
浅田次郎 著
「ハッピー・リタイアメント」
(玄冬舎文庫)
定年まで4年残し、転属を命じられた財務官僚・樋口と自衛官・大友。二人の転属先はJAMS(全国中小企業振興会)という団体だった。そこは元財務官僚の理事・矢島という男がトップに座る、ほぼ仕事の無い組織。いわゆる天下りをした二人に、教育係の立花葵はある提案を持ちかける・・。
初めての作家さんで、ちょっと戸惑う部分もあったのですが、プロローグの所で一気に引きこまれる感じがしました。そこにはこの作家さんが実際に体験したことが書かれています。それが妙に面白かったんですよね。読み終わってみると、その部分が一番面白かったかも?とも思うんですけど・・

樋口と大友の二人は、JAMSという組織で初対面を果たします。そして妙に気が合った二人は、立花葵と共に仕事をすることにしました。
天下りというのは、退職金が二度もらえるし、給料も良いし、更に仕事をしなくても誰も文句を言わない・・と良いことばかり(まさに「ハッピー・リタイアメント

ぼんやり一日過ごすのは意外と大変なことなのかもしれません。社会から置いていかれたような気がするでしょうし。やはり「自分は必要なんだ」と思えることって大事ですね。仕事ばかりというのも問題ですけど。
“JAMS”というのは、銀行が将来有望な中小企業に融資しやすいように、保証する組織です。簡単に言うと、借金を肩代わりするわけですね。でも実際にはほとんど取り立てらしきことをしないので、よほど奇特な人以外はほぼ返してくれません。そして時効を迎えてしまう・・。
その時効を迎えた借金を払う意志があるのか?無ければ無いで書類を作成し、本人に署名捺印してもらうのが、二人の天下り先での仕事。ただ、その仕事は行われたことがありませんでした。返す必要のない金を返す人がいるとは思えないですし、書類を作成するにも、今その人がどこにいるのか?を調べるのが大変で、やろうとする人はいませんでした。
でも二人は葵と共に仕事を始めたわけです。
何ともぼんやりしたような、世間離れしたような二人ですが、意外な活躍を見せてくれます。最後にはスッキリするような展開があって、面白く読みました。
終わり方はハッキリとしていなくて、余韻というか「想像に任せます」という感じなんですが、これはこれで良かったと思いました。
↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。


タグ:浅田次郎
ことなんでしょうか?
あの、おばあさん(ヒナさん?)が
とんでもない人だったってこと?
私はそう理解しているのですが‥
私も同じように思ってました。結局ヒナさんの1人勝ちですよね?
だからあの3人の人生が気になる終わり方だと思いました。でもきっと前向きに明るく生きて行ってくれそうだと思える終わり方でしたよね。まあ、世の中そんなに甘くないってことでしょうかね。