
伊吹有喜 著
「風待ちのひと」
(ポプラ文庫)
“心の病”で休職中の男と、家族を失った傷を抱える女。海辺の町で偶然出会った同い年のふたりは、39歳の夏を共に過ごすことに。人生の休息の季節と再生へのみちのりを鮮やかに描いた、著者デビュー作。『四十九日のレシピ』にも通じるあたたかな読後感に心が包まれる物語。−裏表紙より−
39歳の男女が主人公なので、年齢が近い私は共感できる部分がたくさんありました。
この年代って、悩みが増える時期なのかな?と思います。家族がいて子どももいればその将来なんかも気になってくるでしょうし、家を建てたいとか思うと金銭的な悩みが出ます。仕事は昇進を狙いつつ、まだまだ中間管理職って感じで悩みも多い。
独身の人は恋愛について悩みますね。そろそろ出会いも無くなるし、結婚しないともうさすがに無理か?というギリギリな状況ですし、もう独身のまま終わるのかも・・と覚悟を決めることもあるでしょう。
そんな微妙な年齢の哲司は、“心の風邪”という表現がされていますが、軽いウツのような症状で休職しています。休暇の間、母親の遺品を整理も兼ねて母親が住んでいた家に行きます。
海辺の町にあるその家に行き、休暇をゆっくり過ごすことにした哲司は、ある出来事をきっかけに同じ年齢の喜美子と出会います。
面倒見の良い彼女は、母親の遺品の整理や、庭の手入れなどを手伝うことにし、毎日のように彼の元へ通います。
二人が大人の恋に落ちる・・という展開は予想がつくわけですが、問題が一つ。
哲司には妻と娘がいたのです。
ただ、妻とは離婚するかどうか考え中という状態ではあるのですが、不倫ということになるわけです。
いつもなら不倫なんて大嫌いですし、そんな話を読むのも嫌いなのですが、この二人のことは何だか妙に応援したくなったんですよね。
すごくお似合いというか、お互いに支え合う様子が素敵で、羨ましくも感じて、二人を離れさせるのが可哀そうで仕方なくなりました。
もちろん、奥さんと娘のことを考えると「やっぱり不倫はダメだ!」とは思うのですが、今回の場合は奥さんも色々あるし、仕方ないのかな?とも思います。
まあ、そう思わされるのは作者の思う壺なわけでしょうけど。
違う結末でも良かったかな?とも思いましたが、やっぱりハッピーエンドは嬉しかったです。幸せな気持ちで読み終えることができました。
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