2014年03月05日

高野和明「ジェノサイド 下」

ジェノサイド 下

 高野和明 著
 「ジェノサイド 下」
 (角川文庫)


研人に託された研究には、想像を絶する遠大な狙いが秘められていた。一方、戦地からの脱出に転じたイエーガーを待ち受けていたのは、人間という生き物が作り出した、この世の地獄だった。人類の命運を賭けた二人の戦いは、度重なる絶体絶命の危機を乗り越えて、いよいよクライマックスへ―日本推理作家協会賞、山田風太郎賞、そして各種ランキングの首位に輝いた、現代エンタテインメント小説の最高峰。−裏表紙より−


下巻に入ってからは、世界観というか、言葉や登場人物たちの立場などもわかってきたので、読むスピードが上がりました。もちろん、細かくて専門的な部分は理解できていませんが。

それにしても、どんな感想を書いていいのかわかりません。読み終わっても言葉に出来ない感じです。

すごく壮大で、リアルで、でも現実であってほしくない出来事の数々に加え、息をつかせぬ展開があって、どんどん引き込まれていきました。

とても残虐性の高い事が多く起きて、思わず読みたくない、目をそらしたい所もあったのですが、そこで目をそらしてはいけないと思うようになりました。

きちんと人間がやって来たひどいことを知っておかないといけない気がしました。

戦争という物を見ないふりをして生きている自分が恥ずかしいというか、それではいけないと強く感じさせられた話でした。


感想がとても難しいので、印象に残った言葉をいくつかあげてみます。


科学者・ハイズマン博士の言った言葉です。

「すべての生物種の中で、人間だけが同種間の大量虐殺(ジェノサイド)を行なう唯一の動物だからだ。それがヒトという生き物の定義だよ。人間性とは残虐性なのさ」

「現在、地球上に生きている六十五億の人間は、およそ百年後には全員が死に絶える。なのに、なぜ今、殺し合わなければならないんだろうな?」


そしてこれは、命を懸けてある者を助けたイエーガーという戦士の言葉です。

世界はこんなに美しいのに、とイエーガーは思った。この星には、人間という害獣がいる。


登場人物の中に、このイエーガーや仲間たち、研人や韓国人の相棒などがいてくれて良かったです。彼らのような人間がいることで、まだ私たちはこの世に存在しても良いんだと思えますから。


いつもなら、小説を映像化することに反対するのですが、この作品は映画で見てみたいと思いました。残虐的なシーンも多いので、映像になると見たくないところもあるでしょうが、この壮大な話を映像として見たらどうなるだろう?と興味がわきました。

変にアイドルなんかを使って話題性を上げるのではなく、小説をそのまま再現してもらいたいです。


かなり重い話だったので、次は出来れば軽い物が読みたいな・・。


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2014年02月26日

高野和明「ジェノサイド 上」

ジェノサイド 上

 高野和明 著
 「ジェノサイド 上」
 (角川文庫)


イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方は―人類の未来を賭けた戦いを、緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描き切り、その衝動的なストーリーで出版界を震撼させた超弩級エンタテインメント、堂々の文庫化!−裏表紙より−


読み進めるのにやたらと時間がかかってしまった・・・。面白くないわけではないんですよ。

出てくる専門用語のような物が難しくて、しかも私の苦手な化学系・薬学系の用語が多くて、何が何だかわからなくなったんです。読み流して良い物かどうかもわからなかったので、いちいち引っかかってしまい、何度も同じ部分を読んだりして、なかなか進まず。

ただ、話の内容というか、流れは面白くて、かなり気になる展開で、続きが読みたくて仕方ない状態でした。でも進まない・・。結構イライラさせられる読書になりました。


話の内容は、どこまで明かして良いのかわかりません。ほとんどの事柄がネタバレになる感じなんです。このあらすじもほとんど何も明かしていませんから。

上巻だけでは、まだまだ何も解決していませんし、これから本戦が始まる感じ。どうなれば決着なのかもわかりません。

SFっぽい設定もあって、架空の話のはずなのに、妙にリアルで何度もゾクッとさせられました。


読んで感じたのは、人間って我儘で残酷な存在だということです。自分の国さえ良ければ、もっと言えば自分と身近な人間さえ良ければそれで良いんですよね。

そのためなら何でも出来るものなんですね・・。それは銃や爆弾などの兵器を持ったとき、より鮮明に表れてしまうものなんですよね。アメリカの兵士がどうやって訓練されているか、PTSDにならないためにどういう対策をしているか、という記述を読んで、怖くなりました。

読んでいない人には意味がわからない感想になってしまいましたが、あまり書きすぎるとネタバレになりそうで・・。


さあ、早く下巻を手に入れて読まないと気になって仕方ない!


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2013年05月09日

高野和明「6時間後に君は死ぬ」

6時間後に君は死ぬ

 高野和明 著
 「6時間後に君は死ぬ」
 (講談社文庫)


6時間後の死を予言された美緒。他人の未来が見えるという青年・圭史の言葉は真実なのか。美緒は半信半疑のまま、殺人者を探し出そうとするが―刻一刻と迫る運命の瞬間。血も凍るサスペンスから心温まるファンタジーまで、稀代のストーリーテラーが卓抜したアイディアで描き出す、珠玉の連作ミステリー。


表題作の他「時の魔法使い」「恋をしてはいけない日」「ドールハウスのダンサー」「3時間後に僕は死ぬ」の4編が収録されていて、最後にエピローグとして「未来の日記帳」という話が書かれています。

この作家さんにしては、明るめ(?)の話かもしれません。題名がちょっと怖い雰囲気ですし、ミステリー色が濃いイメージですけど、どちらかというとファンタジーチックな話でした。


山葉圭史という男性が全ての話に出てきます。彼は「他人の未来が見える」という特殊能力をもっています。

未来というのは幸せなことばかりでは無いわけで、表題作で彼が見てしまったのは、美緒が6時間後に殺害される場面。そこで、見ず知らずの美緒にそのことを伝えます。

そんなことを突然言われた美緒は、当然すぐには信じることができません。細々した出来事まで当てられたことで少しずつ彼のことを信じることになり、2人で犯人を探し始めます。

この話と「3時間後に僕は死ぬ」はミステリーらしくて、容疑者を1人ずつ消していきながら、誰が犯人なのかを推理していくのがとても面白かったです。しかも、タイムリミットが決まっていて、少しずつ時間が無くなっていくので、スリルも味わえます。きっとハッピーエンドだろうと予測はできても、ハラハラドキドキしてたまりませんでした。


他の3編はファンタジーっぽかったです。とても優しい話ばかりで、特に「時の魔法使い」が私は気に入りました。こういうことが私にも起きたらどうするかな?と考えながら読み、最後まで楽しめました。

エピローグでは、素敵な文章が。

『明日は、きっといい日だよ。』

最後に元気がもらえる、良い本に出会えました。


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2013年01月28日

高野和明「幽霊人命救助隊」

幽霊人命救助隊

 高野和明 著
 「幽霊人命救助隊」
 (文春文庫)


浪人生の裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな女性。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。傑作エンターテインメント、遂に文庫化! 解説・養老孟司−裏表紙より−


題名でビビッていた私。もっと早く読んでおけば良かったと後悔するくらい面白かったです。笑いあり、涙あり、人生の教訓もあり・・。


東大受験に失敗した裕一は、自分に過度な期待をしてプレッシャーをかけ続けた両親を恨んで、首吊り自殺をしました。自殺したことを後悔しながらたどり着いた所には、3人の男女がいました。

老ヤクザ・八木、気弱な中年男・市川、紅一点・美晴。彼らも裕一と同じように自殺をしていました。集められた3人に神様が与えたのは「100人の自殺志願者を救う」という任務。・・いや、任務というより罰とか、罪滅ぼしと言った方が良いかもしれません。その任務をクリアすれば、天国に行けるということで、さっそく地上に戻った4人の幽霊。

詳しい説明を一切受けずに地上に戻されたので、しばらくはどうやって自殺志願者を探せばいいのかさえもわからない状態でした。試行錯誤を繰り返し、何とか救う方法を見つけ出すのですが、今度はどうやって自殺を思い止まらせるかが問題になります。


自殺を考える人は、みんな考えが一方にしか向かない状態になっていて、いくら説得しても、頭から悪い方、悪い方へと決めつけていってしまうため、なかなか思い止まりません。

4人は、自分たちの経験も踏まえながら、様々な言葉で説得していきます。


「自殺」という重いテーマで書かれているので、暗いイメージをもちそうですが、助けようとがんばる幽霊たち4人の言動が妙に笑える部分があり、そのお陰で少し明るくなっています。

もちろん、シリアスな部分も多く、何度も泣きそうになってしまいました。電車の中じゃなかったら号泣だったと思います。母子の話とか弱いんですよね〜。


「自殺はダメ」というのは簡単に言えます。でも、そんな考えにまで思い詰めてしまった人をどうやって助ければいいのか、本当に難しい問題だと思います。日本では毎年驚くほどの自殺者がいます。私は「死ぬ勇気があるなら何でもできる」という考えで、「自殺」をするのが一番勇気がいることだと思っています。

でもこの話を読んで、誰にでも自殺を考える瞬間って起こり得るんだというのを思い知らされた気がしました。私だっていつそんな考えをするかわからないんですよね。そうなるまでに誰か一人でも声を掛ける人がいれば・・。

八木さんの言った「未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである」という言葉が印象に残りました。本当にそうですね。思い詰める前に、一歩引いて見直す力があればきっと世界は変わるはず。

色々考えさせられた作品でした。 



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2012年04月21日

高野和明「グレイヴディッガー」

グレイヴディッカー

 高野和明 著
 「グレイヴディッガー」
 (角川文庫)


八神俊彦は自分の薄汚れた人生に区切りをつけるため、骨髄ドナーとなり白血病患者を救おうとしていた。しかし移植を目前にして、都内で連続猟奇殺人が発生。事件に巻き込まれ、容疑者として手配された八神は、命がけの逃走を開始する―。八神を負う警察・墓掘人(グレイヴディッガー)。八神は追跡をかわし、患者の命を救うことが出来るのか?稀代のページターナーが放つ、ノンストップ・エンタテインメント!−裏表紙より−


面白かった!ですぴかぴか(新しい) 展開が早くて、次々と読み進めてしまいました。一つ謎が解明されたかと思ったら、それがまた新たな謎を作りだしたり、推理もことごとく覆される感じでした。


八神は、若い頃から悪さをたくさんしていて、警察のお世話になることも度々ありました。ただ、起訴されるほどの悪さではなく、逮捕されて釈放される・・というのを繰り返していました。そんな彼が、人助けをすることになったのですが、入院する前日になり、事件に巻き込まれてしまいます。

知人の他殺体を発見した八神は、現場で怪しい男たちに襲われます。思わず逃げた八神を、警察は容疑者として手配します。八神は、怪しい男たちと警察のふた組から付け狙われることになったのです。

更に繰り返される殺人・・。殺害方法も何かの怨念を感じるような異様な物でした。

ベテラン刑事の古寺は、そんな異常な殺人を、昔から知っている八神が起こしたとは思えず、捜査本部にいながらも他の刑事たちとは違う視点で事件を解決しようとします。捜査本部の越智は、殺害方法を見て、昔行われていた魔女狩りとの関連を疑い、専門家を訪ねます。そこで出て来たのが「グレイヴディッガー」という名前でした。表紙の意味がようやくわかりましたあせあせ(飛び散る汗)

伝説になぞらえて行われている連続猟奇殺人。犯人の狙いは何なのか?なぜ八神は狙われているのか?


ベテランの古寺刑事を始め、彼と組む剣崎、管理官の越智など、捜査本部に振り回されることなく自分の信念を貫こうとする姿勢には好感がもてました。誇りを持って仕事をしている感じがしました。

そして、八神・・・彼の超人的な逃亡劇は読みごたえありました。頭も遣いながら、でも体力も超人的で、飛び降りたり飛び乗ったり、手に汗握る場面でした。悪いことをしながらも他人を傷つけるのは嫌で、時々言い訳をしたり、謝ったり・・を繰り返すのが面白かったです。何よりも、白血病患者を助けるために逃げているのが良いですね。思わず応援してしまいました。

それにしても政治家というのはどうしてこんな考えなんだ!むかっ(怒り) と怒りが沸きました。自分のことしか考えないその根性に呆れます。


「13階段」が終始暗いイメージだったので読むのを敬遠していたのですが、これは面白かったので他のも読んでみようかな?


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2009年09月12日

高野和明「13階段」

高野和明著 「13階段」 (講談社文庫)

この人の本、初めて読みます。家族に勧められて借してもらった本なのですが、実はこの作家さんのこと全く知りませんでしたあせあせ(飛び散る汗)


死刑が確定し、その執行を待つばかりの死刑囚樹原は、実は自分が犯した犯罪の記憶が無い。無罪の可能性もあるこの事件を、弁護士は刑務官の南郷と仮釈放された三上を使って再捜査する。手がかりは樹原が思い出した「階段を上っている」ことだけ。死刑執行までわずかな時間しかない中で、二人は必死で調査をする。


死刑囚の冤罪を晴らすという話ですが、調査する二人の犯罪や裁判で決められる刑罰に対する考え・悩みなどが書かれていて、読んでいる側も考えさせられる内容でした。

私は刑罰について語れるほど詳しいわけではないので、あまり深くは語りませんが、被害者遺族の気持ちを考えると重い刑罰を望むのは仕方ないと思っていました。

でもこの本を読んで、刑を執行する人の気持ちを考えていなかったことに気づかされました。

だからといって刑罰を軽くしてしまったら、法律に任せていられず勝手に復讐殺人をしてしまうこともあり得ると思います。

テレビ等の報道を見ていても、被害者の名前や写真はすぐに公表されるのに、容疑者は隠されたりする。興味本位で取材に押しかけられる遺族も少なくないと思います。家族を失った悲しみ以外にもそんな苦しみを味わい、やっと乗り越えようとしていたら犯人が短い期間で刑期を終えて出てきてしまう・・。怒りが湧いても当然なのかもしれません。

本当に色々考えさせられる作品でした。ただ、結末が・・がく〜(落胆した顔) もう少しハッピーエンドでも良かったのかも。でもこの方が流れ的には良いのか?・・う〜ん・・ふらふら


今、読んでいるのは
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