
坂木司 著
「切れない糸」
(創元推理文庫)
周囲が新しい門出に沸く春、思いがけず家業のクリーニング店を継ぐことになった大学卒業間近の新井和也。不慣れな集荷作業で預かった衣類から、数々の謎が生まれていく。同じ商店街の喫茶店・ロッキーで働く沢田直之、アイロン職人・シゲさんのなど周囲の人に助けられながら失敗を重ねつつ成長していく和也。商店街の四季と共に、人々の温かさを爽やかに描く、青春ミステリの決定版。−裏表紙より−
連作短編です。4話収録されています。
クリーニングに持ち込まれた衣類をきっかけに、様々な謎を解き明かしていく物語です。謎といっても、日常の何気ない謎で、殺人など人が傷つくような物ではありません。商店街を中心に、その近くに住む人たちが巻き起こすちょっとした事件。それを和也の友人・沢田くんが解き明かしていきます。
商店街という人間関係の濃い場所の近くに住んでいても、悩みを誰にも打ち明けられずに一人で抱えてしまっている人たち。そんな人がクリーニングを依頼してきた衣類を見て、和也が異変に気づき、友人の沢田くんが謎をきれいに解き明かして、スッキリさせてくれます。
謎を解明して、悩み事を解決するだけではなく、その後の人生についてもスッキリさせる沢田くんの謎解きの仕方は、感動的です。ただ、彼の言動が時々、脆さというか危うさも感じられて、ちょっと心配になる部分もありました。
その理由は、最終話で少し明かされるのですが、これを読むと和也の人柄の良さがわかって、更に好感がもてました。
沢田くんもシゲさんも実は和也の周りに集まるべくして集まっているのがよくわかりましたし、題名の「切れない糸」の意味に感動させられました。
最後の文章も素敵。爽やかな気持ちで読み終えることができました。
これはシリーズ物として書かれたようですが、まだ続編が出ていません。ぜひ続編も読みたいので、楽しみに待つことにします。
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