
伊吹有喜 著
「四十九日のレシピ」
(ポプラ文庫)
妻の乙美を亡くし気力を失ってしまった良平のもとへ、娘の百合子もまた傷心を抱え出戻ってきた。そこにやってきたのは、真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。乙美の教え子だったという彼女は、乙美が作っていた、ある「レシピ」の存在を伝えにきたのだった。−裏表紙より−
初めましての作家さんです。
あらすじを読むと、泣ける話だろうと思ったのですが、始めのうちは泣くよりも笑う方が多い感じでした。
妻・乙美が亡くなった後でやって来た「井本」と名乗る女性。彼女は乙美の教え子で、乙美がどんな四十九日を迎えてほしいかを生前に書いたレシピがあると伝え、四十九日までは乙美の家で料理や洗濯、掃除などの家事をしてくれると言います。
戸惑う夫・良平の元に、娘・百合子まで戻ってきました。結婚生活がうまくいかず、離婚するつもりで戻ってきたという百合子に、父親としてどうすればいいのかわからず、腫れ物に触るようにして接することに。
そんな気まずい雰囲気を、井本がうまく緩和してくれます。更には井本が連れてきたブラジル人青年も拙い日本語で場を和ませてくれます。
生きる気力さえ失くしていた良平でしたが、乙美の残した「レシピ」と井本たちのお陰で少しずつ明るさを取り戻し、前向きに暮らすようになっていきます。
娘・百合子と共に、乙美が望んでいた四十九日のパーティーを行うことにし、準備を進めます。
乙美の年表を作ることになり、彼女のことをよく知っている女性に話を聞くことになりました。その女性は独身で子どももいませんが、女性を助けるための施設を営んでいました。
その女性の言った言葉が私自身の今の人生を表しているようで、とても印象に残りました。
「誰ともつながっていない人生かもしれません。だけど私の仕事をテイクオフ・ボードにして、きっと誰かが前に進んでくれている」
テイクオフ・ボードというのは踏切板のことで、自分を踏んで行っても、それをきっかけに大きく飛躍してくれたらそれで良いというわけです。
私が今やっている仕事もまさにこんな感じで、目立たないけど、きっとすぐに忘れさられてしまうだろうけど、それでもその人の人生に何かを残せたら、前に進む手助けができていたら・・と思うと、やる気になります。
最後の方ではやはり泣かずにはいられませんでした。特に、良平が言った「乙美よ、お前は幸せだったのか」という言葉では号泣・・。生きているうちにもっと愛情を表現してもらえていたら幸せだっただろうに・・と思う反面、きっと良平の気持ちは乙美さんに伝わっていただろうとも思えました。
夫婦ってなんだか良いな・・そんな話でした。
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