
吉永南央 著
「その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ」
(文春文庫)
コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」の近くに、ライバル店「つづら」が開店した。つづらは元和菓子屋だったが、近隣では経営難のオーナーから詐欺まがいの手口で土地家屋を買い叩く業者グループがいるという噂がある。小蔵屋を営む気丈なおばあちゃん・杉浦草は、背景を調べ始めるが・・・。人気シリーズ第2弾。−背表紙より−
第1弾と同じように、元気に動き回るお草さん。ただ、今回は事件自体が結構ハードな内容なので、前作のように鮮やかに解決!というわけにはいきませんでした。
短編ではありますが、全て同じ事件に関与していることばかりになっています。
今回は、近所にライバル店が出来たことでお草さんの気持ちが揺れてしまうことに・・。ライバル店なんか怖くないはずなのに、どうしても心が乱れる・・そんな様子が何度も出てきて、少し心配になることもありました。
でも、やはり色々な経験を積んできて今のお草さんがあるわけで、問題を抱えた人に寄り添ったり突き放したりしながら、いい方向へ導いていきます。
従業員の久実さんも相変わらず元気で明るく、正義感が強く、お草さんを助けて働いています。そんな彼女に今回は少し変化もありました。
お草さんのパワフルな言動にちょっと笑わせられながら、時にはほろりとさせられたりもあり、とても楽しく読み切ることができました。
今回、お草さんとは違う人なのですがとても印象に残った言葉があったので書き出しておきます。
自閉症の子どもとあそぶボランティアをしていた女子大生にお草さんが「なぜボランティアをしようと思ったのか?」と質問したときに返ってきた答えです。
「自分のためですよ。余ってる時間と気持ちを、誰かのために使いたかったんです。つまり、したいことをしてる。だから、自分のため」
・・・なるほど、そう考えれば結果がすぐに出なくても、前向きにいられるかもしれないな、と感心しました。
続きもあるそうなので、また楽しみに文庫化を待つことにします。
<紅雲町珈琲屋こよみシリーズ>
「萩を揺らす雨」
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