
諸田玲子 著
「楠の実が熟すまで」
(角川文庫)
期限は初冬、楠の実が熟すまで。21歳の利津は、御徒目付を務める伯父に命じられ、潜入捜査のため京の下級公家・高屋家に嫁いだ。安永年間、禁裏での出費増大に頭を悩ませた幕府は、公家たちの不正を疑うが、探索のため送り込んだ者たちは次々に謎の死を遂げていた。最後の切り札として単身乗り込んだ女隠密・利津は、高屋家に夫の弟・右近が幽閉されているのを知る。証拠はどこに・・? 著者の新境地を拓く、長編時代ミステリー。−裏表紙より−
「時代ミステリー」なるほど・・という始まり方でした。ミステリー好きな人はきっと早い段階で、気持ちをギュッとつかまれると思います。
いきなり出てきた人物が突然、殺害されます。意味がわからず頭に「?」マークが一杯になりながらも、一気に話に引き込まれます。
しかも、連続殺人っぽい展開に。
誰が犯人なのか、なぜ彼らは殺されたのか、気になることが多くて、謎を解明したくて読み進めていると、主人公の利津が出てきて、彼女に伯父が説明することで、殺人の動機は明らかになります。
彼女に課せられたのは「公家の不正を暴くこと。懐に飛び込んで確かな証拠をつかむこと」でした。その難題を半年余りで成し遂げなければなりません。
すでに数名が証拠をつかみかけては殺害されています。そんな危険な任務を、女性一人、しかも何の訓練も受けていない女性に託した幕府。
彼女が選ばれたのは、勝気で真っ直ぐで当時の女性にしてはきちんと勉強しているからという理由なのですが、その良さがあまり発揮されることはありませんでした。
何だか普通の女性って感じで、情に流されますし、やたらとビクビクしています。まあその方が普通の人間らしくて良いのかもしれませんが、何で彼女を選んだんだろう?と疑問に思うこともありました。
「かなり危険な任務」とか「味方はいない」とか怖がらせていた割には、意外とあっさりと証拠を見つけてしまいますし、彼女の身に危険が迫る場面もほとんどありませんでした。
前半で盛り上げすぎたのかもしれません。私が勝手に盛り上がってしまったのか??
最後はキレイな終わり方をしていたので、読み終わったときにはスッキリできたのですが、少し盛り上がりに欠けたので残念でした。
↓ ランキングに参加中 ポチッと押して下さると嬉しいです。


タグ:諸田玲子