
薬丸岳 著
「告解」
(講談社文庫)
深夜、飲酒運転中に何かを撥ねるも、逃げてしまった大学生の籬翔太。翌日、一人の老女の命を奪ってしまったことを知る。罪に怯え、現実を直視できない翔太に下ったのは、懲役四年を超える実刑だった。一方、被害者の夫・法輪二三久は、ある思いを胸に翔太の出所を待ち続けていた。贖罪の在り方を問う傑作。−裏表紙より−
車を運転していたら誰もが起こしてしまうかもしれない人身事故がテーマになっています。
大学生の翔太は恋人からの呼び出しに応じる形で飲酒していたのに夜中に車を走らせることに。ちょっと脇見をした瞬間に起きた事故。人らしきものを撥ねたことには気づきましたが、きっと勘違いだろうと自分に言い聞かせるようにしてそのまま走り去ります。
「もし人を撥ねていたら」「もし死んでいたら」「飲酒運転だから罪が重くなる」と瞬時に考えて怖くなるのはわかる気がします。自分は運転しないので加害者にはなりようがないのですが、もしそんなことが起きたらと思うとぞっとします。
家族が被害にあったらどう思うのだろうか?と考えながら読んでいると、ずっと苦しくてたまりませんでした。闘病の末に亡くなっても悲しいのに、突然亡くなるなんて・・・想像できません。
せめて加害者になったら冷静に車を止めて救急車を呼んで対応していれば心の傷も罪の重さももっと軽かっただろうに、それを背負うには若すぎたのかもしれません。
物語は被害者家族の目線でも進みますが、基本的には加害者の目線で進みます。彼は懲役四年という判決が出され、実際にはそれを越える年数を服役しました。
出所した時に父親からは勘当同然の対応をされ、姉からは「今後会うことはない」ときっぱり言われます。母親だけは同情的な感じがありましたが全面的に支援するということはありません。それだけ加害者の家族に対する風当たりも強いということです。子どものしたことに親の責任があるのはわかりますが、兄弟にも影響があるのは当然です。世間から責められるのもそうですが、自分の家族が人を殺してしまったことを受け入れるのは難しいと思います。ある意味、加害者と同じように罪を背負って生きていく感じになるでしょう。
そんな家族の対応に翔太は仕方ないと思いつつも、服役したことで罪は償ったはずなのにどうしていつまでも責められるのかわかっていない感じでした。被害者遺族に対する気持ちが足りないのが読んでいてイライラしました。
次第に被害者の夫の行動が描かれて行き、もしかして復讐しようとしているのか?と心配になる展開が続きます。そんな悲しみの連鎖で終わるのは辛いと思っていたら思わぬ展開に。
題名でもある「告解」部分では涙無しでは読めない状態。家で読まないと無理でした。そんな思いを抱えて生きていたなんてなんて重い人生なんだろうと心が痛くなりました。
加害者の人生も、被害者遺族の人生も、加害者家族の人生も、何とか明るく豊かになってもらいたいと強く願ってしまいました。
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