2022年12月27日

近藤史恵「ほおずき地獄 猿若町捕物帳2」

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 近藤史恵 著
 「ほおずき地獄 猿若町捕物帳2」
 (光文社文庫)


吉原に幽霊が出るという噂がたった。幽霊が出た後には必ず縮緬細工のほおずきが落ちているという。騒動のさなか、幽霊が目撃された茶屋の主人と女将が殺された。下手人は幽霊なのか。女性が苦手な二枚目同心”玉島千蔭は「じゃじゃうま娘」との縁談話に悩む傍ら、事件の解決に乗り出すが・・。『巴之丞鹿の子』に続く「猿若町捕物帳」シリーズ第二弾。−裏表紙より−


前作のことはすっかり忘れていましたが、何とか読めました。読み進めると、そうそう二枚目だったな、とかお父さんが面白かったな、とか思い出してきました。


今回も舞台は吉原。よくドラマや映画で取り上げられる場所ですが、華やかなイメージと裏腹に悲しい雰囲気もある場所です。そんな吉原で幽霊騒ぎが持ち上がります。

特に何をするわけでもない幽霊なのですが、気味悪がって客足が遠のくので困っているということもあり、千蔭が捜査に乗り出します。

1作目の感想でも書いていましたが、ページ数が少なくあっさり読み終わるのは同じ。しかも事件の解決までが早い。容疑者もほとんどなく終わってしまいます。


ただ、今回は幽霊の正体が悲しすぎでした。あまりにもひどい仕打ちに涙が出ました。殺された女将よりも、甘い言葉で寄って来た奴の存在が最悪です。罪が深すぎ!

あまり書き過ぎるとネタバレになるのでこれ以上言えませんが、殺される相手が違う気がしました。

重苦しい雰囲気のまま終わるのかと思っていたら、最後に笑える出来事があり、そこはホッとしました。


こうなると、千蔭の結婚はまだまだ先になりそうです。どうなるやら・・。


まだシリーズは何冊かありますが、なかなか手に入らないのが難点。再版してくれないかな??

<猿若町捕物帳シリーズ>
「巴之丞鹿の子」


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2022年07月06日

近藤史恵「歌舞伎座の怪紳士」

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 近藤史恵 著
 「歌舞伎座の怪紳士」
 (徳間文庫)


職場でハラスメントを受け退職した岩居久澄は、心に鬱屈を抱えながら家事手伝いとして日々を過ごしていた。そんな彼女に観劇代行のアルバイトが舞い込む。祖母に感想を伝えるだけで五千円くれるという。歌舞伎、オペラ、演劇。初めて体験に戸惑いながらも、徐々に芝居の世界に魅了され、心が晴れていく久澄だったが―。私が行く芝居に必ず「親切な老紳士」がいるのは、なぜだろう?
−裏表紙より−


連作短編のように1話ずつ完結していきますが、1話毎に題名はありません。第一章、第二章という感じで進んでいきます。


仕事場の雰囲気に馴染めず退職することになった久澄は、実家の家事をして仕事をしている母親を支えていました。そんな自分の状況に悩んでいる時、普段はあまり仲が良いとは言えない祖母からアルバイトの話がきます。

祖母の代わりにお芝居を見に行って感想を伝えてほしいという物でした。顔が広い祖母は知人から「見に来て欲しい」とチケットを渡されることが多いが全部を見に行くことは出来ないということで、久澄に代わりに行って感想を言ってもらえれば助かると言うのです。

お芝居など見に行くことが無かった久澄ですが、とりあえずもらったチケットを持って観劇に。初めて渡されたのは歌舞伎のチケットでした。歌舞伎はお芝居の中でも敷居が高いものですが、アルバイトなので行ってみることにしました。

パンフレットも購入するように言われていたので買って読むと話の内容は何となくわかりましたが、細かい設定などは理解できず。それでも生で目の前で繰り広げられるお芝居の素晴らしさに魅了された久澄。

その時偶然隣りに座った素敵な紳士と少し会話をし、色々教えてもらっていたところ、ちょっとした揉め事に巻き込まれてしまいます。こうなると、その素敵な紳士が華麗に解決して久澄が好きになるパターンか!?と思いますけど、そうはならず。どちらかというと久澄が一人で解決します。紳士は口添えをするのみ。

ということは、話はどう展開していくのか気になってきます。

生のお芝居にはまった久澄は祖母からのアルバイト以外にも自分でチケットを買って観劇するようになっていきます。でも行く所行く所にその紳士は現れます。

なんて謎めいた存在!

紳士の様子が明らかになってくると久澄とはかなり年齢差があることがわかってくるので、恋愛話にはならなそうです。でも最後は・・。


なるほどそういう存在の人でしたか! と納得ですし、この終わり方も素敵でした。


コロナ禍でなかなか気軽に観劇しにくいですけど、長い間見に行っていないのでそろそろ行きたいと思うようになりました。そしていつかは行ってみたいのが歌舞伎。チケット高そう、話わかるかな?と久澄と同じ悩みがありましたが、これを読んだら解決したので、行きたいと思います。近くで公演があれば良いのですが・・。


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2022年03月15日

近藤史恵「ガーデン」

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 近藤史恵 著
 「ガーデン」
 (創元推理文庫)


小函を抱えて今泉探偵事務所を訪れた奥田真波は「火夜が帰ってこないんです」と訴える。燃える火に夜、人を魅惑せずにはいない謎めいた娘だ。函の中身を見て只事ではないと諒解した今泉は、助手山本公彦と共に火夜の行方を追う。やがて探偵は、死を招き寄せるあやかしの庭へ・・。周到な伏線と丹念に組み立てられた物語世界、目の離せない場面展開がこたえられない傑作ミステリ。−裏表紙より−


「ねむりねずみ」など、歌舞伎の世界での事件を調査する今泉探偵が出てくる物語です。

歌舞伎の話より前なので、探偵としてはまだ駆け出しの今泉の様子が見られます。助手の意外な秘密もあったりして、シリーズのファンの方はこれも読んだ方がよさそうです。


ただ、本作の内容は、私は苦手なタイプでした。始めから終わりまでただひたすらに暗い・・。そして、登場人物の誰にも共感できるところがない。何だか海外ドラマのようです。しかも、治安が悪い下町のような場所での話という感じです。

出てくる少女たちも、まだ若いはずなのに妙に大人びていて、ドラッグでもやっていそうな感じ。実際一人はやっていたようですけど。

本来は犯罪から遠い存在のはずの彼女たちの周りに、普通に起こる殺人事件。殺人事件が起きるのに警察は出てこないという異様な状況。少しは葛藤したようですけどあっさりと隠蔽する人たち。

どれもこれもついて行けませんでした。


ある意味、かけ離れていて感情移入しない方が読みやすい気はしますけど。


そして、相変わらず今泉は自分一人で何かに気づいて何かにつまずいて何かに悩んで、このまま事件を忘れようと一度は考えて、結局は全てを暴いてしまいます。

暴いたからといって救われないんですけどね。

死ななくても良い人もたくさん死んで、結局何が言いたかったんだろう?と最後まで理解出来ずでした。

これは、彼女の人生を憂いておけば良いのか?よくわかりませんでした。


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2021年12月15日

近藤史恵「散りしかたみに」

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 近藤史恵 著
 「散りしかたみに」
 (角川文庫)


歌舞伎座での公演中、毎日決まった部分で桜の花びらが散る。だれが、なんのために、どうやって花びらを降らせているのか?女形の瀬川小菊は、探偵の今泉文吾とともに、この小さな謎の調査に乗り出すことになった。1枚の花びらが告発する許されざる恋。そして次第に、歌舞伎界で30年以上にわたって隠されてきた哀しい真実が明らかにされていく―。歌舞伎座を舞台に繰り広げられる。妖艶な魅力をたたえた本格ミステリ。−裏表紙より−


シリーズ2作目。前回も悲しい物語だった気がしますが、今回も・・。

起きた事件は、そこまで大きくなく、誰かが殺害されるわけでもありません。ただ、公演中に毎日同じ場面で花びらが一枚降ってくるだけ。

花びらが一枚落ちてくるだけなら放っておけば良いやん、と思いますが、その舞台に立って芝居をしている役者からすれば気になるもので。まあ確かに毎日毎日同じ場面で必ず一枚だけ降ったら気になるかもしれませんけど。

他の場面で降らしていた花びらが残っていて、ということでもないとなれば、誰が何のために降らせているのか?と調べたくなるのはわかる気がします。


師匠に「気になるから調べろ」と言われてしまったら、調べなければならないのが弟子というもので、小菊は友人でもある探偵の今泉に相談することにします。でもなぜか今泉は話を聞いたとたんに「調べるのはやめろ、放っておけ」と言い出します。辛く悲しいことに巻き込まれるからというだけで、細かい理由は語ってくれません。

そんな曖昧なことで師匠が納得するはずもなく、小菊は再び調べ始めます。そこで浮上したのが同じ歌舞伎役者の若手の人。ちょっと色気もあってモテるその役者の怪しげな行動に注目して調べるわけですが、彼は同じ場面で舞台に立っているので直接手を下すことは出来ない。

・・・と色々調べていくわけですが、進捗状況を知らせる度に悲しげになっていく今泉の様子も気になりますし、その役者の周りにいる人たちも気になり、誰が犯人なのか?ということよりも、どこに着地点があるのか?というのが気になってしまいました。

花びらを一枚降らせるだけなんですから、そこまで大きな動機ではないだろうと思っていたのですが、最終的には・・・。


謎が解明されると、歌舞伎の世界の狭さに呆れますし、そこまでして守らないといけない伝統って何なんだろう?と不思議でなりませんでした。

こんな結末を迎えるほどのことをしたわけでもないのに・・と色んな意味で悲しくなりました。

もっと気楽に生きてはいけないものでしょうか。伝統を守るって大変なことなんですね。

絶対に関わりたくないと思ってしまいました。まあ関わることはないでしょうけど。


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2021年09月16日

近藤史恵「わたしの本の空白は」

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 近藤史恵 著
 「わたしの本の空白は」
 (ハルキ文庫)


気づいたら病院のベッドに横たわっていたわたし。目は覚めたけれど、自分の名前も年齢も、家族のこともわからない。夫を名乗る人が現れたけれど、嬉しさよりも違和感だけが立ち上る。本当に彼はわたしが愛した人だったの? 何も思い出せないのに、自分の心だけは真実を知っていた……。愛≠突き詰めた先にあったものとは──。最後まで目が離せない傑作サスペンス長編!−裏表紙より−


記憶喪失物?です。そんな言い方するのか?は知りませんが。

最近まで読んでいた本も記憶喪失の人が出てきました・・。何かそういうのが好きなのか?って感じです。まあ結論から言うと好き・・ではないです。確かにミステリ感は増しますけどね。もどかしい気分になるのがあまり好きではありません。


この物語の主人公はどうやら階段から落ちて頭を打ったことで記憶が無くなったようです。ずっと「わたし」という視点で語られていくので、ケガの原因も想像でしかありません。入院している彼女の元へやって来たのは、夫だと名乗る男性でした。彼はとても優しい人でしたが、会っても何の感情もわかないことに不安を覚えます。

更に夫の妹という人から投げかけられる言葉にもショックを受け、自分には味方がいないのでは?と心細くなっていきました。

身体的には何の問題も無いので、すぐに退院することになり、夫という人の家に帰るわけですが、全く覚えのない家に戸惑うばかり。でも突然、自分の部屋に入るとあるべき物が無くなっている感覚がしたり、妙に落ち着く場所があったり、少しずつ記憶が戻りそうにはなりました。


このまま記憶が戻って終了、だと物語として成立しませんが、ここから謎の人物が現れたり、ケガの原因が本当に事故だったのか?という疑問が出てきたり、次々謎が出てきてミステリとして盛り上がっていきます。

お陰で後半はほぼ一気読み。

謎が解明しても、個人的にはスッキリしませんでしたし、納得できない部分も多かったのですが、一応解決はしました。


記憶喪失の不安さなんて、想像も出来ませんが、自分が誰なのか、どうやって生きてきたのか、全てを忘れてしまうのはどれほど心細いか・・。周りの人をただ信頼して助けてもらうしか方法は無いわけですけど、誰を信頼して良いのかも難しいでしょうね。「家族です」と名乗られたら信じるしかないですから・・。



最後まで読んでみて、やっぱり記憶喪失物は好みじゃないなと思ってしまいました。どうしても、すっきり出来ない気がします。いきなり記憶のすべてを思い出しました!という終わり方をしても嘘くさいですし、記憶の一部は戻っていません、だと解決しきれないですし、周りの人が真実を話してくれても、それは本当に真実なのか?って疑ってしまいますし。

ミステリは全ての謎が解明して、すっきり爽快に終わってほしい!と思ってしまいます。


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2021年08月18日

近藤史恵「みかんとひよどり」

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 近藤史恵 著
 「みかんとひよどり」
 (角川文庫)



シェフの亮は鬱屈としていた。創作ジビエ料理を考案するも、店に客が来ないのだ。そんなある日、山で遭難しかけたところを、無愛想な猟師・大高に救われる。彼の腕を見込んだ亮は、あることを思いつく……。−裏表紙より−


ジビエ料理を出すレストランの話です。

ジビエ料理か〜。ほとんど縁がないです・・。食べたことがあるのは鹿肉くらいかな? 思ったより臭みも無く美味しかった覚えがあります。

ジビエの中では比較的身近な感じのするイノシシは意外と食べたことがありません。ボタン鍋は映像を見る限り美味しそうですけど、高いイメージがあって手が出せていません。


この珍しいレストランでシェフをしている亮は、オーナーにジビエ料理の腕を買われて雇われているのですが、なかなか客足が伸びずに悩んでいます。確かにジビエって敷居が高いですもんね。仕方ない部分はあると思うのですが、他のジビエ料理店はお客さんが来ているらしいと聞くと穏やかではいられません。

ジビエ料理を作る上で大変なのは、まず材料を安定して手に入れること。猟師の知り合いもいなかった亮は、自分でも猟に行くことがありましたが、毎回自分で獲るわけにはいかず悩んでいました。

猟に行った時に、遭難しそうになり、助けてくれた猟師・大高と出会ったことで材料の供給は安定させることが出来ました。


このまま行ったら何の盛り上がりも無く終わりそうな感じですけど、もちろんそうはいきません。猟師の大高が世捨て人のようで、謎がたくさんある人物で、その隠されている事が何なのか?がこの物語の大きなテーマになっていきます。

彼の抱える秘密ももちろん気になりますが、最後まで読んで思うのは、人は他の生物の命をもらって生きているのを忘れてはいけないということ。ジビエのように野生の動物だけではなく、普段食べている牛肉豚肉鶏肉も買う時には小さくカットされているから忘れがちですが、元々は生きている動物。その命を頂いているんだということに、感謝しながら食べないと申し訳ないですよね。魚介類もです。

その動物たちを育てている方、加工している方、売っている方、色んな方の手を借りないと自分たちの口には入らない。そういう当たり前にわかっているはずのことですが、あまりにも日常過ぎて忘れてしまいがちなので、食べる時にはしっかり感謝したいと改めて思わされました。もちろん無駄にするのはもってのほか。きちんと美味しく頂きたいと思います。

感謝感謝。


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2021年06月24日

近藤史恵「あなたに贈る×キス」

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 近藤史恵 著
 「あなたに贈る×キス」
 (PHP文庫)


閉ざされた学園を震撼させる一人の美少女の死。先輩、教えてください。あなたがここにいないのは人を愛したせい? それとも誰かに殺されてしまったの? 感染から数週間で確実に死に至る病。そのウイルスの感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。かつては愛情を示すとされたその行為は、国際的に禁じられ、封印されている。しかし、ある全寮制の学園で一人の女生徒が亡くなり、「彼女の死は、“あの病”によるものらしい」と不穏な噂が駆け巡った。真相を探る後輩の美詩が辿り着いた、あまりに甘く残酷な事実とは。鮮烈な印象を残す青春ミステリー。。−裏表紙より−


感染したら2週間くらいで確実に死に至るという謎の病が流行しているという設定の話です。その病気に感染するのはなぜかキスをしたときでした。

今の時代に読むのがタイムリー過ぎて驚きましたが、コロナと違って、キスさえしなければ感染しないので、そこまで行動は制限されなくてラクだと思ったのですが・・。

ただ、コロナと同じで自分がキャリアかどうかはわからないというのが困った所で、誰かにキスして初めてわかる状況。しかも相手もキャリアだったらもう感染させるも何もないわけで、キャリア同士ならキスしても大丈夫ということです。

でも誰がキャリアなのかわからないため、初めてキスするときはかなりの緊張感というか、命がけということになって、国際的に禁止されることになりました。まあそれは当然ですね。

キス以外のふれあいは特に問題がないというのもまた謎です。


そんな世界で、全寮制の学園でとある女子生徒・織恵が感染して死亡する事件が発生します。恋人がいたという噂もなく、優等生だった織恵の死は、憧れをもって見つめていた後輩・美詩の心にも傷をつけました。

絶対に先輩は自分から進んでキスをするはずがない、と殺人事件を疑った美詩は、こっそりと調査を始めます。確かに、もしかしたら感染するかもしれないという危険を知っていながら、自ら進んでするのは変です。幼いころからそうやって育ってきたのですから、好きな人とキスをして愛情を確かめ合うことを知らずにいたら我慢するという感覚もないでしょう。そんな年代の子どもが死ぬのは変です。

しかも、相手がキャリアだったら確実に感染して、確実に死ぬのですから、かなりのリスクを伴うわけです。


調査の結果はとても悲しいものでした。これは青春物になるのでしょうが、美詩の受けた傷はどうやったら回復出来るんだろうと心配なまま終わってしまいました。

更に私生活でも問題が起きてしまいますが、そこは「想像にお任せします」状態で終わったのは気持ち悪かったかも。まあ結果は何となくわかるんですけどね。


狭い世界で生きている彼女ら彼らのこれからの人生が幸せになると良いのですが。少なくとも、コロナ禍の今よりは感染防止しやすそうですけど・・。とりあえず私はこの病気には感染しない自信があります。良いんだか悪いんだか・・。


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2021年04月14日

近藤史恵「私の命はあなたの命より軽い」

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 近藤史恵 著
 「私の命はあなたの命より軽い」
 (講談社文庫)


東京で初めての出産をまぢかに控えた遼子。夫の克哉が、突如、ドバイへ赴任することになったため、遼子は大阪の実家に戻り、出産をすることに。だが、実家に帰ると、両親と妹・美和の間に、会話がないことに気がつく。そして父は新築したばかりの自宅を売却しようとしていた。不穏な空気が流れる実家で、出産への不安と家族への不信感があふれ出る……そして明らかになっていく家族を襲った出来事とは――。−裏表紙より−


これはまた何とも感想に困る内容です・・。

誰のことも「わかる」と言えない状況で、複雑な心境のまま読み進めることに。


まず、初めての出産を控えている妻を置いて、仕事とはいえ海外に赴任してしまう夫。確かに夫がいても役には立たないのかもしれませんが、精神的支えにはなるはずです。産気づいた時に病院に送るだけでも助かるのに、何で普通に海外に行けるのか・・。

そして遼子の両親。初めての孫が産まれるかどうかという時に、ここまで不安な環境にいさせてしまう神経がわかりません。お母さんが東京に行くという選択肢はなかったか??

もちろん、遼子の妹・美和に対する仕打ちは一番納得が出来ません。未成年だし育てられないだろうと考えるのは当然だとは思いますが、それ以外の部分は理解できません。

更に美和。彼女は被害者なので、始めのうちはまだ優しい気持ちで見ていられたのですが、だんだんと・・・。

遼子に相対して、心がざわつくのはちょっとわかる気はしますし、当たり散らしたくなる気持ちもわかる気はするんです。でも、最後の最後であの状況になるのは何だか・・。

遼子は何もしていないのに。

何もしていないことに腹が立つのかもしれませんけど、知らなかったわけですし。


結局、誰のことも好きになれない何とも後味の悪い状態で話が終わって、何だったんだろう?という気持ちになりました。

読み終わって題名を見たら余計に辛くなりました。


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2021年04月05日

近藤史恵「岩窟姫」

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 近藤史恵 著
 「岩窟姫」
 (徳間文庫)


人気アイドル、謎の自殺――。彼女の親友である蓮美は呆然とするが、その死を悼む間もなく激動の渦に巻き込まれる。自殺の原因が、蓮美のいじめだと彼女のブログに残されていたのだ。まったく身に覚えがないのに、マネージャーにもファンにも信じてもらえない。すべてを失った蓮美は、己の無実を証明しようと立ち上がる。友人の死の真相に辿りついた少女が見たものは……衝撃のミステリー。−裏表紙より−


アイドルとして活躍していた沙霧が自殺した・・。自殺の理由は同じアイドルの蓮美によるいじめだとネットブログに書き残していたので、蓮美はマネージャーやファンから見限られてしまいます。

でも、蓮美は沙霧のことを親友だと思っていたほど仲が良かったため呆然としてしまいます。

しばらくは世間の目を気にして出かけられなくなり、引きこもっていた蓮美ですが、ストレスで太って以前の容姿と変わってしまったのをきっかけに、自殺の原因を探ることにしました。

そうしないと先に進めないという蓮美の気持ちはわかります。

一番の理解者だと思っていたマネージャーにも疑われてしまったので、誰のことも信用できなくなっていましたが、昔同じようにアイドルをしていたチホと再会して協力してもらうことになりました。


始めはチホのことも半分疑いながら行動を共にしていたのですが、彼女がはっきりと蓮美のことを「嫌いだった」と言ってくれたことで少し信頼するようになります。

男性のことは知りませんが、女性同士ってなかなか本音を言い合わない物なので、チホのような人は貴重な存在です。

少しずつ真相に近づいていくのですが・・・。


最後に大きなどんでん返しが。これはどうなんだろう?私的には「良かったね」というより「他に方法はなかった?蓮美の気持ちはどうなるの?」という気持ちが大きかったです。自殺はともかく、蓮美に対する行動は納得できずでした。

それでも、彼女たちが前向きに生きてくれそうなのは救いになりましたし、そこまで後味悪くならなかったのは良かったです。


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2021年02月03日

近藤史恵「インフルエンス」

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 近藤史恵 著
 「インフルエンス」
 (文春文庫)


小学二年生の友梨は、同じ団地に住む親友の里子が虐待されていることを知る。誰にも言えないまま中学生になった時、憧れの存在・真帆を救うために友梨は男を刺してしまうのだが―不可解な事件が少女たちを繋げ、罪は密かに重なり合う。大人になった三人の運命が明らかにした驚愕の真相とは。現代に響く傑作長編。。−裏表紙より−


これは感想が難しいな・・。

同じ女性だけに理解できる部分もあって心が痛くなることが何度かありました。でもきちんと彼女たちの気持ちが理解できたかというとハッキリ言って理解不能です。

団地に住んだこともないですし、親友が虐待されていたことも(多分)ないですし、中学校が荒れていたわけでもないですし、同級生が(在学中に)事故死したこともありませんから、全てを理解できるわけもありませんが、そういう環境で育ったからと言って、彼女たちのようになるとも限らないでしょう。


女子同士って小さい頃からややこしいですけど、ここまでドロドロするのは珍しいと思います。彼女たちの人生を読んでいると自分の子どもの頃ってなんて幼かったんだろうと思ってしまいます。

友梨なんて、平均的な普通の家庭で育っているのに、どこでそこまで達観したというか、物事を冷静に分析して生きていけるようになったんだろう?と不思議でした。親友の里子は特殊な家庭なわけですし、誰も助けてくれない状況で被害を受け続けたのですから、ある程度大きくなって反抗的になるのは納得出来ますが。

そして真帆。私には唐突に現れたように思えたのですが、彼女の何がそこまで友梨を惹きつけたのか、友だちになったからといってそこまで出来るだろうか?と疑問がわきました。


結局、始めの里子のことで抱いた何とも言えない、どうしようもない罪悪感からどんどん負の連鎖が続き、誰か一人でもまともな判断を下していれば止められたであろう出来事なのに「友人のため」「以前助けてくれたから」ということを言い訳にして犯行を重ねてしまうことになったのでしょう。

最後に何とか止めることが出来たわけですが、全ての犯罪を償ってはいないですし、この犯罪のきっかけとなった里子の祖父がしっかり反省する場面があってほしかったと思います。

小説の中とはいえ、彼女たちの人生が悲しすぎて、読むのが辛くなる作品でした。余韻もすごくて、しばらくぼんやりとしてしまうくらいでした。

なるべく冷静に、客観的に距離をとって読むことをお勧めします。入り込むと辛いですよ。


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2019年12月10日

近藤史恵「シャルロットの憂鬱」

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 近藤史恵 著
 「シャルロットの憂鬱」
 (光文社文庫)


シャルロットは六歳の雌のジャーマンシェパード。警察犬を早くに引退し、二年前、浩輔・真澄夫婦のところへやってきた。ある日、二人が自宅に帰ってみると、リビングが荒らされており、シャルロットがいない! いったい何が起こったのか。(表題作)いたずら好きでちょっと臆病な元警察犬と新米飼い主の周りで起きる様々な“事件”―。心が温かくなる傑作ミステリー。−裏表紙より−


表紙の絵にもなっているし、何度も「シェパード」と書かれているのにも関わらず、読み進める度に可愛らしい小型犬を思い浮かべてしまっていました。

シャルロットという名前も小型犬ぽいからかな?ふさふさした毛並みの可愛らしいというか、高貴な雰囲気の犬って感じがします。

警察犬としての仕事をケガで引退したシェパードのシャルロットを飼うことになった夫婦。犬を飼うのが初めてなので大型犬に少し戸惑っていましたが、きちんとしつけされている分、逆に育てやすいだろうということで、彼らの家にやってきました。

しつけがきちんとされているから、無駄吠えはしませんし、散歩中に走り出して飼い主を引っ張りまわすようなこともありません。もちろん人を噛むこともありませんから、散歩にも行きやすいようです。


そんな彼女が吠えるときは、近所に空き巣が入ったり、悪質なセールスに困っている人などに気づいたとき。異常があるときだけ吠えるので、吠えたら事件か何かが起きているということで、始めは怖がっていた近所の人たちにも重宝がられます。

見た目は大きくて怖そうに見えますが、いたずら好きで実は怖がりで、甘えん坊な彼女のことがどんどん好きになっていきました。また、飼い主の夫婦も犬を飼うのが初めてとは思えないくらい、犬の気持ちや考えがわかっていて、しっかりとかわいがってしつけて一緒に暮らしています。


そんな夫婦とシャルロットが巻き込まれる事件やご近所のちょっとした謎を解決していく様子が描かれています。奥さんが気にして、シャルロットがいつもと違う行動を起こして、旦那さんが解決!という流れが多かったです。


犬って苦手ですけど、こんなに従順で可愛かったら犬も良いななんて思ってしまいました。子犬のときもかわいいでしょうけど、しっかりしつけられているかしこい犬なら一緒に散歩に行くのも楽しいかも??

まあ、自分が犬を飼うことはないでしょうけどね・・。


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2019年09月11日

近藤史恵「スーツケースの半分は」

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 近藤史恵 著
 「スーツケースの半分は」
 (祥伝社文庫)


30歳を目前にした真美(まみ)は、フリーマーケットで青いスーツケースに一目惚(ひとめぼ)れし、憧(あこが)れのNYへの一人旅を決意する。出発直前、ある記憶が蘇(よみがえ)り不安に襲われるが、鞄のポケットから見つけた一片のメッセージが背中を押してくれた。やがてその鞄は友人たちに手渡され、世界中を巡るうちに“幸運のスーツケース”と呼ばれるようになり……。人生の新たな一歩にエールを贈る小説集。−裏表紙より−



9話からなる短編集です。1話ずつ独立していますが、少しつながってもいます。

話の主人公になるのは「青いスーツケース」 とはいえ、スーツケースがしゃべるわけでも、意思を持っているわけでもありませんが。 全編を通して出てくるのはこのスーツケースだけなのです。

表紙にも描いてありますが、私はもう少し明るいblueのイメージで読んでいました。夏の空のような。

始めにこのスーツケースに会ったのは、夫に海外旅行を止められて落ち込む女性。フリマで見かけて思わず買ってしまい、それをきっかけにして、友人から勧められた1人旅へ出かけます。


二話目からは、一話目で1人旅をした女性の友人たちがそのスーツケースを借りて旅をする様子が描かれ、後半には海外に住む女性や、最終的にはスーツケースのルーツも描かれています。


スーツケースはいつしか「幸運のスーツケース」と呼ばれるようになり、スーツケースを持って旅する人たちの出会いや、進むべき道の発見や、訣別など、人生の大切な決断を見届けます。


様々な考えや想いを持って旅する人たちが次々と人生を切り拓いていく様子は読んでいてもスッキリしました。

こんな風に有意義な旅が出来るのは素敵だな〜という気持ちにもちょっとさせられました・・・・・が、私は超出不精のインドア派、おうち大好き人間なので、旅に出ることはないだろうとも思います。


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2019年07月10日

近藤史恵「スティグマータ」

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 近藤史恵 著
 「スティグマータ」
 (新潮文庫)


あの男が戻ってきた。三度の優勝を誇ったもののドーピングで全てを失った、ドミトリー・メネンコが。ざわめきの中、ツール・ド・フランスが開幕。堕ちた英雄を含む集団が動き始める。メネンコの真意。選手を狙う影。密約。暗雲を切り裂くように白石誓は力を込めペダルを踏む。彼は若きエースを勝利に導くことができるのか。ゴールまで一気に駆け抜ける興奮と感動の長篇エンタテインメント。−裏表紙より−


久しぶりにチカの活躍が読める巻ということで、ワクワクしながら読み進めました。

やっぱりチカは良いな〜と読み進む度にかみしめてしまいました。エースでもなく、カッコいい容姿というわけでもなく、人気のある選手でもないのですが、日本人らしい真面目さと内に秘めた感情の豊かさにプラスして、アスリートらしい貪欲さもあって、他人を羨むこともあって、その人間臭さが良いのかもしれません。

フランスにすっかり馴染んでいるチカ。フランス語を操って、チームの仲間にも溶け込んでいます。

以前同じチームでアシストしていたミッコとの関係も良い感じで続いているようで、それも素敵でした。家族ぐるみの関係を外国の人と結べるなんてそれだけで尊敬します。

ヨーロッパをあちこち移動しながら、今回は大きな舞台“ツール・ド・フランス”に参加することになったチカ。チームのエースはニコラです。

以前の作品で、まだ若手選手だったニコラが、すっかりチームのエースとして君臨しているようで、チカとのコンビネーションも良い感じみたいです。


今回の大会では、どのチームが優勝するかというよりも注目を集めていることがありました。それは、ドーピング検査に引っ掛かり引退していたメネンコ選手が戻ってきたということ。彼をエースとして迎えるのチームはどこなのか? 自転車競技の世界を汚した彼のことを選手たちはどう感じて、どのように対応していくのか?気になることがいっぱいです。

それぞれ、彼に対して思うところがあるようで、何か仕掛けるのではないか?といううわさも流れてくるほど。色んな思惑が交差するレースはいつも以上にハラハラさせられました。


また、チカ個人としては、次の契約を結べるかどうかという大変な問題を抱えていて、本人も「このレースが終わるまでは考えないように」と何度も思いつつ、やっぱり他の日本人が契約を取ったと聞くと嫉妬したり、素直に喜べなかったりしています。

チカのアシストとしての走りも相変わらずかっこよくて、周りにすごく気を配れる彼の走りに感動させられました。


またチカの活躍が読みたいです。


<サクリファイスシリーズ>
「サクリファイス」
「エデン」
「サヴァイヴ」
「キアズマ」



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2019年04月08日

近藤史恵「昨日の海と彼女の記憶」

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 近藤史恵 著
 「昨日の海と彼女の記憶」
 (PHP文庫)


どちらかがどちらかを殺した?―。夏休みのある日、海辺の小さな町の高校生・光介の家に、母の姉・芹とその娘の双葉がしばらく一緒に暮らすことになった。光介は芹から、二十五年前の祖父母の死が、実は無理心中事件であったと聞かされる。カメラマンであった祖父とそのモデルを務めていた祖母。二人の間に何が起こったのか。切ない真相に辿り着いたとき、少年はひとつ大人になる。『昨日の海は』を改題。−裏表紙より−


大好きな作家さんの作品なので、とりあえずなんでも読んでみようと思っています。でも、時々「?」と思う作品があります・・。


高校生・光介の家に、母の姉がしばらく一緒に暮らすことになります。彼女(伯母)の「ことは全く知らされていなかった光介は、かなり戸惑います。東京からやって来た伯母は、祖父のやっていた写真店を再開させようとしている様子。

伯母が張り切るほど、母が元気がなくなる気がして心配になる光介。どうやら姉妹の両親(祖父と祖母)の死に何か隠されていることがありそうです。

そして、伯母から2人の死の謎を告げられます。光介は伯母の悩みを解決すべく、思いつくかぎり手伝っていきます。

昔のことなので、苦労させられますが、何とか真実にたどり着きます。でもそれを知って誰が得するのか?という気がしました。多少、スッキリは出来るのかな? でも誰にとっても嬉しいことではないので・・・。


出てくる人たちみんな、心に何か抱えている感じがしたのもあまり好きになれなかった原因かもしれません。もう少し明るく爽快な人がいても良いのに。まあ、内容が内容だけに変に明るい人がいてもおかしいかもしれませんが。光介も高校生らしくない落ち着きぶりでした。

とにかく切ない物語でした。


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2018年09月10日

近藤史恵「ねむりねずみ」

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 近藤史恵 著
 「ねむりねずみ」
 (創元推理文庫)


しがない中二階なれど魅入られた世界から足は洗えず、今日も腰元役を務める瀬川小菊は、成行きで劇場の怪事件を調べ始める。二か月前、上演中に花形役者の婚約者が謎の死を遂げた。人目を避けることは至難であったにも拘らず、目撃証言すら満足に得られない。事件の焦点が梨園の住人に絞られるにつれ、歌舞伎界の光と闇を知りながら、客観視できない小菊は劇場に身を焼かれる。−裏表紙より−


若手歌舞伎役者・中村銀弥の家庭での様子から話は始まります。「ことばがあたまから消えていく」という謎の症状に悩まされる銀弥を、その妻が支えています。こう書くと、献身的な良い妻という感じですが、実は彼女には後ろ暗い出来事が・・。

ここから彼らが事件に巻き込まれていくのか?と思いつつ読み進めていると、突然全く違う場面に。

同じ歌舞伎の世界の話ではあるのですが、突然置いて行かれた気分になります。

その場面から現れるのは、主役をはれないけど、この世界が好きで離れられない役者・小菊。彼を訪ねてきたのが学生時代の同級生・今泉文吾。二人は、劇場で起きた殺人事件を調査することになります。


話があちこちに飛んでしまって、誰の話?といちいち悩まないといけない所があって、話に入り込みにくい展開でしたが、どうやって事件を解いていくのかが気になってほぼ一気読みでした。

第一幕で出てきた銀弥とその妻はどう関わっているのかもなかなか判明せず、まさかこのまま終わらないよね?と心配になる頃、やっと関連が。

事件の真相はかなり後味の悪いものでしたし、その殺害方法はどうも納得いきませんでした。

そんなに都合よくいくかな??と。

しかも動機が・・。

結局、すっきり解決したわけでもないですし、読み終わってもモヤモヤしました。

銀弥とその妻の後日談も納得できず。まあ彼らの場合はそういう選択肢もあるかな?とは思うのですが。


・・と、さんざん面白くないかのようなことを書いてきましたが、小菊や文吾のキャラクターは好ましかったですし、歌舞伎界の裏側を少し覗くことが出来たのは面白かったです。読んで良かったと思いました。

歌舞伎役者の全身全霊を掛けて役に入り込む様子は、読んでいて苦しくなりましたし、こうやって命懸けで芝居をしていたら、ストレスも多いだろうなと。

そこまでして歌舞伎に掛ける想い、そこまで掛けることができる歌舞伎の魅力にはまりそうです。

小菊と文吾のシリーズは他にもあるようなので、ぜひ探して読んでみようと思います。


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2018年03月17日

近藤史恵「シフォン・リボン・シフォン」

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 近藤史恵 著
 「シフォン・リボン・シフォン」
 (朝日文庫)


乳がんの手術後、故郷に戻ってランジェリーショップをひらいたオーナーのかなえ。彼女のもとを訪れる、それぞれの屈託を抱えた客たちは、レースやリボンで飾られた美しい下着に、やさしく心をほぐされていく。地方都市に生きる人々の希望を描く小説集。−裏表紙より−


着飾ることに興味が無いので、当然ながら下着にこだわったこともなく、下着一つでそんなに気分が上がるものなんだろうか?と終始疑問に思いながら読み進めました。


親の介護に疲れた女性が、素敵な下着を選んで身に着けたことで、親には見咎められてしまいますが、きちんと意見が言えるようになり、それからは介護が少し気分的に楽になるという話が一番印象的でした。

それは1話目なのですが、その話ではランジェリーショップの店主・かなえにはほとんどスポットは当たることはありません。でも、次の話からはかなえの視点でも描かれるようになります。

かなえがどんな人生を生きてきて、どうしてこの店を開くことになったのかということも少しずつ語られて行きます。

かなえみたいな女性は実は結構いるのかもしれません。でも彼女の行動力は、私には全くない物なのでうらやましい気持ちになりました。

起業して、小さいながらも店を持って、人を雇って、楽しく仕事が出来たら素敵でしょう。

フワフワやリボンに囲まれる幸せ・・・はちょっと理解できませんが、好きなものに囲まれて仕事ができるのは幸せだろうな・・。


女性として色々と考えさせられる話たちでした。

男性にはちょっと難しい話かもしれません。


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2017年12月08日

近藤史恵「薔薇を拒む」

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 近藤史恵 著
 「薔薇を拒む」
 (講談社文庫)


施設で育った博人は進学の援助を条件に、同い年の樋野と山奥の洋館に住み込みで働き始める。深窓の令嬢である小夜をめぐり、ふたりの想いは交錯する。洋館に関わる人物の死体が発見され、今まで隠されていた秘密が明るみに出た時、さらなる悲劇が―。気鋭の作家が放つ、最終行は、読む者の脳を揺さぶり続ける。−裏表紙より−


表紙の雰囲気や「山奥の洋館」というワードのせいか、勝手に昔(明治、大正の頃?)の話だと思っていたのですが、普通に携帯電話も出てきて、どうやら現代の話らしいとわかりました。

でも、かなり時代錯誤な生活をしている一族の話なので、携帯電話の方が違和感あります。


両親がいないため、施設で育った博人。彼が進学するためには、施設としては費用面で辛い・・ということで、ある一族から進学の援助を条件に住み込みで働かないか?と声を掛けられ、山奥へ出向くことに。

そこでは、小夜という綺麗な娘がいて、博人はさっそく目を奪われてしまいます。

この洋館に住み込みで来たのは博人だけではなく、同じ年の樋野という少年も一緒でした。彼と小夜は何だかいい雰囲気になっていて、博人は気になって仕方ありません。

まあその辺りは17歳という多感な青年たちですから仕方ないかな??とは思いますが、読んでいる側としてはうっとおしい感じです・・。

不思議な雰囲気の漂う洋館の、不思議な雰囲気の漂う住人たちと生活。始めの頃こそ、平和な日々でしたが、当然そのまま終わるはずもなく、いよいよ事件の始まり。

事件が起きると、不思議な雰囲気に怖さも加わって、どうなるのか展開が気になってほぼ一気読み。

結局、最後の最後までゾクッとさせられる展開でした。

これって、誰か救われたんだろうか??と疑問の残る終わり方で、何とも微妙な気持ちで読み終えました。


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2017年05月26日

近藤史恵「ホテル・ピーベリー」

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 近藤史恵 著
 「ホテル・ピーベリー」
 (双葉文庫)


職を失った木崎淳平は、鬱屈した心を抱えてハワイ島にやってきた。長期滞在型のホテル・ピーベリーは小さいけれど居心地が良く、他に四人の日本人旅行者がいた。だが、ある夜、客の一人が淳平に告げる。「楽しみにしてろよ。今におもしろいものが見られる」不吉な予感の通り、客の一人が溺死し、やがてもう一人―。様々な気候を併せ持つハワイ島の大自然と、人生の夏休みに絡め取られた人々の心の闇。巧緻な筆致で衝撃の真相へと導かれる、一気読み必至の傑作ミステリー。−裏表紙より−


何だか不思議な雰囲気のあるミステリーでした。

出だしから暗い雰囲気があって、この先どうなっていくのか気になってほぼ一気読みしてしまいました。

読み終わったら、あっさり終わりすぎて印象に残らないくらいの話なんですけどね・・。


でも、ハワイ島の情景が浮かぶ描写が素敵で、あまり好きではないハワイに行きたくなる感じがしました。変わりやすい天気なのはややこしいですが、自然環境は素晴らしいようで、大迫力の風景は見てみたいかも。


舞台となるホテル・ピーベリーも良い感じでした。まあ殺人事件が起きるまでは、ですが。一度しか泊まれない長期滞在型ホテル。長期とはいえ、3か月経ったら出て行かないといけないですし、一度泊まったらもう二度と泊まれません。そういうところも謎めいていて面白そうだと思ったのですが。

ホテルの女主人ともつかず離れずな感じが良いです。

まあそれも読み進めると嫌悪に変わっていくんですけどね・・。

何より主人公の木崎のことが、どうしても好きになれずに困りました。ほぼずっとウジウジしていて、「もっとシャキッとしろよ!」と怒鳴りつけたい感じだったのに、途中でこれまた嫌悪以外わかなくなりました。


読み終わっても、何だったんだろう?このミステリーは、って納得出来ない話でした。要らない登場人物もたくさんいましたし、出てくる人たち、誰一人好きになれないなんて珍しい話です。

気になって一気読みの割には、「面白かった〜」と言えません。だからといって「読んで損した!」とまで思うわけでもなく、自分の感想をうまくまとめられなくてもどかしい状態になりました。


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2017年04月10日

近藤史恵「演じられた白い夜」

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 近藤史恵 著
 「演じられた白い夜」
 (実業之日本社文庫)


小劇場界の著名女優・麻子は、夫で演出家の匠に呼ばれ、雪深い山荘へやってきた。山荘には匠によって、初対面である八人の俳優らが集められていた。匠の新作は本格推理劇で、演じる側にも犯人がわからないよう稽古は行われていく。台本が進行するにつれ、麻子を含む女優たちに疑心が兆し、それは恐るべき事件の形を取って表れた。作中劇の中に隠された真相は―。−裏表紙より−


大好きな作家さんなので読んだのですが、途中くらいから「何だろう?この話は・・」と思ってしまいました。

ちょっとアガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」っぽい感じでした。閉ざされた環境の中で、一人ずつ死んでいく所がそっくり。でも最後まで「誰もいなくなった」とはならないんですけどね。

とりあえず、どういう展開を見せるのかが気になって一気読みしました。


作中に書かれていた、演出家の描いた劇はなかなか面白そうで、本当に舞台化されたら見てみたいと思いました。推理劇だけあって、暗転が多い気がするので、実際に見るといちいち途切れて集中できないのかもしれませんが。

演じる役者も誰が殺されるのか、誰が犯人なのかわからないまま稽古が進みます。稽古するその日の台本だけが渡され、それを読んだら自分が被害者だとわかるわけです。

役者たちの人間関係もなかなか複雑なようで、演出家と女優たちの関係も何だか・・。

そして、劇中と同じような事件が実際にも起きてしまいます。


最後まで読んでしまってからも、この作品をなぜ書こうと思ったのか?という疑問は残ったままになりました。まあ「推理小説」ってそういうものなんですけど、この作家さんだから何か捻りがありそうな、理由がありそうなそんな気がしたんですよね。

題名も「〜〜殺人事件」とかじゃないわけですし、妙な期待をしてしまった私が悪いんですけど・・。

面白くなかったわけではないですが、なんか期待しすぎたかな?とは思いました。


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2016年11月04日

近藤史恵「胡蝶殺し」

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 近藤史恵 著
 「胡蝶殺し」
 (小学館文庫)


市川萩太郎は、蘇芳屋を率いる歌舞伎役者。先輩にあたる中村竜胆の急逝に伴い、その幼い息子・秋司の後見人になる。同学年の自分の息子・俊介よりも秋司に才能を感じた萩太郎は、ふたりの初共演『重の井子別れ』で、三吉役を秋司に、台詞の少ない調姫役を俊介にやらせることにする。しかし、初日前日に秋司にトラブルが。急遽、三吉を俊介にやらせることに。そこから、秋司とその母親・由香利と、萩太郎の関係がこじれていく。そしてさらなる悲劇が・・・。幅広いジャンルで傑作ミステリーを発表しつづける著者が、子役と親の心の内を描く白熱心理サスペンス!−裏表紙より−


歌舞伎を題材にした物語って初めて読んだ気がします。

生で見たことがないですし、あまり興味のない世界の話で、ついていけるか心配でしたが、読み始めると面白くてグイグイ引き込まれていきました。


よくわからない世界ですが、しきたりが多そうだとか、華やかさや大変さは何となく感じていました。この本を読んで、その大変さがよくわかった気がしました。

父親であるその家の看板役者が亡くなったことで、その息子の立場が難しくなるのも驚きでした。その後見人になることの大変さや難しさ。萩太郎には、同じ学年の息子がいる上に、それほどお芝居が好きそうではないとなると、後見人となった子どもを優先しそうになることがあっても仕方ないと思うのですが、やはり自分の家を考えるとそうもいかない。

テレビなどで「歌舞伎の家に生まれたからといって、絶対に歌舞伎役者にならないといけないということはない」と役者さんが言っているのを聞きますが、実際に一人息子だった場合そうも言っていられない雰囲気になるんですよね。当然と言えば当然ですが。

萩太郎の奥さんも男の子を生んだことで「肩の荷がおりた」と言ったとか。梨園の妻というのは、今の時代でもそういうプレッシャーにさらされるんですね。

女の子は、どんなに歌舞伎役者になりたくても、絶対になれない、というのも辛いことです。男女平等の世の中にありながら、古い伝統を守っているのも珍しい世界です。

だからこそ表現される、華やかさやはかない美しさなんかもあるのでしょうね。

この物語の中には、色々な演目が書かれています。歌舞伎を見たことがない私にとってはどれも知らない物ばかり。でもちょっと興味がわいてきたので、機会があったら見てみたいです。

特に子どもたちが舞うはずだった「胡蝶」は見てみたいです。


ミステリーだということですし、題名からも、いつか誰か殺されるのか?とドキドキしつつ読んだのですが、そんなこともなく。でもしっかりミステリーですし「殺し」なんです。

この題名には感心させられました。

何とも切ない展開になっていて、読みながら何度も泣きそうになりました。子どもって本当に健気で強いです。そして母親は強く見せながら実はもろくて弱い存在です。


最後は明るく終わってくれたのも良かったです。二人はきっと良い役者になってくれるでしょう。

私も早めに見に行きたいと思います。


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