
池波正太郎 著
「忍者群像」
(文春文庫)
戦国時代の末期、忍者同士の義理も消え、味方の忍者達でさえ手柄を争うためには殺し合うことも平気、裏切りも寝返りも常識になっていた。その乱世のなかで、“生きていた”明智光秀の首を狙う忍者小五郎のすさまじい執念を描いた「首」をはじめ、「鬼火」「やぶれ弥五兵衛」「寝返り寅松」「闇の中の声」「戦陣眼鏡」「槍の忠弥」の7篇。−裏表紙より−
短編集なので、一話ごとに登場人物や話の内容は変わるのですが、1話目から時代を追う様に流れています。1話目から読んだ方が時代背景はわかりやすいかもしれません。
小田信長が天下を取ろうとしていた時代から始まり、徳川幕府が築かれて30数年経った時代までに活躍した忍者たちの話が描かれています。
戦乱の時代には、戦のための忍者が活躍し、安定した世には陰謀を働く者がいないかを探るための忍者が活躍しました。
忍者といえば、驚くほどの身体能力を持ち、影のように動き、非情な暗殺者という勝手なイメージがあったのですが、この本を読んでその考えが少し変わりました。
忍者と言ってもやはり人間です。敵方に潜り込んで隠密活動をしているうちに、その敵の大将に惹かれてしまい、寝返ってしまうこともあるわけです。そんな自分の感情に振り回され、深く悩み・・でも、やはり裏切ることにした忍者は、仲間から裏切り者として命を狙われることもあります。
まさしく命がけの任務についているわけです。そんな彼らの生き方を読むと感動せずにはいられませんでした。
「闇の中の声」は忍者が主役にはなっていません。自分の力を過信している傲慢な若武者が主役で、彼が真田幸村を討とうとするのを忍者が邪魔したことで、人生が狂っていく・・という話です。この話では主役も忍者もどうでもよくなって、真田幸村が気になって仕方ありませんでした。彼の戦術や潔さは素晴らしいと改めて思う作品でした。
「戦陣眼鏡」ではそれまでと違い、ちょっと笑ってしまうような話になっています。忍者と主の関係がとても微笑ましくてずっとニヤケながら読んでいました。後半は悲しい雰囲気になるのですが・・。
久々に再読したわけですが、内容を忘れていた話もあって、最後まで楽しく読むことができました。
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