2012年10月15日

辻村深月「ツナグ」

ツナグ

 辻村深月 著
 「ツナグ」
 (新潮文庫)


一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員・・・ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連絡長編小説。−裏表紙より−


「使者」と書いて「ツナグ」と読みます。物語を読めば感心する、素敵な読み方です。

ツナグとは、死者と生きている人を、一晩だけ再会させてくれる人のことです。

心の支えだったアイドルに会いたい女性、母親に会いたい息子、親友に会いたい女子高生、失踪したままの婚約者に会いたい男性、という4人が、会いたい死者と再会するためにツナグに依頼します。

満月の夜に、夜が明けるまでという短い時間だけ再会できる。その短い時間でどんなことを語り合うのか?


それぞれが死者と会って語り合い、ツナグに感想を述べる所まで書かれています。ただ、それだけでは彼らのその後がわからず自分で想像するしかないのか・・とちょっと残念な気持ちになりました。

それが、最後の話を読んで解決されました。

最後の話は、依頼者側ではなく、ツナグ側の話になっていて、どんな気持ちで依頼を受けて、どんな気持ちで会わせたのか、更に感想を聞いてどう感じたか?など、知りたかったことが書かれています。依頼者たちのその後も書かれていて、読んでスッキリできました。

最後の話が一番感動しましたし、一気に涙が出ました。


ツナグに依頼して死者と会えるのは、一生に一回だけ。死者の側も一回だけと決められています。どちらも一度誰かに会ってしまうともうどんなに願っても会えない・・・。

私なら誰と会うかな?とか、私が死んだら誰か会いたいと思ってくれるかな?とか考えながら読みました。

身近な人が亡くなった経験がある人はきっと感動することでしょう。幸い、私はそういう経験がまだないので感動は少なめだったかもしれません。

それでも、最後まで面白く読むことができました。映画は見ないと思いますが、原作は読んで良かったです。



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2012年02月29日

辻村深月「スロウハイツの神様 下」

スロウハイツの神様 下

 辻村深月 著
 「スロウハイツの神様 下」
 (講談社文庫)


莉々亜が新たな居住者として加わり、コーキに急接近を始める。少しずつ変わっていく「スロウハイツ」の人間関係。そんな中、あの事件の直後に百二十八通もの手紙で、潰れそうだったコーキを救った一人の少女に注目が集まる。彼女は誰なのか。そしてたまきが受け取った一つの荷物が彼らの時間を動かし始める。−裏表紙より−


上巻の終わりがとても気になる感じで終わっていたのですが、その部分は結構あっさりスル〜・・あせあせ(飛び散る汗) 何事も無かったように下巻が始まり「何か読み飛ばしたか?」と不安になりました。まあ、しばらくしたら理由はわかるんですけどね。

上巻ではスピードが上がらなかったのですが、下巻の後半になってどんどんスピードアップしました。特に、コーキの物語になったときはものすごく入り込んで読んでしまいました。

何度も泣きそうになりながら・・。家で読んでいたらきっと泣いていたでしょう。こういう切ない物語には弱いです。

あまり好きになれないと思っていた環のことも気づけば好きになっていましたし、何よりも黒木のことは最後に見直して惚れてしまいそうになりましたたらーっ(汗)


環みたいに自分の人生を変えてしまうような、人生を掛けても良いくらい好きな作家に出会うのってすごくうらやましいです。私も好きな作家さんはたくさんいますが、人生が変わることはなかったので・・。

学生時代に読むべきだった青春小説を大人になってから読んでいるようじゃダメですね。時代小説も学生だった私にとってもそれなりに面白かったですが、難しすぎたのかもしれません。もっと色んなジャンルを読むべきだったのかも。これから色んな作家さんや作品に出会ってドキドキしたりワクワクしたりできたら良いな。


辻村さんの作品、また少し間を空けて読むことにします。他の作品に出ていた人物が出てきているのに気づかなかったので、本当は続けて読んだ方がより楽しめるんでしょうが、読み終わったときに何だか疲れてしまうんです。心地良い疲れではあるんですが。


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2012年02月27日

辻村深月「スロウハイツの神様 上」

スロウハイツの神様 上

 辻村深月 著
 「スロウハイツの神様 上」
 (講談社文庫)


人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ―あの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。−裏表紙より−


この作家さんの作品は3作目ですが、それまで読んだ2作と違い、どうにも読むスピードが上がりませんでした。登場人物たちに感情移入できなかったのが原因だと思います。更に、話の方向性がわからないのも原因かもしれません。でも、方向性がわからないから気になってスピードが上がるときもあるわけですから・・。

もう一つ考えられる原因は、話の視点がわかりにくいこと。アパートの住人の一人である狩野の視点で話が進むことが多いのですが、その狩野の視点のまま、彼のことを客観的に見たような書き方もされていて、それが一瞬、話から現実に戻す気がするんです。うまく説明ができませんが・・。


「スロウハイツ」と名付けられたアパートに同居している人たちの話です。オーナーである赤羽環が友人たちに声を掛けて、同居することになりました。

狩野、正義、スーという環の友人たち、そして、人気作家のチヨダ・コーキ。更にコーキのマネージャー黒木。しばらく一緒に住んでいた円谷は事情があって出て行きました。その後に来たのは今時のファッションをした綺麗な女性。

アパートに住めるのは環が認めた人物だけ・・だったはずなのに、どうして彼女が環の目にとまったのか?・・その謎は最後の方で少し解けるのですが、どうやら彼女には他にも謎がありそうな雰囲気です。


上巻はとても気になる所で終わっています。下巻を読めばこの物語がどこへ向かうのかもわかってくるだろうと期待しつつ、続きも読むことにします。



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2011年10月26日

辻村深月「凍りのくじら」

凍りのくじら

 辻村深月 著
 「凍りのくじら」
 (講談社文庫)



高校生の理帆子は、5年前に失踪した父親が好きだった、藤子・F・不二雄や彼の描く作品「ドラえもん」に影響を受けて育ってきた。理帆子は藤子先生がSFのことを「少し・不思議」な物語だと言っているのを知り、日常で出会う人たちに「スコシ・ナントカ」と当てはめるようになった。ある日、図書館で読書していると1人の青年から「写真を撮らせてほしい」と声を掛けられた。


この作家さんの作品は2作目なのですが、1作目が怖かったのでずっとドキドキしながら読み進めました。でも、今回は読みながら話がどんな流れになっていくのかがわからず、ジャンルも何になるのかがわからず、それが気になったこともあって一気読みでした。


理帆子は自分に「少し・不在」と付けていました。どこにいても誰といても自分がそこにいないような、少し離れてみているような所があるから・・という理由です。誰に対しても少し距離を置いている感じがして、なかなか本気になれない。

そんな彼女は私と共通点が多くて、ずっと共感しながら読み進める感じでした。私もいつもちょっと離れて見ているところがあって、みんなが「わ〜っ」と盛り上がっていても、そこまでテンションが上がらない・・。たまに自分がハイテンションになっていても頭の隅で「アホみたい」なんて思ってる。人に対しても「こんなこと言ったら傷つくから言わないでおこう」とか「そんなに熱心に言ってあげても仕方ないか?」とか冷静に見てるところがあります。彼女と違うのは頭が良い所と美人な所。そこが良いのに違うなんて残念な感じですバッド(下向き矢印)


理帆子の母親は長い間入院しています。余命宣告も受けていて、母親の病院に見舞いに行くのですが、母親との関係はあまり上手くいっていません。特別険悪というわけではないのですが、何でも話せる関係というわけではなく、お互い気を使い合っているように見えました。

理帆子に写真を撮らせてほしいと声をかけてきた青年・別所は、不思議な人で、いつも距離を置く理帆子が気づけば自分の正直な気持ちや考えを語ってしまっているのです。彼の影響で理帆子も写真を撮るようになりました。彼にはある秘密があって・・。

理帆子には元彼がいて、彼から連絡があるとつい出掛けて行ってしまいます。その彼がどんどん変化することに驚きと不安と少しの期待を持って見つめる理帆子ですが、彼は思わぬ方向へ変わっていきます。この彼が腹が立つ奴なんですパンチ なんで理帆子はいつまでも縁を切らないのか、読んでいてイライラしました。

そして話は大きく動く・・。


章ごとに「ドラえもん」に出てくる素敵な道具の名前がつけられていて、それに関係のある話が書かれています。そこまでドラえもんに詳しくない私でも楽しめるようにきちんと説明があり、実際にその道具が出てくる話を読んでみたくなりました。

途中、号泣しながらも最後まで読み、何だか大きくため息をつきたくなるような気持ちになりました。ずっと暗い雰囲気で進む話なのに、最後は一気に光が差し込んだ感じ。

この作家さんはそういう話が多いのかな? 今回みたいに怖くないなら、他の作品も読んでみようと思います。


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posted by DONA at 11:55| Comment(4) | TrackBack(0) | 読書:辻村深月

2011年08月08日

辻村深月「冷たい校舎の時は止まる 下」

冷たい校舎〜 下

 辻村深月 著
 「冷たい校舎の時は止まる 下」
 (講談社文庫)



冷たい校舎に閉じ込められた生徒たちは、2ヵ月前に校舎の屋上から飛び降り自殺したクラスメートのことを思い出せずにいた。そして、次々消えていく生徒たち・・。再び時計は動き始め、5時53分が来る度にチャイムが鳴り響く・・。自殺したのは誰なのか?どうしてこのメンバーが閉じ込められたのか?


生徒が1人消える度にチャイムが鳴る・・なんて怖い!下巻に入ってもしばらく怖さは続いていましたバッド(下向き矢印) でも読むのが止められない!


閉じ込められた8人は「この中に自殺した者がいる」と推理していました。その自殺者の造った世界に閉じ込められているんだというわけです。でもこの中に自殺者がいたら、2か月前からほとんど何も感じていなかったことはおかしいのでは?という疑問もありました。それだけ彼らは仲が良かったのですから。

お互いに「この子じゃないか?」と予想しながらも誰が自殺したのか思い出せないメンバーたち。そして、思い出せたときに、消えてしまう・・。1人ずつ消える前にその人物の半生とか、考えや性格なんかが描かれていて、それぞれの個性が出てきます。

ただ、特別な子はいません。みんなどこか「その気持ちわかる!」と共感する部分があるような一般的な子たち。まあ成績は一般よりも良いんですけどね。


彼らの半生というか、考えを読んでいると、学生時代って学校が全てだと思い込みがちだな・・と思い出しました。クラスの人たちから無視されても、クラスが変われば終わるし、卒業したら終わる・・と学生を卒業したら思えるのに、そのときは絶望的な気分になってしまう。成績が悪いからって、今後の人生に大きな影響は無い(まあ、成績がいつまでも付いて回る職業もあるでしょうけど)。でもそんなこと学生のときは思えないんですよね。自殺するほどの悩みじゃないことに気づいて欲しい!と何度も思ってしまいました。

私の周りで自殺した子はいませんでしたけど、もしクラスメートが自殺したら・・と考えると怖いですね。「自分に責任は無かった」と言いきれる関係ではありませんし。気付いてあげられたら・・ときっと後悔するでしょうし、いつまでも心の傷となって残りそう。深月ほど弱くは無いと自分では思いますが、彼女のように落ち込んで体調を崩して壊れてしまわないとは言い切れませんし、彼女の様子は見ていられないくらいでした。読んでいて苦しかったです。


さて、私の推理ですが・・。やはり外れました!!まあ、伏線は本当に伏線でしたけど、推理する方向が違っていた感じ?? 下巻の途中で「もしかして・・」と思ったのが当たりましたけど、推理とかもうどうでも良くなるくらい、苦しくて悲しくて、でも最後は明るい光が見えたような、色んな感情が噴き出してくる話でした。


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posted by DONA at 11:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書:辻村深月

2011年08月06日

辻村深月「冷たい校舎の時は止まる 上」

初めましての作家さんです。

冷たい校舎〜 上

 辻村深月 著
 「冷たい校舎の時は止まる 上」
 (講談社文庫)



初雪が降った朝、寒さに震えながら登校した高校生たちが、学校閉じ込められてしまった。その日登校したのは8人だけ。全ての時計が5時53分で止まっていて、携帯は圏外、固定電話も繋がらない状態。孤立してしまった8人は、2ヵ月前に自殺したクラスメートの顔も名前も忘れてしまっていることに気づいた・・。


いきなり話の冒頭で辻村深月という女の子が出て来た時はどうしようか?と思ってしまいました。初っ端から躓いてしまって・・。私、作家の名前がそのまま使われるのって好きじゃないんですよふらふら 何か、話に入れない気がして。現実に戻される感じがするのかな?・・でも、話に出てくる辻村深月は女子高生で、作家本人っぽくは無かったですし、だんだん気にならなくなりました。


寒い日に登校したら、生徒が8人しか来ていなくて、先生も1人もいない。しかも、学校内部に不思議な所がたくさんありました。誰も来ないから帰ろうとしたところ、ドアがどこも開かないことに気づきます。

そして、時計は5時53分で止まっていました。それは2ヵ月前にクラスメートの1人が校舎の屋上から飛び降りた時間でした・・・。でもなぜか8人ともその自殺した子の名前も顔も性別さえも思い出せないことに気づきます。


特に前半、すごく怖くて困りました。これってホラーなの??って思うくらいあせあせ(飛び散る汗) 私、本当に怖い話ダメなんですよねもうやだ〜(悲しい顔) ヤバイな〜と思っていたら案の定、夢に出てきたふらふら 怖いから早く謎が解けてほしくて次々読み進めることになり、ページ数の割には早く読めました。

話の視点が誰なのかわからないときがあって混乱することもあったんですが、それも徐々に慣れてきたので、今後はもっとペースアップしそうです。


今の所、自殺したのが誰か?は話の中ではわからないようになっているのですが、私なりに一応予想しています。いつもなら直感で犯人を予想するのですが、今回はきちんと理由というか、伏線らしき物を見つけたので、当たっているかも? まあ、外れても気にしませんけどわーい(嬉しい顔)


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posted by DONA at 11:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書:辻村深月