
和田竜 著
「のぼうの城 下」
(小学館文庫)
石田三成からの使者に対して「戦いまする」と宣言した成田長親。戦ができることを喜んだ三成は忍城の各門に向けてそれぞれ大軍を攻め込ませた・・。圧倒的に軍の数が違う中、どうやって忍城を守るのか?
上巻では、百姓たちも城に集まり“のぼう様”こと長親のために立ち上がった所で終わりました。
そして下巻になり、いよいよ戦いの火蓋がきられることに・・。
忍城の門を守るのは、正木丹波、柴崎和泉、酒巻靱負の3人。
丹波が守る門を攻めてきたのは長束正家の率いる軍。鉄砲隊を横一列に配し、この地方独特の深田の中を進軍させてきました。深田に足を取られて、なかなか一列で進めない軍を見て、丹波は自ら先頭に立って討って出ました。そして、自軍の鉄砲隊を馬に乗せ、後ろからどんどん撃たせたのです。
当時の鉄砲は、弾をこめるのに時間がかかり、更に火がつけられてからも長い・・。つまり、一度撃ってしまうとなかなか次が撃てないのです。それをうまく利用して攻めまくりました。
靱負が守る門を攻めてきたのは三成の率いる軍。靱負は初陣でありながら、なぜか老兵ばかりをすすんでもらい受け、自分の軍に入れました。彼らは靱負のことを息子や孫を見るような優しい目で見て、色々と世話を焼いたり、アドバイスをします。そんな老兵たちをうまく使って、敵軍を森へ導き、攻めていきます。
和泉が守る門に攻めてきたのは吉継の率いる軍。圧倒的な力で容赦なく鉄砲を撃ってくる彼らに対し、なすすべなく見ているだけの和泉。守る門を壊しに敵軍がやって来た所をうまく利用して、水攻めにして鉄砲隊を全滅させました。
・・と、なかなか頭の良い戦い方。寄せ集めの兵の気持ちをガッチリつかみ、士気を高めて数以上の力を発揮させた天才的な戦法に感心しきりでした。
そして、一度は撤退した三成軍は、次に水攻めを仕掛けます。短期間で堤を築き、一気に忍城の周りに水を巡らせ孤立させました。これも結局は破られるのですが、その方法は書かないでおきます。
で、肝心の長親ですが・・。個性豊かな家臣たちや百姓たちを惹きつけておく魅力がある・・ということはわかったのですが、特別頭がよく回るとか機転がきくというわけでもなさそうで

まあ人を惹きつけるというのも大事な才能ですからね・・。
意外と石田三成がそそっかしいというか、子どもっぽい所があって憎めない感じがしました。だからこそ、こんな終わり方ではなく、両者が納得できるまで死力をつくして戦ってほしかったような気もしました。そうなると、巻き込まれる百姓たちがかわいそうですけど・・。
歴史小説ではありますが、わかりやすくて読みやすいと思います。あっさり読めてしまいますし・・。
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この本の表紙、上下巻を並べると、敵同士が見合っている感じになります。上巻は“のぼう様”こと成田長親、下巻は石田三成の絵だそうです。
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