2023年03月24日

大門剛明「鑑識課警察犬係 闇夜に吠ゆ」

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 大門剛明 著
 「鑑識課警察犬係 闇夜に吠ゆ」
 (文春文庫)


念願かなって鑑識課警察犬係に配属された岡本都花沙は、ベテラン警察犬のアクセル号とコンビを組むことに。元警察官でいまは民間の警察犬訓練所で働く凄腕ハンドラー・野見山俊二の協力も得て、認知症高齢者の捜索、ひき逃げ事件の捜査などに日々、奔走する。日本推理作家協会賞候補作を含む警察小説新シリーズの誕生!−裏表紙より−


新人ハンドラーの話だと思って読み始めたのですが、いきなり始まったのはベテランハンドラーの野見山と、ベテラン警察犬の話でした。

容疑者の追跡はもちろん、失踪者の捜索もお手の物で、何度も表彰されるほどの活躍を見せているコンビ。警察犬も優秀ですが、歳をとったので引退する時期が近づいていました。そんな時、過去に有罪になった犯人が無罪を主張したため、再捜査になり、改めて臭気テストが行われることになります。

そこで行われたのはベテランハンドラーによる不正。

なぜそんなことをしたのか、過去の判断が間違いではなかったと証明したかったのか?それにしてはやり方が・・・。と謎に包まれたまま、次の話へ。


2話目になると今度は新人のハンドラー・岡本都花沙が登場し、新人らしく警察犬に振り回される日々を送っています。ベテランハンドラーと共に現場に行って勉強することも多くあり、そこで出会うのが1話目で登場したベテランハンドラーの野見山。不正したのですから、当然警察は辞めたわけですが、民間の警察犬訓練所でハンドラーをしていました。

警察を辞めても実力は認められているので、警察からの依頼を受けて出動することもよくあり、都花沙も現場で会うことになります。

実は彼女と野見山は浅からぬ縁があるのですが、それは読んでください。


2話目からは基本的に都花沙の成長物語とはなっていて、彼女の視点で話が進むのですが、時々野見山の視点でも書かれることがあり、そういう所が少し混乱しました。同じ場面で2つの視点があったりするので、これは誰の思い?誰の言葉?と、ぱっと理解できないことがありました。


最後まで楽しく読めましたが、まだスッキリ出来ない問題もありますし、都花沙の成長もまだまだですし、続編が出版されることでしょうから、楽しみに待つことにします。それまで色々覚えておけるか?心配ではありますが。


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2021年09月22日

大門剛明「この歌をあなたへ」

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 大門剛明 著
 「この歌をあなたへ」
 (祥伝社文庫)


小学校の養護教諭、宮坂蒼衣の住む街には悲しい事件の記憶があった。十九年前、クリスマスイベントで盛り上がる公園に刃物を持った男が乱入し、八人もの尊い命が奪われたのだ。ある日、蒼衣の勤める小学校に臨時の事務職員として一人の男が配属される。異常なほど頑なに人との関わりを避ける彼には、誰にも言えない秘密が――。加害者家族の苦悩と救いを描く感動の物語。−裏表紙より−


無差別に何人も殺害するという大きな事件から物語は始まります。場面が変わって描かれたのは、小学校の様子。養護教諭をしている蒼衣の日常が進んでいきます。始めは小学生にして天才歌手の異名をもって、メディアでも活躍している男子生徒とそれを取り巻く環境のようなことが描かれるので、彼を中心とした話になるのだろうと思いました。

蒼衣がその子の悩みに向き合って、小学校生活にもなじめるようにしたり、親との関係を修復したりしていくのか?と。生徒と先生の淡い恋なんて展開になったら読みたくないな、とか色々思いながら読んでいると、その問題はそこまで大きくならず、どうやら同じ小学校で働く臨時の事務職員にスポットが当たっていく様子。

話の展開がどうなっていくのか気になるけど、あまり面白い展開に思えず前半は読むスピードが上がりませんでした。

でもだんだん事務職員の謎めいた行動に興味が出てきて、彼の秘密とそれに振り回される人たちのことが気になって読むスピードも上がりました。彼は一体何を隠しているのか?なぜ人と距離をとって生活しているのか?など気になることがたくさん。


その理由が明らかになってからは、どうして世間の人たちは彼に対してそんな態度をとってしまうのかが不思議でなりませんでした。本人ならともかく、その兄弟は何も関係ないし、攻められる理由もないはずなのに、なぜなんでしょう?その心理が理解出来ませんでした。

同じ家で育ったら同じような考えを持つのではないか?と不安になるのでしょうか。家族でも考えはそれぞれ違うのに、そんなこともわからないということなんですね。不思議です。

とはいえ、そういう立場になったことがないので自分がどんな反応をするのか、絶対に大丈夫と言えるのか、だんだん不安になってしまいました。そういう人に会うことがあったら、「だからどうした?あなたはあなたでしょ?」と軽く言えるような人間になっていたいと強く思います。

被害者家族からの手紙や言葉には泣かされましたし、この人は死ぬまで苦しみから解放されることはないのだろうと思うとより悲しくなりました。


最後は一応明るい雰囲気で終わってくれたのは良かったですが、読み終わってもスッキリ出来る感じではなかったです。


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2021年05月10日

大門剛明「罪人に手向ける花」

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 大門剛明 著
 「罪人に手向ける花」
 (ハルキ文庫)


癒し系女性検事・黒木二千花、登場!ゆったりめのワンピースに、ふわふわと波打つ長い髪。笑顔を絶やさず被疑者に向かい合う彼女には、元検事だった父の影響からか絶対に悪を赦さないという強い信念があった。その彼女が担当する殺人事件の被疑者は、かつて二千花の父が起訴を見送った男だった。その男は今度も無罪なのか、それとも・・。法廷ミステリーの旗手として注目を集める著者による新たなる検事小説。−裏表紙より−


読んだのは最近のことなのに、詳しい内容を忘れてしまっています。

結末なんかは覚えているのですが、感想を書きにくいので、またいつか再読したら書きます。




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2021年01月26日

大門剛明「海のイカロス」

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 大門剛明 著
 「海のイカロス」
 (光文社文庫)


正岡周平は、自然エネルギーとして注目される潮流発電の研究者だ。地元企業の社長・羽藤の協力を得て、水車イカロスの発電実験を成功させた。そんな中、研究仲間・七海の自殺の真相を知った周平は、ある人物への復讐を決意する。周平が思いついたのは、おそらく人類史上誰も考えつかない殺人計画だった。瀬戸内海を舞台に、一途な研究者の完全犯罪劇が幕を開ける。−裏表紙より−


イカロスというのは、瀬戸内海の潮流を利用して発電するための装置のことです。色々と詳しい説明が書かれてはいるのですが、私の理解力の無さ、科学に対するアレルギーもあって、どんな装置なのかイマイチわかりませんでした。形もどんな感じなのかわからなかったので、せめて図解があると良かったのにとは思います。

そのイカロスを潮の流れに設置して、発電することに成功した研究者・周平が起こす、殺人事件がメインに描かれています。

彼がどうして殺人を犯すことになったのか、どんな心境で犯行に及ぶのか、どんな方法を使うのか、殺害後の心境はどんな感じなのか・・を細かく描いていきます。

つまり、犯人を推理するミステリーというのではなく、人間ドラマに近いでしょうか。

彼が研究者なので、かなり理論的に考えて行動を起こすことになり、自分の精神さえも冷静に分析しています。その冷静さが好きになれませんでした。もっと人間臭く、苦しんでもがいて欲しかったです。まあそういう場面もあるのですが、すぐに冷静になる感じが怖い。

殺害方法の細かい部分は読者にもわからなくなっています。それを想像しながら読むのですが、どうやったか説明されてもわからない自分の理解力の無さにがっかりしました。


常に冷静に分析する割には、動機となる出来事が起きてから時間が経って犯行に至ることや、殺人なんていう非合理的なことを実行してしまう弱さや、尊敬していたはずの恩師さえも利用してしまう所が気に入らず。

確かにかなり腹立たしいですし、怒りで我を忘れるのも理解出来ます(想像できます)が、これだけ冷静なら何とか出来なかったかな?と最後まで納得できませんでした。

もっと違う性格の人が主人公なら面白かったのかもしれません。

事件が解決しても、後味が悪い感じでした。


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2019年12月12日

大門剛明「完全無罪」

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 大門剛明 著
 「完全無罪」
 (講談社文庫)


21年前の少女誘拐殺人事件の冤罪再審裁判に抜擢された期待の女性弁護士・松岡千紗。しかし、その千紗はその事件で監禁された少女の一人だった。間一髪で自分を殺めたかも知れない容疑者に千紗は敢然と対峙する。罪を作り出す罪、「冤罪」法廷が迎える衝撃の結末。大ベストセラー『雪冤』を超える傑作。−裏表紙より−


子ども時代に誘拐され、危うく殺害されそうになった経験のある女性弁護士が、その犯人とされている容疑者の冤罪再審裁判に弁護人として法廷に立つことになります。

事件の真相が知りたいという強い気持ちだけで弁護を引き受けることになるのですが、対峙してみて複雑な心境になっていきます。

冤罪だとしたら、真犯人を絶対に逮捕して収監しないといけませんし、今犯人として収監されている人の人生を取り戻す必要があります。

それは必要だとわかるのですが、もしかしたら容疑者がいい加減なことを言っているだけで、実は犯人かも??という可能性もあるので、読んでいてハラハラしました。


なぜ彼女が引き受けないといけないのか? 誰か代わってあげて!という気持ちと、でも彼女以上にこの事件に真剣に向き合える人がいるだろうか?とも思います。

容疑者と話をするうちに、やっぱり真犯人は別にいるのかも?と思うような内容が出てきたり、証拠になるような物や事柄が出てきたりして、じゃあ真犯人を捜さなければ・・と思うことも。

でもその次の瞬間には、やっぱり彼が犯人なんだと思う証拠が出てくるんですよね・・。

その度に、読みながらも二転三転させられてしまいました。


あらすじにあるように最後は衝撃の結末が・・。

裁判を終わらせてそれで終わりという結末だったらためだったのかな?とちょっと悲しい気持ちになりましたし、読んだ後は深いため息が出てしまいました。


ほんと、人が人を裁くって難しいし、責任が重いことだと改めて考えさせられました。裁判員裁判やってみたい!なんて軽い気持ちで言ったらだめですね・・。もし自分が違う判決を出したらと思うと、殺人と同じくらいの罪の重さを感じてしまいそうです。


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2018年02月22日

大門剛明「優しき共犯者」

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 大門剛明 著
 「優しき共犯者」
 (角川文庫)


父から継いだ製鎖工場で女社長を務める翔子は、倒産した製鉄所の連帯保証債務を押し付けられ、自己破産の危機に追い込まれていた。翔子に想いを寄せるどろ焼き屋の店主・鳴川は金策に走るが、債権者の長山には相手にもされない。その矢先、長山が死体となって発見された。捜査に乗り出した刑事・池内は、殺人犯の他に死体を移動させた共犯者がいると推理するが―。情の鎖がすべてを繋ぐ、社会派ミステリの旗手による傑作長編。−裏表紙より−

どういう展開を見せるのか気になって次々読んでいたはずが、意外と終わらず時間がかかりました。

読者には共犯者がだれか?はわかっていますが、肝心の犯人がわからない・・。きっとあの人、と思う度に違っていて、結局誰なんだ?と気になる展開でした。


話の舞台は姫路。昔住んでいた場所なので、懐かしい地名も出てきてそれも楽しめました。でも「どろ焼き」という食べ物は知らなかったな〜。名前がマズそう・・。


債権者が殺害されたせいで、借金をしている人が疑われるのは当然です。容疑者になる女性が地元で人気となれば、彼女のために殺人さえも犯すのでは?という人がたくさんいて、次々と容疑者になっていきます。

でも1人疑われてはアリバイがあって・・を繰り返してなかなか真犯人が見つかりません。

刑事たちの捜査も難航することに。ベテランの刑事は、真相に何となく気づいても踏み込めない感じがありましたし、若い刑事の方は、事件関係者に特別な因縁があるせいで踏み込めない・・。

本当の話であれば、即刻捜査から外されそうな人たちです。


事件自体はすっきりと終わってくれたのですが、それ以外の部分では「それで良いのか??」と納得いかない展開でした。情けをかけるという意味ではこれで良いのでしょうが、果たしてそれがその人のためになるのか?と思ってしまいました。

その人のためにしっかり罪を償わせるという方がすっきり終われた気がします。


連帯保証人というものを見つめなおすには良い話でした。とにかく、どんなに大切な相手でも、安易にハンコを捺してはいけないってことですね。自分だけではなく、家族や周りの人間にも迷惑がかかってしまいますから。


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2016年07月15日

大門剛明「不協和音 京都、刑事と検事の事件手帳」

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 大門剛明 著
 「不協和音 京都、刑事と検事の事件手帳」
 (PHP文芸文庫)


刑事だった父は、本当に冤罪を生んだのか―。京都府捜査一課の川上祐介は、妻を殺したと自白しながら、黙秘に転じた被疑者に手を焼いていた。そこへ、京都地検から「不起訴」の連絡が届く。それを決めた担当検事は、父が違法捜査を疑われて失職した際に別の家の養子となった弟の真佐人だった。不起訴に怒る祐介に、真佐人は意外な一言を返す。刑事と検事の信念がぶつかる連作ミステリー。−裏表紙より−


題名や表紙の雰囲気で勝手に中年おやじたちをイメージしていたので、新人刑事と検事の話だということに驚かされました。後になってみると、なぜ中年だと思ったのか自分でも謎ですが・・。


刑事と検事という2人の兄弟ですが、弟が養子に出たため、名字が違います。刑事である兄も、冤罪を生んだ亡き父とは違う名字なので、あの伝説の刑事”と親子だとは気づかれていませんし、検事の弟とも兄弟とはバレていません。

兄を中心に話は進みますが、兄が捜査を進めて送検するときには、検事の弟がダメ出しをしてきます。しかも、しばらく疎遠だったせいもあって、何だかよそよそしい上に高圧的な態度。

兄はイライラを募らせますが、弟の言うことはかなり的を射ていて、その通りに調べると、被疑者が罪を認めたり真犯人が見つかったり、スムーズに解決できるようになるため、頭の片隅に置いて捜査するようになっていきます。

弟を育てた父は検事だったので、弟は検事の道を選びました。刑事だった実の父を非難するような言動を繰り返しています。それも兄は気に入らないのですが、弟の言動にはどうやら裏がありそうです。

なかなか本心を語らない弟の本心が、シリーズを読み進めたら明らかになっていくのでしょう。その辺りも楽しみですし、何より警察小説は大好きなので、シリーズを追っていきたいと思います。

今回は、弟にやられっぱなしだった兄ですが、いつかひっくり返してくれることにも期待します。


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2014年03月07日

大門剛明「レアケース」

レアケース

 大門剛明 著
 「レアケース」
 (PHP文芸文庫)


市役所に勤める、生活保護担当のケースワーカー・石坂壮馬は、一向に自立しない者や、保護費を詐取しようとする者たちの存在に、制度の矛盾を強く感じていた。そんな中、あくどく稼いでいると評判の者から金を盗み、貧しい人々に金を配る「現代のねずみ小僧」が話題に。ねずみ小僧のやり方に複雑な思いを抱く壮馬だったが、ある日、彼の担当する被保護者が殺されて・・。衝撃の真相が胸を打つ長編ミステリー。−裏表紙より−


どうやら映像化したようです。見ていませんが、帯にあるキャストはちょっとイメージが違う感じはします。

最後まで読んでも、主人公・壮馬のイメージがつかめなかったのですが。外見は何となくイメージができましたが、性格がよくわからず。仕事にやる気がない感じなのに、意外と熱い所もあったり、頼りなさそうにみえて、頼りがいのあるところもあって。

まあ、人って色んな面を持っているものではありますが、なぜか彼の場合は違和感がありました。


壮馬は、ケースワーカーとして働いています。まだまだ新なのですが、担当の保護を受けている人の家を訪問して様子を見ています。彼は、生活保護をもらっている人に対して「甘えている」と考えてしまうので、何とかしてやる気を出させたい、怠けている人の保護は切りたいと常に思っています。

ヤクザのような人に脅されることもありますし、やる気のない人に「死にたい」とぐちぐち言われて「死ねば?」と言ってしまうことも。自殺されて初めて、猛反省するのです。

こうやってあげると、ケースワーカーに向いていない感じがしますが、意外と親身になっている所もあるんですよね・・・。


一方、ねずみ小僧に似た泥棒が出現し、彼の担当する人の所にもお金が届けられることがありました。ねずみ小僧と呼ばれることでわかるように、あくどい商売をして稼いでいる所から盗み、困っている人に届ける泥棒で、マスコミからはヒーローかのように取り上げられます。

ただ、このねずみ小僧を義賊と呼んでしまうのには抵抗を感じてしまいました。あまりお金持ちじゃない所から盗むよりはマシなのかもしれませんが、それでもやはり盗みは盗みであって、それを正当化するわけにはいかないと思います。

盗んだお金で贅沢しなければそれで良いのか?それを困っている人に与えれば、人助けになるのか?色々と疑問に思いました。


生活保護も結局同じことなんですよね。お金を渡せばそれで良いのか?と思います。だからといって、生活保護の制度を止めれば良いとは思いませんが、アフターケアというか、自分で生きていこうと思えるようにするにはどうすれば良いか?を考えてもらいたいと思います。

生活保護について、
調べによると保護要件を満たす人の四分の一くらいしか実際には保護を受けていない。全員が申請して保護を受ければ制度が破綻する。つまり生活保護制度は、真面目な人の矜持と無知な人が支えているのだ。なんともろいことだろう。
と書かれていたのが印象的でした。

本当にもろい制度ですよね。みんなが、最後の最後の手段として考えていかないと、成り立っていかないんですよね。でも、あまりにもがんばりすぎて倒れてしまうのも問題ですし・・・。難しい問題です。


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2013年11月20日

大門剛明「ねこ弁 弁護士・寧々と小雪の事件簿」

ねこ弁

 大門剛明 著
 「ねこ弁 弁護士・寧々と小雪の事件簿」
 (幻冬舎文庫)


最速でスーパーのレジを突破した者に遺産を相続させよ―。奇妙な遺言を残した資産家の謎を解く「レジ待ちオリンピック」。田舎町で案山子が相次いで失踪。その意外な犯人を追う「案山子だけが知っている」など、六編を収録。アイドル顔だが天才的な推理力を持つ小雪と、イケメン顔で不器用な寧々。弁護士姉妹が活躍するユーモア・ミステリ−裏表紙より−


この作家さんの作品は、難しいというか深く考えさせられるような深い内容の物が多かった(私が読んだ物の感想はこちら)ので、今回の話にはかなり驚かされました。

表紙の絵から何となく想像は出来たのですが、どこかで「まさかね・・」という気持ちもあったんです。

というわけで、この本はかなり軽い内容でした。

人質は猫」「レジ待ちオリンピック」「背番号12のカモ」「案山子だけが知っている」「お面の告白」「天空の密室」の6編収録されています。

日常のミステリーで、人が死んだり暴行されたり、という刑事事件のようなものはなく、軽い話ばかりでした。どれもあまり印象に残っていません。


寧々と小雪という姉妹の弁護士が“往診弁護”をしに地方へ出かけていって、謎を解き明かすわけですが、依頼される内容が弁護を必要としないものばかりで、なぜ弁護士に頼んだのか?と疑問に思いました。なぜ弁護士という設定にしたんだろう??私には理解できませんでした。

小雪というのが、表紙の絵にあるようにかわいい服装をして、猫耳なんか付けてしかもそれが似合ってしまうような人物で、でも弁護士で、謎解きも全て彼女がやってしまうほど、頭も良いという設定です。彼女のキャラもついていけませんでした。不思議ちゃんって苦手なんですよね・・・。

姉の寧々も、小雪に振り回されるばかりで何をするわけでもない感じがイライラしました。


こんな感じで、最後まで話に乗りきれずに終わってしまいました。好きな作家さんだけに残念です。

次はユーモアの無いミステリーを読みたいと思います。


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2012年05月31日

大門剛明「有罪弁護」

有罪弁護

 大門剛明 著
 「有罪弁護 負け弁・深町代言」
 (中公文庫)


息子を無罪にしてください―深町の元に持ち込まれたのは、LSDを摂取して男を撲殺した青年の弁護だった。無罪にするには心神喪失を訴えるしかない。深町は事件を調べるなかである事実に辿りつくが、被害者の娘を見て心は揺れる。本当に無罪にしてよいのか。一方、苦悩し法廷に立つ深町を傍聴席から見つめる一人の男がいた・・・。−裏表紙より−


東京を離れ、伊勢に来て一年が経ち、刑事事件の弁護も少しずつ引き受けるようになっていた深町ですが、まだ殺人事件については弁護していませんでした。

そんな彼に持ち込まれたのが、青年による撲殺事件。その父親が東京で出会った深町のことを思い出し、彼の名声に頼るようにして依頼してきたのです。

被告人である青年は、事件当時、麻薬を使っていて意識が無かった・・「だから息子は無罪ではないか?」と父親は言います。目撃者もいるため、青年が殺害したことは疑いようもない事実でした。でも、心神喪失状態だったなら罪には問えない・・これが法律で定められています。

この裁判を引き受けることにした深町は、同僚の実花と共に弁護活動を開始します。事件を調べるうちにわかった事実は意外な物でした。


明らかに罪を犯しているのに、無罪・・・本当にこれで良いのか?深町でなくても悩んでしまう事件です。今回の場合は、病気などで記憶が無いわけではないですし、麻薬を使った時点で無罪とは思えないんですが・・。まあ、これには裏があるわけですけど。

とりあえず、被告人のこともその父親のこともハッキリ言って好感はもてませんでした。本当に人の命を奪ったという罪の意識はある??ちっ(怒った顔) と疑ってしまいました。彼も被害者と言えるかもしれませんが、それでも納得できない所が多かったです。


深町が弁護をする様子は、輝いていた頃の彼を彷彿とさせるようなとてもカッコイイものでした。とはいえ、その頃の彼の姿を知っているわけでは無いですけど・・。でも彼が裁判で堂々と胸を張って意見を述べる様子が目に浮かぶようでした。

順調に見えた裁判でしたが、思わぬ展開を見せます。


裁判を通して苦悩する深町の姿は読んでいて辛かったですし、また潰れてしまうのでは?と心配にもなりました。それでも立上り、また一歩前進してくれたので、ホッとしました。今後の活躍がますます楽しみになりました。

今回こそ、滝川検事との対決が見られると思ったのですが、今回もお預け・・。次回こそ、裁判でガッツリと対決してもらいたいものです。これも楽しみに続きを待つことにします。


<負け弁・深町代言シリーズ>
「ボーダー」
「沈黙する証人」


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2012年05月11日

大門剛明「罪火」

罪火

 大門剛明 著
 「罪火」
 (角川文庫)


レトルト食品工場に勤める若宮は鬱屈を感じていた。花火大会の夜、少女・花歩を殺めてしまう。花歩は母・理絵とともに、被害者が加害者と向き合う修復的司法に携わり、犯罪被害者支援にかかわっていた。13歳の娘を殺された理絵のもとに、犯人逮捕の知らせがもたらされる。しかし容疑者の供述内容を知った理絵は真犯人は別にいると確信。かつて理絵の教え子であった若宮は、殺人を告白しようとするが・・。驚愕のラスト、社会派ミステリー。−裏表紙より−


前回読んだ「雪冤」もそうでしたが、この作品も色々と考えさせられることの多い内容でした。読みながら「自分だったらどうするだろう?どう思うのだろう?」と考えていました。


若宮忍という男性が、被害者の母親に「あなたが娘を殺害したのでは?」と問い詰められる所から話は始まります。若宮の視点で書かれているので、始めに彼が犯人だということがわかるようになっています。

それ以後の話は、被害者の母親・理絵と若宮、二人の視点で語られるので、加害者と被害者のそれぞれの気持ちがよくわかるようになっています。・・が、それが逆に話の流れをわかりにくくしている部分もありました。


話の中に出てくる“修復的司法”・・初めて聞いた言葉でした。簡単に言うと「被害者が加害者の謝罪を受け入れることで癒される」という考えのことです。日本では“応報的司法”が中心で「被害者は加害者が刑罰を受けることによって癒される」という考えです(この解釈で合ってるのか心配ですが)。

私は、加害者、被害者どちらの立場にもなったことがないので、当事者になったらどう思うのか全くわかりませんが、自分がもし被害者なら簡単に謝罪を受け入れることはできない気がします。受けた被害の大きさにもよるのでしょうが・・。

でも加害者になったら謝罪を受け入れて欲しいと思うでしょう。勝手なものです。


話の最後には、あらすじに書かれているように驚愕のラストが用意されています。ちょっとそれらしい雰囲気はありましたが、私は驚かされました。驚きと同時に納得できる部分もありましたが。

終わり方はある意味さわやかというか、ほっとした気持ちになれました。問題が全て解決したわけではありませんけど、それでも明るい未来が見える感じで良かったです。


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2012年04月23日

大門剛明「雪冤」

雪冤

 大門剛明 著
 「雪冤」
 (角川文庫)


15年前、京都。男子学生と十九歳の女性が殺され、一人の男が逮捕された。元弁護士の八木沼悦史は、死刑囚となった息子・慎一の冤罪を信じ、一人活動をしていた。だが、息子は面会を拒絶、弁護士に無罪を訴える手記を手渡す。一方、殺された女性の妹・菜摘に、真犯人を名乗る人物・メロスから電話が。メロスは悦史に自首の代償として五千万円を要求するが―。驚愕のラスト、横溝正史ミステリ大賞の傑作・社会派ミステリ!−裏表紙より−


この本を勧めて下さった方が「小難しい」とおっしゃっていましたが、確かに「小難しい」・・文章とか内容が理解できないという意味ではなく、定義された問題が「小難しい」んです。「小難しい」よりももっとずっと難しくて深く考えさせられる内容でした。


二人を殺害した罪で死刑判決を下された息子の無罪を信じ、再審してもらうために父親の八木沼は一人でビラ配りなどしていました。息子の死刑がいつ執行されてもおかしくない状況に怯えながら。

弁護士を通じて息子と面会できるように働きかけていましたが、事件前から関係がぎくしゃくしていたせいか、息子は自分との面会を頑なに拒んでいました。

被害者遺族の菜摘は姉を殺した慎一のことを憎みながら、でも心のどこかで彼のことを信じたいような気持ちもあり、複雑な心境で毎日を過ごしていました。そんな菜摘の元にかかってきた一本の電話・・。「メロス」と名乗るその男は「自分が真犯人だ」と言います。

メロスからの電話は、八木沼の所にもかかってきます。メロスは証拠となる凶器のナイフを持っていると告げるのです。


あらすじもうまく書けないような深い内容の話でした・・。あまり書きすぎるとネタばれにもなってしまいますし。難しいです。

真犯人を名乗るメロスが誰なのか?が二転三転し、作者の思惑通りに転がされた感じがしました。一応、真犯人とその動機がわかったときにはイマイチ納得ができませんでした。そんな理由でなぜ慎一は罪をかぶったのか・・。動機が弱い気がしたんですよね。でもまだ最後にもう一つ真実が残されていました。そこでやっと少しは理解できた気がしました。

ただ、人って「死」を目の前にしてもそこまで強くいられるものなのだろうか?とは思いますが。

八木沼の息子を思う気持ちが痛々しくて辛くて、何度も泣いてしまいました。だからこそ、慎一のとった行動が辛かったです。


全体を通して語られるのは「死刑は必要か?」ということ。八木沼は息子が捕まる前から死刑廃止論者でした。息子が逮捕されたことでそれはより強くなったわけですが、やはり被害者遺族のことを考えると強くも言えません。

被害者遺族の菜摘はもちろん慎一の死刑を望んでいましたが、それは本当に正解なのか?と色々な人から諭されます。その度に「被害者の気持ちをないがしろにしている」と怒りをあらわにしてしまいます。


「死刑は必要か?」・・難しい問題です。私はこの問題について何かを語れるほど、死刑制度について知っているわけではありません。なので一概にどちらとも言えません。ただ、この本を読んで「必要か、必要でないか」を考えることだけでも大切だということはわかりました。

被害者遺族にも加害者側の関係者にもなったことがないので、当事者になった時にはきっと考えは変わることでしょう。でもどちらでもない状態ででも「死刑判決を下す」とはどういうことなのか、責任をもてるのか・・そういったことを考えないといけないと思わされました。

まだ、全く結論も出ませんが・・。裁判員裁判も行われているわけで、自分もいつ呼ばれるかわからないのですから、そのときになって慌てないようにきちんと考えて自分の中で答えを出しておくことは大事だと思います。


なかなか重い内容の話でしたが、読んで良かったです。


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2012年03月05日

大門剛明「沈黙する証人」

沈黙する証人

 大門剛明 著
 「沈黙する証人 負け弁・深町代言」
 (中公文庫)


深町が勤める負け組法律事務所に、ひき逃げ事件の容疑者が飛び込んできた。泥酔していたため記憶はないが、自分は運転しておらず無実だと訴える。相手は敏腕で知られる滝川検事。どう見ても勝ち目のない戦いなのに、松月所長は弁護を引き受ける。人の良さに呆れる深町だったが、松月の信念は事件の意外な真相を照らし出す・・・。−裏表紙より−


前作では実花の保護者状態でフワフワしていた松月所長が活躍を見せてくれます。

初めに依頼人の話を深町が聞いたときには、依頼人の有罪はわかりきっていて、この弁護を引き受けても負けることが決まっているような話でした。深町は断ったこの弁護の依頼を、松月所長は引き受けました。

あまりの人の良さに呆れる深町でしたが、所長は今までと違い、異常な冴えを見せて、容疑者の無罪を確信し始めたようで・・・。

別の弁護依頼で動いていた深町と、所長の事件が何か繋がりがあることもわかり、刑事事件は引き受けないつもりの深町も覚悟を決めて、所長の裁判を手伝うことになりました。


今回も深町弁護士の心の傷が少しずつ明らかになってきます。彼がなぜ、刑事事件の裁判を引き受けなくなったのか。思ったよりも深い傷だったのだとわかりました。

でも、所長の人柄や、スーパー事務員・和田さんの叱咤激励、実花の一生懸命さなどに影響され、深町が変わっていくのは良いことですし、今後もこのシリーズを読みたいと思わせる所です。


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2012年03月02日

大門剛明「ボーダー」

初めましての作家さんです。

ボーダー

 大門剛明 著
 「ボーダー 負け弁・深町代言」
 (中公文庫)


テレビでも人気の若手弁護士・深町代言は、ある事件をきっかけに東京を去る。流れ着いた伊勢で所属したのは、志は高いが裁判で勝てない“負け弁”が集まる貧乏法律事務所。刑事事件への情熱を失った深町だが、ニート強殺事件の被告人の無罪を信じる同僚・実花の窮地に再び立ち上がる。−裏表紙より−


背が高くて、高そうなブランドスーツがよく似合う・・というなかなかカッコイイ感じの深町弁護士。彼は心に傷を負って逃げるように東京から伊勢にやってきました。

今働いているのは、伊勢にある「外宮前法律事務所」です。所長の松月は人がよすぎるせいか、裁判で負けてばかりいます。更に金もうけが下手過ぎるため、貧乏な事務所になっています。そこへ現れた救世主が深町弁護士。彼はとても優秀で、裁判で負けることは無く、しかも弁護士をビジネスとして捉え、事務所の資金を増やしていっています。

この事務所には松月の他に、彼の姪でもある弁護士の中里実花、そしてスーパー事務員の和田さんがいます。頼りない所長を助けて頑張る二人の姿は好感もてました。特に和田さんはカッコよすぎです。


まだまだ新人の実花が担当していたニートによる強殺事件。彼女は被疑者と接見するうちに、彼の無罪を確信するようになります。被疑者に肩入れするあまり、冷静になれていないのでは?と心配した深町は何度も彼女に言葉をかけます。

そして、始まった裁判員裁判。順調に見えた実花の弁護でしたが・・・。

この事件を調べ、実花を助けていく深町は少しずつ変化をみせます。


彼の過去の傷については、時々垣間見える程度で、最後まできちんと明かされることはありませんでしたので、きっと続きで明らかになっていくんでしょう。

民事の裁判について細かい描写もあって、あまり知ることのない裁判の様子が新鮮でしたし、面白かったです。民事って地味なんですね〜。

物語の舞台となっている伊勢市の描写も素敵でした。

続きが楽しみなシリーズです。


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posted by DONA at 11:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:大門剛明