
藤原伊織 著
「テロリストのパラソル」
(角川文庫)
ある土曜の朝、アル中のバーテン・島村は、新宿の公園で一日の最初のウイスキーを口にしていた。その時、公園に爆音が響き渡り、爆弾テロが発生。島村は現場から逃げ出すが、指紋の付いたウイスキーの瓶を残してしまう。テロの犠牲者の中には、22年も音信不通の大学時代の友人が含まれていた。島村は容疑者として追われながら、事件の真相に迫ろうとする−。小説史上に燦然と輝く、唯一の乱歩賞&直木賞ダブル受賞作!−裏表紙より−
アル中の中年男性が主人公ということで、ちょっと引っかかりを感じていたのに、更に起きていきなり手の震えを感じて「ウイスキーを飲まないと!」と必死になって、なぜか公園に行って飲み始めるんですよね・・。しかもそれが日課だとか言いだすし。
主人公の雰囲気はハードボイルドらしいわけですが、始めの方の行動だけを読むと「この人のこと、好きになれるか?」と不安になってしまいました。
でもあっという間に話に引き込まれていて、気づけば主人公のことも好きになっていました(好きは言いすぎかもしれませんが)。
主人公・島村が公園でウイスキーを飲んでいると、見知らぬ少女が話しかけてきました。何となく静かな時間が流れるような穏やかな会話をし、少女が離れて行った直後に爆破事件が発生します。現場に駆け付けた島村は、先ほどの少女を探し出し、そこにいた青年に少女を託してあわてて現場から逃げました。
この時点で、なぜ彼はその場から逃げないといけないのか?がよくわからないのですが、それは徐々に明らかになっていきます。
犠牲者の中にある人物がいたことと、指紋が見つかったことで、島村の容疑が深まり、爆破テロの犯人として警察に追われることになりました。更に、なぜか暴力団らしき人たちからも脅しをかけられた島村は、事件の真相を探り始めます。
島村は、家族もいなくて孤独な人物なのですが、事件を調べ始めると様々な協力者が現れます。その人たちが、とても魅力的で、島村と交わす会話もシャレていて素敵でした。みんな、島村の危なっかしい行動にハラハラしながらも助けていく・・そんな姿を見て私も思わず応援してしまう感じでした。
全共闘時代なんかの話が出て来て、ちょっと理解できない部分や、雰囲気がつかみにくい部分がありました。結末というか、犯人などについては予想通りではありましたが、最後まで面白く読み切ることができました。
ハードボイルドがお好きな方はぜひ読んでみて下さい。
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ところどころ安易なご都合主義みたいなのもありますが、すべて好きです。
また来年くらいに読み返したい1冊。
今さっき、自分のレビューを読み返したら
「あれ?そうだっけ?4回戦ボーイ??」
と、思ったもので(笑)
その前に再読したいのが1冊あるのですが。
そのあとに読みたいです。
確かにご都合主義な所はありましたね。でも全体的に流れている雰囲気や空気感が素敵でした。
「4回戦ボーイ」は確かに印象薄くなる部分かもしれません・・。今の島村にそんな雰囲気が無いからでしょうけど。
私もしばらく経ったらまた再読したいと思います。