
薬丸岳 著
「悪党」
(角川文庫)
探偵事務所で働いている佐伯修一は、老夫婦から「息子を殺し、少年院を出て社会復帰した男を追跡調査してほしい」という依頼を受ける。依頼に後ろ向きだった佐伯だが、所長の木暮の命令で調査を開始する。実は佐伯も姉を殺された犯罪被害者遺族だった。その後、「犯罪加害者の追跡調査」を幾つも手がけることに。加害者と被害者遺族に対面する中で、佐伯は姉を殺した犯人を追うことを決意し・・・。衝撃と感動の社会派ミステリ。−裏表紙より−
以前読んだ「刑事のまなざし」も色々と考えさせられ、悩みながら読んだのですが、今回の作品も重かったです。「刑事のまなざし」は主人公が柔らかい雰囲気を出す人だったのでまだ明るさもあったのですが、今回は暗さもあって重みが増した気がしました。
話は、佐伯修一が子どもの頃から始まります。プロローグの最後で、姉・ゆかりが暴行を受け、殺害されてしまいます。その遺体を修一は見てしまったことで、心の傷を負ってしまいます。
そして話は10数年後に飛び、修一は探偵事務所で働いています。警察官になったのに、数年前に懲戒免職になり、所長・木暮に拾われたのです。
その事務所に依頼にやって来たのは、ある老夫婦。「息子を殺した男が今どうしているのか知りたい」という依頼でした。居場所を突き止めた修一に対し、老夫婦は更に「彼が今、事件のことを反省しているのかどうか知りたい」と依頼します。反省しているかどうか、彼のことを許せるかどうか、は修一の判断に任せると言われ、相手に近づくことにします。
殺人事件を犯した男と話すうちに、姉の事件とも重ね合わせてしまい、苦しむ修一。老夫婦に出した答えが、また新たな事件を生むことに・・。
加害者と被害者遺族、両方に関わることで、姉の事件をどうしても思い出して、「自分ならどう思うのか」「姉を殺した犯人は反省しているのか」「反省していたら許せるのか」など、悩み苦しむ修一の様子は、読んでいても辛かったです。
気持ちがわかる、なんてことは簡単に言えませんが、どうすれば彼が救われるのか?一緒になって悩みながら読み進める感じでした。
修一の父親が久しぶりに会った息子に対して言った「いつでも笑っていいんだぞ。いや、笑えるようにならなきゃいけないんだぞ。おれたちは絶対に不幸になっちゃいけないんだ」というセリフに涙しました。本当にそうだと思います。被害者遺族が不幸になってはいけないんですよね。
最後まで苦しい展開が続きますが、最後にはちょっと救われそうな感じで終わっていたので良かったです。本当に救われるのかはわかりませんが、そうなりそうな感じだったのがうれしかったです。
この作家さん、追うことにします。重いのでちょっと間をあけながら・・。
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