
愛川晶 著
「芝浜謎噺 神田紅梅亭寄席物帳」
(創元推理文庫)
寿笑亭福の助は二つ目ながらその腕前を高く評価される落語家。彼の妻・亮子は全く落語のことを知らなかったが最近ではすっかり噺家の女房らしくなってきた。福の助の弟弟子・亀吉が故郷で独演会を開くことになりそこで「芝浜」をやりたいので稽古をつけてほしいと頼んできた。二つ目になったばかりの亀吉がやるには難しいこの演目。なぜ彼はこの噺にこだわるのか?−「芝浜謎噺」他「野ざらし死体遺棄事件」「試酒試」計3編収録
亮子が少し落語会について詳しくなってきたので、説明も少し細かい部分が多くなってきました。前作が“落語入門”なら今作は“初級編”という感じです。亮子と共に少しは成長できたかな?なんて思ったりして・・

今回も不可解な出来事が起き、それを高座で落語をやりながら解決する・・という手法で話は進みます。
以前、弟弟子だった亀吉(昔は「はる平」でした)から「芝浜」の稽古をつけてほしいと頼まれた福の助。歴代の師匠たちも敬遠することがあったというこの演目。人情噺で亀吉にはあまり合わない噺だったので、稽古も大変です。
でも、亀吉がなぜこの噺をやりたいのか?事情を聞いた福の助は引きうけることにしました。ただ、師匠に教えてもらった噺をそのままやると、亀吉に合わない。独演会まで時間が無いので、日々悩むことになります。
そこで馬春師匠に相談に行き、ヒントを貰います。そして何とか亀吉に合うように改良し、うまく仕上げたのでした。
この「芝浜謎噺」も面白かったですが、私がもっと気に入ったのは「試酒試」です。
3年前に倒れてからうまくしゃべることが出来なくなり、64歳という年齢でありながら事実上引退してしまっている馬春師匠。彼にリハビリを続けてまた復帰してもらいたい!という願いはみんな持っていました。
江戸っ子らしい潔さでリハビリを止めてしまい、人前に出ることも嫌がり、元弟子の前でも筆談しかしない馬春師匠を何とかできないものか?
その強い願いが通じて、師匠を高座にあがらせることに成功したのです。その様子はまるで実際に目の前で演じられているかのようで、すごい迫力でした。思わず拍手しそうになる感じ。
馬春師匠は、実際の落語家さんでは誰に近いのかな?なんて考えつつ、一度寄席の雰囲気も味わってみたいと思うようになりました。
続きも楽しみです。
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