
椰月美智子 著
「るり姉」
(双葉文庫)
十代の三姉妹が「るり姉」と呼んで慕うるり子は、母親の妹つまり叔母さん。天真爛漫で感激屋で、愉快なことを考える天才だ。イチゴ狩りも花火も一泊旅行もクリスマスも、そして日々のなんでもない出来事も、るり子と一緒だとたちまち愛おしくなる―。「本の雑誌」2009年上半期エンターテインメント・ベスト1に輝いた傑作家族小説。ラストの静かな感動が胸いっぱいに広がる。−裏表紙より−
初めましての作家さんです。
読みやすい文章で、温かい雰囲気の話でした。
全編通して語られるのは「るり姉」と呼ばれる女性のこと。でも、るり姉自身の視点の話はありません。なのに、読み終わったとき、るり姉のことが大好きになっているんです。会ってみたい、話してみたいと思ってしまう。
るり姉のことを語るのは、姪っこの3姉妹と、実の姉(3姉妹の母親)、恋人・開人の5人。現在から去年、4年後まで時間の流れもわかって、子どもたちの成長もわかりますし、恋人との関係もよくわかるようになっています。
現在のことは長女・さつきの視点で話が進みます。現在のるり姉は、病気になっています。どんどん痩せていくるり姉の様子が描かれていて、3姉妹もそれぞれ心配そうにしています。もしかして死んでしまうのか・・と心の隅に浮かぶ度に、否定しているさつきの様子がいじらしいです。言動は生意気なんですけどね。
去年のことは母親であるけい子の視点で。さすがるり姉のお姉さん!という感じで、なかなか面白いキャラクターの持ち主です。彼女の惚けた感じも好きになりました。
一番、気に入った話は、恋人・開人くんの視点の話でした。恋人といるときのるり姉は、姪っ子たちといるときとは違う雰囲気。甘える部分も出てきて、更に魅力が上がりました。2人の関係は微笑ましくて、幸せになってもらいたいと強く願ってしまいました。
主人公が病気・・というと、最悪な結末を思い浮かべてしまいますが、この作品では良い意味で裏切られて、ハッピーエンドだったので良かったです。
これが普通の終わり方だったら、悲しくて仕方ないと思いますし、きっと面白さも半減したでしょう。
ミステリに疲れたときに、癒しになる1冊です。
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