
菊地秀行 著
「D−冬の虎王」吸血鬼ハンター23
(朝日文庫)
元人間の妻・セイレーンからの依頼を受けてヴァン・ドーレン公爵の下を訪れたD。北部辺境区の管理官として君臨してきた“虎王”と呼ばれる公爵も年老いて衰え始めていた。城下には反乱軍や野盗の群れが押し寄せ、都からは調査団が来ようとしていた。Dは、公爵がそれらの集団を抹殺した後、公爵を抹殺するように依頼を受けていたのだった。
シリーズもとうとう23作目となりました。相変わらずDの秘密は明らかになりませんが、今回はほんの少し小さな出来事が起こっていて、それがどうやら今後の鍵になるようです。あとがきを読むまで何とも思わず読み進めていたんですけど・・

今回の主役ともいうべきドーレン公爵は、今まで出てきた貴族と少し違う感じでした。貴族というのは自分の領地に住む人たちに対してある程度の災害や外部からの攻撃に対しては救ってくれますが、後始末まではしません。餌としての認識の方が強い感じです。でもドーレン公爵は、外部からの攻撃を防ぐだけではなく、傷ついた人たちに対して治療を施します。もちろん、村人たちを襲うこともしませんし、彼らを襲った者を見つけ出して必ず復讐する!とみんなの前で誓うくらいなのです。
それだけ人間に尽くしても、やはり貴族と人間の壁は越えられず、反乱軍なんて物が作られてしまうんですよね。両者の壁はやはり命の問題でしょう。貴族は永遠と呼べる命があり、時間の感覚も人とは違います。そこが壁を越えられない最大の原因でしょうね。
今までのこのシリーズでは、人が貴族を理解するような行動を起こしてDが喜ぶ・・という(すごく簡単に説明していますが)パターンが多かったのですが、今回は逆です。貴族が人を理解しようとする。人は貴族を憎んだまま。なので、珍しくDが人ではなく貴族やその部下に肩入れするような行動が見られました。
さてこのシリーズはどこまで続くんでしょう・・。そしてラストは訪れるんでしょうか。心配になりつつ、次を待つことにします。
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