
冲方丁 著
「天地明察 下」
(角川文庫)
「この国の老いた暦を斬ってくれぬか」会津藩藩主にして将軍家綱の後見人、保科正之から春海に告げられた重き言葉。武家と公家、士と農、そして天と地を強靭な絆で結ぶこの改暦事業は、文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。改暦の「総大将」に任じられた春海だが、ここから想像を絶する苦悶の道が始まることになる−。碁打ちにして暦法家・渋川春海の20年に亘る奮闘・挫折・喜び、そして恋!!−裏表紙より−
上巻は、春海の人柄やどんな仕事をしていて、どんな家柄に生まれ、どんな境遇で育ったのか・・など、人物紹介の部分が多くて静かな印象でしたが、さすがに下巻になると話の展開が早かったですし、喜びと悲しみが交互に出てくる感じで、なかなか波乱の展開でした。
歴史小説なのに、刀で斬り合ったり、戦に出かけたり・・という部分が皆無なので、そういう意味では静かな話ではあるのですが。
上巻で行った北極星の観測のときに、今使われている暦の欠点を見つけていた春海。保科からの後押しもあり、暦を変換する仕事を開始しました。
今使っている暦は天皇が推薦している物なので、簡単に改善するわけにはいきません。これを覆すためには、今の暦が間違っているということを天皇たちや庶民たちにもわかるように明確に知らしめる必要がありました。
そこで月蝕の予想をすることで、今の暦と正確さを競うことにしたのです。ところが、2回はあてたのですが、3回目に外してしまったため、春海は非難されます。
落ち込む春海が向かったのは、ずっと会いたかった関の家。算術家として尊敬する彼に初めて会った春海は、関からいきなり罵られてしまいます。算術を使っておきながら失敗した春海のことが許せないと言うのです。
怒鳴られたことで逆にやる気を出した春海。関が以前から調べていた物も参考書として見せてもらえることになり、大いに前向きになりました。
色々な人に助けられ、励まされながら大きな仕事を成し遂げようとする春海の姿にはとても勇気づけられました。春海は本当に良い人たちに巡り合っているとも思います。でも良い人が周りに来るということは、春海自身がそれだけの魅力があるということなわけで・・。
この時代だから大変だったこと、この時代だから出来たことというのもあったとは思いますが、今の私たちにも当てはめられるような人の力のすごさを感じることができました。
下巻も始めの方から何度も泣かされましたし、その度に落ち込む春海が見ていられない感じでしたが、またすぐ立ち直ってがんばる姿を読むと、同じように気分が盛り上がりました。
春海と共に人生を歩んだ感じです。
最後までとても面白く読むことができました。
歴史小説が苦手だという方には読みにくいかもしれませんが、そうでなければぜひ読んで下さい。きっと感動できますよ。
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