2025年02月21日

近藤史恵「おはようおかえり」

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 近藤史恵 著
 「おはようおかえり」
 (PHP文庫)


おはようおかえり――それは「無事に、早く帰ってきて」という願いが込められた言葉。北大阪にある和菓子屋「凍滝」の姉妹、小梅とつぐみ。姉の小梅は家業を継ぐため、毎日和菓子作りに励み、自由奔放な妹・つぐみはエジプトへの留学を目指していた。ある日、亡くなった曾祖母の魂が、何故かつぐみの身体に乗り移ってしまう。戸惑う小梅に曾祖母は「ある手紙を探してほしい」と頼んでくるが――。芋あんのキンツバ、六方焼き、すずめのこなし、最中・・和菓子の香りもふくよかに、正反対の姉妹をあたたかく描く家族小説。−裏表紙より−


あらすじを読む前に題名を見ていると「おはよう、おかえり」と朝の挨拶と帰ってきたのを迎える挨拶を続けて書いているのだと思っていました。関西弁だと思って読むとわかりやすいですが「早く帰っておいで」ってことでした。

老舗和菓子屋の姉妹の話です。姉の小梅は長子だということで、何となく和菓子屋を継ぐのかな?と考えていて、毎日和菓子作りをしています。ある意味長女らしいタイプかな?

妹の小梅はそんな姉の姿を見ているせいか、正反対に自由奔放で、演劇に精を出し、エジプトに留学したいと言い出しています。姉が和菓子屋を継ぐのも、長子だからと継ぐ必要はないのでは?と考えているようです。

まあ姉妹ってそんなものかな?とは思いますが、お互いになんとなくイライラするのもわかる気はします。


ある日小梅がいつものように店に行こうとしている時、珍しく起きていたつぐみから掛けられた言葉が「おはようおかえり」でした。あまり若い人が使う言葉でもないのでちょっと違和感を覚えながらもその時はそのまま流していたのですが、だんだんつぐみの様子に変化が。

その後、亡くなった曾祖母の魂が乗り移っていることが判明します。始めは戸惑うのですが、意外とあっさりとその状況を受け入れる小梅。そして寝ている間に身体を乗っ取られているつぐみは疲れが取れず、しかも何となく記憶もあって悩んでいたため小梅がつぐみに状況を説明することに。張本人であるつぐみもこれまたあっさりと状況を受け入れるのには驚かされました。

でもそこに時間をかけている場合ではないわけです。老舗和菓子店の危機を心配して戻ってきたと思われた曾祖母ですが、実はそれ以外に大きな理由がありました。

個人的にはその辺りからの流れはいらないと思ってしまったのですが。もっと和菓子店のために色々工夫していく描写が読みたかったです。

心残りはわかりますが、亡くなってまで気にすることか?と納得できずでした。


結末は良い感じに収まってくれたので、姉妹のこの先の人生も読みたいと思いました。でも曾祖母の心残りが解決したからには続編はないのかな?


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2024年11月28日

近藤史恵「シャルロットのアルバイト」

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 近藤史恵 著
 「シャルロットのアルバイト」
 (光文社文庫)


雌のジャーマンシェパード、七歳、元警察犬のシャルロットは、ふとしたことから犬のようちえんで子犬と遊ぶアルバイトをすることになった。優しい先生と子犬たちは仲良くすごしていたが、そのドッグスクールには不穏な噂があった。「ここのせいで犬が死んだ」と・・。(表題作)すべての犬好きに贈るハートウォーミング・コージーミステリー第2弾!−裏表紙より−


表題作のほか、「迷子の王子」「謎のお向かいさん」「失くなった迷子札」「天使で悪魔とシャルロット」が収録。


シリーズ2作目。

前回もそうでしたが、今回もずっとシャルロットのことをゴールデンレトリバーだと思ってしまっていました。何度もシェパードだと記述があるのですが、性格がフレンドリーで可愛すぎるのでつい。

まあ何犬でも問題はないんですけどね。

元警察犬ということでかしこさもありますし、もうすっかり大人なので落ち着きもありますが、たまには不満を爆発させることもあります。


今回のシャルロットはいろんな犬と関わることになります。自分の家にも2回犬を預かることになりますし、ドッグスクールで働くことにもなり、そこでもたくさんの犬とあそぶことになりました。


預かった犬たちはどちらもやんちゃな感じでシャルロットはかなり振り回されています。犬自体はかわいらしくて良いのですが、やはり飼い主次第で運命というか、犬の生活は変わるわけで、どんな人間が関わっていくかが大きな問題です。

飼い主となる人たちの問題や隠し事などを、シャルロットの飼い主である夫婦が解決していきます。

殺人などの大きな事件があるわけではないですが、すべての話に謎があって、ただ犬の日常を読む以上に楽しめます。


ちょっと濃い目のミステリを読んだ後などの口直しにもちょうどいいと思います。

シリーズもっと続いてほしいな。期待して待ちます。


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2024年09月20日

近藤史恵「たまごの旅人」

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 近藤史恵 著
 「たまごの旅人」
 (実業之日本社文庫)


念願かなって海外旅行の添乗員になった遥。風光明媚なアイスランド、スロベニア、食べ物がおいしいパリ、北京・・異国の地でツアー参加客の特別な瞬間に寄り添い、ひとり奮闘しながら旅を続ける。そんな仕事の醍醐味を知り始めたころ、思わぬ事態が訪れて―。ままならない人生の転機や旅立ちを誠実な筆致で描く、ウェルメイドな連作短編集。−裏表紙より−


お気に入りの作家さんなので、どんな内容なのか知らないまま読みました。

添乗員の奮闘物語でした。連作短編で読みやすかったです。

旅好きな人なら、これを読んだら海外旅行に行きたくなるのでしょうか? 私は基本的に旅行は行きたくないので、添乗員に憧れる気持ちは全く理解できずでした。

何度か行った旅行では添乗員さんがついてくれていたので、その仕事の大変さは何となくわかります。自分は我が儘を言った覚えはないですが、グループ内には我が儘というか、時間にルーズだったり、別行動をとろうとしたりする人はいたので、その度に添乗員さんが傍に行って対応していたのは思い出します。

看護師さんや介護士、保育士などの福祉関係の仕事にも似ている部分がありますね。

本当に頭が下がります。

ただ海外が好き、旅行が好き、だけでは絶対に続けられない仕事です。


この作品の中にもたくさん問題を起こすお客さんが登場します。ただ単にその国が好きだからというだけで旅行しているのであれば良いのですが、それぞれ事情を抱えているので大変です。

見たい物、やりたいこと、人それぞれですから。天候などにも左右されてしまうこともあるので、添乗員さんに文句を言っても仕方ない所はありますが、何度も来れるわけではないから、つい言いたくなるのもわかりますが。


最後の話ではコロナが発生して海外に行けなくなった時期のことが描かれています。旅行会社も添乗員も大変だったでしょう。それでも前向きに仕事をしていこうとする姿はとても素敵でした。

今後、添乗員付きで旅行に行くことがあるか?はわかりませんが、そうなったら我が儘は言わずにひっそりと真面目に付いて行こうと思います。


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2024年05月13日

近藤史恵「幽霊絵師火狂 筆のみが知る」

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 近藤史恵 著
 「幽霊絵師火狂 筆のみが知る」
 (角川文庫)


料理屋のひとり娘である真阿は、病弱で部屋にこもりがちだ。そんな中、有名な幽霊絵師・火狂が店に居候することになり、真阿は彼を訪ねて話をするようになる。大柄で悠然とした火狂は、人には見えないものが見えるようだ。彼のもとには、絵に関する奇妙な悩みが集まってくる。犬の悪夢に怯える男、「帰りたい」という声に悩む巡礼者、手放しても戻ってくる絵―2人は、その謎を解き明かしていく。熱く静かな感動を誘う絵画ミステリ。−裏表紙より−


お気に入りの作家さんの作品なので買ってみました。が、内容的にはあまり好みではありませんでした。


幽霊絵師というジャンルがあるのを知らなかったですし、怖いのが嫌いな私には縁のない世界ではあるのですが、そこまで怖く感じることなく読み切ることができました。


真阿という料理屋の娘と絵師の交流を描いているのですが、一番ゾッとしたのは、最初の話だったかも。

真阿が病弱でずっと部屋にこもってなかなか健康にならないというのにも理由があったんです。ただの病弱ではなく・・・。それはちょっと怖かったかも。でも1話目で元気になった真阿の存在は、この話を怖くしすぎないためには大事だったと思います。

好奇心旺盛な真阿が絵師・火狂に色々質問してくれるお陰で、謎が解明されたり、彼女が優しく(?)寄り添うことで癒されたりすることがたくさんありましたし、話自体も明るくなる感じがしました。


世界が変わったばかりの時代の話なので、流行っている店だといってもこの先どうなるか?と不安になってもおかしくないのですが、さすがに箱入り娘だけあってそういう危機感はなさそう。

火狂とどこかに行けたら・・ばかりを夢見ています。


火狂も真阿に対しては憎からず思っているようですが、どちらかというと兄のような気持ちに近そう。2人が恋愛関係に発展しない方が読みやすい気がしますが、どうなるやら。

火狂にも色々問題がありそうですし、過去も明かされていませんから、今後どうするのか気になります。


霊的な物が好きでは無いので、続編を読むかどうか微妙ですが、火狂の秘密は知りたいですし、真阿がどんな人生を歩むのかも気にはなっています。

もし発売されたら、その時の気分で読むかどうか考えようか?


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2023年12月22日

近藤史恵「夜の向こうの蛹たち」

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 近藤史恵 著
 「夜の向こうの蛹たち」
 (祥伝社文庫)


小説家の織部妙は、美人と評判の新人作家橋本さなぎの処女作に嫉妬と興味を感じていた。才能、美貌、あるいは不思議なペンネームのせいか。だが、妙はある文学賞のパーティーで対面したさなぎに、違和感を覚える。面前のさなぎが小説の彼女とはあまりにも違うのだ。むしろ、彼女の秘書初芝祐に魅かれ、近づいていく。やがて、違和感がある疑惑へと変わっていき・・。−裏表紙より−


大好きな作家さんなのですが、こういう作品はあまり・・。

女性の心の機微的なやつ?

自分も女性ですけど、全く気持ちがわからないので読みにくいんですよね。

しかも、主人公も美人、お相手も美人で、なのに「美人も辛いのよ」と言われても納得出来ません。美人で困ることも多少はあるでしょうけど、美人でないよりは美人の方が絶対に得でしょう。そこはなんと言われても譲れません。

痴漢やセクハラには合いやすいでしょうけど、それを上回るだけのお得は絶対にあるはず。顔より性格が大事、と言いつつも、顔も性格も良い方が良いでしょう?と思います。

と、熱く語ってしまいましたが、この小説の焦点はそこでは無いですね。でも読み終わっても何が言いたかったのかな?という感じではありました。


ゴーストライターなのか?と思ったらそうでもなく、そこは読んでもらったら良いのですが、初芝の気持ちの方が理解出来ました。私がその立場だったとしてもそこまでしないとは思いますが、それだけの才能があるのに埋もれるならやるのかもしれません。

女性同士の恋愛模様も必要だったのかな? そこで駆け引きみたいなものがあったり、女性同士の嫉妬や友情、愛情なんてものはなんとなくわかりますが、ここまでドロドロされると引いてしまいます。


うまく感想がまとめられない作品でした。他の方の感想を読んでみたいと思います。


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2022年12月27日

近藤史恵「ほおずき地獄 猿若町捕物帳2」

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 近藤史恵 著
 「ほおずき地獄 猿若町捕物帳2」
 (光文社文庫)


吉原に幽霊が出るという噂がたった。幽霊が出た後には必ず縮緬細工のほおずきが落ちているという。騒動のさなか、幽霊が目撃された茶屋の主人と女将が殺された。下手人は幽霊なのか。女性が苦手な二枚目同心”玉島千蔭は「じゃじゃうま娘」との縁談話に悩む傍ら、事件の解決に乗り出すが・・。『巴之丞鹿の子』に続く「猿若町捕物帳」シリーズ第二弾。−裏表紙より−


前作のことはすっかり忘れていましたが、何とか読めました。読み進めると、そうそう二枚目だったな、とかお父さんが面白かったな、とか思い出してきました。


今回も舞台は吉原。よくドラマや映画で取り上げられる場所ですが、華やかなイメージと裏腹に悲しい雰囲気もある場所です。そんな吉原で幽霊騒ぎが持ち上がります。

特に何をするわけでもない幽霊なのですが、気味悪がって客足が遠のくので困っているということもあり、千蔭が捜査に乗り出します。

1作目の感想でも書いていましたが、ページ数が少なくあっさり読み終わるのは同じ。しかも事件の解決までが早い。容疑者もほとんどなく終わってしまいます。


ただ、今回は幽霊の正体が悲しすぎでした。あまりにもひどい仕打ちに涙が出ました。殺された女将よりも、甘い言葉で寄って来た奴の存在が最悪です。罪が深すぎ!

あまり書き過ぎるとネタバレになるのでこれ以上言えませんが、殺される相手が違う気がしました。

重苦しい雰囲気のまま終わるのかと思っていたら、最後に笑える出来事があり、そこはホッとしました。


こうなると、千蔭の結婚はまだまだ先になりそうです。どうなるやら・・。


まだシリーズは何冊かありますが、なかなか手に入らないのが難点。再版してくれないかな??

<猿若町捕物帳シリーズ>
「巴之丞鹿の子」


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2022年07月06日

近藤史恵「歌舞伎座の怪紳士」

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 近藤史恵 著
 「歌舞伎座の怪紳士」
 (徳間文庫)


職場でハラスメントを受け退職した岩居久澄は、心に鬱屈を抱えながら家事手伝いとして日々を過ごしていた。そんな彼女に観劇代行のアルバイトが舞い込む。祖母に感想を伝えるだけで五千円くれるという。歌舞伎、オペラ、演劇。初めて体験に戸惑いながらも、徐々に芝居の世界に魅了され、心が晴れていく久澄だったが―。私が行く芝居に必ず「親切な老紳士」がいるのは、なぜだろう?
−裏表紙より−


連作短編のように1話ずつ完結していきますが、1話毎に題名はありません。第一章、第二章という感じで進んでいきます。


仕事場の雰囲気に馴染めず退職することになった久澄は、実家の家事をして仕事をしている母親を支えていました。そんな自分の状況に悩んでいる時、普段はあまり仲が良いとは言えない祖母からアルバイトの話がきます。

祖母の代わりにお芝居を見に行って感想を伝えてほしいという物でした。顔が広い祖母は知人から「見に来て欲しい」とチケットを渡されることが多いが全部を見に行くことは出来ないということで、久澄に代わりに行って感想を言ってもらえれば助かると言うのです。

お芝居など見に行くことが無かった久澄ですが、とりあえずもらったチケットを持って観劇に。初めて渡されたのは歌舞伎のチケットでした。歌舞伎はお芝居の中でも敷居が高いものですが、アルバイトなので行ってみることにしました。

パンフレットも購入するように言われていたので買って読むと話の内容は何となくわかりましたが、細かい設定などは理解できず。それでも生で目の前で繰り広げられるお芝居の素晴らしさに魅了された久澄。

その時偶然隣りに座った素敵な紳士と少し会話をし、色々教えてもらっていたところ、ちょっとした揉め事に巻き込まれてしまいます。こうなると、その素敵な紳士が華麗に解決して久澄が好きになるパターンか!?と思いますけど、そうはならず。どちらかというと久澄が一人で解決します。紳士は口添えをするのみ。

ということは、話はどう展開していくのか気になってきます。

生のお芝居にはまった久澄は祖母からのアルバイト以外にも自分でチケットを買って観劇するようになっていきます。でも行く所行く所にその紳士は現れます。

なんて謎めいた存在!

紳士の様子が明らかになってくると久澄とはかなり年齢差があることがわかってくるので、恋愛話にはならなそうです。でも最後は・・。


なるほどそういう存在の人でしたか! と納得ですし、この終わり方も素敵でした。


コロナ禍でなかなか気軽に観劇しにくいですけど、長い間見に行っていないのでそろそろ行きたいと思うようになりました。そしていつかは行ってみたいのが歌舞伎。チケット高そう、話わかるかな?と久澄と同じ悩みがありましたが、これを読んだら解決したので、行きたいと思います。近くで公演があれば良いのですが・・。


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2022年03月15日

近藤史恵「ガーデン」

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 近藤史恵 著
 「ガーデン」
 (創元推理文庫)


小函を抱えて今泉探偵事務所を訪れた奥田真波は「火夜が帰ってこないんです」と訴える。燃える火に夜、人を魅惑せずにはいない謎めいた娘だ。函の中身を見て只事ではないと諒解した今泉は、助手山本公彦と共に火夜の行方を追う。やがて探偵は、死を招き寄せるあやかしの庭へ・・。周到な伏線と丹念に組み立てられた物語世界、目の離せない場面展開がこたえられない傑作ミステリ。−裏表紙より−


「ねむりねずみ」など、歌舞伎の世界での事件を調査する今泉探偵が出てくる物語です。

歌舞伎の話より前なので、探偵としてはまだ駆け出しの今泉の様子が見られます。助手の意外な秘密もあったりして、シリーズのファンの方はこれも読んだ方がよさそうです。


ただ、本作の内容は、私は苦手なタイプでした。始めから終わりまでただひたすらに暗い・・。そして、登場人物の誰にも共感できるところがない。何だか海外ドラマのようです。しかも、治安が悪い下町のような場所での話という感じです。

出てくる少女たちも、まだ若いはずなのに妙に大人びていて、ドラッグでもやっていそうな感じ。実際一人はやっていたようですけど。

本来は犯罪から遠い存在のはずの彼女たちの周りに、普通に起こる殺人事件。殺人事件が起きるのに警察は出てこないという異様な状況。少しは葛藤したようですけどあっさりと隠蔽する人たち。

どれもこれもついて行けませんでした。


ある意味、かけ離れていて感情移入しない方が読みやすい気はしますけど。


そして、相変わらず今泉は自分一人で何かに気づいて何かにつまずいて何かに悩んで、このまま事件を忘れようと一度は考えて、結局は全てを暴いてしまいます。

暴いたからといって救われないんですけどね。

死ななくても良い人もたくさん死んで、結局何が言いたかったんだろう?と最後まで理解出来ずでした。

これは、彼女の人生を憂いておけば良いのか?よくわかりませんでした。


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2021年12月15日

近藤史恵「散りしかたみに」

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 近藤史恵 著
 「散りしかたみに」
 (角川文庫)


歌舞伎座での公演中、毎日決まった部分で桜の花びらが散る。だれが、なんのために、どうやって花びらを降らせているのか?女形の瀬川小菊は、探偵の今泉文吾とともに、この小さな謎の調査に乗り出すことになった。1枚の花びらが告発する許されざる恋。そして次第に、歌舞伎界で30年以上にわたって隠されてきた哀しい真実が明らかにされていく―。歌舞伎座を舞台に繰り広げられる。妖艶な魅力をたたえた本格ミステリ。−裏表紙より−


シリーズ2作目。前回も悲しい物語だった気がしますが、今回も・・。

起きた事件は、そこまで大きくなく、誰かが殺害されるわけでもありません。ただ、公演中に毎日同じ場面で花びらが一枚降ってくるだけ。

花びらが一枚落ちてくるだけなら放っておけば良いやん、と思いますが、その舞台に立って芝居をしている役者からすれば気になるもので。まあ確かに毎日毎日同じ場面で必ず一枚だけ降ったら気になるかもしれませんけど。

他の場面で降らしていた花びらが残っていて、ということでもないとなれば、誰が何のために降らせているのか?と調べたくなるのはわかる気がします。


師匠に「気になるから調べろ」と言われてしまったら、調べなければならないのが弟子というもので、小菊は友人でもある探偵の今泉に相談することにします。でもなぜか今泉は話を聞いたとたんに「調べるのはやめろ、放っておけ」と言い出します。辛く悲しいことに巻き込まれるからというだけで、細かい理由は語ってくれません。

そんな曖昧なことで師匠が納得するはずもなく、小菊は再び調べ始めます。そこで浮上したのが同じ歌舞伎役者の若手の人。ちょっと色気もあってモテるその役者の怪しげな行動に注目して調べるわけですが、彼は同じ場面で舞台に立っているので直接手を下すことは出来ない。

・・・と色々調べていくわけですが、進捗状況を知らせる度に悲しげになっていく今泉の様子も気になりますし、その役者の周りにいる人たちも気になり、誰が犯人なのか?ということよりも、どこに着地点があるのか?というのが気になってしまいました。

花びらを一枚降らせるだけなんですから、そこまで大きな動機ではないだろうと思っていたのですが、最終的には・・・。


謎が解明されると、歌舞伎の世界の狭さに呆れますし、そこまでして守らないといけない伝統って何なんだろう?と不思議でなりませんでした。

こんな結末を迎えるほどのことをしたわけでもないのに・・と色んな意味で悲しくなりました。

もっと気楽に生きてはいけないものでしょうか。伝統を守るって大変なことなんですね。

絶対に関わりたくないと思ってしまいました。まあ関わることはないでしょうけど。


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2021年09月16日

近藤史恵「わたしの本の空白は」

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 近藤史恵 著
 「わたしの本の空白は」
 (ハルキ文庫)


気づいたら病院のベッドに横たわっていたわたし。目は覚めたけれど、自分の名前も年齢も、家族のこともわからない。夫を名乗る人が現れたけれど、嬉しさよりも違和感だけが立ち上る。本当に彼はわたしが愛した人だったの? 何も思い出せないのに、自分の心だけは真実を知っていた……。愛≠突き詰めた先にあったものとは──。最後まで目が離せない傑作サスペンス長編!−裏表紙より−


記憶喪失物?です。そんな言い方するのか?は知りませんが。

最近まで読んでいた本も記憶喪失の人が出てきました・・。何かそういうのが好きなのか?って感じです。まあ結論から言うと好き・・ではないです。確かにミステリ感は増しますけどね。もどかしい気分になるのがあまり好きではありません。


この物語の主人公はどうやら階段から落ちて頭を打ったことで記憶が無くなったようです。ずっと「わたし」という視点で語られていくので、ケガの原因も想像でしかありません。入院している彼女の元へやって来たのは、夫だと名乗る男性でした。彼はとても優しい人でしたが、会っても何の感情もわかないことに不安を覚えます。

更に夫の妹という人から投げかけられる言葉にもショックを受け、自分には味方がいないのでは?と心細くなっていきました。

身体的には何の問題も無いので、すぐに退院することになり、夫という人の家に帰るわけですが、全く覚えのない家に戸惑うばかり。でも突然、自分の部屋に入るとあるべき物が無くなっている感覚がしたり、妙に落ち着く場所があったり、少しずつ記憶が戻りそうにはなりました。


このまま記憶が戻って終了、だと物語として成立しませんが、ここから謎の人物が現れたり、ケガの原因が本当に事故だったのか?という疑問が出てきたり、次々謎が出てきてミステリとして盛り上がっていきます。

お陰で後半はほぼ一気読み。

謎が解明しても、個人的にはスッキリしませんでしたし、納得できない部分も多かったのですが、一応解決はしました。


記憶喪失の不安さなんて、想像も出来ませんが、自分が誰なのか、どうやって生きてきたのか、全てを忘れてしまうのはどれほど心細いか・・。周りの人をただ信頼して助けてもらうしか方法は無いわけですけど、誰を信頼して良いのかも難しいでしょうね。「家族です」と名乗られたら信じるしかないですから・・。



最後まで読んでみて、やっぱり記憶喪失物は好みじゃないなと思ってしまいました。どうしても、すっきり出来ない気がします。いきなり記憶のすべてを思い出しました!という終わり方をしても嘘くさいですし、記憶の一部は戻っていません、だと解決しきれないですし、周りの人が真実を話してくれても、それは本当に真実なのか?って疑ってしまいますし。

ミステリは全ての謎が解明して、すっきり爽快に終わってほしい!と思ってしまいます。


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2021年08月18日

近藤史恵「みかんとひよどり」

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 近藤史恵 著
 「みかんとひよどり」
 (角川文庫)



シェフの亮は鬱屈としていた。創作ジビエ料理を考案するも、店に客が来ないのだ。そんなある日、山で遭難しかけたところを、無愛想な猟師・大高に救われる。彼の腕を見込んだ亮は、あることを思いつく……。−裏表紙より−


ジビエ料理を出すレストランの話です。

ジビエ料理か〜。ほとんど縁がないです・・。食べたことがあるのは鹿肉くらいかな? 思ったより臭みも無く美味しかった覚えがあります。

ジビエの中では比較的身近な感じのするイノシシは意外と食べたことがありません。ボタン鍋は映像を見る限り美味しそうですけど、高いイメージがあって手が出せていません。


この珍しいレストランでシェフをしている亮は、オーナーにジビエ料理の腕を買われて雇われているのですが、なかなか客足が伸びずに悩んでいます。確かにジビエって敷居が高いですもんね。仕方ない部分はあると思うのですが、他のジビエ料理店はお客さんが来ているらしいと聞くと穏やかではいられません。

ジビエ料理を作る上で大変なのは、まず材料を安定して手に入れること。猟師の知り合いもいなかった亮は、自分でも猟に行くことがありましたが、毎回自分で獲るわけにはいかず悩んでいました。

猟に行った時に、遭難しそうになり、助けてくれた猟師・大高と出会ったことで材料の供給は安定させることが出来ました。


このまま行ったら何の盛り上がりも無く終わりそうな感じですけど、もちろんそうはいきません。猟師の大高が世捨て人のようで、謎がたくさんある人物で、その隠されている事が何なのか?がこの物語の大きなテーマになっていきます。

彼の抱える秘密ももちろん気になりますが、最後まで読んで思うのは、人は他の生物の命をもらって生きているのを忘れてはいけないということ。ジビエのように野生の動物だけではなく、普段食べている牛肉豚肉鶏肉も買う時には小さくカットされているから忘れがちですが、元々は生きている動物。その命を頂いているんだということに、感謝しながら食べないと申し訳ないですよね。魚介類もです。

その動物たちを育てている方、加工している方、売っている方、色んな方の手を借りないと自分たちの口には入らない。そういう当たり前にわかっているはずのことですが、あまりにも日常過ぎて忘れてしまいがちなので、食べる時にはしっかり感謝したいと改めて思わされました。もちろん無駄にするのはもってのほか。きちんと美味しく頂きたいと思います。

感謝感謝。


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2021年06月24日

近藤史恵「あなたに贈る×キス」

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 近藤史恵 著
 「あなたに贈る×キス」
 (PHP文庫)


閉ざされた学園を震撼させる一人の美少女の死。先輩、教えてください。あなたがここにいないのは人を愛したせい? それとも誰かに殺されてしまったの? 感染から数週間で確実に死に至る病。そのウイルスの感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。かつては愛情を示すとされたその行為は、国際的に禁じられ、封印されている。しかし、ある全寮制の学園で一人の女生徒が亡くなり、「彼女の死は、“あの病”によるものらしい」と不穏な噂が駆け巡った。真相を探る後輩の美詩が辿り着いた、あまりに甘く残酷な事実とは。鮮烈な印象を残す青春ミステリー。。−裏表紙より−


感染したら2週間くらいで確実に死に至るという謎の病が流行しているという設定の話です。その病気に感染するのはなぜかキスをしたときでした。

今の時代に読むのがタイムリー過ぎて驚きましたが、コロナと違って、キスさえしなければ感染しないので、そこまで行動は制限されなくてラクだと思ったのですが・・。

ただ、コロナと同じで自分がキャリアかどうかはわからないというのが困った所で、誰かにキスして初めてわかる状況。しかも相手もキャリアだったらもう感染させるも何もないわけで、キャリア同士ならキスしても大丈夫ということです。

でも誰がキャリアなのかわからないため、初めてキスするときはかなりの緊張感というか、命がけということになって、国際的に禁止されることになりました。まあそれは当然ですね。

キス以外のふれあいは特に問題がないというのもまた謎です。


そんな世界で、全寮制の学園でとある女子生徒・織恵が感染して死亡する事件が発生します。恋人がいたという噂もなく、優等生だった織恵の死は、憧れをもって見つめていた後輩・美詩の心にも傷をつけました。

絶対に先輩は自分から進んでキスをするはずがない、と殺人事件を疑った美詩は、こっそりと調査を始めます。確かに、もしかしたら感染するかもしれないという危険を知っていながら、自ら進んでするのは変です。幼いころからそうやって育ってきたのですから、好きな人とキスをして愛情を確かめ合うことを知らずにいたら我慢するという感覚もないでしょう。そんな年代の子どもが死ぬのは変です。

しかも、相手がキャリアだったら確実に感染して、確実に死ぬのですから、かなりのリスクを伴うわけです。


調査の結果はとても悲しいものでした。これは青春物になるのでしょうが、美詩の受けた傷はどうやったら回復出来るんだろうと心配なまま終わってしまいました。

更に私生活でも問題が起きてしまいますが、そこは「想像にお任せします」状態で終わったのは気持ち悪かったかも。まあ結果は何となくわかるんですけどね。


狭い世界で生きている彼女ら彼らのこれからの人生が幸せになると良いのですが。少なくとも、コロナ禍の今よりは感染防止しやすそうですけど・・。とりあえず私はこの病気には感染しない自信があります。良いんだか悪いんだか・・。


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2021年04月14日

近藤史恵「私の命はあなたの命より軽い」

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 近藤史恵 著
 「私の命はあなたの命より軽い」
 (講談社文庫)


東京で初めての出産をまぢかに控えた遼子。夫の克哉が、突如、ドバイへ赴任することになったため、遼子は大阪の実家に戻り、出産をすることに。だが、実家に帰ると、両親と妹・美和の間に、会話がないことに気がつく。そして父は新築したばかりの自宅を売却しようとしていた。不穏な空気が流れる実家で、出産への不安と家族への不信感があふれ出る……そして明らかになっていく家族を襲った出来事とは――。−裏表紙より−


これはまた何とも感想に困る内容です・・。

誰のことも「わかる」と言えない状況で、複雑な心境のまま読み進めることに。


まず、初めての出産を控えている妻を置いて、仕事とはいえ海外に赴任してしまう夫。確かに夫がいても役には立たないのかもしれませんが、精神的支えにはなるはずです。産気づいた時に病院に送るだけでも助かるのに、何で普通に海外に行けるのか・・。

そして遼子の両親。初めての孫が産まれるかどうかという時に、ここまで不安な環境にいさせてしまう神経がわかりません。お母さんが東京に行くという選択肢はなかったか??

もちろん、遼子の妹・美和に対する仕打ちは一番納得が出来ません。未成年だし育てられないだろうと考えるのは当然だとは思いますが、それ以外の部分は理解できません。

更に美和。彼女は被害者なので、始めのうちはまだ優しい気持ちで見ていられたのですが、だんだんと・・・。

遼子に相対して、心がざわつくのはちょっとわかる気はしますし、当たり散らしたくなる気持ちもわかる気はするんです。でも、最後の最後であの状況になるのは何だか・・。

遼子は何もしていないのに。

何もしていないことに腹が立つのかもしれませんけど、知らなかったわけですし。


結局、誰のことも好きになれない何とも後味の悪い状態で話が終わって、何だったんだろう?という気持ちになりました。

読み終わって題名を見たら余計に辛くなりました。


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2021年04月05日

近藤史恵「岩窟姫」

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 近藤史恵 著
 「岩窟姫」
 (徳間文庫)


人気アイドル、謎の自殺――。彼女の親友である蓮美は呆然とするが、その死を悼む間もなく激動の渦に巻き込まれる。自殺の原因が、蓮美のいじめだと彼女のブログに残されていたのだ。まったく身に覚えがないのに、マネージャーにもファンにも信じてもらえない。すべてを失った蓮美は、己の無実を証明しようと立ち上がる。友人の死の真相に辿りついた少女が見たものは……衝撃のミステリー。−裏表紙より−


アイドルとして活躍していた沙霧が自殺した・・。自殺の理由は同じアイドルの蓮美によるいじめだとネットブログに書き残していたので、蓮美はマネージャーやファンから見限られてしまいます。

でも、蓮美は沙霧のことを親友だと思っていたほど仲が良かったため呆然としてしまいます。

しばらくは世間の目を気にして出かけられなくなり、引きこもっていた蓮美ですが、ストレスで太って以前の容姿と変わってしまったのをきっかけに、自殺の原因を探ることにしました。

そうしないと先に進めないという蓮美の気持ちはわかります。

一番の理解者だと思っていたマネージャーにも疑われてしまったので、誰のことも信用できなくなっていましたが、昔同じようにアイドルをしていたチホと再会して協力してもらうことになりました。


始めはチホのことも半分疑いながら行動を共にしていたのですが、彼女がはっきりと蓮美のことを「嫌いだった」と言ってくれたことで少し信頼するようになります。

男性のことは知りませんが、女性同士ってなかなか本音を言い合わない物なので、チホのような人は貴重な存在です。

少しずつ真相に近づいていくのですが・・・。


最後に大きなどんでん返しが。これはどうなんだろう?私的には「良かったね」というより「他に方法はなかった?蓮美の気持ちはどうなるの?」という気持ちが大きかったです。自殺はともかく、蓮美に対する行動は納得できずでした。

それでも、彼女たちが前向きに生きてくれそうなのは救いになりましたし、そこまで後味悪くならなかったのは良かったです。


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2021年02月03日

近藤史恵「インフルエンス」

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 近藤史恵 著
 「インフルエンス」
 (文春文庫)


小学二年生の友梨は、同じ団地に住む親友の里子が虐待されていることを知る。誰にも言えないまま中学生になった時、憧れの存在・真帆を救うために友梨は男を刺してしまうのだが―不可解な事件が少女たちを繋げ、罪は密かに重なり合う。大人になった三人の運命が明らかにした驚愕の真相とは。現代に響く傑作長編。。−裏表紙より−


これは感想が難しいな・・。

同じ女性だけに理解できる部分もあって心が痛くなることが何度かありました。でもきちんと彼女たちの気持ちが理解できたかというとハッキリ言って理解不能です。

団地に住んだこともないですし、親友が虐待されていたことも(多分)ないですし、中学校が荒れていたわけでもないですし、同級生が(在学中に)事故死したこともありませんから、全てを理解できるわけもありませんが、そういう環境で育ったからと言って、彼女たちのようになるとも限らないでしょう。


女子同士って小さい頃からややこしいですけど、ここまでドロドロするのは珍しいと思います。彼女たちの人生を読んでいると自分の子どもの頃ってなんて幼かったんだろうと思ってしまいます。

友梨なんて、平均的な普通の家庭で育っているのに、どこでそこまで達観したというか、物事を冷静に分析して生きていけるようになったんだろう?と不思議でした。親友の里子は特殊な家庭なわけですし、誰も助けてくれない状況で被害を受け続けたのですから、ある程度大きくなって反抗的になるのは納得出来ますが。

そして真帆。私には唐突に現れたように思えたのですが、彼女の何がそこまで友梨を惹きつけたのか、友だちになったからといってそこまで出来るだろうか?と疑問がわきました。


結局、始めの里子のことで抱いた何とも言えない、どうしようもない罪悪感からどんどん負の連鎖が続き、誰か一人でもまともな判断を下していれば止められたであろう出来事なのに「友人のため」「以前助けてくれたから」ということを言い訳にして犯行を重ねてしまうことになったのでしょう。

最後に何とか止めることが出来たわけですが、全ての犯罪を償ってはいないですし、この犯罪のきっかけとなった里子の祖父がしっかり反省する場面があってほしかったと思います。

小説の中とはいえ、彼女たちの人生が悲しすぎて、読むのが辛くなる作品でした。余韻もすごくて、しばらくぼんやりとしてしまうくらいでした。

なるべく冷静に、客観的に距離をとって読むことをお勧めします。入り込むと辛いですよ。


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2019年12月10日

近藤史恵「シャルロットの憂鬱」

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 近藤史恵 著
 「シャルロットの憂鬱」
 (光文社文庫)


シャルロットは六歳の雌のジャーマンシェパード。警察犬を早くに引退し、二年前、浩輔・真澄夫婦のところへやってきた。ある日、二人が自宅に帰ってみると、リビングが荒らされており、シャルロットがいない! いったい何が起こったのか。(表題作)いたずら好きでちょっと臆病な元警察犬と新米飼い主の周りで起きる様々な“事件”―。心が温かくなる傑作ミステリー。−裏表紙より−


表紙の絵にもなっているし、何度も「シェパード」と書かれているのにも関わらず、読み進める度に可愛らしい小型犬を思い浮かべてしまっていました。

シャルロットという名前も小型犬ぽいからかな?ふさふさした毛並みの可愛らしいというか、高貴な雰囲気の犬って感じがします。

警察犬としての仕事をケガで引退したシェパードのシャルロットを飼うことになった夫婦。犬を飼うのが初めてなので大型犬に少し戸惑っていましたが、きちんとしつけされている分、逆に育てやすいだろうということで、彼らの家にやってきました。

しつけがきちんとされているから、無駄吠えはしませんし、散歩中に走り出して飼い主を引っ張りまわすようなこともありません。もちろん人を噛むこともありませんから、散歩にも行きやすいようです。


そんな彼女が吠えるときは、近所に空き巣が入ったり、悪質なセールスに困っている人などに気づいたとき。異常があるときだけ吠えるので、吠えたら事件か何かが起きているということで、始めは怖がっていた近所の人たちにも重宝がられます。

見た目は大きくて怖そうに見えますが、いたずら好きで実は怖がりで、甘えん坊な彼女のことがどんどん好きになっていきました。また、飼い主の夫婦も犬を飼うのが初めてとは思えないくらい、犬の気持ちや考えがわかっていて、しっかりとかわいがってしつけて一緒に暮らしています。


そんな夫婦とシャルロットが巻き込まれる事件やご近所のちょっとした謎を解決していく様子が描かれています。奥さんが気にして、シャルロットがいつもと違う行動を起こして、旦那さんが解決!という流れが多かったです。


犬って苦手ですけど、こんなに従順で可愛かったら犬も良いななんて思ってしまいました。子犬のときもかわいいでしょうけど、しっかりしつけられているかしこい犬なら一緒に散歩に行くのも楽しいかも??

まあ、自分が犬を飼うことはないでしょうけどね・・。


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2019年09月11日

近藤史恵「スーツケースの半分は」

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 近藤史恵 著
 「スーツケースの半分は」
 (祥伝社文庫)


30歳を目前にした真美(まみ)は、フリーマーケットで青いスーツケースに一目惚(ひとめぼ)れし、憧(あこが)れのNYへの一人旅を決意する。出発直前、ある記憶が蘇(よみがえ)り不安に襲われるが、鞄のポケットから見つけた一片のメッセージが背中を押してくれた。やがてその鞄は友人たちに手渡され、世界中を巡るうちに“幸運のスーツケース”と呼ばれるようになり……。人生の新たな一歩にエールを贈る小説集。−裏表紙より−



9話からなる短編集です。1話ずつ独立していますが、少しつながってもいます。

話の主人公になるのは「青いスーツケース」 とはいえ、スーツケースがしゃべるわけでも、意思を持っているわけでもありませんが。 全編を通して出てくるのはこのスーツケースだけなのです。

表紙にも描いてありますが、私はもう少し明るいblueのイメージで読んでいました。夏の空のような。

始めにこのスーツケースに会ったのは、夫に海外旅行を止められて落ち込む女性。フリマで見かけて思わず買ってしまい、それをきっかけにして、友人から勧められた1人旅へ出かけます。


二話目からは、一話目で1人旅をした女性の友人たちがそのスーツケースを借りて旅をする様子が描かれ、後半には海外に住む女性や、最終的にはスーツケースのルーツも描かれています。


スーツケースはいつしか「幸運のスーツケース」と呼ばれるようになり、スーツケースを持って旅する人たちの出会いや、進むべき道の発見や、訣別など、人生の大切な決断を見届けます。


様々な考えや想いを持って旅する人たちが次々と人生を切り拓いていく様子は読んでいてもスッキリしました。

こんな風に有意義な旅が出来るのは素敵だな〜という気持ちにもちょっとさせられました・・・・・が、私は超出不精のインドア派、おうち大好き人間なので、旅に出ることはないだろうとも思います。


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2019年07月10日

近藤史恵「スティグマータ」

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 近藤史恵 著
 「スティグマータ」
 (新潮文庫)


あの男が戻ってきた。三度の優勝を誇ったもののドーピングで全てを失った、ドミトリー・メネンコが。ざわめきの中、ツール・ド・フランスが開幕。堕ちた英雄を含む集団が動き始める。メネンコの真意。選手を狙う影。密約。暗雲を切り裂くように白石誓は力を込めペダルを踏む。彼は若きエースを勝利に導くことができるのか。ゴールまで一気に駆け抜ける興奮と感動の長篇エンタテインメント。−裏表紙より−


久しぶりにチカの活躍が読める巻ということで、ワクワクしながら読み進めました。

やっぱりチカは良いな〜と読み進む度にかみしめてしまいました。エースでもなく、カッコいい容姿というわけでもなく、人気のある選手でもないのですが、日本人らしい真面目さと内に秘めた感情の豊かさにプラスして、アスリートらしい貪欲さもあって、他人を羨むこともあって、その人間臭さが良いのかもしれません。

フランスにすっかり馴染んでいるチカ。フランス語を操って、チームの仲間にも溶け込んでいます。

以前同じチームでアシストしていたミッコとの関係も良い感じで続いているようで、それも素敵でした。家族ぐるみの関係を外国の人と結べるなんてそれだけで尊敬します。

ヨーロッパをあちこち移動しながら、今回は大きな舞台“ツール・ド・フランス”に参加することになったチカ。チームのエースはニコラです。

以前の作品で、まだ若手選手だったニコラが、すっかりチームのエースとして君臨しているようで、チカとのコンビネーションも良い感じみたいです。


今回の大会では、どのチームが優勝するかというよりも注目を集めていることがありました。それは、ドーピング検査に引っ掛かり引退していたメネンコ選手が戻ってきたということ。彼をエースとして迎えるのチームはどこなのか? 自転車競技の世界を汚した彼のことを選手たちはどう感じて、どのように対応していくのか?気になることがいっぱいです。

それぞれ、彼に対して思うところがあるようで、何か仕掛けるのではないか?といううわさも流れてくるほど。色んな思惑が交差するレースはいつも以上にハラハラさせられました。


また、チカ個人としては、次の契約を結べるかどうかという大変な問題を抱えていて、本人も「このレースが終わるまでは考えないように」と何度も思いつつ、やっぱり他の日本人が契約を取ったと聞くと嫉妬したり、素直に喜べなかったりしています。

チカのアシストとしての走りも相変わらずかっこよくて、周りにすごく気を配れる彼の走りに感動させられました。


またチカの活躍が読みたいです。


<サクリファイスシリーズ>
「サクリファイス」
「エデン」
「サヴァイヴ」
「キアズマ」



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2019年04月08日

近藤史恵「昨日の海と彼女の記憶」

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 近藤史恵 著
 「昨日の海と彼女の記憶」
 (PHP文庫)


どちらかがどちらかを殺した?―。夏休みのある日、海辺の小さな町の高校生・光介の家に、母の姉・芹とその娘の双葉がしばらく一緒に暮らすことになった。光介は芹から、二十五年前の祖父母の死が、実は無理心中事件であったと聞かされる。カメラマンであった祖父とそのモデルを務めていた祖母。二人の間に何が起こったのか。切ない真相に辿り着いたとき、少年はひとつ大人になる。『昨日の海は』を改題。−裏表紙より−


大好きな作家さんの作品なので、とりあえずなんでも読んでみようと思っています。でも、時々「?」と思う作品があります・・。


高校生・光介の家に、母の姉がしばらく一緒に暮らすことになります。彼女(伯母)の「ことは全く知らされていなかった光介は、かなり戸惑います。東京からやって来た伯母は、祖父のやっていた写真店を再開させようとしている様子。

伯母が張り切るほど、母が元気がなくなる気がして心配になる光介。どうやら姉妹の両親(祖父と祖母)の死に何か隠されていることがありそうです。

そして、伯母から2人の死の謎を告げられます。光介は伯母の悩みを解決すべく、思いつくかぎり手伝っていきます。

昔のことなので、苦労させられますが、何とか真実にたどり着きます。でもそれを知って誰が得するのか?という気がしました。多少、スッキリは出来るのかな? でも誰にとっても嬉しいことではないので・・・。


出てくる人たちみんな、心に何か抱えている感じがしたのもあまり好きになれなかった原因かもしれません。もう少し明るく爽快な人がいても良いのに。まあ、内容が内容だけに変に明るい人がいてもおかしいかもしれませんが。光介も高校生らしくない落ち着きぶりでした。

とにかく切ない物語でした。


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2018年09月10日

近藤史恵「ねむりねずみ」

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 近藤史恵 著
 「ねむりねずみ」
 (創元推理文庫)


しがない中二階なれど魅入られた世界から足は洗えず、今日も腰元役を務める瀬川小菊は、成行きで劇場の怪事件を調べ始める。二か月前、上演中に花形役者の婚約者が謎の死を遂げた。人目を避けることは至難であったにも拘らず、目撃証言すら満足に得られない。事件の焦点が梨園の住人に絞られるにつれ、歌舞伎界の光と闇を知りながら、客観視できない小菊は劇場に身を焼かれる。−裏表紙より−


若手歌舞伎役者・中村銀弥の家庭での様子から話は始まります。「ことばがあたまから消えていく」という謎の症状に悩まされる銀弥を、その妻が支えています。こう書くと、献身的な良い妻という感じですが、実は彼女には後ろ暗い出来事が・・。

ここから彼らが事件に巻き込まれていくのか?と思いつつ読み進めていると、突然全く違う場面に。

同じ歌舞伎の世界の話ではあるのですが、突然置いて行かれた気分になります。

その場面から現れるのは、主役をはれないけど、この世界が好きで離れられない役者・小菊。彼を訪ねてきたのが学生時代の同級生・今泉文吾。二人は、劇場で起きた殺人事件を調査することになります。


話があちこちに飛んでしまって、誰の話?といちいち悩まないといけない所があって、話に入り込みにくい展開でしたが、どうやって事件を解いていくのかが気になってほぼ一気読みでした。

第一幕で出てきた銀弥とその妻はどう関わっているのかもなかなか判明せず、まさかこのまま終わらないよね?と心配になる頃、やっと関連が。

事件の真相はかなり後味の悪いものでしたし、その殺害方法はどうも納得いきませんでした。

そんなに都合よくいくかな??と。

しかも動機が・・。

結局、すっきり解決したわけでもないですし、読み終わってもモヤモヤしました。

銀弥とその妻の後日談も納得できず。まあ彼らの場合はそういう選択肢もあるかな?とは思うのですが。


・・と、さんざん面白くないかのようなことを書いてきましたが、小菊や文吾のキャラクターは好ましかったですし、歌舞伎界の裏側を少し覗くことが出来たのは面白かったです。読んで良かったと思いました。

歌舞伎役者の全身全霊を掛けて役に入り込む様子は、読んでいて苦しくなりましたし、こうやって命懸けで芝居をしていたら、ストレスも多いだろうなと。

そこまでして歌舞伎に掛ける想い、そこまで掛けることができる歌舞伎の魅力にはまりそうです。

小菊と文吾のシリーズは他にもあるようなので、ぜひ探して読んでみようと思います。


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