
高田郁 著
「ふるさと銀河線 軌道春秋」
(双葉文庫)
両親を喪って兄とふたり、道東の小さな町で暮らす少女。演劇の才能を認められ、周囲の期待を集めるが、彼女の心はふるさとへの愛と、夢への思いの間で揺れ動いていた(表題作)。苦難のなかで真の生き方を追い求める人びとの姿を、美しい列車の風景を織りこみながら描いた珠玉の短編集。−裏表紙より−
「お弁当ふたつ」「車窓家族」「ムシヤシナイ」「ふるさと銀河線」「返信」「雨を聴く午後」「あなたへの伝言」「晩夏光」「幸福が遠すぎたら」の9編が収録されています。
「みをつくし料理帖」シリーズでお馴染みの作家さんですが、現代物は初めて読みました。
舞台が現代でも、軟らかく温かい雰囲気は同じで、とても読みやすかったですし、感動もしました。
どの話も良かったのですが、特に「お弁当ふたつ」「あなたへの伝言」「晩夏光」の3編が好みでした。
「お弁当ふたつ」は、リストラされたことを打ち明けてくれなかった夫に対し、妻が取った行動を描いています。将来の不安を抱えながらも、妻は夫を想う気持ちをお弁当に詰めて渡します。読み終わると温かな気持ちになれる作品です。
「あなたへの伝言」は、アルコール中毒から立ち直ろうと必死で生きる女性の話。最愛の夫と別れて暮らしながらも、お互いを想い合いながら、障害と闘っていく姿は勇気づけられる思いがしました。
「晩夏光」は、アルツハイマーに罹ってしまった女性の話。これは最後に泣いてしまいました。アルツハイマーって、周りはもちろん、本人も本当につらい病気なんですよね。身近にいないのであまり実感がわきませんが、何とか病気に抗おうとする女性の姿と、母親を想う息子の気持ちが感動しました。
全編通して、きれいな情景が浮かぶようになっていますし、美味しそうな料理も出てきます。現代物も良いなと改めて思いました。また新しい作品が書かれることを楽しみに待つことにします。
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