2011年04月11日

小杉健治「疑惑 裁判員裁判」

チャウ子さんのブログで紹介されていて面白そうだったので読んでみました。初めての作家さんです。

疑惑

 小杉健治 著
 「疑惑 裁判員裁判」
 (集英社文庫)



被告人・保窪耕平には、保険金目的で妻を殺害した容疑がかかっている。保窪は過去にも二人の妻を保険金目的で殺害したのでは?と疑われたことがあったため、裁判は被告人に不利な状況と思われた。弁護士・鶴見は被告人が何かを隠していると感じながらも弁護に全力を尽くす。裁判人に選ばれた鳴沢は、被告人が自分を見たときの反応が気になり・・。それぞれの“疑惑”を孕んだ裁判が始まった。


鶴見弁護士が裁判所に駆けこむ所から話は始まります。そこでは、裁判官と検事とどのように裁判を展開させていくか?が話し合われます。証人には誰を呼ぶか?どんな証言をしてもらうのか?どんな証拠を出すのか?など、細かく話し合われ、日程を決めます。その後、裁判員も選ばれ、裁判が始まるわけです。

この裁判の被告人は、過去にも2度妻を亡くしていて、今回は3人目の妻を転落事故で亡くしました。2度目の妻を亡くしたとき、保険金目当ての殺人ではないか?と大々的に報道されました。そして3度目の今回も保険金が絡んでいるため、妻を突き落としたのではないか?を疑われています。

目撃証言が出たとたんに「実は一緒に部屋に居た」と供述を変えた被告人。検事はその部分を追求し、被告人が突き落として殺害した・・つまり、殺人だと立証しようとします。

弁護士は目撃証言を覆そうとし、過去の2度の妻の死とは切り離して今回の事件を裁いて欲しいと訴えます。


裁判の内容や、弁護士と検察官の駆け引きはとても面白く、そして自分がもし裁判員だったら?と考えながら興味深く読みました。

ただ、被告人と裁判員の1人・鳴沢という男性との話が、何だか話の流れをややこしくしていたような。必要だっただろうか?と思いました。

それがあったために、裁判がおろそかになっていた気がします。もっと裁判を掘り下げても面白かったと思うんですよね。

被告人の人となりを語る上で必要だったのかもしれませんけど、別の方法もあったのでは?と思います。例えば、弁護士が調べて証人をたてるとか・・。

始め、鶴見弁護士のことを「京介」と書いていたので、彼の目線で話は進むんだな・・と思ったのですが、その後どんどん視点が変わってしまい、なぜ彼は下の名前だったのかな?とか細かいことが気になってしまいました。視点が変わる意味がイマイチよくわかりませんでした。


裁判はどうなったのか?は書きませんが、裁くのは難しいだろうと思います。過去の妻の死は考慮に入れない・・と言われてもやっぱり気になりますし、ハッキリした証拠もない。

殺人事件って、被害者が死んでしまっているから、加害者の証言というか供述以外には確たる証拠ってないんですよね。指紋とかDNAとかありますけど、それだってどこからどう付いたのか?完璧にわかることって珍しいと思うんです。

つまり、目撃者が居て証言してもらうしかない。でもその証言も本当なのか?ってどうやったらわかるんでしょう・・。防犯カメラにバッチリ写っているしか信用できない気がします。

・・・・とか色々考えてたら、裁判員って難しいがく〜(落胆した顔) 「疑わしきは罰せず」って言葉が何だか深く刺さりました。でもちょっとでも有罪の可能性があるのに「罰せず」でも良いのかな?とも思いますし。

あ〜、ホント難しいですふらふら

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タグ:小杉健治
この記事へのコメント
私も全くDONAさんと同じ感想。
せっかくタイトルが「裁判員裁判」なのだから、
「裁判」をもっと掘り下げてもよかったのではないかと。
被告人と裁判員が偶然ああいう関係だったとは、
なんだか出来すぎですよね‥。
Posted by チャウ子 at 2011年04月11日 11:53
コメントありがとうございます。

被告人と裁判員にあんな関係があったら、とりあえず申告して降りるべきでしょう?なんで何気ない顔して他の人と一緒に刑を決めてるわけ?って疑問に感じました。あんなに身の入らない裁判員で良いのか??
裁判の場面は良かったです。弁護士と検察官のやりとりに臨場感があって、裁判を一度見てみたいような気持ちになりました。
Posted by DONA at 2011年04月12日 10:42
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