
今野敏 著
「とせい」
(中公文庫)
日村誠司が代貸を務める阿岐本組は今時珍しく任侠道をわきまえたヤクザ。その阿岐本組長が、兄弟分の組から倒産寸前の出版社経営を引き受けることになった。舞い上がる組長に半ば呆れながら問題の梅乃木書房に出向く日村。そこにはひと癖もふた癖もある編集者たちが。マル暴の刑事も絡んで、トラブルに次ぐトラブル。頭を抱える日村と梅乃木書房の運命は?−裏表紙より−
久しぶりの今野敏

ヤクザが主人公なので、言葉も汚くて暴力シーンも多くてハードな感じかと思ったのですが、そんなことなくてとても丁寧な言葉使いと低い物腰(まあ、たまには怖い所もありますけど・・ヤクザなんですから)で、逆に笑う場面が多い話でした。
阿岐本組というのは、組長と代貸(若頭のこと)と組員が4人で計6人の小さな組です。昔ながらの堅い組で、素人さんには迷惑をかけない・・というのがモットーになっています。揉め事の仲裁には行きますが、自分から揉め事は起こさないわけです。
こういう堅い組は、金銭面で困ることになります。裏で汚いことをして稼ぐわけにいかないんですから。そんな状態の阿岐本組に持ち込まれたのは、出版社の経営でした。
ちょっとぼんやりした所のある組長が知り合いから聞かされた話に、気まぐれで乗っかってしまい、部下たちは翻弄されます。そして、傾きかけた出版社へ出社することに・・。
ヤクザが傾きかけている出版社を建て直すために立ち上がる!・・なんて言うとカッコいいのですが、実際はおやっさん(組長)が出版社の社長をやってみたかっただけ・・巻き込まれた方はたまりません

そんなおやっさんを支え、尊敬している代貸・日村はおやっさんの顔をつぶさないように会社の経営を助け、組員たちの面倒も見て、警察の行動にも目を光らせ・・と大忙しです。
彼の行動はとてもカッコいいのですが、考えていることは一般人と変わらないので妙に笑えます。ガンを飛ばすときも「今だ!」と考えてやっていたり、ヤクザに対して怯えない素人がいたらこっそりその人を分析したり。
時々ニヤッと笑いながら読み進めるような話でした。
これはシリーズ化されているようなので、文庫になったら読もうと思います。次の話はもうすぐ文庫化されるようです

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日村のオロオロさとは対照的に
おやっさんのどっしりとしたところが
よかったです。
このシリーズ大好きです。
面白かったです!!チャウ子さんのお陰で読むことができました。ありがとうございます。
日村とおやっさんの関係が素敵ですよね。文庫がもうすぐ発売されるようなので、楽しみです。