2013年08月28日

大崎梢「背表紙は歌う」

背表紙は歌う

 大崎梢 著
 「背表紙は歌う」
 (創元推理文庫)


作り手と売り場、そのふたつを結ぶために。出版社の新人営業マン・井辻智紀は今日も注文書を小脇に抱え、書店から書店へと飛び回っている。しかし取次会社の社員には辛辣な言葉を投げつけられ、作家が直々に足を運ぶ「書店まわり」直前にはトラブルを予感させる出来事が・・。井辻くんの奮闘をあたたかな筆致で描いた、本と書店を愛する全ての人に捧げるミステリ短編集第二弾!−裏表紙より−


新人営業マンの井辻くんのがんばりが描かれているシリーズ第二弾です。井辻くんは前作よりもちょっと成長した感じがしました。まだまだかわいらしい感じが抜けませんけど。この感覚はひつじを被っている表紙の絵の影響もあるとは思いますが。

出版社の営業マンとして書店を回る井辻くんのお陰で、書店員さんの苦労だけではなく、出版業界や作家さんの大変さもわかるようになりました。

本を一冊出版するだけでも私が知らないような職業の人も携わって、大勢の人のお陰で本が読めているんだろうと思うと、今まで以上に大事にしないといけませんね。


君とぼくの待機会」という話では、有名な文学賞について描かれています。実際にも色々な賞があって、確かに賞を取ると一気に知名度も上がり、本が並ぶ場所も並んでいる数も格段に良くなりますよね。今まではっきり言って賞には興味が無く、たまに帯に「○○賞受賞作!」なんて書かれていても「ふぅ〜ん」としか思わず、内容を見て面白そうだったら読むし、そうでもなかったら読まないと他の本と変わらないスタンスで見ていました。

でもこの話を読むと、賞一つで色んな人に影響が出て、作家さん自身にも大きな変化があって、出版社も書店もどんな利益があるのかがわかり、「受賞作!」と書かれている物も読んでみようかな?と思えました。受賞したことでマイナスになることもあるのは驚きでもありましたし、意外と公平に選ばれているんだということもわかりました。

ただ、この話は結末がきちんとかかれていないので、そこはちょっと残念でした。どこに賞を取らせても納得しにくい感じがあったのでどうやってまとめるのか楽しみだったのですが・・。


表題作の「背表紙が歌う」ではちょっとほろりとさせられました。血は繋がっていなくても、母と子の絆は強いんですね。この話に出てきた人たちには幸せになってもらいたいです。


プロモーション・クイズ」には成風堂書店の名前が出てきました。前作よりも詳しく出てきて、バイトの子が鋭いみたいなことも言われていました。多絵ちゃんのこと!? いつか、成風堂書店に井辻くんが営業に行く、なんて話が書かれたらうれしいな。

この話では、新しい本を出版するにあたって、書店員さんの推薦コメントをもらってくるという場面がありました。最近ではプロの作家に頼むよりも書店員さんに書いてもらった方が評判が良いようです。読み手の感覚に近いからという理由だそうですが、コメントのうまい、有名な書店員さんというのもいるそうで、驚きました。


<井辻くんシリーズ>
「平台がおまちかね」


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posted by DONA at 13:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:大崎梢
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