2024年09月06日

池井戸潤「シベリアの陰謀」

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 池井戸潤 著
 「民王 シベリアの陰謀」
 (角川文庫)


「新種のウイルスだそうです」第二次内閣を発足させた総理大臣・武藤泰山のもとに驚愕の報せが飛び込んだ。人を狂暴化させる謎のウイルスに、内閣最大の目玉であるマドンナこと高西麗子環境大臣が感染したというのだ。しかも感染源はシベリアとの情報が。急速な感染拡大、陰謀論者の台頭で混乱に陥った日本を救うべく、泰山はバカ息子の翔、秘書の貝原と共に見えない敵に立ち向かう!笑撃の政治エンタテインメント、待望の続編。−裏表紙より−


数年前に猛威を振るった(今も続いていますが)新型コロナウィルスを思い浮かべてしまう題材です。


初めて国内で確認された時、現実の政治家もこんな風に考えていたのか?と思うと、情けなくなります。

その中では、総理大臣はしっかり考えてくれているなと思えましたが、現実ではどうだったのか? そこはわかりませんが、この作品ではいち早く専門家を呼んで話を聞いて精査して、自分の責任の下で国民に自粛を要請していました。

ここまで考えてくれるのであれば、着いて行こうか?と思えます。


ただ、総理大臣がしっかり考えて行動していても、周りの政治家が止めに来るんですよね。派閥や後援者たちの思惑があるので、気持ちはわからなくもないですが、国民の健康の心配よりも保身ばかり考える人が政治家で良いのか?と腹が立ってきます。

現実の日本もこんな感じだったんだろうと思うと情けなくなります。よく乗り切ったものです。


しっかりした総理大臣の息子なのに、何とも考えの浅い息子・翔も一応活躍しますし、彼なりに正義感が強くて面白いです。言動がどうにも軽くて好きになれないキャラですけど、意外とこういう人が国を動かすと良いのかもしれないとも思います。

結構、何を言っても許されるかも??


秘書たちも良いキャラですし、彼らの活躍がまた読んでみたいです。続編出るかな?



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2023年11月15日

池井戸潤「アルルカンと道化師」

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 池井戸潤 著
 「アルルカンと道化師」半沢直樹
 (講談社文庫)


東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹に風変わりな案件が持ち込まれた。大手IT企業が、業績低迷中の美術系出版社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗するが、やがて背後にひそむ秘密に気づく。半沢の推理が冴え物語が反転する、国民的大人気シリーズ「エピソードゼロ」。−裏表紙より−


シリーズ5作目。あらすじを読んでびっくりしましたが、「エピソードゼロ」ということは、時系列的には1作目より前ということだそうです。

読み終わっても気づかなかった・・。どれだけ適当に読んでいるのかがわかりますね。

1作目を読んだのが2011年なので、12年前!? 覚えていないはずです。

登場人物の名前や役職なんかをしっかり覚えていれば気づいていたのかもしれません。同期の渡真利くらいしか覚えていませんから。

まあ別に時系列を勘違いしていても困らなかったですけどね。



今回の半沢は融資課長として大阪西支店に在籍し、頼りないというか我儘な支店長に振り回されています。地元で大事な行事に参加しない支店長に「代わりに参加してこい」と言われて何度も参加することになり、その度に町の重鎮たちから叱られる。それを報告しても支店長は気にせずまた不参加のくり返し。サラリーマンって大変だとこんなところで思ってしまいました。

その点についてもそのままで終わるわけはなく、大問題に発展するわけですが。今回はやり返しが2回って感じです。


本題はとある出版社に持ち上がった買収話。美術系の出版物を扱うこの会社は資金繰りが厳しくて、銀行に融資を頼もうとしています。半沢が担当しているわけですが、そんな会社を買収したいという話が出てくれば、半沢でなくても不思議に思いますよね。

どこの会社が言い出しているのかも秘密にされてしまうのですが、同期の渡真利から大手IT企業の名前が知らされます。あまりにも畑違いなのでますます疑問に思う半沢。甘い言葉や条件ばかりをちらつかせるIT企業を調べるうちに思いがけないことが発覚します。

融資を通すための稟議書も作らないといけませんし、そのためにどうやって経営を改革して会社を建て直していくか?も考え、更には買収先の問題も調べて解決して・・と本当に大忙しです。

銀行員がここまでしないといけないとしたら本当に大変ですね・・私には一生やれないですし、やりたくもないです。このシリーズを読んで、半沢が理不尽な目に合うのを見る度に、銀行員が出世したがるわけだ、と納得します。偉くならないと思い通りに進められませんからね。

半沢も課長だから支店長らにいいようにこき使われますし、彼らの思い通りに進めるためだけに妨害されたり、上層部にチクられたり。本当にやってられない!って感じです。課長ではまだまだダメですね。


今回は半沢の倍返しよりも、題名にもなっている絵画のアレコレの方が面白かったです。面白いというか、悲しいような羨ましいような不思議な感覚になりました。こんな関係を築ける人が見つかるのはある意味とても羨ましくなります。でも悲しいな・・・。

ネタバレになるので書きません。ぜひ読んでみてください。


<バブル入行組シリーズ>
「オレたちバブル入行組」
「オレたち花のバブル組」
「ロスジェネの逆襲」
「銀翼のイカロス」


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2021年11月17日

池井戸潤「下町ロケット ヤタガラス」

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 池井戸潤 著
 「下町ロケット ヤタガラス」
 (小学館文庫)


宇宙(そら)から大地へ――。 大型ロケット打ち上げの現場を離れた帝国重工の財前道生は、準天頂衛星「ヤタガラス」を利用した壮大な事業計画を立案。折しも新技術を獲得した佃製作所とタッグを組むが、思いがけないライバルが現れる。 帝国重工社内での熾烈な権力争い、かつて袂を分かったエンジニアたちの相剋。二転三転するプロジェクトに翻弄されながらも、技術力を信じ、仲間を信じて闘う佃航平と社員たち。信じる者の裏切り、一方で手を差し伸べてくれる者の温かさに胸打たれる開発のストーリーは怒濤のクライマックスへ。 大人気シリーズ第4弾! この技術が日本の農業を変える――。−裏表紙より−


前作の続きです。

前作で、新たな道を進み始めた佃製作所。佃社長を支えてくれていた人が去った代わりに、心強い腕が確かな技術者が仲間になりました。

切り離されそうになった帝国重工とも新たなプロジェクトをスタートさせることになり、新しい技術者を中心に新たな開発が始まりました。前作ではほとんど開発の話は出てきませんでしたが、今回はたっぷりと。

開発に苦しむ姿も、完成して自信に満ち溢れる様子もたくさん見ることができました。


そして、去って行った人も何度も登場して、辞めてからも佃製作所をサポートしてくれたのが嬉しかったです。彼の人生はこれで良かったんだろうと最後には思えることが出来ました。


新たな開発は当然ながらスムーズにいくはずもなく、佃製作所としてはしっかりしたものを作っていても、ライバル会社からの横やりや、妨害を受けて時々くじけそうになってしまいます。

読みながらちょっとハラハラするのですが、この作家さんなら勧善懲悪というか、佃製作所のような中小企業に味方してくれて、最後にはスッキリ爽快、大逆転があるはずと信じることが出来るので読みやすかったです。


この中に出て来た技術は現実世界にもあるのか?は知りませんが、この技術があれば農業の未来も少しは明るくなるのかもしれません。もっと自然災害のような避けられない事態を回避できるような技術があると良いんですけど。猛暑だったので野菜が高騰とか、雨が多くて日照時間が短かったので野菜が高騰とか、台風直撃とか、そういうことも無いように安定して供給してもらえると消費者側も助かりますし、生産者も収入が安定して、農業をしてみようと思う人も増えそうです。


きっと現実世界でも研究開発されているのでしょうね。早く実現してもらいたいものです。


<下町ロケットシリーズ>
「下町ロケット」
「ガウディ計画」
「ゴースト」


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2021年11月09日

池井戸潤「下町ロケット ゴースト」

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 池井戸潤 著
 「下町ロケット ゴースト」
 (小学館文庫)


ふりかかる幾多の困難や倒産の危機。佃航平率いる下町の中小企業・佃製作所は、仕事への熱い情熱と優れた技術力を武器に、それらを乗り越えてきた。しかし、佃製作所の前にかつてない壁が立ちはだかる。 同社技術力の象徴ともいえる大型ロケットエンジン部品の発注元、帝国重工の思わぬ業績不振。さらに佃の右腕にして、信頼を置く番頭・殿村に訪れた転機――。 絶体絶命のピンチに、追い詰められた佃が打開策として打ち出したのは、新規事業であった。新たな難問、天才技術者の登場、蘇る過去と裏切り。社運を賭した戦いが、いま始まる。大人気シリーズ第三弾!−裏表紙より−


シリーズ3作目。1作目ではロケットの部品を作って、ロケット開発に一役買って大活躍し、2作目では心臓弁の製作に携わって医療の道を開拓し、経営危機が訪れる度に新たな製品を作って乗り越えて来た佃製作所。

今回はせっかくロケットエンジンの部品を納入していた相手である帝国重工が経営不振による事業の縮小を始めたせいで、部品も要りませんということに。心臓弁はあるけどそれだけでは売り上げが落ちますし、大きな取引先を失いかねない状況に焦りを覚える佃社長。

よくもまあ次々と問題が起きるもんだ、と飽きれてしまいますけど、実際の町工場でもここまでではないにしてもこれに近い状況はあるのでしょうね。そう思うと大変です・・。経営者にはなりたくないなと思ってしまいます。

ロケット部品に代わる物を開発しようと考えた佃は、農業に目を付けます。トラクターの部品を作れないか?と考えたわけです。

確かに人手不足の農業には、人に代わって作業をしてくれる農機が必要になってくるわけで、これからはもっと開発していかなければならない分野ではありますね。


その開発の過程で、ある企業と出会います。その企業はまだ新しいのですが、確かな技術をもっていました。ただ、特許技術を侵害しているということで訴えを起こされようとしていました。

そのため、資金を出してくれる所を探していたタイミングだったので、佃製作所が弁護士を紹介したり、特許侵害の部分を究明したり、協力していきます。

細かい内容は読んでいてもわからないところがあったのですが、裁判に勝つためやれることはやっておこうとするのはわかりました。佃の技術者たちと協力して何とか乗り越えたのですが・・・。

最後に大きなどんでん返しがあってびっくり。


今回、4巻も同時に発売されたので、どうしてかな?と思っていたら、今回の巻ではものすごく気になる終わり方になっていて、つ・づ・くの状態でした。

3巻を読み始めたら4巻まで一気に読みたくなるのは間違いないので、2冊とも手に入れてから読み始めることをお勧めします。


<下町ロケットシリーズ>
「下町ロケット」
「ガウディ計画」


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2019年02月08日

池井戸潤「下町ロケット ガウディ計画」

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 池井戸潤 著
 「下町ロケット ガウディ計画」
 (小学館文庫)


ロケットエンジンのバルブシステムの開発により、倒産の危機を切り抜けてから数年―。大田区の町工場・佃製作所は、またしてもピンチに陥っていた。量産を約束したはずの取引はあえなく打ち切られ、ロケットエンジンの開発では、NASA出身の社長が率いるライバル企業とのコンペの話が持ち上がる。そんな時、社長・佃航平のもとに、かつての部下からある医療機器の開発依頼が持ち込まれた。「ガウディ」と呼ばれるその医療機器が完成すれば、多くの心臓病患者を救うことができるという。ロケットから人体へ―。佃製作所の新たな挑戦が始まった。−裏表紙より−


佃製作所のシリーズ2作目。このシリーズも大人気ですね。この作家さんにしては、めずらしく銀行も絡まず話が進められました。

大企業ではなく「町工場」でロケットの重要な部品が作られ、その部品のお陰でロケットが打ちあがるという壮大なお話だった1作目。


確かな技術力さえあれば、大手にも負けない!かっこ良い集団である佃製作所ですが、またピンチに陥っています。


量産するはずの部品の取引が打ち切られ、ライバル企業とのコンペをすることに・・。相手はNASA出身の社長がやっている企業。それだけでもかなり不利な状況。相手との差をどこで出していくかが問題なのですが、佃側としては、やはり正確性です。

でもそれだけでは「NASA出身」の看板に勝つには弱い・・。悩んでいた所へ、元部下から医療機器の開発依頼が。それが「ガウディ」です。

多くの心臓病患者を救えるというその機器が作れれば、社会貢献にもなる上に、新たな道も開けます。とはいえ、今までとは全く違うジャンルへの挑戦。なかなかうまくいきません。

社長の佃は、信頼できる若手の社員に任せ、彼らのがんばりを見守っています。そして、戦うべきときは戦うその姿勢にまた惚れ惚れしてしまいました。


もちろん、ライバルのことは蹴散らすわけですが、それまでの紆余曲折から目が離せない展開が続き、読み応え十分でした。

まだ彼らの話は続いているようです。出来れば困難は少ない方が良いですが、難しい問題であればあるほど読みごたえはアップするので、複雑な心境になります。

文庫化を待って読むことにします。


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2018年02月02日

池井戸潤「銀翼のイカロス」

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 池井戸潤 著
 「銀翼のイカロス」
 (文春文庫)


出向先から銀行に復帰した半沢直樹は、破産寸前の巨大航空会社を担当することに。ところが政府主導の再建期間がつきつけてきたのは、なんと500億円もの借金の棒引き!? とても飲めない無茶な話だが、なぜか銀行上層部も敵に回る。銀行内部の大きな闇に直面した半沢の運命やいかに? 無敵の痛快エンタメ第4弾。−裏表紙より−


半沢直樹のシリーズも4作目になりました。花咲舞のシリーズとほぼ同時に発売されて両方手に入れたのですが、一気に両方読んだら混乱しそうなので、こちらは後回しにしました。


今回の半沢は、出向から銀行に戻って来ています。

そしていきなり担当することになったのが、ある航空会社。赤字続きで、どうすれば経営が上向くのか色々案を出すことになります。でも、古い体質が抜けない会社なので、なかなか思い切った改革もできず、悩みはつきません。

そんなとき、今度は政府までが口を出してきます。

数年前にあった“仕分け”っぽい話が出てきます。女性議員が改革に乗り出す感じで話は進むのですが、その部分もあの女性議員が頭に浮かびます。

経営破綻寸前の航空会社も実在のあの会社かな?と浮かびますし、現実に近い形で話が進むのは面白かったです。もちろん、現実とは展開が違うのでしょうが。


銀行を目の敵にしている政治家もいて、しかも政治家の思惑通りに進めようとする動きが強くて、銀行としては言いなりにならざるを得ない状況。

だからこその半沢なんですよね。彼が登場してスカッと解決させてくれるので、読んでいてスッキリしました。

政府に言われたら500億円も諦めるなんてこと、絶対に出来ませんから!


このシリーズを読む度に「銀行って・・」と思わされるのですが、今回はそれに加えて「政治家って・・」更には「大会社って・・」とあきれ果てました。

人間の欲とかプライドって面倒臭いですね。改めてしみじみ思いました。


<バブル入行組シリーズ>
「オレたちバブル入行組」
「オレたち花のバブル組」
「ロスジェネの逆襲」



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2017年11月14日

池井戸潤「花咲舞が黙ってない」

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 池井戸潤 著
 「花咲舞が黙ってない」
 (中公文庫)


その日、東京第一銀行に激震が走った。頭取から発表されたライバル行との合併。生き残りを懸けた交渉が進む中。臨店指導グループの跳ねっ返り・花咲舞は、ひょんなことから「組織の秘密」というパンドラの箱を開けてしまう。隠蔽工作、行内政治、妖怪重役・・このままでは我が行はダメになる! 花咲舞の正義が銀行の闇に斬り込む痛快連作短篇。−裏表紙より−


久しぶりの花咲。読んでみたらかなりドラマに引っ張られている感じになっていました。こんなキャラだったっけ??読んでいる間中ずっと、杏が頭の中にいました。

大人気の半沢まで登場します。またドラマにするつもりなのか?


半沢のいる銀行と花咲のいる銀行が合併することに。銀行が合併するときってこんな感じなんだということが色々わかってなかなか面白かったです。

お互いに自分の銀行を優位に立たせたいから裏で画策するんですね〜。当たり前と言えば当たり前のことなんですけど、合併しないと経営していけないくらいの状態ならそれどころじゃない気もします。

そんなときですから、出来るだけ自分の銀行では不祥事を起こしたくない。もし起きていたとしても秘密裏に始末したい・・。

不祥事を起こさない努力は必要ですけど、発覚しないように隠そうとする根性は腹が立ちます。

当然、花咲も許せないタイプなので、真っ向から立ち向かっていきます。そして、それに振り回される相馬。ドラマでもそうでしたけど、彼は振り回されながらも冷静に自分のやるべきことをやって、不祥事をもみ消すわけではなく何とか鎮火させようとします。

まあそういうタイプの人たちって、客からすれば頼りになると思うのですが、銀行のトップたちからすれば煙たい存在です。何かと妨害工作をしかけてくるわけです。

そんな上層部に花咲と相馬はどうやって対抗するのか!?


痛快、爽快な部分も多いのですが、すっきり出来ない部分も多かったです。大手の銀行の問題を扱っておいて全てが丸く収まると違和感しか残らないと思うので、これで良かったのでしょうが、嘘でもスキッと終わってほしかった気もします。

でもまあ今後は大逆転を見せるはずだと信じておきます。


<花咲舞シリーズ>
「不祥事」


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2016年10月20日

池井戸潤「七つの会議」

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 池井戸潤 著
 「七つの会議」
 (集英社文庫)


きっかけはパワハラだった!トップセールスマンのエリート課長を社内委員会に訴えたのは、歳上の部下だった。そして委員会が下した不可解な人事。いったい二人の間に何があったのか。今、会社で何が起きているのか。事態の収拾を命じられた原島は、親会社と取引先を巻き込んだ大掛かりな会社の秘密に迫る。ありふれた中堅メーカーを舞台に繰り広げられる迫真の物語。傑作クライム・ノベル。−裏表紙より−


あらすじを読むと、まるで原島が主役かのように書かれていますが、特に彼だけがメインというわけではありません。題名の通り、7話に分かれている連作短編になっているので、話毎に主役は代わっていきます。


全体を通して描かれているのは、あるメーカーの内部で起きている不可解な出来事について。事の発端は、エリート課長の降格人事。うだつの上がらない年上の部下からパワハラを訴えられて降格させられました。

普段からやる気のない、存在価値がないと思われていた社員が、営業部のエリート社員として期待されている課長を訴える。そんなことをしても、絶対に却下されるだろうと周りは思っていたのに、あっさりと降格が決まってしまいます。

そしてその部下はお咎めなし。降格した社員に代わって、原島が課長となります。そこで年上の部下からこっそりと秘密を打ち明けられ、顔色を変えます。

ここでも読者には何が起きているのか知らされないため、謎が深まったままになります。

次の話ではとある下請けの会社の様子が描かれます。コストダウンできないなら取引中止と言われたのに、担当が代わったとたんに掌を返したようにもう一度取引を持ち掛けられます。

ここでどうやら部品に何かあったらしい・・ということは、読者も気づけるようになっています。


その後も、会社内の色々な人物の視点で描かれる人間模様。そしてさり気なく、会社で起きている不可解な出来事の真相が明かされていきます。


その出来事についてはネタバレになるので書きませんが、現実の世界でもよく聞くようなことですね・・。

ニュースでもよく取り上げられています。

事がここまで大きくなる前に、誰か一人でも真相を明かせる人がいたら、会社はクリーンなままいられたのに。誰もかれもが自分の保身ばかり考えてしまうからこうなるわけです。


でも当事者になったらどうするかな?と思うとやっぱり明かすのは難しいのかもしれないとも思います。仕事がすべてではない、と言いながらもやはり安定した職業を捨てるのはかなりの勇気がいることです。

だからといって、消費者を蔑ろにするような事態もどうなんだ!?とも思いますし・・・。

途中から読んでいて怒りと共に苦しさも感じる話でした。


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2015年10月31日

池井戸潤「ロスジェネの逆襲」

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 池井戸潤 著
 「ロスジェネの逆襲」
 (文春文庫)


子会社・東京セントラル証券に出向した半沢直樹に、IT企業買収の案件が転がり込んだ。巨額の収益が見込まれたが、親会社・東京中央銀行が卑劣な手段で横取り。社内での立場を失った半沢は、バブル世代に反発する若い部下・森山とともに「倍返し」を狙う。一発逆転の策はあるか? 大人気シリーズ第3弾!−裏表紙より−


半沢直樹シリーズ第3弾です。ドラマがヒットしすぎて、ちょっと距離を置きたいような気持ちになっていましたが、読み始めるとさすがに面白くて一気読みでした。

前作を読んだのが4年以上前のことなのであまり覚えていませんでしたが、この巻から読み始めても大丈夫な感じでもあったので、スムーズに読めました。

前作までは「バブル」という名前が題名に付いていて、バブル世代の半沢たちが、その上の世代に対して文句を並べる、という展開でしたが、今作は「ロスジェネ世代」の人たちがバブル世代に対して文句を並べています。

私は両方の世代の間になるのかな?よくわかりませんが、バブルでもなければロスジェネでもない気がします。どちらに迷惑をかけられた覚えもありませんし。なので、2つの世代の人たちが言っている文句の意味が本当の意味で理解できていないと思います。会社内で理不尽な目にあったら、何かに理由を付けたくなる気持ちはよくわかります。自分のせいではない、世代のせいなんだと。

文句を言っているロスジェネ世代の部下・森山に対して半沢は「お前たちが虐げられた世代なら、どうすればそういう世代が二度と出てこないようになるのか、その答えを探すべきなんじゃないか」と諭します。


今回の半沢は、子会社の証券会社に出向しています。そこに持ち込まれた買収案件を親会社の銀行に横取りされたことで、怒りが爆発!親会社に盾突くような方法で立ち向かっていきます。出向しただけなのですから、いつかは銀行に戻ろうとして保身に走りがちですが、そこは半沢らしく、間違っている物は間違っている!と強気の姿勢で立ち向かいます。

前半はどういう問題があるのかの説明に費やされていきますが、後半どうやって半沢が事態をひっくり返して、すっきりと終わらせてくれるのか、楽しみで読むスピードもますます上がりました。

その半沢の姿を部下の森山が、顧客を優先し、自らの地位さえ顧みない肝のすわった仕事ぶり。知恵と努力で相手を上回り、僅かな糸口から事態を逆転に導く手腕。と評します。銀行員としてここまでの褒め言葉があるでしょうか?私の中でどんどん男前になっていきます・・。

最後まですっきり爽快、そして落ち着くべき所に全て落ち着いて、半沢にも変化があり、次も楽しみになりました。文庫化はまだまだ先でしょうが、じっくり待つことにします。


<半沢直樹シリーズ>
「オレたちバブル入行組」
「オレたち花のバブル組」


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2014年04月07日

池井戸潤「ルーズヴェルト・ゲーム」

ルーズヴェルト・ゲーム

 池井戸潤 著
 「ルーズヴェルト・ゲーム」
 (講談社文庫)


大手ライバル企業に攻勢をかけられ、業績不振にあえぐ青島製作所。リストラが始まり、歴史ある野球部の存続を疑問視する声が上がる。かつての名門チームも、今やエース不在で崩壊寸前。廃部にすればコストは浮くが――社長が、選手が、監督が、技術者が、それぞれの人生とプライドをかけて挑む「奇跡の大逆転(ルーズヴェルト・ゲーム)」とは。−裏表紙より−


ルーズヴェルト・ゲームとは、8対7の試合のことだそうです。ルーズヴェルト大統領が言い出したのだとか。

確かに野球ファンにはたまらない点数(試合)ですね。適度に点数も入って、でも簡単に逆転しにくくて、でも諦めるほど離されていない点差。手に汗握る状態です。

この物語は、社会人野球部の話でもありますが、青島製作所が今後どうやって生き残っていくか?という話がメインになっています。青島製作所の話自体も、ルーズヴェルト・ゲームのような展開になっています。野球を知っている方が楽しめると思いますが、知らなくても手に汗握る展開だということさえわかれば面白いと思います。


下町ロケット」と同じようにライバル企業が現れ、青島製作所の技術力を吸収しようとし、銀行は融資を渋り、大規模なリストラを敢行するしか道はなくなりました。

そんな中、年間3億円近くかけて維持している野球部を存続させることに反発する動きが出るのは当然な気がします。せめて優勝を狙えるほど強いチームであれば良いのですが、主要メンバーと監督をライバル企業に引き抜かれてしまったため、更に負けが続いているチーム・・。野球部が宣伝にもならないなら、なぜ存在させる必要があるのか?

新たな監督を迎え、試合に出るチームは、なかなか勝てませんが、ある出来事をきっかけにして団結力が高まり、少しずつ強いチームになっていきます。

この新たな監督がどんな采配を振るうのか?とても興味があったのですが、その部分はあまり描かれず。そこは残念でした。監督の采配によって勝利する!という場面がほしかったです。


最後はこの作家さんの得意な展開。つまり、一発逆転、爽快!な結末なわけです。思わずガッツポーズしてしまう感じです。

ただ、野球部の結末だけはちょっと意外でした。これはこれで良いのかな?とも思いますが。


さて、次はどの作品が文庫化されるでしょう?楽しみに待つことにします。


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2014年01月08日

池井戸潤「下町ロケット」

下町ロケット

 池井戸潤 著
 「下町ロケット」
 (小学館文庫)


研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっていた―。男たちの矜持が激突する感動のエンターテインメント長編!第145回直木賞受賞作。−裏表紙より−


この作品も難しかったです。今回は、いつもの金融関係の難しさに加えて、ロケットのというかエンジン部分の構造という難しさもあって、理解できていない部分は多かったと思います。

でも、いつも通り面白かったです。今まで読んだ作品の中で上位に入るくらい気に入りました。

ページ数も多いのですが、それを感じさせないくらい展開が早くて、あっという間に読んでしまえました。


ロケット打ち上げのチームで研究者として働いていた佃航平は、打ち上げに失敗したことに対して責任を取る形で退職し、父親の町工場を継ぐことになりました。物語は、佃が工場を継いで7年が経った所から始まります。

佃製作所と取引のあった会社から契約を打ち切られ、その穴埋めをしようと画策しているとき、今度はライバルメーカーから「特許侵害」という訴えをうけてしまいます。

その訴えは明らかに言い掛かりでしたが、裁判をしているというだけで、銀行は融資を断ってきますし、契約している他会社からも契約をうちきる話が出てきてしまいます。

ますます経営が苦しくなり、裁判も負けそうな、絶体絶命の状況が続きます。

きっと、この先もずっと裁判が続いていくのだろうと思って読み進めると、意外な展開が待っていました。

裁判はあっさりと、でもスカッとする形で終了するのです。

そしてそこから新たな展開が・・。今度は、佃製作所が特許をとっていたバルブシステムに、大手企業である帝国重工が興味をもってきたのです。

帝国重工はロケット開発を行っている企業で、佃製作所のバルブシステムの特許を使いたいと言って来ます。その申し出を受けると大金が手に入り、工場の経営は安定してくるとわかっているのですが、佃は自分の夢であるロケット打ち上げ成功のために、別の方法を進めることに・・。


ここからの展開は書かないでおきますが、更に苦難も待っていて、でもそれを色んなアイディアで乗り越える様子はとても面白かったですし、苦労を読みながらラストシーンまで来ると、思わず感動の涙が出ていました。

仕事ってお金のため、生活していくためにするわけですが、それだけではやはり空しくなることもあります。佃航平のように熱い想いや夢があって、それを追える環境にいられるのはとても幸せなことです。

夢ばかり追って、お金にならなければ家族はたまりませんけどね・・。でもやはり、夢を追って熱い気持ちをもって仕事をする姿はキラキラ輝いていて素敵だと思います。


さて、次はどの作品が文庫化されるかな??楽しみです。


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2013年08月14日

池井戸潤「ようこそ、わが家へ」

ようこそ、我が家へ

 池井戸潤 著
 「ようこそ、わが家へ」
 (小学館文庫)


真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。直木賞作家が“身近に潜む恐怖”を描く文庫オリジナル長編。−裏表紙より−


題名から想像していたのは、ホームドラマ的なほのぼのした雰囲気の話だったのですが、読み始めると全然違いました。あらすじを読んだらわかるのに、この作家さんの場合、全て読むつもりなのであらすじを読んでいませんでした。


主人公・倉田は、銀行員で今はナカノ電子部品という会社に出向しています。出向なんてシステムがあるなんて知りませんでした。銀行員を受け入れることで、融資を受けやすくなるという利点があるそうですが、出向させられる銀行員にとっては、銀行員でありながら、会社員でもあり、なかなか難しい立場になります。

話は、倉田が仕事から帰宅する途中、ある駅で割り込みをした男性に注意をしたところから始まります。普段なら大人しくて揉め事が嫌いな性格なのですが、このときは思わず注意してしまいました。

その出来事が、彼だけではなく家族まで巻き込んでいく事件へと発展してしまいます。始めは花壇を荒らすくらいのことだったのに、その嫌がらせはどんどんエスカレートしていきます。子どもが二人いる倉田家にとっては、早く平穏な生活を取り戻さないといけません。でもなかなか正体を明かさないストーカーに、一家は怯えを隠せません。

更には、倉田が働いている会社でも揉め事が起こり、この件でも彼は振り回されてしまいます。


ストーカーの事件は、この作家さんにしては珍しい・・と思ったのですが、会社の不正が発覚した所からは、波に乗ってきて、読むスピードが上がりました。

相変らず細かい部分、難しい部分は、理解できていないと思うのですが、それでも充分楽しめました。次々と起こる事件と、反撃した・・と思ったらやり返される展開が面白くて、あっという間に読み終えることが出来ました。


倉田家の人々も魅力的で(まあ息子は色々ありますけど)、一家の団結力が素敵でした。色々大変なことを乗り越えて更に絆が強くなっていくでしょう。

明るい未来が見える結末でしたし、最後まで面白かったです。


さて、他に読んでいない本はあったかなぁ??


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2013年06月25日

池井戸潤「民王」

民王

 池井戸潤 著
 「民王」
 (文春文庫)


「お前ら、そんな仕事して恥ずかしいと思わないのか。目をさましやがれ!」漢字の読めない政治家、酔っぱらいの大臣、揚げ足取りのマスコミ、バカ大学生が入り乱れ、巨大な陰謀をめぐる痛快劇の幕が切って落とされた。総理の父とドラ息子が見つけた真実のカケラとは!? 一気読み間違いなしの政治エンタメ!―裏表紙より―


今回は珍しく金融関係の話ではなく、政治家の話。しかも、どこかで聞いたような政治の話で、明らかにモデルがいそうな雰囲気を醸し出しています。

ちょっと取っ付きにくい気がする政治の話ですが、この作家さんらしく、真面目に、でも簡単にそして笑えるところもあり、スムーズに読み切ることができました。

とにかく設定が不思議なんです。父親が総理という大学生が、クラブで騒いでいたら突然父親と入れ替わってしまう!気づいたら国会にいて呆然とします。父親の方はクラブに。中身だけが入れ替わるので、周りは気づきません。

能力も性格も全てが入れ替わるので、総理大臣のくせに答弁の原稿がきちんと読めず「未曾有」を「ミゾユー」と読んでしまうような大失態を犯します。これって現実にもあったような気がしますね・・。

大学生のはずなのにやたらと生意気で、就職の面接官に対してエラソーな物言いをしてしまいます。

それでなくても大変な事態なのに、総理が任命したばかりの官房長官が女性関係のスキャンダルをマスコミに嗅ぎつけられ「任命責任」を問われる事態に。

マスコミに囲まれ質問を投げつけられることになった息子(外側は総理)は驚くような行動に出ます。本当なら正しいことを言っているのですが、政治の世界ではあり得ない発言をします。こんな風にハッキリ物が言える政治家って素敵だと思いますけど、やはり政治家には嫌われるのでしょうね。


ちょっと政治家の裏側が垣間見えた気がしました。

「国民のためにがんばりたい」と思って政治家になったはずなのに、自分の利益しか考えていなさそうな政治家たちがどうしてこんなに多いのか?理由が少しわかりました。


なぜ、父と息子が入れ替わるようなことが起きたのか?というのが大きな謎になっているのですが、この事件を通して、距離のあった親子関係がスムーズになり、お互いを認め合うようになります。また、息子の一見無鉄砲と思える発言が、実は父親にとっての初心でもあって、今後は良い政治家になってくれそうです。

現実の政治家たちも心を入れ替えて真剣に国のことを考えてもらいたいものです。選挙のことばかり考えないで・・。


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2012年08月17日

池井戸潤「架空通貨」

架空通貨

 池井戸潤 著
 「架空通貨」
 (講談社文庫)


女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した−。かつて商社マンだった社会科教師の辛島は、その真相を確かめるべく麻紀とともに動き出した。やがて、二人がたどり着いたのは、「円」以上に力を持った闇のカネによって、人や企業、銀行までもが支配された街だった。江戸川乱歩賞受賞第一作『M1』を改題−裏表紙より−


う〜ん・・。私にはなかなか難しい作品でした。1ページ読み終わるまでに驚くほど時間がかかってしまい、この作家さんの本にしては何日もかかって読みました。

でも決して面白くないわけではないのが、さすが!ぴかぴか(新しい)という感じですけどね。


麻紀の父親が経営する黒澤金属工業が倒産に追い込まれることになり、納得のいかない麻紀が自分の先生である辛島に相談をします。倒産する原因の一つとなった、田神亜鉛という会社を訪ねようと2人で出かけた街は、ある架空通貨が強大な力をもっていました。

“田神札”と呼ばれるその通貨は、普通の紙幣と同じような使われ方をしていました。田神札の受け取りを拒否しようとする店や企業もあるのですが、結局その街でのしがらみや縁などによって断りきれず、受け取らざるを得ない状況になっていました。


この田神札の説明が難しかったんですよね・・ふらふら まあある種の証券みたいな物じゃないか?と思うんですが、社債をみんなに負担してもらうために、独自に紙幣を発行して、それでとりあえず繋ぐ・・という感じだと私は理解しました。社会のしくみに疎い私の理解なので、違うかもしれませんけどバッド(下向き矢印)

銀行もこの田神亜鉛に支配されている状態で、街全体が一つの会社に頼り切ってしまっています。これって、かなりヤバいんじゃ?と思う人も当然いるわけですが、少数しかいないためどうにもなりません。


黒澤金属はこの田神亜鉛から金を払ってもらえれば何とかなるのですが、もちろんそんな要求が通るはずもなく、どうすれば父親の会社が救えるか?と麻紀は悩みます。辛島はそんな麻紀を助ける形で(実際には彼がほぼ動くわけですが)田神亜鉛に立ち向かっていきます。


説明の部分は難しかったですが、後半は怒涛の展開で一気読みでした。

ただ、辛島が元商社マンで高校教師・・という設定がよくわからなかったんですよね。商社を辞めて家庭を崩壊させた過去をもつとわざわざ書かれているの、それが活かされていない気がしました。というかなぜその設定が必要だったんだろう??元商社マンというのは必要な設定ですが、現役の商社マンじゃなぜだめだったんだろう?・・まあ、そんな細かいことはどうでも良いですけどねあせあせ(飛び散る汗)


麻紀が田神札の出回る街でつぶやいた「お金というのは権力の象徴なのよ。その権力とは、何の価値もない紙切れに意味を持たせ人を動かす魔法のことなのよ」という言葉がとても印象に残りました。あまり真剣にお金について考えたことは無かったですが、確かにそうだな・・と改めて思いました。ただの紙切れをみんなが信用しているからこそ、お金には価値が出るわけですから。

人の欲の深さと、心の闇、そして家族愛のような物まで色々なテーマで描かれている内容の濃い話でした。


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2012年07月20日

池井戸潤「BT’63 下」

BT'64 下

 池井戸潤 著
 「BT’63 下」
 (講談社文庫)


呪われたトラックBT21号の運転手四人が次々と殺され、史郎が精魂を注いだ新事業も立ち行かない。すべては闇の住人、成沢が仕掛けたことだった。愛する鏡子まで成沢の罠に陥り、史郎は苦悩の選択をする−。一方の琢磨は、現代に残っていたBT21号を手に入れる。「物語」のすべてがつまった圧倒的大作。−裏表紙より−


このあらすじ、びっくりしました。思いっきりネタバレなんですけどあせあせ(飛び散る汗) まあ予想の付く部分ではありますが。

上巻は話がどう進んでいくのかわからず結末が気になるまま終わってしまったのですが、下巻に入るとどんどん面白くなり、読むスピードも上がりました。


琢磨がBT21号を現実で手に入れて、運転席に座った場面は、一気に琢磨が史郎の想いを感じ取り、真面目さだけが取り得だと思われていた父親の人生を理解する・・とても感動的でした。

父親はすでに5年前に亡くなっているわけですが、それでも琢磨のお陰で人生をやり直せたような、人生をきちんと振り返り「良い人生だった」と思えたような気がしましたし、もちろん琢磨は実際の人生もきちんと見直すことができました。


話は全体的に暗い雰囲気がまとわりつくような、ずっと夜の場面ばかりのような感じではありますが、最後には少し光が射した気がして、さわやかな気持ちで読み終えることができました。

人物像がつかみにくかった琢磨の母親が、実はとても優しい人だった・・というのも良かったです。彼女のサラッと言い切ったあるセリフで、ある意味、今までの話の美味しい部分を全て持っていった??と思うくらい。


最後まで読んでもやっぱり、この作家さんらしくない作品だったと思いました。でも、読んで良かった、面白かったと思います。


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2012年07月19日

池井戸潤「BT’63 上」

BT’64 上

 池井戸潤 著
 「BT’63 上」
 (講談社文庫)


父が遺した謎の鍵を手にすると、大間木琢磨の視界に広がるのは、四十年前の風景だった。若き日の父・史郎が体験した運送会社での新事業開発、秘められた恋・・・。だが、凶暴な深い闇が史郎に迫っていた。心を病み妻に去られた琢磨は自らの再生をかけ、現代に残る父の足跡を調べる−。父と息子の感動長編。−裏表紙より−


あらすじだけ読んでいたら、もしかしたら手に取らなかったかもしれないような内容がく〜(落胆した顔) でもきっと、この作家さんなら面白い味付けをしてくれるはず!と読んでみました。・・っていうか、この作家さんの作品は全部読む!と決めていたわけですが。


珍しく、ちょっとSFっぽい雰囲気のある作品でした。

読み始めはついていけないというか、意味がわからない感じがして、頭の中に「?」マークが浮かんでいる状態が続きましたたらーっ(汗) 琢磨が何の病気だったのか、なぜ妻にまで見捨てられたり、記憶が無くなったりしていたのかよくわかりませんでしたし。

でも、そういうことが徐々に気にならなくなる展開になっていったのは、さすが!でした。

まだ、上巻だけでは先が読めないですが・・。

最終的にどうなれば完結するのか、どんな結末がハッピーエンドになるのか、全ての謎はうまくまとめられるのか・・など色々気になる部分があります。

下巻も早く読んでしまうことにします。


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2011年12月24日

池井戸潤「鉄の骨」

鉄の骨

 池井戸潤 著
 「鉄の骨」
 (講談社文庫)



中堅ゼネコン・一松組の富島平太は、突然現場勤務から異動を命じられた。異動先は業務課。そこは陰で“談合課”と呼ばれる、公共事業の受注部署で、この度行われる地下鉄工事を取ることが今の任務だった。正直に入札を行おうとする平太らに「談合」の話が・・。


今回のテーマは、公共工事入札における談合。私にとってはまたまた難解なテーマですふらふら

まず、入札って?という状態の私・・。入札も談合も、言葉の意味というか、どういう物か?ということは知っていますし、理解しているつもりではありますが、詳しくは知らないですし、どんな問題があるのかもわかっていません。

読み始めは不安でしたが、こんな私でもわかるように書いてあって読みやすかったです。主人公の平太も、入札や談合については素人だったので、周りが彼に説明してくれているのを読んで私も理解していく感じでした。


現場で働いていた平太が突然の異動。驚く平太に告げられた異動先は「業務課」だったので、自分がなぜそこに異動させられるのか理解できませんでした。

異動した平太に課せられたのは、次の地下鉄工事を取って来ることでした。業務課の先輩・西田に懇切丁寧に教えられながら、必死で与えられた仕事をこなしていきます。そこで知ったのが「談合」の事実でした。「脱談合」を宣言しておきながら、実は密かに談合は続けられている・・。疑問をぶつける平太に西田は「必要悪なんだ」と自分に言い聞かせるように語ります。

どうにも納得いかないながらも、会社の一員として上司から言われる仕事を続けていると、ある大物と出会うことに。そして、平太はその大物・三橋に気に入られたことで、会社と三橋の連絡係を命じられます。

三橋の考えを聞くにつれ、だんだん惹かれていく平太ですが、実は三橋には秘密があり・・・。

平太には、銀行員の彼女がいます。彼女とは何でも話せる仲なのに、平太が業務課へ異動になってから関係がぎくしゃくするように・・。銀行員の彼女にとっては、談合を続ける彼らの行動が理解できないわけです。「違法なこと」ですから。

平太ら一松組が談合を拒否しようとしても、しがらみから逃れられず、どんどん巻き込まれていく・・。


と、最後まで気を抜けない展開が続きます。誰が味方で、本心はどうなのか・・検察まで動き出しますし、彼女の心の動きも気になり・・・一気読みせずにはいられませんでした。

とはいえ、ページ数が多いので数日かかってしまったのですが。


会社に雇われている身としては、会社の決定は絶対で、上司の命令には従わないといけない・・でも、1人の人間としての気持ちというか、誇りは失くしたくないと思いました。自分の意に沿わないことにはきちんと自分の意見を言って、断ることができる強さが欲しいですね。


今回も色々と考えさせられる、でもスカッとする話でした。


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2011年10月31日

池井戸潤「MIST」

MIST

 池井戸潤 著
 「MIST」
 (双葉文庫)



のどかな高原にある町・紫野で、ある経営者が遺体となって発見された。彼の死因は自殺に見せかけた殺人と判明し、捜査が開始された。捜査がなかなか進まない中、第二、第三の殺人事件が続けて起きてしまう。数年前に起きた東京での殺人事件との共通点が見え始め、事件は思わぬ方向へ・・。


この作家さんにしては、珍しく銀行物ではないミステリー。先に感想を言ってしまうと、私にはイマイチ合いませんでしたバッド(下向き矢印) 面白くないわけではないんですけど・・う〜ん、感想がうまく書けない感じふらふら


始めに出てきた紫野の駐在所に勤務する上松巡査が主人公で、このまま彼の視点で話が進むんだろうと思っていたら、何だか次々人が出てきて視点もその度に変わって、混乱してしまいました。事件をあらゆる視点から見る・・というようになれば良かったんですが、そういう感じでもなく、ただただ混乱する・・たらーっ(汗)

登場人物も多かったですし。読み終わって、要らないな〜と思う人が何人かいました。もう少し人数を減らしてもっとその人物の人生とか人柄とか色々書いてもらいたかったです。

人もやたらと死にましたしね。連続殺人とはいえ、あまりにも死に過ぎな気がします。そして、その割にはのどかな町が大騒ぎになっている雰囲気も無く。


以前、池井戸さんには警察小説も書いてもらいたい!と思ったことがあったので、期待しすぎたのかもしれません。もっと気楽に読めば楽しめたのかもしれないと思うと残念です。

もっと一人に絞って人物像を描きながら、職人気質みたいな警察官を中心にした話なら良いのかも。って偉そうに言ってますがあせあせ(飛び散る汗)


これはちょっと残念な結果でしたけど、次は何を読もうかな?・・楽しみです。


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2011年10月21日

池井戸潤「果つる底なき」

果つる底なき

 池井戸潤 著
 「果つる底なき」
 (講談社文庫)



「これは、貸しだからな」と伊木に残し、同僚の坂本が死んでしまった。殺人事件として捜査が始まり、坂本の妻が伊木の元恋人だったことから容疑者にされてしまう。同僚の死の謎を探るため、そして坂本の妻と娘のため、伊木は一人で見えない敵に立ち向かう。


この作品が池井戸さんのデビュー作だそうです。それを感じさせないくらいの完成度でした。・・って何だか偉そうに言ってますが。


同僚の坂本は債権回収担当でした。そんな坂本がアナフィラキシー・ショックが原因で亡くなってしまいます。更に坂本の不正まで発見され、伊木は彼のために立ちあがります。

坂本のメモなどを見ながら、彼が最後に誰と会っていたのか?どの案件を担当していたのか?を探り出します。ところがそんな伊木の動きを面白くないと思う勢力があるようで、何度も妨害にあってしまいます。

伊木が昔担当していた会社に関係があることがわかり、すでに倒産し、社長も亡くなっているこの会社のことを改めて調べ始めます。そして不審な金の動きを発見し・・・。


主人公・伊木は、池井戸作品の主人公らしく、真っすぐで真面目で“銀行”という組織にいながらも組織の中に飲み込まれない強い意志を持った銀行員です。彼の真面目すぎる不器用さに、つい応援したくなるような気持ちになりながら読み進めました。

読み終わって、銀行物でありながら意外と銀行内部のことが出なかったな・・と思いました。前半は結構出てくるのですが、後半になると銀行の話だということを忘れそうになるほど。伊木が銀行員だと名乗る度に「あ、そうだった」と思い出す感じ。内容がハードボイルドっぽくなっているので、伊木のことを探偵だと勘違いしそうになりました。

人が殺されたり、襲われたり・・でも、銀行組織の裏側も書かれていて、盛りだくさんな内容の話でした。


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2011年10月07日

池井戸潤「銀行狐」

銀行狐

 池井戸潤 著
 「銀行狐」
 (講談社文庫)



「狐」と署名された謎の手紙が帝都銀行に送られてきた。「あほどもへ てんちゅー くだす」という内容の脅迫状とも言える手紙だが、具体的な要求も何も書かれていなかった。ところがその後、銀行が放火されたり、顧客情報が漏洩されたり、更には系列会社の社員が襲われたり・・と事件が次々と起こった。総務部の指宿は調査を始めた−「銀行狐」他「金庫室の死体」「現金その場かぎり」「口座相違」「ローンカウンター」計5編収録


「銀行総務特命」の主人公・指宿が初登場した話だそうで(あとがきで知りました)、名前を見た瞬間何だかうれしくなってしまいましたるんるん


脅迫状らしき物を受けて指宿は警察と連携して調査を始めます。そして意外と早く犯人らしき人物に行きあたるのですが・・。この人物が全ての犯罪を犯すのは難しいということで、更に調査を進めます。

銀行に勤めることの難しさ、虚しさが感じられる話でした。「銀行総務特命」もそんな話でしたけど、指宿が絡むと(というか、総務部が絡むと)そういう話になるのかもしれません。


金庫室の死体」ではいきなり惨い状態で死体が発見されたので驚きました。銀行物だと思っていたのに・・という感じで。でも発見された場所は銀行内部なので、銀行員が絡んできますし、銀行の裏事情とか仕組みとかがとても詳しく書かれています。詳しすぎて私には理解できない部分もありました。


私が気に入ったのは「ローンカウンター」です。連続殺人事件が起きて警察の捜査は難航していたのですが、一人の捜査員が私用で銀行に行き、銀行員と話したことで一気にあっさりと事件が解決してしまいます。ちょっとあっさり解決しすぎという感じもしますが、銀行員じゃないと気付かない方法なので、警察だけでは解決できなかったかもしれません。短い話でしたけど、警察官の山北という人物がなかなか好印象で、もう少し長く読みたいような気がしました。


短編集とはいえ、一つ一つの話に重みと深みがあり、とても面白く読むことができました。

まだまだ読んでいない作品があります。本屋で見つけることが難しいのですが、また探してみようと思います。


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