2022年03月24日

西條奈加「雨上がり月霞む夜」

207138.jpg

 西條奈加 著
 「雨上がり月霞む夜」
 (中公文庫)


がさつだが情に篤い秋成と、死者や妖しと交流する力を持つ雨月。幼馴染の二人は人間の言葉を話す兎「遊戯」との出会いをきっかけに、様々な変事に巻き込まれることに―。掛け軸から飛び出す金鯉、歳を取らない美女、罪の果てに鬼にまでなった男まで。江戸怪奇譚の傑作『雨月物語』をモチーフに綴る、切なく幻想的な連作短編集。−裏表紙より−


「雨月物語」がモチーフになっている物語です。

と書きながら、「雨月物語」を読んだことがないのでどの程度関係があるのかわかりませんけど。「雨月物語」を書いた秋成が登場します。彼が「雨月物語」を書くまでの話という感じです。

秋成はあまり細かいことは気にしないタイプの人で、だからこそちょっと不思議な雰囲気を持つ雨月と仲良くいられるようです。雨月が出会った、人間の言葉を話す兎と3人(?)が巻き込まれて行く出来事が描かれています。

その出来事というのが普通のことではなく、霊や妖などが出てきて、悲しいことも多いのですが、悲しい中にもゾッとするようなことがあるので、怖いのが苦手な私としてはあまり想像せずに読まないと辛い部分もありました。


後半は秋成の幼馴染としてずっとそばにいた雨月のことが明かされて行きます。読者は結構早めに雨月は人間では無さそうだと気づくと思うのですが、一番そばにいるからこそ秋成は気づいていませんでした。

だからこそ“がさつ”と呼ばれてしまうのでしょうけど。


雨月は人間ではないだろうということには気づいていましたが、その正体は意外なものでした。こんな結末だとは。

私が想像したように誰かの霊だった方がスッキリ出来たと思うのですが、それではこの物語はうまく収まらなかったのかもしれません。人間が内に秘めている感情や欲望がテーマになっているわけですから。

でもやっぱり彼らが共に過ごしてきた年月を思うと悲しい気持ちになってしまいます。


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 14:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2022年01月17日

西條奈加「せき越えぬ」

135779_l.jpg

 西條奈加 著
 「せき越えぬ」
 (新潮文庫)


東海道箱根の関所には、曰くありげな旅人が訪れる。離縁され故郷に帰る女。江戸から夜逃げをした夫婦・・。実直な番士武藤一之介は、親友の騎山市之助から関所に関する法外な依頼をされる。一之介は逡巡するも決断する。友の人生の岐路に際し何もしないのは裏切りも同然。たとえこの身に害が及んでも必ず友を助けなければならない―。関所をめぐる人間ドラマを描いた圧巻の人情時代小説。−出版社HPより−


物語は、武藤という真面目な武士が箱根の関所を越えようとしている所から始まります。初めての箱根越えで汗だくになり、関所を越えるために必要な書類を濡らして文字が滲んで読めなくなってしまいます。

読めなくなるとは言ってもよく見れば読める程度だったのでいけるだろうと思っていたら、融通に利かない役人に止められてしまいます。融通が利かないというより、難癖をつけていじめているかのような役人の態度に、真っ向からぶつかって行ってしまい、ますます通してもらえなくなりました。

真面目過ぎるのも考え物です。

その役人の態度が気になった武藤は、下役と親しくなり、事情を聞くことに。事情を知っても放っておけば良いのに首を突っ込んでしまったため、関所の番士を入れ替える事態にまで発展し、気付けば武藤自身が番士として勤務することになっていました。


二話目以降は、番士となった武藤たちの仕事ぶりが描かれていきます。

箱根の関所というのはあまり歴史に詳しくない人でも知っている有名な関所ですね。ここを越えると江戸に出られますし、逆に江戸にも入ることが出来る重要な場所でした。

将軍のいる江戸に怪しい人を入れるわけにいきませんし、重要な人物を江戸から出すわけにもいかない。最後の関門でした。


色んな人が関所を越えていきますが、特に印象に残ったのは妊婦さんの話でした。この時代、男性でも越えるのが難しかった箱根ですが、女性は更に大変でした。妊婦だからといって調べが甘くなることはなく、足止めされることも多かったようです。

ここに出てくる妊婦さんも調べに時間がかかってしまい、関所内で産気づいてしまいます。でもここで産んでしまったら、子どもと離れ離れにならざるを得ないということで、武藤たちは必死で策を練ることになりました。

奔走する様子を読みながらも、なんて大変な時代なんだと腹が立ちました。


武家の女性はもっと大変で、基本的には江戸から出ることは出来ないくらいでした。武家の女性は将軍家にとって人質のようなものだからです。色々理不尽な時代ですね。


最後の話がメインのようでしたが、これはあっさり終わり過ぎていたのでちょっと物足りない感じでした。この終わり方だと続編は無さそうですが、出来ればまた武藤たちの活躍が読みたいです。


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 14:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2021年08月24日

西條奈加「永田町小町バトル」

978-4-408-55666-6.jpg

 西條奈加 著
 「永田町小町バトル」
 (実業之日本社文庫)


「夜の銀座」専門の託児施設を立ち上げた行動力を買われて衆院選に出馬、見事初当選を果たした芹沢小町。“現役”キャバクラ嬢でシングルマザーという経歴、物怖じしないキャラクターがメディアで話題となり、働く母親達を中心に熱い支持を集めている。ひとり親家庭、貧困、埋まらない男女格差。“ジェンダー不平等国”ニッポンに、小町のパワーは風穴を開けられるのか!?−裏表紙より−


この作家さんにしては珍しいジャンルの作品ですね。時代小説以外も読んでいますが、政治の世界ですか・・。

とりあえず「政治」というだけで拒否反応が出てしまう私。こんなことではいけないのですが、小難しいしゃべり方をしている政治家たちを見ていると虫唾が走ります。「結局何が言いたいの?」と怒りが湧くことが多いです。頭悪い私が悪いのでしょうけど、頭悪くてもわかるような話し方は出来ないものなんですかね? 人生で一度も聞いたことがないような単語(「忖度」が良い例ですね)を使うことで国民の疑問を煙に巻くつもりなんじゃないか?と疑ってしまいます。

某知事のようにやたらと横文字を使う人とか、本当にバカにしているとしか思えません。

これ以上書いてしまうと、クレームが付きそうなのでこの辺でやめておきます。実際これ以上語るほどの知識がありませんし。


この物語の主人公である芹沢小町は、キャバクラで働くシングルマザーです。それで選挙に当選し、野党とはいえ国会議員となりました。経歴が珍しいことと、派手な容姿もあって始めから注目されています。

彼女が立候補した理由は、子育て支援。シングルで育てている家庭の支援をしたいというのが一番の理由でした。子育てする女性が働きにくいこと、子どもを預ける所がないこと、低所得のせいで生活が立ち行かなくなり世間からも離れてしまう悪循環を起こしている家庭を助けること、などなど「子育て支援」と一言で言っても色んな問題が山積みです。

その根本には「母親(女性)が子育てをするのが当然であり、女性は子育てが出来て当たり前」という考えがあります。確かに、お腹の中で育てるのは女性にしか出来ませんし、母乳が出るのも母親だけではありますが、だから「母親が育てるのが当たり前」になるのは違うと思います。これも語り始めると長くなる上に、何かしらの批判もありそうなのでやめておきますが、「女性に働け!」というのであれば、「男性も子育てしろ!」は当たり前の話です。「両親ともに働け!」というのであれば、子どもを預ける保育園を充実させないといけないのは当然。

最近でこそ0歳から預けられる保育園は増えましたが、数年前まではなかなか預けられなかったですし、今でも夜は遅くまで預かってくれないことが多いですね。長くても19時くらいまででしょうか? それ以降まで残業する仕事が多い中、これではしっかり働けないのも仕方ないですよね。かといって、保育の仕事に携わる私個人の意見としては、「そこまで長い時間、親と子どもが離れているのはどうなのよ」と思いますから、本当の理想は、職場が子育てしている期間は早く帰らせるという措置が取れるようにしてくれることです。もちろん、気兼ねなくその状態にしてもらえるのが条件です。そうならない限り、子育てしながら働こうと思う女性は増えないと思います。

やはり長くなってきましたね。


もう一つだけ認可外保育園に対する記述にクレームを。認可保育園と違って、国や地方自治体から認可がもらえないのが認可外(無認可ともいいます)保育園なのですが「認可がもらえないのは設置条件をクリア出来ないから」だと書かれていました。ですが、認可外保育園にも認可園に近い設置条件があり、職員の配置人数や子ども一人当たりの面積などはほとんど変わりません。

ではなぜ認可園にしないのかというと、その条件が厳しいからなんです。一番クリアしにくいのは「一定期間以上、ここの県や市、区などで認可園を経営していたという実績があること」という条件です。これって新規参入は無理??ってことですよね。自治体によってはここをクリア出来なくても他の条件がクリア出来ていればいいという場合もあるようですが。例えば認可外保育園を5年以上運営していて過去に何も指導されなかったことなどの条件です。

また、設置したい自治体で募集されていなかったら、条件なんて全く関係なく設置出来ません。つまり、自治体から募集されていて、条件をクリアできる状態で、更に応募して受け入れられて初めて認可園が開設出来るわけです。

なので、認可外だから、認可がもらえない園だから預けるのは心配だとか、問題がある園に違いないと思うのは間違いだと思います。逆に認可外の方が色々な保育の特色があって預けやすい所もあると思います。保育料はどうしても高くなりますけど。


すっかり物語の内容から離れてしまいました。

物語としては、題名のようなバトルはほとんどなく、小町の奮闘ぶりや政治家の活動方法についての細かい記述が多くをしめています。政治を知らない私にとっては「そうなんだ〜」と感心しきりでしたが、知っている人にとっては長々しく感じそうです。もっと端折る所はありそうです。

バトル部分に関してはもしかしたら続編を書かれるのかな?と。ハッキリ言ってこの巻だけでは小町は何もしていませんから、これからが楽しみな状態なので。色々面白い法案を考えていたので、ぜひ続きを読みたいです。


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2021年06月21日

西條奈加「無暁の鈴」

9784334791872.jpg

 西條奈加 著
 「無暁の鈴」
 (光文社文庫)


家族に疎まれ寒村の寺に預けられた武家の庶子・行之助は、手ひどい裏切りにあって村を捨てた。絶望から“無暁”と名を変え、ひょんなことから一緒になった万吉と江戸に向かう。悶着をきっかけにやくざの冲辰一家の世話になることになった無暁と万吉――波瀾万丈の人生が始まる。信じるものを見失った無暁が、最後にたどり着く圧倒的な境地とは?傑作が待望の文庫化!!−裏表紙より−


とある男性の人生を描いた作品です。

その男性は、家族に疎まれてある小さな寺に修行という名目で預けられていました。よくある田舎の厳しい寺という感じなのですが、そこの住職がなかなかの強欲者で、村の女性を無理やり・・ということもよくありました。

友だちになっていた女性が、それを原因にして目の前で自殺するのを見てしまったため、寺を出奔してしまいます。

まだ子どもだったのですが、二度と寺には戻るまいと決めて一人さまようことに。

空腹のまま倒れ込んだ所に偶然やって来た少年・万吉と仲良くなり、共に知恵を絞りながら江戸へと旅することになりました。寺にいただけに、坊主に見えてしまう彼は名を無暁と変えて、坊主頭のまま旅をしました。途中の寺に泊めてもらうこともあり、捨てたはずの仏の道の先にある何かを見つけたくなってしまいます。

しばらくは別の道を歩んでいたのですが、生きていくためにやくざの一員となり、万吉と助け合いながら生きていきます。そこからどんどん人生が複雑になっていきます。


あまりにも真っすぐな無暁が、その真っすぐさゆえに思いがけない試練にぶつかったり、不幸に見舞われたりするのを読むのはとても辛かったです。少し幸せになりそうな雰囲気が出ることもあるのですが、そうなると無暁がそこからいなくなり、より大変な道を歩んでいくんです。

そっちに行ったらしんどいのに・・と何度も止めたくなってしまいました。


最後の最後まで結局は辛い道を進んでいく無暁。彼の人生が終わるとき、彼は幸せだったのだろうか?と考えずにはいられませんでした。彼を慕っていた人たちも幸せだったのか?

読み終わったとたん、大きくため息をついてしまうような大作でした。大河ドラマのような長い映画を1本見終えた感覚になりました。


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 14:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2021年01月28日

西條奈加「銀杏手ならい」

034665.gif

 西條奈加 著
 「銀杏手ならい」
 (祥伝社文庫)


手習所「銀杏堂」に集う筆子とともに成長していく、新米女師匠・萌の奮闘物語
子に恵まれず離縁され、実家の手習所「銀杏堂」を継ぐことになった二十四歳の萌。女先生と侮る悪童らに振り回されながら、忙しない日々を送っていた。ある朝、銀杏堂の門前に女の捨子を見つける。自身も血の繋がらぬ両親に愛情深く育てられた萌は、その子を「授かりもの」として育てることを決心するが…。真っ直ぐに子どもと向き合い成長する、時代人情小説の傑作。
−裏表紙より−


祝!直木賞受賞。 読書好きではありますが、直木賞ってどんな賞なのかよく知りません・・。でも、とにかく賞を取るのはすごいことですよね。これを機会に、手に入らなくなっている作品を再出版してほしいです。ゴメスシリーズとか読みたいものがたくさんあります。


「銀杏堂」という手習所を父親から受け継いだ萌。彼女は一度嫁入りしましたが、子供が出来ずに離縁されて戻って来ていました。嫁入り前に手伝っていた手習所を受け継いで、母親にも手伝ってもらいながら毎日を過ごしています。

ストーリーとは関係ありませんが、子供が出来ないから離縁って、昔は理不尽ですよね。どちらが原因かわからないのに簡単に実家に戻されてしまいますし、文句も言えない。出戻ったら、産めない女性としてレッテルを貼られた状態で生きていくことになる。嫌な時代です。


門の前に大きな銀杏の木がある所から「銀杏堂」と名付けられた手習所。ここには、勉強するために通っている子どもたちがいます。年齢も性別も、家柄も様々な子どもたちなので、教える方はなかなか大変です。

武士の家なら勉強も大事ですが、商人や農家だと勉強はほどほどで良いということにもなってきます。更に女の子なら家を継ぐわけでもないので、行儀見習いさえ出来ればそれで良いと言われてしまいます。

子ども自身が習いたいものと、親が習わせたいものが違ったり、師匠として教えたいものが違ったりして、問題が次々と。子どもたちの可愛らしいけど真剣な悩みや、言動にクスリと笑ってしまう所もたくさんありました。


子供が出来ずに出戻ることになった萌の元に、捨てられた赤ちゃんがやって来ます。門の前に置かれた赤ちゃんを抱っこした萌は自分で育てることを決意します。実は、萌自身も捨て子だったこともあり、血がつながらなくても愛情をたっぷりもらった経験がありました。

色々戸惑いながらも日々成長していく赤ちゃんと向き合って、萌も成長していく様子が心地よかったです。

子どもたちを含め、萌や赤ちゃんの成長と幸せを祈らずにはいられない素敵な作品でした。

旅に出ていた父親が帰ってくるようなので、また雰囲気も変わるであろう銀杏堂の今後の物語をいつか読みたいと思いました。続編希望です。


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
posted by DONA at 15:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2020年04月08日

西條奈加「みやこさわぎ」

43013.jpg

 西條奈加 著
 「みやこさわぎ」お蔦さんの神楽坂日記
 (創元推理文庫)


高校生になった滝本望は変わらず祖母のお蔦さんと神楽坂でふたり暮らしをしている。そんなある日、お蔦さんが踊りの稽古をみている若手芸妓の都姐さんが寿退社することに。けれど婚約祝いの会が行われた数日後、都さんが突然失踪してしまい?! 情緒と歴史が残る街・神楽坂を騒がす事件をお蔦さんが痛快に解決! 望が作る美味しい料理もたくさん味わえる、大好評シリーズ第三弾。−裏表紙より−


お気に入りのシリーズです。3作目となりました。

2作目を読んだのが3年前。まあほとんど忘れています・・が、お蔦さんと孫の望くんのことさえ覚えていれば大丈夫です。


でもこの3作目も読んだのがかなり前なので、高校生になった望くんがやたらと大人びていること、作る料理があまりにも美味しそうなこと以外は忘れてしまいました。

またいつか再読して感想をUPし直します。


<お蔦さんの神楽坂日記シリーズ>
「無花果の実のなる頃に」
「いつもが消えた日」


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
posted by DONA at 16:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2019年06月10日

西條奈加「睦月童」

9784569768700.jpg

 西條奈加 著
 「睦月童」
 (PHP文芸文庫)


ある東北の村から日本橋の酒問屋に招かれた、不思議な目を持った少女・イオ。酒問屋の跡取り息子・央介は、その目を見たことで激しい良心の呵責に襲われ、かつて自分が犯した罪を償おうとする。やがて更生した央介とイオは、彼女の目を使って、江戸で起こる数々の事件を解決していくことになるが・・。青年と少女の交流と成長を通して、「罪と向き合う」ことの意味を描いた、感動のファンタジー時代小説。−裏表紙より−


ファンタジー時代小説というジャンル。この作家さんは得意なジャンルですね。


ある大店にやってきたみすぼらしい感じの少女・イオ。彼女は大店が招いてきてもらったのです。彼女の目を見た大店の跡取り息子・央介は、突然怖がり苦しみだし、自分のお明日罪を償おうとします。央介はあそび人で、仲間とつるんで色々と問題を起こしていたのです。でも、イオの力で改心し、仲間と共に償いを始めます。

その後もイオは江戸に残り、央介と共に過ごすうちに、町でイオの目を怖がる人を見つけては、どんな問題を抱えているのか調べ、助けていくことに。


イオは不思議な力を持っているのに、とてもあどけない少女で、言動が普通の少女と変わらずかわいらしかったです。そんなイオに愛情を感じた央介との関係がほのぼのしました。


でも話はそのままほのぼのとは終わらない・・。できればこのまま2人は楽しく幸せに過ごしてほしかったのですが、そうならないのが悲しかったです。


イオの出生の秘密が明らかになる頃には苦しくて辛くて何度も泣いてしまいました。 最後までスッキリはできませんでしたが、それでもきっとイオも央介も幸せなのだろうと思えて終われたのが救いでした。


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 14:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2018年10月29日

西條奈加「大川契り 善人長屋」

135777_l.jpg

 西條奈加 著
「大川契り 善人長屋」
(新潮文庫)


掏摸に騙りに美人局。住人が全員悪党の「善人長屋」に紛れ込んだ本当の善人・加助が、またしても厄介事を持ち込んだ。そのとばっちりで差配母娘は盗人一味の人質に。長屋の面々が裏家業の技を尽くして救出に動く中、母は娘に大きな秘密を明かす。若かりし頃、自らの驕り高ぶった態度が招いた大きな罰のことを―。流れゆく大川が静かに見つめた、縺れた家族の行方を丹念に描く人情時代小説。−裏表紙より−


裏家業を持つ住人が集まる善人長屋シリーズ第3弾は、再び短編集でした。

今回は加助が持ち込んだものだけではなく、事件の方から長屋に飛び込んできたパターンもありました。

驚いたのは、差配の一家にまだ家族がいたということ。しかもなかなかこじれた関係のようで、これを機に仲良くなれたら良かったのですがそれもまあ簡単にはいかない様子。

でも少しは長屋のことを見直してはくれたかな?とは思えたので、これからかな? 今後もこの人は出てきそうな雰囲気です。


そして、最終話が一番印象に残りました。あらすじにもある事件のことです。

差配の妻と娘が人質にされてしまいます。娘は女性だということで、犯人に襲われることも覚悟していて、その時は「舌を噛み切って死ぬ!」と言い切るのですが、それに対して母が言ったことは・・。

これを告白するのはなかなか勇気のいることです。でも、告白したことで母と娘の関係がより深く強くなったと思いますし、差配である夫との絆の深さを感じられて感動しました。

シリアスな話になりそうな場面で、娘の明るさがクスッと笑わせてくれる、このシリーズらしい展開で、感動しながらも笑わされてなかなか面白かったです。


ますますお気に入りになったシリーズ。また続きも読みたいです。早く文庫化を!!


<善人長屋シリーズ>
「善人長屋」
「閻魔の世直し」


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2018年08月24日

西條奈加「秋葉原先留交番 ゆうれい付き」

321712000396.jpg

 西條奈加 著
 「秋葉原先留交番 ゆうれい付き」
 (角川文庫)


電気とオタクの街―秋葉原。その交番に勤める権田は、筋金入りのオタク警官。対してコンビを組む長身イケメン警官・向谷は頭はからっぽだが、類い稀なコミュニケーション能力の持ち主。ひいては美脚の「足だけの幽霊」を連れてきてしまった。2人は「足子さん」と呼び、彼女の死の理由を探し始める。フィギュア盗難、抱きつき魔、迷子、メイド喫茶のいさかい・・ご当地ならではの「謎」に凸凹警官が挑む、新境地人情ミステリ!−裏表紙より−


東京とは縁のない人生を送っていますし、秋葉原は名前は知っていますしどんな街かは何となく知っていますが一度も行ったことが無い身としては、この話の舞台は想像するしかないわけですが、とりあえずオタクさんとメイドさんがいっぱいいるんだね〜ということはわかりました。日本っぽくない感じ??

そんな秋葉原の交番に勤める権田は、いわゆるオタクさん。交番の控室にはフィギュアやポスターなどを置いているくらいの筋金入り。その手の知識も豊富なので、オタクさんからは頼られる存在です。そして、とても頭が切れる人。事件をスマートに解決していきます。ただ、見た目はぽっちゃり系。

もう一人いる警官は、長身のイケメンで人付き合いもうまくて女性を惹きつけてしまう魅力の持ち主なのに、頭の回転がすこぶる鈍い向谷。

向谷が、女性をエスコートしながら交番に戻って来るところから話は始まります。その女性・季穂の視点で話は進められます。読み始めは普通の女性だと思うのですが、途中から何だかおかしな展開に。

どうやら彼女は幽霊らしい・・。向谷は、霊感が強くて、幽霊になった季穂のことがしっかり見えるのです。でも季穂はどうやら足だけの幽霊みたいです。

足だけなのに周りは見えるし、感情もあるという謎の現象が起きるのですが、まあそこは幽霊なので・・。

でも、さすがに口が無いからしゃべることが出来ず、足だけで何とかコミュニケーションを取らないといけなくて、ガニ股にしたり内股にしたりして、「はい」「いいえ」を伝えることになりました。

名前はわからないから「足子さん」と名付けられてしまいます・・何て安易な!


季穂がなぜ幽霊になったのか、なぜ足だけなのか、この世に未練があるであろう彼女の人生と死の原因を突き止めるために動き始めます。

前半はほぼ季穂とは関係のない事件を解決していくのですが、最後には悲しい事件が明らかにされていきます。結構コミカルに描かれているのについ涙してしまいました。

これで季穂も成仏する・・と思ったら・・・・。


どうやら続きそうな展開。警官二人のことも、足子さんこと季穂のことも気に入ったので、続編が出たらぜひ読みたいです。

足だけでやれることって限られているでしょうが、限界に挑戦してもらいたいものです。


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2018年08月09日

西條奈加「ごんたくれ」

9784334775971.jpg

 西條奈加 著
 「ごんたくれ」
 (光文社文庫)


安永四年、京都。当代一の絵師を目指す豊蔵と彦太郎は、ひょんなことで奇跡の出会いを果たす。喧嘩しながら才能を認め合い、切磋琢磨し腕を磨く若きふたり。鼻つまみ者の「ごんたくれ」と呼ばれた彼らは、求めた道の先に何を見たか?京画壇の華やかなりし時代、実在した二人の奇想の絵師をモデルに、芸術を探求する人間の性と運命を描き出した、傑作時代小説。−裏表紙より−


実在した絵師をモデルにした物語です。

大きな絵師に弟子入りすることもなく自立した絵師の筝白と、円山応挙という大勢の弟子を抱える一門に所属している胡雪。2人はあるきっかけで出会います。


筝白は、円山応挙の絵を認めておらず、大した腕もないのに有名になってもてはやされていることに腹を立てていました。でも弟子の胡雪の絵の才能は認めていて、早く独立するように勧めることもありました。

2人は似ている所が多く、周りから「ごんたくれ」だと言われています。性格には難のある2人ですが、絵の才能は素晴らしく、名は売れていませんでしたが、熱烈なファンはいるため、それなりに仕事を受けて絵を描き続けていました。

この時代は、商家や武家や寺社からの注文を受けて、襖や屏風などに絵を描いていました。大きな屋敷だと、何枚もに渡って大作を仕上げることも。

失敗は許されない仕事ですね。頼まれる方も勇気がいりますが、頼む方も勇気が要りそう・・。実際、思った雰囲気と違うものが出来ることもあったようです。

でもまあ、一緒に暮らしているうちに何となく慣れるというか、愛着が湧いてくるようです。

大作の場合は、描きあがるまで時間がかかるため、寝食の世話も注文主が行い、泊まり込んで製作してもらっていたそうです。かなりの贅沢ですね!


話の中には実在していた有名な絵師も出てきます。日本画に詳しくない私でも名前だけは知っている、池大雅、伊藤若冲など。本当にこの中に描かれているような性格だったのかはわかりませんが、そういう部分でも楽しめました。

始めは未熟だった2人の若い絵師がどんな想いで作品を仕上げ、どんな人生を歩んでいくのか、どんな絵師になっていくのかが気になって次々読み進めました。

ページ数も多く、2人の人生をたっぷり読むことが出来て、面白い読書時間になりました。


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2018年06月23日

西條奈加「六花落々」

034361.gif

 西條奈加 著
 「六花落々 りっかふるふる
 (祥伝社文庫)


「雪の形をどうしても確かめたく―」下総古河藩の物書見習・小松尚七は、学問への情熱を買われ御目見以下の身分から藩主の若君の御学問相手となった。尚七を取り立てた重臣・鷹見忠常とともに嬉々として蘭学者たちと交流し、様々な雪の結晶を記録していく尚七。だが、やがて忠常が蘭学を政に利用していることに気づき・・。蘭学を通して尚七が見た世界とは―。−裏表紙より−


ちょっと変わり者として見られていた小松尚七は、偶然出会った男と意気投合します。尚七はずっと「雪の形が見たい」と思っていたのですが、その気持ちを分かってくれたその男・鷹見忠常によって、その夢をかなえていきます。

御目見え以下という低い身分だったのですが、藩主の若君の学問の相手をするように言い渡された尚七。若君も尚七と同じようにあらゆることに興味をもち、色んな疑問を抱えて生きている人だったので、二人はすぐに打ち解けていきました。


雪の形を見るといっても、今と違って簡単に顕微鏡が手に入るわけでもなく、藩の力を借りずには実現しないことでした。若君のお相手をすることで、共に研究を進めていくことが出来たのです。

降ってきた雪を黒っぽい紙に乗せ、溶けない内に模様を写し取るという地道な作業。雪の形は色々あって、長年続けていくうちにたくさんの模様図を集めることが出来ました。

それを一冊の本にすることになり、尚七は喜んだのですが・・。


このまま、雪の形を写し取ったり、蘭学の勉強ばかりで終わってしまったら、これは何が言いたかったのか?と思ってしまいそうですが、そこから時代小説っぽい動きが。

忠常の動きと、若君の想い、そして尚七の庶民たちへの想いが痛くて苦しく感じる内容へと変化していきました。

刀を使った切り合いのような激しい展開は無いですが、静かな中にも激動があって面白かったです。


でも最後はすっきりと明るい終わり方をしてくれたので読んで良かったと思えました。


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 14:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2018年01月27日

西條奈加「世直し小町りんりん」

9784062930956_w.jpg

 西條奈加 著
「世直し小町りんりん」
(講談社文庫)


長唄の師匠であるお蝶は三味線の腕前と美声で気性も粋な弁天との評判。お蝶の兄嫁の紗十(さと)はたおやかな色白美人で観音のたたずまい。人呼んで<弁天観音>美人姉妹は、頼まれ事を抜群の機知で解決していく。にぎやかな日々の裏で、お蝶を狙う影が大きく動き始める。凛とした痛快時代小説。(『朱龍哭く』改題)−裏表紙より−


旅行中に持って行って読みました。旅行中って、内容が重すぎても困るし、自分に合わないと困るからお気に入りの作家さんが良いし・・って考えてこれを持っていきました。

面白かったから、旅行中暇さえあれば出して読んでしまい、帰りには読む物が無くなりました。


冒頭に登場したお蝶の描写にまず引き込まれ、そこからはお蝶と紗十の人柄の良さと、機転の速さと、行動力に惚れ惚れしながら読み進めました。

特に、紗十の魅力的なこと! 普段は極度の方向音痴だったり、穏やかな物言いもあって、天然でぽわんとした性格だと思われるのですが、実際に事件を解決していく頭の良さは彼女の方で、しかも薙刀の名手ときたら最高でしょう!

そして、お蝶も真っすぐで一途でかわいらしかったです。彼女の真っすぐな性格と、紗十の一癖も二癖もある性格の対比が良かったです。

お蝶を溺愛する兄(紗十の夫)や、お蝶を守る陣内、その他幼馴染たちも個性的で魅力的でした。みんなのことが好きになってきたとき、意外な展開が!

そこから誰を疑って、誰を信じたら良いのか、どんどん目が離せなくなっていきました。

続きが気になって一気読みです。

結末は悲しい気持ちを払拭させるような、痛快なことが用意してあって、最後までにやりとさせられました。

笑いながら泣きそうになりながら読める作品でした。

登場人物たちが気に入ったので続編も書いてほしいところですが、事件が大きすぎたのでこれ以上は難しいかな?? そう思うと寂しいです。

最後まで面白く読んだのですが、最終的に気になったのはわざわざ改題した題名。なぜにこの題名に変えたのか? あまりにもピンとこない題名です・・。ちょっと手に取りにくい感じがしてしまいます。


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 13:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2017年10月26日

西條奈加「涅槃の雪」

9784334767877.jpg

 西條奈加 著
 「涅槃の雪」
 (光文社文庫)


町与力の高安門佑は、新任の北町奉行・遠山景元の片腕として市井の取締りに励む毎日だ。その最中、元遊女のお卯乃を屋敷に引き取る。お卯乃との生活に安らぎを覚える門佑だったが、老中・水野忠邦が推進する天保の改革は、江戸を蝕み始めていた。改革に反対する遠山らと水野の鬩ぎ合いが苛烈を増す中、門佑は己の正義を貫こうとするが―。爽やかな傑作時代小説。−裏表紙より−


現代人にも馴染みの深い、遠山の金さんが出てきます。彼の片腕として活躍する高安門佑という与力が主人公なのですが、知っている人が出てくるだけで読みやすい気がしました。

さすがに時代劇のように金さんが町に出て、刺青を見せながら暴れるなんてことはありませんが、そんな姿を思い起こさせるような破天荒な感じの人として描かれていました。


ちょうど、有名な天保の改革の時代。質素倹約を押し付けられている江戸の人たち。特に商人たちは、商売に影響が出るくらいの取締りに合って苦しんでいます。

その改革を推し進めているのが老中の水野忠邦。有名どころがいっぱい出てきてちょっと嬉しくなります。

商人たちを苦しめる改革に対して、異議を唱える立場になるのが遠山奉行。水野の怒りを買わないようにしながらも、何とか改革を止めるように進言していきます。その駆け引きも面白かったです。

門佑はちょっとつかみどころのない人で、あまり好感はもてなかったのですが、彼を慕っている元遊女のお卯乃のことは好きになりました。なかなか武家の生活に馴染めないようですが、彼女の辛い過去と、その過去があるからこその深い想いに感動させられることが何度かありました。


最後までハラハラさせられる展開でしたが、最終的に良い終わり方をしてくれて嬉しかったです。彼らの幸せを確信しながら読み終えることができました。


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2017年09月06日

西條奈加「まるまるの毬」

9784062936873_w.jpg

 西條奈加 著
 「まるまるの毬」
 (講談社時代小説文庫)


親子三代で菓子を商う「南星屋」は、売り切れご免の繁盛店。武家の身分を捨てて職人となった治兵衛を主に、出戻り娘のお永とひと粒種の看板娘、お君が切り盛りするこの店には、他人に言えぬ秘密があった。愛嬌があふれ、揺るぎない人の心の温かさを描いた、読み味絶品の時代小説。−裏表紙より−


読み始めてすぐは、美味しい和菓子屋さん、しかも庶民に優しいお値段控えめな和菓子屋さんの日常を描いている話なんだろうと思っていたのですが、突然雰囲気が変わっていきます。

門外不出の有名な和菓子をそのまま真似して販売したのではないか?と疑いまでかけられてしまいます。毎日詮議にかけられる主の治兵衛。

どうなってしまうんだろうとハラハラしていると、更に治兵衛には何やら秘密がありそうだとわかっていきます。

確かにただ和菓子屋の日常を描いても盛り上がりに欠けるわけで、こうやって色々騒動があるわけだね・・と納得。

治兵衛の謎はすぐには明らかにされませんが、読者には何となく想像はつくようになっています。細かいところまではわからないので、それが明らかにされるのも楽しみで読み進めることになります。


途中、お君に良い話があったりして、この時代ならではの一筋縄ではいかない感じももどかしく、でも母親の娘を思う気持ちに感動させられ、祖父の優しさと叔父さんの力強さもあって、辛い話も全て明るい気持ちで終われる雰囲気になっていました。

出てくる人たちも良い人ばかりで、もちろん美味しそうな和菓子もたくさん出てきて、癒される話でした。

相手を気遣い過ぎて言いたいことが言えない主・治兵衛と娘・お永の関係が微笑ましくて特に気に入りました。その不器用な二人の間に立って、明るく元気に発言する孫・お君。みんな素敵でした。

シリーズにはなっていないようですが、ぜひ続きも書いてもらいたいです。

秘密が明らかにされても、まだまだ書くことはいっぱいありそう。

また彼らに会いたいです。


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2017年05月23日

西條奈加「御師弥五郎 お伊勢参り道中記」

034015.gif

 西條奈加 著
 「御師弥五郎 お伊勢参り道中記」
 (祥伝社文庫)


訳ありの弥五郎は伊勢詣の世話役・御師の手代見習いとして修業中。ある日、侍に襲われる材木商・巽屋清兵衛を助けた縁で、用心棒を兼ねて清兵衛の伊勢参りに同行するはめに。「御師は盗人」と言い放つ変わり者の弥五郎だったが、伊勢を目指す人々と関わるうちに、心境に変化が。そして清兵衛の過去を知った弥五郎は・・。時代小説界の気鋭が描く笑いと涙の道中記。−裏表紙より−


御師という職業があるんですね〜。初めて知りました。

伊勢神宮だけではなく、色々な神社に属しているようです。「おし」というのですが、伊勢神宮だけは「おんし」というらしいです。

神社に属していて、その神社に参拝する人をもてなし、宿泊などの世話もするのが仕事です。


この物語の主人公・弥五郎は、そんな御師の見習いとして働いていながら、なぜか御師という職業に嫌悪感を示しているという変わった人物です。

神社を参りたいという信心深い人から金を取るわけですから、見ようによっては「金に汚い職業」に見えなくもないですけど・・。

特に昔は伊勢参りなんて夢の話で、一生に一度行けたら良い方で、ほとんどの人は行かずに終わるわけですから、その夢見る気持ちを踏みにじるように思えなくもない?

でも読み進めると、御師たちの心配りは素晴らしいですし、顔の広さに救われることも多くて、この時代には大事な必要な職業なんだということがわかりました。

弥五郎も、少しずつ考えが変わっていきます。

彼は腕にも覚えがあるので、用心棒も兼ねて旅をします。依頼主には秘密があるようで、それも気になりつつ読み進めるうちに、気づけば終わっていたという感じです。

ハラハラする展開もあり、ちょっとホロリともさせられ、クスっと笑う所もあり、なかなか楽しい話でした。

もう少し盛り上がりがあっても良かったのかな?とも思いますが、これはこれで良かったのかもしれません。

シリーズ化して、続編も書いてもらいたいと思う作品でした。


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 14:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2017年03月09日

西條奈加「三途の川で落しもの」

10510.jpg

 西條奈加 著
 「三途の川で落しもの」
 (幻冬舎文庫)


大きな橋から落下し、気づくと三途の川に辿り着いていた小学六年生の叶人は、事故か自殺か、それとも殺されたのか死因がわからず、そこで足留めに。やがて三途の渡し守で江戸時代の男と思しき十蔵と虎之助を手伝い、死者を無事に黄泉の国へ送り出すための破天荒な仕事をすることになる。それは叶人の行く末を左右する運命的なミッションとなった。−裏表紙より−


人にはそれぞれ人生があって、その人生を全うしたら静かな眠りにつくことが出来ますが、なかなかそうあっさりと未練なく眠りにつくわけにはいかないという人もたくさんいます。

そういう人は、三途の川の途中で船が転覆してしまうため、その原因を取り除いて安らかにあの世へ行ってもらう必要があります。

その仕事を小学六年生にして三途の川までやって来た叶人が手伝うことになりました。現実の世界に降りる必要があるため、最近まで現代にいた彼は役立つのです。

短い話、一つ一つに1人の人生が描かれていて、どんな未練を持っているのか、どうやってその未練を無くすのかを読むことができます。

「死」にまつわる話ですから、一話ごとにずっしり重くて、しんみりする内容ばかり。イライラするものもありましたが。

他人の死に関わっている間に、叶人は自分の「死」についても考えることに。彼は結局なぜ三途の川までやって来たのかが明らかになっていなかったので、川を渡ることができずにいました。

最終話は叶人がなぜここまでやって来たのか、どうやって元の世界に戻るのかが描かれ、痛々しい想いに辛くなりました。

それまでは子どもらしくない言動が好きになれなかったのですが、最終話で一気に好きになりました。子どもらしくなれて良かったです。

まあ結局最後の最後では「そうなるか・・」って感じでもあったのですが。


重くなりがちな内容の話でしたが、要所要所に笑いがあってそれほど暗くならずに読み切ることが出来ました。


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2017年01月06日

西條奈加「上野池之端 鱗や繁盛記」

135776_l.jpg

 西條奈加 著
 「上野池之端 鱗や繁盛記」
 (新潮文庫)


騙されて江戸に来た13歳の少女・お末の奉公先「鱗や」は、料理茶屋とは名ばかりの三流店だった。無気力な周囲をよそに、客を喜ばせたい一心で働くお末。名店と呼ばれた昔を取り戻すため、志を同じくする若旦那と奮闘が始まる。粋なもてなしが通人の噂になる頃、店の秘事が明るみに。混乱の中、八年に一度だけ咲く桜が、すべての想いを受け止め花開く―。美味絶佳の人情時代小説。−裏表紙より−


始めは、高田郁さんの小説のようだと思いながら読んでいたのですが、だんだん雰囲気が変わっていきました。

騙されるような形で奉公に出てきたお末。三流の料理茶屋で接客をすることに。他の奉公人は現状を仕方ないと諦めていましたが、お末は何とかお客を満足させたいという気持ちで働きます。

お末に影響されるように、料理長も少しずつやる気を出していきます。

若旦那は以前から店を何とかしようと思っていたらしく、義父である主人がやる気がないので、自分のやりたいように店を改革し始めました。

こういう感じで、店が良くなっていき、お末も他の奉公人たちも生き生きと働いて、店がどんどん大きくなって・・という展開になるんだと思っていたら、何だか不穏な展開に・・。

変だな?と思っているうちに、どんどんおかしな方向へ。


気持ちはわかるけど、こんな方法をとらなくても・・と悲しい結末が。

でも最終的には明るい未来を感じさせる終わり方になっていたので、途中のことを思えば、読後感はそれほど悪くありませんでした。

一つ残念なのは、途中の年月がかなり省略されていたこと。2作に分けてでも詳しく書いて欲しかった部分でした。

シリーズにするのは難しそうですが、彼らにはまた会いたいという気持ちになりました。


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 17:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2016年11月15日

西條奈加「いつもが消えた日」

43012.jpg

 西條奈加 著
 「いつもが消えた日」お蔦さんの神楽坂日記
 (創元推理文庫)


中学三年生の滝本望は祖母と神楽坂でふたり暮らしをしている。芸者時代の名前でお蔦さんと呼ばれる祖母は、粋で気が強く、御機序州からも頼られる人気者だ。後輩の有斗が望の幼なじみとともに滝本家へ遊びに訪れた夜、息子ひとりを残して有斗の家族は姿を消していた―。神楽坂で起きた事件にお蔦さんが立ち上がる! 粋と人情、望が作る美味しい料理を堪能できるシリーズ第二弾。−裏表紙より−


シリーズ1作目を読んだのは3年前。お蔦さんや望のことは何となく覚えていましたが、それ以外の人たちのことは全て忘れてしまっていて、何度も「誰だっけ?」と思ってしまいました。細かいことはわからなくても、この町の雰囲気と2人のことがわかれば大丈夫でしたけど。


前作は短編でしたが、今回は長編。読み応えのある作品になっていました。その分、重い部分も増えましたし、望の中学生らしからぬ大人っぽい言動も増えて、応援したくなる気持ちになりました。

望の後輩・有斗の家族が突然姿を消すという事件が起こります。しかも、望の家に遊びに来ていた間にいなくなったようで、そのまま有斗をかばうように望とお蔦さんが面倒をみることに。

当然、事件も解決しようと立ち上がるわけですが、2人はあまり動かなくても周りがどんどんヒントをくれた感じで解決。警察も知らない事実を知ってしまうので、彼らよりも先に真相に近づけます。

そうじゃないと物語は成立しないわけですが。


家族がいなくなって不安いっぱいの有斗が、周りに心配をかけまいと精一杯がんばる姿や、自分も子どもなのに必死で大人から有斗を守る望の姿にウルウルさせられました。

もっとゆっくり大人になれば良いのにと心配になってしまうほど大人になった2人。

でも最後はちょっと年相応な行動も出てきて良かったです。


相変わらず美味しそうな望の作る料理もたくさん出てきます。レシピを教えてほしい!と強く望んでしまいます・・。

第三弾も発売されたようです。文庫化されるのを待って続きも読みたいです。


<お蔦さんの神楽坂日記シリーズ>
「無花果の実のなる頃に」


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2016年10月11日

西條奈加「千年鬼」

893995.jpg

 西條奈加 著
 「千年鬼」
 (徳間文庫)


友だちになった小鬼から、過去世を見せられた少女は、心に<鬼の芽>を生じさせてしまった。小鬼は彼女を宿業から解き放つため、様々な時代に現れる<鬼の芽>―酒浸りで寝たきりの父のために奉公先で耐える少年、好きな人を殺した男を側仕えにして苛めぬく姫君、行商をしながら長屋で一人暮らす老婆、凶作が続く村で愛娘を捨てろと言われ憤る農夫、田舎から出て姉とともに色街で暮らす少女―を集める千年の旅を始めた。 精緻な筆致で紡がれる人と鬼の物語。−裏表紙より−


連作短編になっていて、4話までは小鬼が人の心に芽生える「鬼の芽」を吐き出させていく物語が続き、小鬼は天上の誰かに言われて、世の中を良くしようとしているのだと思っていました。

ところが、5話目になって時代が遡り、小鬼が民という少女と出会う場面が描かれたことで、これまでの話も実は全て一人の生まれ変わりなんだと気づかされます。

民が鬼の芽を芽生えさせる原因となった出来事が、本当に昔の日本で行われていたことなのかはわかりませんが、思わず顔をしかめたくなるようなことで、これは狂っても仕方ないと思えました。

そこからの小鬼と民の友情関係は痛々しいですが、心温まる物語で、最後は気づけば涙が流れているような、何とも言えない終わり方をしました。

ハッピーエンドとも言えるし、かわいそうでもあるし、でもこれで良かったのかもしれないとも思えます。これは、読んだ人それぞれ、感じ方が違うと思います。

私は心穏やかに読み終えることができました。「めでたし、めでたし」とは言いませんが、それに近い気持ちです。

苦しまなくて良くなっただけでもうれしくなりました。


鬼が出てくる時点でファンタジーなわけですが、普段ファンタジーを読まない人にも読んでもらいたいと思えるような素敵な作品でした。

この作家さんの作品はなかなか見つけられないのですが、早く探して読みたいと思います。


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加

2016年08月19日

西條奈加「四色の藍」

9784569762586.jpg

 西條奈加 著
 「四色の藍」
 (PHP文芸文庫)


紺屋の女将・紫屋環は、三ヶ月前に亭主が殺された事件の真相を知るべく、大店の東雲屋を探っていた。環は、同じく東雲屋ゆかりの者に恨みを持つ女たちと出会い、四人で協力して東雲屋に挑むことに。しかし、それぞれの愛憎や思惑、環に惚れる同心、藍の産地である阿波藩の御家騒動なども絡み、事件は意外な様相を呈していく・・。二転三転する展開と謎。気鋭が描く、痛快さと人情味に溢れた長編時代小説。−裏表紙より−


お気に入りの作家さんなので、読みやすかったです。

3か月前に亭主を殺され未亡人となった環は、物語の冒頭には亭主殺しの容疑者と思われる店で啖呵を切っている様子が描かれていて、男勝りのたくましい女性かと思ったら、だんだんと女性らしさが出てきて、実は神経の細かいしっとりとした女性だとわかるようになります。

彼女が下手人を捕らえるべく仲間に引き入れたのは、3人の女性。まずは、洗濯婆をやっているおくめ。容疑者と思われる店主のいる東雲屋にも出入りできますし、洗濯をしているお婆さんに誰も興味をもたないだろうということで、密偵のようなことをしてもらっています。次に、東雲屋の裏家業で腕を振るう男に対して恨みを持つお唄。同じ店に恨みを持つ者同士協力し合えるだろうということになりました。彼女も近くの料理屋で女中をしながら東雲屋で働く者たちから話を聞き出す役目を担っています。

そして最後の1人はちょっと特殊で、始めは武士として登場します。東雲屋に仇がいるという噂を聞きつけてやって来ました。偶然、環と出会い、彼女も協力者に。腕に覚えがある彼女は用心棒も兼ねています。


それぞれが憎い相手を持ち、それぞれ何かしらの思惑を持って行動する様子は、ハラハラさせられる場面も多かったです。なかなか調査が進展しない状態が続いていると思ったら、急に解決へ。

しかもあらすじにもあるように意外な結末。下手人を含め、4人の今後の人生も思わぬ方向へ進んでいきました。

ただ、それぞれ幸せになってくれそうな結末ではあったのでそこは救いです。1人の決断は私的には納得できませんでしたが。でもきっと彼女なら大丈夫だろうとも思えました。


さ、次は何を読もうかな? また本屋めぐりをして探してみます。


↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:西條奈加