2013年04月15日

乃南アサ「地のはてから 下」

地のはてから 下

 乃南アサ 著
 「地のはてから 下」
 (講談社文庫)


小樽での子守奉公で初めて都会の暮らしに触れたとわは知床に戻り、森のなかでアイヌの青年と偶然再会する。しかし彼への恋心は胸に秘めたまま嫁ぎ、母となる。やがて戦争の足音が・・。まだ遠くない時代に、厳しくも美しい自然とともに生きてきた人の営みを鮮烈に描きだした感動巨編。中央公論文芸賞受賞。−裏表紙より−


大正時代って、昭和生まれの私としてはそこまで昔というイメージが無かったのですが、この話を読んであまりの違いに時の流れの速さを感じました。よく考えたら平成だってすでに25年ですし、昭和も64年あったわけですから、90年以上前になるんですよね。しかし、東京ではエスカレーターもあったみたいですし、それなりに発展はしていたようです。この話の舞台は北海道ですから、都会よりは発展が遅かったのでしょう。

それにしても、“戦争”って、経験のない私にはピンとこない出来事ですし、同じ人間同士でなぜ殺し合うのか理解できないですし、何より「国のため」って??と思うので、この時代に生きた人たちは、たくさんの理不尽なことに耐えていたんだと改めて思いました。


とわも、色々な苦労をします。子守奉公をするため、実家から離れて生活し、そこでも様々な困難に合いながらも耐えて生きます。不況の影響で実家に帰された後も自由になるはずもなく。

森で幼い頃に共にあそんだアイヌの青年と再会して恋心も芽生えたというのに、その頃は恋愛結婚なんてほぼ無い時代ですから、当然恋が実るはずもなく、親の選んだ人物と結婚します。顔も見たことのない相手との結婚。今では考えられない状況です。

とわはアイヌの青年に心を残し、人形になったつもりで嫁ぎますが、相手の男性がまた情けない人で・・。何度「しっかりしろよ!」と思ったことか。でも、とわもキツイことばかり言って、こんなんじゃ夫のやる気も失せるよな・・とも思い、やはりお互いを思いやる気持ちがないと結婚生活なんてうまく行かないんですよね。

とはいえ、子どもにはたくさん恵まれ、この時代らしく次々と出産し、育てていきます。そんな中、時代は戦争一色に。「男子を産んでも戦争に取られるから嫌だ」と思っていても口に出せない世の中。年齢的に、戦争には駆り出されないだろうと思われていた夫にまで“赤紙”が来てしまいます。

とわの人生は本当に大きな幸せもなくかわいそうになっていたのですが、最後にとわがこんなことを思っていたことで少し救われました。

いつの頃からだろう。どんな話をするときにでも、とわは何となく微笑んでいられる自分を感じるようになった。(中略)どう足掻いても、この人生がやり直せるものではない。いくら泣いたり叫んだりしたところで、世の中は自分一人の力では変えられないことだらけだ。(中略)だからせめて深呼吸の一つでもして、あとは時をやり過ごす。そんなときには、笑っているより他、出来ることもないと思う。だから何となく笑うようになったのかも知れない。

穏やかに微笑みながら子どもたちを見ているとわの姿が浮かびました。彼女と共に人生を歩んで来たような気がするくらい入り込んで読んでいたので、読み終わったときにはドッと疲れが出ました。

でも、どこか心地良い疲れだったと思います。


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posted by DONA at 10:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:乃南アサ
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