
吉永南央 著
「萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ」
(文春文庫)
紅雲町にあるコーヒー豆と和食器を販売する店「小蔵屋」。この店を経営する杉浦草は、気丈で行動力もある76歳のおばあさん。彼女が解決する日常のちょっとした謎が書かれた短編集。「紅雲町のお草」「クワバラ、クワバラ」「0と1の間」「悪い男」「萩を揺らす雨」計5編収録
表紙の絵を見ると明るくて軽い話なんだろうな・・と思うのですが、題名はしっとりしている。このギャップが気になって、なかなか手に取らなかったようです。
中身は、題名がすごく合うしっとりした話ばかりでした。
主人公のおばあちゃん・お草さんは、おばあちゃんと呼ぶのをためらうくらい元気でアクティブな女性。でも、年相応のどっしりとした雰囲気も持ち合わせていて、理想のおばあちゃん像と言えるかもしれません。
家族も居なくて身軽なので、両親が亡くなったのを機に、雑貨店だった所を改装し、夢だったコーヒー豆と和食器を売る店にしました。それが65歳のとき。
それからは客と良い距離を保ちながら、会話を楽しんだり静かな時間を共有したりして店を経営しています。
客たちが話す内容を聞いて、謎を解明しようとすることで話は進みます。
老人とは思えない身軽さで歩いて調査をするお草さん。でも、警察官に職務質問されることも・・。老人でなければ不審に思われないはずなのに、老人が1人でウロウロしているとそれだけで声を掛けられる。徘徊老人と間違えられるんです。
そんなときにお草さんは、警察官を怒鳴りつけてしまうのです。こういう話では、冷静に諭したり、逆に素直にボケた振りをして付いて行ったりする・・というパターンが多いと思うのですが、お草さんは怒鳴りつけて逃げ出す。
その展開に驚かされながらも、一気にお草さんが好きになりました。
お草さんの「自分はまだまだ若い」と思いたい気持ちと「でも自分は年老いた」と感じる、その葛藤が事件の合い間に書かれていて、それがこの話を重く深い物にしている感じがしました。
明るくあっさり読める話ではありませんが、それでもあっという間に読めてしまう話でした。
続編も出るようなので、文庫化されるのを楽しみに待つことにします。
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