
北森鴻 著
「狐罠」
(講談社文庫)
店舗を持たずに骨董を商う“旗師”冬狐堂こと宇佐見陶子は、あるとき同業者から唐様切子紺碧碗を仕入れた。ところがそれは見事な贋作だとわかり、陶子は自分のプライドをかけて復讐を誓う。“目利き殺し”の罠を仕掛けようと画策する陶子に、今度は殺人事件の容疑が降りかかる。
“旗師”冬狐堂シリーズの1作目です。私は2作目から読んでしまったわけですが、1作目はやはり少し青臭い雰囲気の陶子がいました。まだまだ駆け出しだね・・って感じです。2作目の彼女なら絶対だまされるわけがないと思われるのですが、この話では、贋作をつかまされてしまいます。
彼女が騙されたのは、相手が巧妙な“目利き殺し”を仕掛けてきたからでした。品物に対する情報だけではなく、場の雰囲気や、だまそうとしている相手の情報もうまく利用し、贋作だと気づかれないうちに売りつけてしまうことを“目利き殺し”というそうです。
そんな陶子の元を訪れたのは、保険会社の鄭と名乗る男性。彼は陶子が贋作をつかまされたことを知っていて、彼女に協力を求めます。
陶子を騙したのは、骨董業界でも評判の悪い、橘薫堂でした。彼のそばには国立博物館の鑑定士や、謎の贋作師と思われる人物までいて、怪しげな動きを繰り返しています。
そんな橘薫堂に“目利き殺し”をやり返そうとする陶子。彼女はある贋作師に協力を求め、着実に罠を仕上げていきました。そして、殺人事件が発生し、陶子も巻き込まれていくことに・・。
前半は、贋作の説明や古美術界のしきたりやルール、どうやって品物を鑑定するか?など、詳しい説明がされていて、読むのに時間がかかってしまいました。理解しようと必死で読むと眠くなってしまって・・

でも、後半になり、誰が味方で誰が敵か?や殺人を犯したのは誰なのか?などが気になって、読むスピードも上がっていきました。陶子の必死な様子が痛ましいくらいで、早く全てが解決してほしいと強く願ってしまいました。
贋作作りの部分では、すごい技の数々に思わず引き込まれる感じでした。ここまで手を掛けて全身全霊を掛けるように作られた物であれば、すでに本物と言っても良いのでは?と思ってしまいます。
陶子の周りの人たちも魅力的でした。殺人事件を捜査する警察官2人も良いコンビでしたし、カメラマンで親友の硝子、贋作師・潮見老人などなど。彼らにもまた会いたいと思うので、続きも読んでいきます。
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