
今野敏 著
「烈日 東京湾臨海署安積班」
(ハルキ文庫)
新しく庁舎が建てられた東京湾臨海署の刑事課に新たな刑事が配属された。安積班にやって来たのは水野真帆という鑑識課出身の女性だった。歪に膨張した水死体を前にしても、怯む事なく捜査を進める水野。しかし、初任課で同期だった須田は彼女に対して何か思う所があるらしい。新顔の女性刑事は、安積班の一員として活躍する事が出来るのか―(「新顔」より)。安積、村雨、桜井、そして東報新聞社会部の女性記者・山口、それぞれの物語を四季を通じて描く、安積班シリーズ、待望の文庫化。−裏表紙より−
今回は短編集でした。あらすじにある「新顔」表題作「烈日」以外に「海南風」「開花予想」「逃げ水」「白露」「凩(こがらし)」「厳冬」全部で8編収録されています。
一気に読みたくなるところを、短編なので一話ずつ少しずつ読み進められました。
男所帯の安積班にとうとう、女性刑事が配属されました。別に女性が入っても良いんですけど、そのせいでフワフワするのはどうなんだろう?と思います。美人設定は必要か!?とか思っていたら、ドラマで登場した刑事だそうです。ドラマ化したときに登場させた女性刑事のキャラクターをそのまま、原作にも取り入れたようです。ドラマは見ていないのでどこまで似ているのか知りませんが、ドラマに影響を受けなくても良いのに・・。
まあ彼女が配属されて、男性陣がフワフワしているお陰で、彼らの新たな一面が見えた部分もあったので良いですが、今後、どんな活躍をさせられるのか、すっかり出来上がっている安積班のチームワークにどんな風を吹かせられるのか、楽しみ半分、不安半分・・って感じでしょうか。どんなキャラクターになるのか?で彼女の存在意義が問われる気がします。
今回は珍しく村雨の視点で進む話がありました。それが表題作の「烈日」です。若手の2人、桜井と黒木が体調不良で欠勤することになり、須田と捜査に出かけることになった村雨。普段は寡黙な彼の心の声がたくさん聞けて、チームに対する思いも聞けて、面白かったです。安積に対しても強い信頼をもっていることが再確認できて、やはりいいチームだと思えました。
他にも桜井の視点や、女性記者・山口の視点の話が収録されています。
安積以外の視点で描かれる、安積の印象を読めるのは楽しいですし、新たな魅力を発見できてもっと安積のことが好きになれます。
安積が自己分析するよりも、周りはもっと彼のことを高く評価していますし、実際にそれにこたえる活躍をみせてくれるところが良いんですよね。
安積の「厳冬も、一人でなければ、耐えられる。ここにいる仲間たちがいれば、どんな季節も耐えていけるはずだ」という言葉に感動

長編も良いですが、周りからの視点で描かれる話も収録される短編も面白いです。また読みたいと思います。文庫化されるのが楽しみです。
<安積班シリーズ>
「二重標的」
「虚構の殺人者」
「硝子の殺人者」
「警視庁神南署」
「神南署安積班」
「残照」
「陽炎」
「最前線」
「半夏生」
「花水木」
「夕暴雨」
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