
藤原伊織 著
「ひまわりの祝祭」
(講談社文庫)
自殺した妻は妊娠を隠していた。何年か経ち彼女にそっくりな女と出会った秋山だが、突然まわりが騒々しくなる。ヤクザ、闇の大物、昔の会社のスポンサー筋などの陰がちらつく中、キーワードはゴッホの「ひまわり」だと気づくが・・・。名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編!−裏表紙より−
主人公・秋山(僕)は、温めた牛乳とホイップクリームの入ったドーナツが好き・・“ハードボイルド=酒”という勝手なイメージをいきなり覆されました

ハードボイルドの主人公らしく、堕落した生活はしていますが。人生を達観しているというわけではなく「どうでもいい」と諦めてる、無気力な人生を送っています。仕事もせず一日中家でぼんやりしている。唯一の趣味は映画鑑賞。しかも昔の映画をビデオで見る・・。
「つるつるのプラスチックみたいに平板な生活」を送っていた彼にある夜、転機が訪れます。あらすじにも書かれているように今まで何の縁も無かった闇の世界の人たちと関わりをもつことになり、ゴッホの名作まで絡んできて、彼は今までのような無気力、無関心ではいられなくなります。
展開も早くて、登場人物たちも面白くて(特に気に入ったのは新聞配達員の佐藤くん)、一気に読めそう!と思っていたのに、なぜか読み終わるまでに何日もかかってしまいました。途中、ゴッホの説明が長かった・・というのもありますけど。
最後の解説を読んで、その理由がわかったのですが、この作家さんは文章がとても丁寧なんです。主人公の行動や、その場所の描写など、とても詳しく書かれています。そういう場面って普段ならサラッと読み飛ばす感じになるのに、この本はそれが出来なかったんですよね。一つひとつを頭に思い浮かべてしまう。ぼんやりではなく、結構しっかりとしたイメージとして浮かべないと先に進めない感じがしました。しかも、自分では特に意識していないのに、自然とそうしていた・・という感じ。それで時間がかかったようです。
そして、最後はとても悲しい結末。でも悲しいだけじゃなくて、ちょっと見える光・・という感じがとてもよかったです。主人公の奥さんの話は泣きそうになりましたけど、想いが伝わったのは良かったです。
この作家さんはもうお亡くなりになっているそうで、新しい作品は望めませんが、まだ他にも色々ありそうなので追いかけてみようと思います。
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タグ:藤原伊織
あたし、自分のブログ読んで「適当感ありありだな〜」と思っていたので(^^;)
もし、次を読まれるなら「テロリストのパラソル」を読んでいただければ(^^)
島村さんというのがある意味キーパーソンで違う本にもちらちらと登場するんですよね。
遺作となった「遊戯」は未完のまま本となってます。読んでてビックリしました。
丁寧なレビューというよりも、簡潔にまとめられないだけ・・って感じですね(苦笑)igaigaさんのように簡潔に楽しい文章が書きたいんですけど、なかなか難しいです。
次は「テロリストの〜」ですね?確かデビュー作でしたね。探してみます!
未完の作品って、読んでいても辛いですよね・・。