2017年04月17日

伊吹有喜「情熱のナポリタン BAR追分」

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 伊吹有喜 著
 「情熱のナポリタン BAR追分」
 (ハルキ文庫)


かつて新宿追分と呼ばれた街の、<ねこみち横丁>という路地の奥に「BAR追分」はある。<ねこみち横丁>振興会の管理人をしながら脚本家を目指す宇藤輝良は、コンクールに応募するためのシナリオを描き上げたものの、悩んでいることがあって・・。両親の離婚で離れた暮らす兄弟、一人息子を育てるシングルマザー、劇団仲間に才能の差を感じ始めた男―人生の分岐点に立った人々が集う「BAR追分」。客たちの心も胃袋もぐっと掴んで離さない癒しの酒場に、あなたも立ち寄ってみませんか?大人気シリーズ第三弾。−裏表紙より−


お好み焼き大戦」「秋の親子丼」「蜜柑の子」「情熱のナポリタン」の4編が収録されています。

一作目では陰の薄かった宇藤くんが、二作目で少し目立って来てイケメンだとわかってきたのですが、今作では頑固だけどウジウジした所もあるようなちょっと性格がわかりにくくくなってきました。

ある意味、人間らしくなった感じではあるのですが、一筋縄ではいかないようなつかみどころのない感じかな?と。

悩んで人に相談しておきながら、意見を言われると否定したがるところがあって、そういう部分は読んでいてイラっとしました。

一応、作品を仕上げた彼ですが、深い描写が出来ていないということで、そこから悩んでしまいます。まあそんなに簡単に自信作が仕上がったら苦労はしないですけどね。

専門的な意見で助けようとする人、遠回しに助けようとする人、様々ですが、この横丁の人たちはみんな宇藤くんのことが気に入っていて、彼に何とか成功してもらいたいと思っているんです。

たまに、辛辣な意見をぶつけることもあって、宇藤くんは落ち込んでしまうのですが、気づけば立ち直っている感じ。特別何かきっかけがあるわけでもなく、何となく前向きになっている感じです。


今回も色々なお客さんがやって来て、ものすごく美味しそうな食べ物を食べて去っていきます。ナポリタンってあまり好きではないですが、無性に食べたくなりました。

カウンターだけのお店って入りにくいですけど、このBARなら行きたいなと思います。

たぶん、続きも書かれると思うので、楽しみに待つことにします。


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2017年03月03日

伊吹有喜「ミッドナイト・バス」

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 伊吹有喜 著
 「ミッドナイト・バス」
 (文春文庫)


故郷に戻り、深夜バスの運転手として働く利一。子供たちも独立し、恋人との将来を考え始めた矢先、バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。会社を辞めた長男、結婚と仕事で揺れる長女。人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。バスの乗客の人間模様を絡めながら、家族の再出発を描いた感想長篇。−裏表紙より−


感想を書くまで間が空きすぎて、ちょっと忘れそうになっていたりして・・。


深夜バスの運転手として働く中年男性・利一が主人公で、彼と彼の家族(別れた妻、息子と娘)の物語になっています。

利一には恋人がいて、そろそろ結婚を考えようかな?という時期になっていました。そんなときにバスに乗ってきた元妻。そこから利一の生活が少しずつ変わっていきます。

ちょうど同じときに、独立していた息子が実家に戻ってきます。ポロポーズのタイミングを逃してしまい、もともと悩みやすい性格だったらしい利一は改めて考え始めてしまいます。


悩みやすくて不器用でうまく想いを伝えられないのに、戻ってきた息子や元妻が彼を惑わすような発言を繰り返しますし、更に娘も結婚問題を抱え、仕事面でも親として心配になるようなことをやってしまいます。

お陰でウジウジよく悩む利一。悩む上に、深く考えたつもりで相手に発言してしまっては後悔・・。それなのに肝心なことは言ってあげないからタチが悪い!

はっきり言って好きではない主人公でした。

でも何だろう?作品自体は嫌いじゃなかったんですよね。ある意味、誰もが同じような悩みを抱えてウジウジするものだからなのかもしれません。

あ〜なんか気持ちわかるわ〜って感じでしょうか。だからこそ腹も立つわけで。

その辺の人間描写がとてもお上手な作家さんですね。


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posted by DONA at 17:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:伊吹有喜

2016年06月08日

伊吹有喜「なでし子物語」

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 伊吹有喜 著
 「なでし子物語」
 (ポプラ文庫)


いじめに遭っている少女・燿子、居所のない思いを抱え過去の思い出の中にだけ生きている未亡人・照子、生い立ちゆえの重圧やいじめい苦しむ少年・立海。三人の出会いが、それぞれの人生を少しずつ動かし始める。言葉にならない祈りを掬い取る、温かく、強く、優しい物語。−裏表紙より−


「外の世界は男の世界。女は何も知らなくていい」なんていう時代錯誤な考えを持つ由緒ある一族の話で、強く生きたいと願う女性と、それを頭ごなしに押さえつけてしまう男性という嫌な構図になっていました。

でも登場人物たちの懸命さは読んでいて心地よくて、みんな応援したくなるような人ばかりでした。

一見偏屈そうに思える一族の家を守る未亡人・照子。彼女は亡き夫の思い出の中に生きているような女性で、使用人からは慕われてはいますが、本人は無関心である意味世捨て人のような状態です。

母親から捨てられて、父親もいなくて祖父に育てられることになった少女・燿子。お金が無いというよりも、子育てに無関心な祖父のお陰で、服が汚れていたり体が汚れていたりしているため、同級生からひどいいじめを受けている彼女。勉強も追いつかなくて、学校に通うにもやめてしまいました。

一族の主人である父に田舎暮らしをさせられることになった少年・立海。体の弱い息子(跡取り)を心配して、田舎で過ごさせようというのはわかるのですが、更には伝統に従って女装もさせます。当然、いじめの対象になるわけで。彼の場合は病弱なこともあって、学校へは通わず、家庭教師をつけて勉強をしています。


この3人が照子が仕切っている田舎の家で出会い、それぞれを気にかけているうちに癒されながら過ごしていきます。

子どもの2人はお互いの事情など全くわかっていないのですが、どこか達観している部分もあって、子どもらしくない雰囲気すらありました。2人で過ごしているうちに子どもらしさを取り戻していくのを微笑ましく思いながら読みました。

そんな彼女たちを見ているうちに、照子も穏やかになっていくのが素敵でした。

静かな良い雰囲気の内容にほのぼのしているうちに、当然ながら一族のドン登場! まあこのまま穏やかに静かに終わったら何だったのか?だよね・・と思いつつも、あまりの理不尽さに怒りがわきました。

それでも子どもは強いもので、どうやら今後も前を向いて生きていけそうな感じ。そこだけは良かったと思えました。


立海の家庭教師が言った言葉が素敵だったので書いておきます。


「自立と自律」
自立、かおを上げて生きること
自律、うつくしく生きること、あたらしいじぶんをつくること。


嫌なことがあったときに目を閉じて下を向いてやり過ごしていた燿子に対して「強くなりなさい!」と教えた言葉です。どんな環境にいても強く生きていこうと思ったら乗り越えていける! 私も心に刻みたい言葉です。


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posted by DONA at 15:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:伊吹有喜