(『朱龍哭く』改題)−裏表紙より−


旅行中に持って行って読みました。旅行中って、内容が重すぎても困るし、自分に合わないと困るからお気に入りの作家さんが良いし・・って考えてこれを持っていきました。

面白かったから、旅行中暇さえあれば出して読んでしまい、帰りには読む物が無くなりました。


冒頭に登場したお蝶の描写にまず引き込まれ、そこからはお蝶と紗十の人柄の良さと、機転の速さと、行動力に惚れ惚れしながら読み進めました。

特に、紗十の魅力的なこと! 普段は極度の方向音痴だったり、穏やかな物言いもあって、天然でぽわんとした性格だと思われるのですが、実際に事件を解決していく頭の良さは彼女の方で、しかも薙刀の名手ときたら最高でしょう!

そして、お蝶も真っすぐで一途でかわいらしかったです。彼女の真っすぐな性格と、紗十の一癖も二癖もある性格の対比が良かったです。

お蝶を溺愛する兄(紗十の夫)や、お蝶を守る陣内、その他幼馴染たちも個性的で魅力的でした。みんなのことが好きになってきたとき、意外な展開が!

そこから誰を疑って、誰を信じたら良いのか、どんどん目が離せなくなっていきました。

続きが気になって一気読みです。

結末は悲しい気持ちを払拭させるような、痛快なことが用意してあって、最後までにやりとさせられました。

笑いながら泣きそうになりながら読める作品でした。

登場人物たちが気に入ったので続編も書いてほしいところですが、事件が大きすぎたのでこれ以上は難しいかな?? そう思うと寂しいです。

最後まで面白く読んだのですが、最終的に気になったのはわざわざ改題した題名。なぜにこの題名に変えたのか? あまりにもピンとこない題名です・・。ちょっと手に取りにくい感じがしてしまいます。


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2017年10月26日

西條奈加「涅槃の雪」

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 西條奈加 著
 「涅槃の雪」
 (光文社文庫)


町与力の高安門佑は、新任の北町奉行・遠山景元の片腕として市井の取締りに励む毎日だ。その最中、元遊女のお卯乃を屋敷に引き取る。お卯乃との生活に安らぎを覚える門佑だったが、老中・水野忠邦が推進する天保の改革は、江戸を蝕み始めていた。改革に反対する遠山らと水野の鬩ぎ合いが苛烈を増す中、門佑は己の正義を貫こうとするが―。爽やかな傑作時代小説。−裏表紙より−


現代人にも馴染みの深い、遠山の金さんが出てきます。彼の片腕として活躍する高安門佑という与力が主人公なのですが、知っている人が出てくるだけで読みやすい気がしました。

さすがに時代劇のように金さんが町に出て、刺青を見せながら暴れるなんてことはありませんが、そんな姿を思い起こさせるような破天荒な感じの人として描かれていました。


ちょうど、有名な天保の改革の時代。質素倹約を押し付けられている江戸の人たち。特に商人たちは、商売に影響が出るくらいの取締りに合って苦しんでいます。

その改革を推し進めているのが老中の水野忠邦。有名どころがいっぱい出てきてちょっと嬉しくなります。

商人たちを苦しめる改革に対して、異議を唱える立場になるのが遠山奉行。水野の怒りを買わないようにしながらも、何とか改革を止めるように進言していきます。その駆け引きも面白かったです。

門佑はちょっとつかみどころのない人で、あまり好感はもてなかったのですが、彼を慕っている元遊女のお卯乃のことは好きになりました。なかなか武家の生活に馴染めないようですが、彼女の辛い過去と、その過去があるからこその深い想いに感動させられることが何度かありました。


最後までハラハラさせられる展開でしたが、最終的に良い終わり方をしてくれて嬉しかったです。彼らの幸せを確信しながら読み終えることができました。


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2017年09月06日

西條奈加「まるまるの毬」

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 西條奈加 著
 「まるまるの毬」
 (講談社時代小説文庫)


親子三代で菓子を商う「南星屋」は、売り切れご免の繁盛店。武家の身分を捨てて職人となった治兵衛を主に、出戻り娘のお永とひと粒種の看板娘、お君が切り盛りするこの店には、他人に言えぬ秘密があった。愛嬌があふれ、揺るぎない人の心の温かさを描いた、読み味絶品の時代小説。−裏表紙より−


読み始めてすぐは、美味しい和菓子屋さん、しかも庶民に優しいお値段控えめな和菓子屋さんの日常を描いている話なんだろうと思っていたのですが、突然雰囲気が変わっていきます。

門外不出の有名な和菓子をそのまま真似して販売したのではないか?と疑いまでかけられてしまいます。毎日詮議にかけられる主の治兵衛。

どうなってしまうんだろうとハラハラしていると、更に治兵衛には何やら秘密がありそうだとわかっていきます。

確かにただ和菓子屋の日常を描いても盛り上がりに欠けるわけで、こうやって色々騒動があるわけだね・・と納得。

治兵衛の謎はすぐには明らかにされませんが、読者には何となく想像はつくようになっています。細かいところまではわからないので、それが明らかにされるのも楽しみで読み進めることになります。


途中、お君に良い話があったりして、この時代ならではの一筋縄ではいかない感じももどかしく、でも母親の娘を思う気持ちに感動させられ、祖父の優しさと叔父さんの力強さもあって、辛い話も全て明るい気持ちで終われる雰囲気になっていました。

出てくる人たちも良い人ばかりで、もちろん美味しそうな和菓子もたくさん出てきて、癒される話でした。

相手を気遣い過ぎて言いたいことが言えない主・治兵衛と娘・お永の関係が微笑ましくて特に気に入りました。その不器用な二人の間に立って、明るく元気に発言する孫・お君。みんな素敵でした。

シリーズにはなっていないようですが、ぜひ続きも書いてもらいたいです。

秘密が明らかにされても、まだまだ書くことはいっぱいありそう。

また彼らに会いたいです。


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2017年05月23日

西條奈加「御師弥五郎 お伊勢参り道中記」

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 西條奈加 著
 「御師弥五郎 お伊勢参り道中記」
 (祥伝社文庫)


訳ありの弥五郎は伊勢詣の世話役・御師の手代見習いとして修業中。ある日、侍に襲われる材木商・巽屋清兵衛を助けた縁で、用心棒を兼ねて清兵衛の伊勢参りに同行するはめに。「御師は盗人」と言い放つ変わり者の弥五郎だったが、伊勢を目指す人々と関わるうちに、心境に変化が。そして清兵衛の過去を知った弥五郎は・・。時代小説界の気鋭が描く笑いと涙の道中記。−裏表紙より−


御師という職業があるんですね〜。初めて知りました。

伊勢神宮だけではなく、色々な神社に属しているようです。「おし」というのですが、伊勢神宮だけは「おんし」というらしいです。

神社に属していて、その神社に参拝する人をもてなし、宿泊などの世話もするのが仕事です。


この物語の主人公・弥五郎は、そんな御師の見習いとして働いていながら、なぜか御師という職業に嫌悪感を示しているという変わった人物です。

神社を参りたいという信心深い人から金を取るわけですから、見ようによっては「金に汚い職業」に見えなくもないですけど・・。

特に昔は伊勢参りなんて夢の話で、一生に一度行けたら良い方で、ほとんどの人は行かずに終わるわけですから、その夢見る気持ちを踏みにじるように思えなくもない?

でも読み進めると、御師たちの心配りは素晴らしいですし、顔の広さに救われることも多くて、この時代には大事な必要な職業なんだということがわかりました。

弥五郎も、少しずつ考えが変わっていきます。

彼は腕にも覚えがあるので、用心棒も兼ねて旅をします。依頼主には秘密があるようで、それも気になりつつ読み進めるうちに、気づけば終わっていたという感じです。

ハラハラする展開もあり、ちょっとホロリともさせられ、クスっと笑う所もあり、なかなか楽しい話でした。

もう少し盛り上がりがあっても良かったのかな?とも思いますが、これはこれで良かったのかもしれません。

シリーズ化して、続編も書いてもらいたいと思う作品でした。


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2017年03月09日

西條奈加「三途の川で落しもの」

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 西條奈加 著
 「三途の川で落しもの」
 (幻冬舎文庫)


大きな橋から落下し、気づくと三途の川に辿り着いていた小学六年生の叶人は、事故か自殺か、それとも殺されたのか死因がわからず、そこで足留めに。やがて三途の渡し守で江戸時代の男と思しき十蔵と虎之助を手伝い、死者を無事に黄泉の国へ送り出すための破天荒な仕事をすることになる。それは叶人の行く末を左右する運命的なミッションとなった。−裏表紙より−


人にはそれぞれ人生があって、その人生を全うしたら静かな眠りにつくことが出来ますが、なかなかそうあっさりと未練なく眠りにつくわけにはいかないという人もたくさんいます。

そういう人は、三途の川の途中で船が転覆してしまうため、その原因を取り除いて安らかにあの世へ行ってもらう必要があります。

その仕事を小学六年生にして三途の川までやって来た叶人が手伝うことになりました。現実の世界に降りる必要があるため、最近まで現代にいた彼は役立つのです。

短い話、一つ一つに1人の人生が描かれていて、どんな未練を持っているのか、どうやってその未練を無くすのかを読むことができます。

「死」にまつわる話ですから、一話ごとにずっしり重くて、しんみりする内容ばかり。イライラするものもありましたが。

他人の死に関わっている間に、叶人は自分の「死」についても考えることに。彼は結局なぜ三途の川までやって来たのかが明らかになっていなかったので、川を渡ることができずにいました。

最終話は叶人がなぜここまでやって来たのか、どうやって元の世界に戻るのかが描かれ、痛々しい想いに辛くなりました。

それまでは子どもらしくない言動が好きになれなかったのですが、最終話で一気に好きになりました。子どもらしくなれて良かったです。

まあ結局最後の最後では「そうなるか・・」って感じでもあったのですが。


重くなりがちな内容の話でしたが、要所要所に笑いがあってそれほど暗くならずに読み切ることが出来ました。


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2017年01月06日

西條奈加「上野池之端 鱗や繁盛記」

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 西條奈加 著
 「上野池之端 鱗や繁盛記」
 (新潮文庫)


騙されて江戸に来た13歳の少女・お末の奉公先「鱗や」は、料理茶屋とは名ばかりの三流店だった。無気力な周囲をよそに、客を喜ばせたい一心で働くお末。名店と呼ばれた昔を取り戻すため、志を同じくする若旦那と奮闘が始まる。粋なもてなしが通人の噂になる頃、店の秘事が明るみに。混乱の中、八年に一度だけ咲く桜が、すべての想いを受け止め花開く―。美味絶佳の人情時代小説。−裏表紙より−


始めは、高田郁さんの小説のようだと思いながら読んでいたのですが、だんだん雰囲気が変わっていきました。

騙されるような形で奉公に出てきたお末。三流の料理茶屋で接客をすることに。他の奉公人は現状を仕方ないと諦めていましたが、お末は何とかお客を満足させたいという気持ちで働きます。

お末に影響されるように、料理長も少しずつやる気を出していきます。

若旦那は以前から店を何とかしようと思っていたらしく、義父である主人がやる気がないので、自分のやりたいように店を改革し始めました。

こういう感じで、店が良くなっていき、お末も他の奉公人たちも生き生きと働いて、店がどんどん大きくなって・・という展開になるんだと思っていたら、何だか不穏な展開に・・。

変だな?と思っているうちに、どんどんおかしな方向へ。


気持ちはわかるけど、こんな方法をとらなくても・・と悲しい結末が。

でも最終的には明るい未来を感じさせる終わり方になっていたので、途中のことを思えば、読後感はそれほど悪くありませんでした。

一つ残念なのは、途中の年月がかなり省略されていたこと。2作に分けてでも詳しく書いて欲しかった部分でした。

シリーズにするのは難しそうですが、彼らにはまた会いたいという気持ちになりました。


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2016年11月15日

西條奈加「いつもが消えた日」

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 西條奈加 著
 「いつもが消えた日」お蔦さんの神楽坂日記
 (創元推理文庫)


中学三年生の滝本望は祖母と神楽坂でふたり暮らしをしている。芸者時代の名前でお蔦さんと呼ばれる祖母は、粋で気が強く、御機序州からも頼られる人気者だ。後輩の有斗が望の幼なじみとともに滝本家へ遊びに訪れた夜、息子ひとりを残して有斗の家族は姿を消していた―。神楽坂で起きた事件にお蔦さんが立ち上がる! 粋と人情、望が作る美味しい料理を堪能できるシリーズ第二弾。−裏表紙より−


シリーズ1作目を読んだのは3年前。お蔦さんや望のことは何となく覚えていましたが、それ以外の人たちのことは全て忘れてしまっていて、何度も「誰だっけ?」と思ってしまいました。細かいことはわからなくても、この町の雰囲気と2人のことがわかれば大丈夫でしたけど。


前作は短編でしたが、今回は長編。読み応えのある作品になっていました。その分、重い部分も増えましたし、望の中学生らしからぬ大人っぽい言動も増えて、応援したくなる気持ちになりました。

望の後輩・有斗の家族が突然姿を消すという事件が起こります。しかも、望の家に遊びに来ていた間にいなくなったようで、そのまま有斗をかばうように望とお蔦さんが面倒をみることに。

当然、事件も解決しようと立ち上がるわけですが、2人はあまり動かなくても周りがどんどんヒントをくれた感じで解決。警察も知らない事実を知ってしまうので、彼らよりも先に真相に近づけます。

そうじゃないと物語は成立しないわけですが。


家族がいなくなって不安いっぱいの有斗が、周りに心配をかけまいと精一杯がんばる姿や、自分も子どもなのに必死で大人から有斗を守る望の姿にウルウルさせられました。

もっとゆっくり大人になれば良いのにと心配になってしまうほど大人になった2人。

でも最後はちょっと年相応な行動も出てきて良かったです。


相変わらず美味しそうな望の作る料理もたくさん出てきます。レシピを教えてほしい!と強く望んでしまいます・・。

第三弾も発売されたようです。文庫化されるのを待って続きも読みたいです。


<お蔦さんの神楽坂日記シリーズ>
「無花果の実のなる頃に」


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2016年10月11日

西條奈加「千年鬼」

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 西條奈加 著
 「千年鬼」
 (徳間文庫)


友だちになった小鬼から、過去世を見せられた少女は、心に<鬼の芽>を生じさせてしまった。小鬼は彼女を宿業から解き放つため、様々な時代に現れる<鬼の芽>―酒浸りで寝たきりの父のために奉公先で耐える少年、好きな人を殺した男を側仕えにして苛めぬく姫君、行商をしながら長屋で一人暮らす老婆、凶作が続く村で愛娘を捨てろと言われ憤る農夫、田舎から出て姉とともに色街で暮らす少女―を集める千年の旅を始めた。 精緻な筆致で紡がれる人と鬼の物語。−裏表紙より−


連作短編になっていて、4話までは小鬼が人の心に芽生える「鬼の芽」を吐き出させていく物語が続き、小鬼は天上の誰かに言われて、世の中を良くしようとしているのだと思っていました。

ところが、5話目になって時代が遡り、小鬼が民という少女と出会う場面が描かれたことで、これまでの話も実は全て一人の生まれ変わりなんだと気づかされます。

民が鬼の芽を芽生えさせる原因となった出来事が、本当に昔の日本で行われていたことなのかはわかりませんが、思わず顔をしかめたくなるようなことで、これは狂っても仕方ないと思えました。

そこからの小鬼と民の友情関係は痛々しいですが、心温まる物語で、最後は気づけば涙が流れているような、何とも言えない終わり方をしました。

ハッピーエンドとも言えるし、かわいそうでもあるし、でもこれで良かったのかもしれないとも思えます。これは、読んだ人それぞれ、感じ方が違うと思います。

私は心穏やかに読み終えることができました。「めでたし、めでたし」とは言いませんが、それに近い気持ちです。

苦しまなくて良くなっただけでもうれしくなりました。


鬼が出てくる時点でファンタジーなわけですが、普段ファンタジーを読まない人にも読んでもらいたいと思えるような素敵な作品でした。

この作家さんの作品はなかなか見つけられないのですが、早く探して読みたいと思います。


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2016年08月19日

西條奈加「四色の藍」

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 西條奈加 著
 「四色の藍」
 (PHP文芸文庫)


紺屋の女将・紫屋環は、三ヶ月前に亭主が殺された事件の真相を知るべく、大店の東雲屋を探っていた。環は、同じく東雲屋ゆかりの者に恨みを持つ女たちと出会い、四人で協力して東雲屋に挑むことに。しかし、それぞれの愛憎や思惑、環に惚れる同心、藍の産地である阿波藩の御家騒動なども絡み、事件は意外な様相を呈していく・・。二転三転する展開と謎。気鋭が描く、痛快さと人情味に溢れた長編時代小説。−裏表紙より−


お気に入りの作家さんなので、読みやすかったです。

3か月前に亭主を殺され未亡人となった環は、物語の冒頭には亭主殺しの容疑者と思われる店で啖呵を切っている様子が描かれていて、男勝りのたくましい女性かと思ったら、だんだんと女性らしさが出てきて、実は神経の細かいしっとりとした女性だとわかるようになります。

彼女が下手人を捕らえるべく仲間に引き入れたのは、3人の女性。まずは、洗濯婆をやっているおくめ。容疑者と思われる店主のいる東雲屋にも出入りできますし、洗濯をしているお婆さんに誰も興味をもたないだろうということで、密偵のようなことをしてもらっています。次に、東雲屋の裏家業で腕を振るう男に対して恨みを持つお唄。同じ店に恨みを持つ者同士協力し合えるだろうということになりました。彼女も近くの料理屋で女中をしながら東雲屋で働く者たちから話を聞き出す役目を担っています。

そして最後の1人はちょっと特殊で、始めは武士として登場します。東雲屋に仇がいるという噂を聞きつけてやって来ました。偶然、環と出会い、彼女も協力者に。腕に覚えがある彼女は用心棒も兼ねています。


それぞれが憎い相手を持ち、それぞれ何かしらの思惑を持って行動する様子は、ハラハラさせられる場面も多かったです。なかなか調査が進展しない状態が続いていると思ったら、急に解決へ。

しかもあらすじにもあるように意外な結末。下手人を含め、4人の今後の人生も思わぬ方向へ進んでいきました。

ただ、それぞれ幸せになってくれそうな結末ではあったのでそこは救いです。1人の決断は私的には納得できませんでしたが。でもきっと彼女なら大丈夫だろうとも思えました。


さ、次は何を読もうかな? また本屋めぐりをして探してみます。


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2016年07月05日

西條奈加「閻魔の世直し 善人長屋」

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 西條奈加 著
 「閻魔の世直し 善人長屋」
 (新潮文庫)


周囲から「善人長屋」と呼ばれる千七長屋。差配も店子も表向きは堅気のお人好し揃いだが、実は裏家業を営む悪党だらけ。ある日、「閻魔組」と名乗る三人組によって裏社会の頭衆が次々に襲われ、惨殺される事件が発生する。天誅を気取る「閻魔組」の暗躍は、他人事として見過ごせない。長屋を探る同心の目を潜り、裏家業の技を尽くした探索は奴らの正体を暴けるか。人情溢れる時代小説。−裏表紙より−


シリーズ2作目です。前作で長屋を引っ掻き回した善人・加助は今回おとなしめ。まあ人助けはするんですけど、他の事件が大きすぎて霞んでいました。

他の事件というのは、「閻魔組」という謎の集団が起こした事件で、裏社会のボスたちを「天誅」ということで惨殺していきました。ボスだけならまだしも、周りにいた人たちをも巻き込んでいて、長屋の人たちはどうにも許せない気持ちが高まってしまいます。

でも、殺し方を見ると、かなりの手練れ集団だということで、どうすれば自分たちの身を守りながら懲らしめることができるのか、差配を中心に頭を悩ませます。

更に、長屋に目をつけている同心まで現れて、ますます厄介な事態に。

更に更に、縫ちゃんに淡い恋まで芽生えてしまい、これがまた叶わぬ恋となれば、周りはあたふたしてしまうのは仕方ないことですし。


最初から最後までバタバタしっ放しの内容で、息つく暇なく一気読みという感じでした。

「悪人だから殺しても良い」なんてことは絶対に無いですし、悪人だからといって殺してしまったら、その犯人もやはり悪人になるわけで、それをヒーローのように祭上げるのは大きな間違いです。

この「閻魔組」も悲しい事情が隠されていて、また因縁のアイツも出てきて、意外などんでん返しもあって最後まで面白かったです。心痛い部分もたくさんありましたが、うまくいい方向に向かっていきそうな結末でホッとしました。

続きも楽しみです。早く出してくれないと、長屋の人たちのこと覚えていられない〜!


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2013年10月09日

西條奈加「無花果の実のなるころに」

無花果の実のなるころに

 西條奈加 著
 「無花果の実のなるころに」お蔦さんの神楽坂日記
 (創元推理文庫)


お蔦さんは僕のおばあちゃんだ。もと芸者でいまでも粋なお蔦さんは、面倒くさがりなのに何かと人に頼られる人気者だ。そんな祖母と僕は神楽坂で暮らしているけれど、幼なじみが蹴とばし魔として捕まったり、ご近所衆が振り込め詐欺に遭ったり、ふたり暮らしの日々はいつも騒がしい。神楽坂界隈で起こる事件をお蔦さんが痛快に解決する! あたたかな人情と情緒あふれる作品集。−裏表紙より−


この作家さんの時代物以外を初めて読みました。文章が読みやすいですし、キャラクターも良いので最後まで楽しく読めました。

罪かぶりの夜」「蝉の赤」「無花果の実のなるころに」「酸っぱい遺産」「果てしのない嘘」「シナガワ戦争」計6編が収録されています。

話の舞台は神楽坂。名前は聞いたことがありますが、どんな所なのかは知りません。この話を読んで、下町情緒溢れる素敵な町なんだろうということがわかりました。

表紙の雰囲気がよく合うイメージです。

自分が住んでみたいか?というと、微妙ですけど。すごく干渉されそうな気がして、慣れていない私には辛いかな?と。

それはともかく・・。


お蔦さんと暮らす“僕”こと望(のぞむ)は、父母と離れて暮らしている中学生。家事の苦手なお蔦さんに代わって、家事をこなしています。特に料理はかなり得意なので、出てくる料理たちが美味しそうでたまりません。

途中からは、スイーツにもはまり出したので、甘い物まで美味しそう!おなか空きまくりです。


望やその友人などが巻き込まれる様々な出来事や事件を、お蔦さんが鋭い観察力と推理力でサラッと解決させていきます。望はほとんど意見を言わないのですが、彼が何気なく言った言葉が大きなヒントになったり、お蔦さんに頼まれて調べ物をしたり、それなりに活躍を見せます。

特に最後の「シナガワ戦争」では、クールでかっこいい望が見られました。女子にモテそう・・。


あらすじから想像すると、結構軽い事件が多い感じがしますが、意外と重い話もあって、中学生の望が抱えるには辛すぎる物もありました。でもきっと彼はお蔦さんや周りにいる大人たちに助けられて、まっすぐ育つんだろうと思います。

これは次々と話が作れそうなので、ぜひ続編も読みたいです。


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2013年05月14日

西條奈加「善人長屋」

善人長屋

 西條奈加 著
 「善人長屋」
 (新潮文庫)


善い人ばかりが住むと評判の長屋に、ひょんなことから錠前職人の加助が住み始めた。実は長屋の住人は、裏稼業を持つ“悪党”たち。差配の儀右衛門は盗品を捌く窩主買い。髪結い床の半造は情報屋。唐吉、文吉兄弟は美人局。根っからの善人で人助けが生き甲斐の加助が面倒を持ち込むたびに、悪党たちは裏稼業の凄腕を活かし、しぶしぶ事の解決に手を貸すが・・・。人情時代小説の傑作!−裏表紙より−


登場人物たちが本当に魅力的で、一気に話に引き込まれました。

裏稼業を持つ人たちが集まって住んでいる「善人長屋」に、本物の善人が引っ越してきました。ある手違いで住むことになった善人の加助は、長屋の人たちが人助けをしたのを見て感動してしまい、それからは自分で次々と困った人を拾ってくるようになりました。

そんな彼が持ち込む厄介な出来事を、文句を言いながらも手伝う長屋の人たち。

差配の娘・お縫は、裏稼業を持つ自分の親のことも、長屋の住人のことも好きになれない気持ちをもっていて、彼らの生き方に納得がいかない状態でした。

そこへ、根っからの善人が来て、人や厄介ごとを拾ってくるため、それに関わるうちにお縫の気持ちに少しずつ変化が。

加助の持ち込む人助けには、彼らの裏稼業がどうしても必要になってきて、彼らのお陰で善行もできるわけで、そのことに気付いて彼らを見る目にも変化が起きました。

長屋の住人の昔馴染みや、人生に大きく関わってきた人を助けることもあり、特に「犀の子守歌」は感動し、泣きそうになりました。


ここに出てくる人たち、みんなのことがすっかり気に入ってしまったので、ぜひ続編も読みたいです。シリーズ化して長く続けてもらえたら嬉しいです。


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2013年03月11日

西條奈加「金春屋ゴメス」

金春屋ゴメス

 西條奈加 著
 「金春屋ゴメス」
 (新潮文庫)


近未来の日本に、鎖国状態の「江戸国」が出現。競争率三百倍の難関を潜り抜け、入国を許可された大学二年生の辰次郎。身請け先は、身の丈六尺六寸、目方四十六貫、極悪非道、無慈悲で鳴らした「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった! ゴメスに致死率100%の流行病「鬼赤痢」の正体を突き止めることを命じられた辰次郎は−。「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。−裏表紙より−


表紙のインパクトの強さに、手が出せずにいた本。でも「烏金」シリーズが面白かったので読んでみることにしました。

紹介文によると「日本ファンタジーノベル大賞」だとか・・。あらすじでは時代小説っぽいのに、どういうことだろう?と思いながら読み始めました。

まず舞台設定が近未来。月にも人が住むような時代のようです。でも、「江戸」の町での話なんです。

日本の中に「江戸」という国があるという設定。しかも鎖国状態で簡単に入国できません。当選率の低い抽選に当たる必要があり、更には様々な条件や検査をクリアしないと入れません。

なぜそんなに競争率が激しいのか、気持ちがわからなかったんですけどね。便利な世の中で生きてきた人たちが、急に不便な江戸時代に行ったって楽しいとは思えないです。


江戸国では、時代劇などでよく見かけるような町が再現されていて、住んでいる人たちの格好も、言葉遣いも、生活の仕方も江戸時代のまま。なので、入国する際には、機械類や現代の薬、合成樹脂や合成繊維など、江戸時代には無かった物や自然には無い物は持ち込めません。

そんな国ですから、流行病が発生してもその当時の医療や薬で治す必要があるわけです。


辰次郎は、実は江戸国で生まれたという経歴の持ち主。彼には江戸国で流行した病から完治したという過去があるため、江戸国からその秘密を探るべく呼び寄せられます。今、江戸国で同じ流行病が発生してしまったのです。

「鬼赤痢」と名前の付けられたその病にかかると、全員が死亡してしまうという難病。特効薬も見つからないため、辰次郎が過去にどうやって治したのか?その方法を思い出すよう迫られます。

彼にそんな難題を吹っかけたのが、表紙の絵にもなっているすごい容姿のゴメス。実は長崎奉行だというゴメスから震え上がるほどの迫力で迫られ、何とか思い出そうと生まれた村へ向かいます。


ゴメスは、表紙からもわかるように、とても濃いキャラをしています。実は中身は良い人っぽいのも素敵でした。ゴメスには笑える秘密もありますが、それは読んだときのお楽しみ・・ということにしておきます。

ゴメスだけではなく、手下たちも面白い人が多くて、魅力的でした。主人公・辰次郎のことはそこまで好きにはなれなかったのですが・・。

一瞬、舞台設定に戸惑ったのですが、すぐに話に引き込まれ、一気読みしてしまいました。

続編があるようなので、ぜひ読もうと思います。



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2013年02月26日

西條奈加「はむ・はたる」

はむ・はたる

 西條奈加 著
 「はむ・はたる」
 (光文社文庫)


掏摸やかっぱらいで食いつなぐ暮らしを改めて、まっとうな商売を始めた、勝平をはじめとする十五人の孤児たち。彼らは周囲の小さな事件を解決しながら、自分たちの居場所を拓こうとする。厳しくも温かい長谷部家の人々や、口の悪い金貸しお吟らの助けも借りながら、子供たちは事件解決に奮闘する。笑いと涙が交錯する傑作に、特別書下ろし短編「登美の花婿」も収録。−裏表紙より−


「烏金」の第2弾です。今回は烏金に少し登場した勝平とその仲間たちが主役となり、話が進んで行きます。

勝平と仲間たちは、10代から3歳くらいの子どもで、それぞれ家族に捨てられ、売られた過去を持ち、売られた先から逃げた所を勝平に拾われて、共に暮らして生きています。

「烏金」のときには掏摸やかっぱらいをして食いつないでいた彼らですが、浅吉に助けられ、生きる術を教えてもらい、今では真っ当に暮らしています。

その暮らしに知恵や力を貸しているのは長谷部家の人たち。特にご隠居と呼ばれるおばあさんからはしつけや勉強まで見てもらっていますし、身元引受人として厳しく接してもらっています。

今回はその次男・柾さまも登場し、彼が勝平たちと行動することで、大きな助けとなっています。


題名の「はむ・はたる」とは、フランス語の「ファム・ファタール」という言葉のことで、存在するだけで男性を惑わせてしまう魔性の女のことだそうです。なぜこの題名が付いたのか?は、柾さまに大きく関係があるのですが、詳しい内容については書かないでおきます。

連作短編となっていて、1話ずつ語り手が変わりながら話が進みます。仲間の中でも少し年上の子どもたちの視点で進みます。メンバーは、身体の大きな玄太、お調子者の三治、計算ができるためお吟を手伝うテン(天平)、小さい子どもの面倒を見る登美、小さいけれどしっかり者で仲間のハチに想いを寄せる伊根、そして最後は仲間のリーダーである勝平。

最後の1話までは仲間たちが感じる勝平の姿が描かれているので、勝平がどれだけしっかりしているか、仲間のことをどれだけ考えているのか、仲間がどれだけ彼を信頼しているのか、がよくわかるようになっています。

まだ10代の子どもなのに、驚きのしっかり具合で、その言動には感動してしまいます。ただ、本当なら子どもらしく野山を駆け回っていて良いはずの年齢で、それだけしっかりしなければならなかった勝平がかわいそうにもなりました。

でも今の彼には、たくさんの素敵な大人や仲間がいて、きっとこれで幸せなんだろうとも思います。


まだまだ気になる勝平たちの人生。続きをぜひ読みたいと思います。続編出るかな??


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2013年02月05日

西條奈加「烏金」

初めましての作家さんです。

鳥金

 西條奈加 著
 「烏金」
 (光文社文庫)


因業な金貸し婆・お吟のもとへ押しかけ、金貸し業の手伝いをする浅吉。新しい発想で次々と借金をきれいにし、貧乏人たちを助ける彼には、実は秘密があった。大金を得るべく浅吉が仕掛ける真の目的はいったい・・。日本ファンタジーノベル大賞作家が江戸を舞台に描いた痛快時代エンターテインメント小説。文庫だけのオリジナル短編「勘左のひとり言」収録。−裏表紙より−


烏金というのは、朝借りて夜には返す借金のことで、商売人がその日の仕入れのために借りることが多いようです。


江戸へ出てきた浅吉は、金貸しの老女・お吟のもとへ転がり込み、金貸し業の手伝いを始めました。

彼は、ただ借金の取り立てをするのではなく、算術を駆使して、独自の方法で借金をしている人に借金を返す方法を教えます。町人には町人の、武士には武士の生き方や、生活スタイルがあって、それもきちんと考慮しながらアドバイスをして、どうすれば借金を返せるようになるのか?を共に考えていきます。借金取りなのに、妙に感謝されるようになり、お吟は不思議がります。

ただ、彼には何か秘密がありそうで、お吟に対して企んでいることがあるようです。


初めは得体の知れない雰囲気を持つ浅吉に、戸惑う感じでしたが、彼が出すアイディアやアドバイスを読んでいるうちに、どんどん好きになりました。

借金をする人の心情もよく理解していて、返しやすい気持ちになるようにうまく誘導していくのですが、その方法は「なるほど」と納得できる物が多かったです。


始めから浅吉の謎が気になり、その謎解きを知りたくて、次々と読み進める感じでした。特別、号泣するような話があったわけではないですが、感動する部分も多く、最後まで面白く読めました。

時代小説ではありますが、特に難しい言葉も出てきませんし、普段あまり読まない方でも読みやすい作品だと思います。


この話には続きがあるようなので、ぜひ読みたいと思います。


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