
木内昇 著
「浮世女房洒落日記」
(中公文庫)
お江戸は神田の小間物屋、女房・お葛は二十七。お気楽亭主に愛想つかし、家計はいつも火の車。それでも風物たのしんで、美顔の探求余念なし。ひとの恋路にゃやきもきし、今日も泣いたり笑ったり。あっけらかんと可笑しくて、しみじみ愛しい、市井の女房が本音でつづる日々の記録。−裏表紙より−
時代小説のはずが、いきなり始まったのはファンタジー風の話。ちょっと混乱しながら読み進めると、その部分は「この日記を公開することにした経緯」が書かれているのだということがわかりました。・・が、最後まで読んでも必要かな?と疑問に感じました。
日記の部分が始まると、読みやすくなりました。
お葛という27歳の女性が江戸時代に書いている日記で、特別大きな問題が起きるわけでも、劇的な人生があるわけでもありません。それでも、彼女の文章が面白く、普通の日常が書かれているので共感できる部分も多くて、最後まで楽しめました。
小間物屋を営んでいるお葛には、頼りがいが無く働きも悪い亭主と、落ち着きのない息子とおとなしい娘がいます。日記の内容はほとんど、亭主に対する愚痴です。働かない亭主のせいで家計が火の車だとか、亭主の考え方や行動をバカにしたり・・。
時代が変わっても夫婦の悩みは変わらないんだな・・と妙に感心しました。共感できること多いと思います。
もう一人、清さんという小間物屋を手伝う人が同居していて、彼の恋路にもお葛は悩みます。
彼女の良い所は、悩みが長く続かなくて、いつも明るい所。甘いものを食べたり、初物を食べたり、花見なんかをしているうちにあっさりと忘れてしまえます。
火の車と言いながらもサラッと買い物をしたり、寄席や芝居を見に行ったりするのも笑えます。
「痩せなきゃ」と言いながら甘い物を食べてしまう所も、今の人と同じで、笑ってしまいました。
何だかんだ言いつつ、旦那さんや子どもたちのことが大好きで、今の生活に満足し、実は幸せなんだろうということが伝わってきて、読んでいる私も幸せな気持ちになりました。
ちょっと重い話を読んだ後などにお勧めです。
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