
高野和明 著
「幽霊人命救助隊」
(文春文庫)
浪人生の裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな女性。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。傑作エンターテインメント、遂に文庫化! 解説・養老孟司−裏表紙より−
題名でビビッていた私。もっと早く読んでおけば良かったと後悔するくらい面白かったです。笑いあり、涙あり、人生の教訓もあり・・。
東大受験に失敗した裕一は、自分に過度な期待をしてプレッシャーをかけ続けた両親を恨んで、首吊り自殺をしました。自殺したことを後悔しながらたどり着いた所には、3人の男女がいました。
老ヤクザ・八木、気弱な中年男・市川、紅一点・美晴。彼らも裕一と同じように自殺をしていました。集められた3人に神様が与えたのは「100人の自殺志願者を救う」という任務。・・いや、任務というより罰とか、罪滅ぼしと言った方が良いかもしれません。その任務をクリアすれば、天国に行けるということで、さっそく地上に戻った4人の幽霊。
詳しい説明を一切受けずに地上に戻されたので、しばらくはどうやって自殺志願者を探せばいいのかさえもわからない状態でした。試行錯誤を繰り返し、何とか救う方法を見つけ出すのですが、今度はどうやって自殺を思い止まらせるかが問題になります。
自殺を考える人は、みんな考えが一方にしか向かない状態になっていて、いくら説得しても、頭から悪い方、悪い方へと決めつけていってしまうため、なかなか思い止まりません。
4人は、自分たちの経験も踏まえながら、様々な言葉で説得していきます。
「自殺」という重いテーマで書かれているので、暗いイメージをもちそうですが、助けようとがんばる幽霊たち4人の言動が妙に笑える部分があり、そのお陰で少し明るくなっています。
もちろん、シリアスな部分も多く、何度も泣きそうになってしまいました。電車の中じゃなかったら号泣だったと思います。母子の話とか弱いんですよね〜。
「自殺はダメ」というのは簡単に言えます。でも、そんな考えにまで思い詰めてしまった人をどうやって助ければいいのか、本当に難しい問題だと思います。日本では毎年驚くほどの自殺者がいます。私は「死ぬ勇気があるなら何でもできる」という考えで、「自殺」をするのが一番勇気がいることだと思っています。
でもこの話を読んで、誰にでも自殺を考える瞬間って起こり得るんだというのを思い知らされた気がしました。私だっていつそんな考えをするかわからないんですよね。そうなるまでに誰か一人でも声を掛ける人がいれば・・。
八木さんの言った「未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである」という言葉が印象に残りました。本当にそうですね。思い詰める前に、一歩引いて見直す力があればきっと世界は変わるはず。
色々考えさせられた作品でした。
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